問題児たちと一人の神が異世界から来るそうですよ?   作:異山 糸師

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やあ皆、久し振りですね……
テスト? ああ、後一ヶ月は普通に続きますがなにか?
それよりやばいことがあったんですよ…ええ、ついさっきのことだよ。土下座なんてもうどうでもいい。
続きは後書きで語りますね…メディック、メディーック!!


第34話 荒ぶるウサギがいるようですよ?

 ―――“アンダーウッドの地下都市”緊急治療所。

 

 急遽用意された治療所には怪我人が雑魚寝状態で所狭しと並べられていた。凄い密集率なので、いっそ俺が怪我を消して治してしまおうかと思ったのだが、そんなことすれば今後面倒なことになりそうな気がしたのでやめておく。

 

 にしても、アンダーウッドの被害を半分以上、俺の自由な行動のせいで救われたと聞いた時、どういう顔すればいいか分からなかったんだが、とりあえず笑えばいいと思うので苦笑交じりに微笑んでおくと、相手が俯いて耳まで赤くして逃げ出してしまった。

 

 おや? 俺が魔王だと思われてない? 逃げ出すほどの何かをしたっけか……したな。巨人で遊ぶって言うことを。ならば仕方ない。

 

 そして俺と十六夜は黒ウサギのもとに向かったのだが、何やらとても怒っている様子。そして身体を赤く染めているところを見るに、血で汚れておりようなのだが、見たところ怪我をしていない。

 

 おっと、嫌な予感がする。

 

 黒ウサギが拳を握って震えており、その美脚が少しずつ曲げられ……

 

「死にさらせぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

「質量のある残像」

「ごはぁッ!!?」

 

 ズパァァァァァンッッという、建物そのものを震わせるかのような音が、十六夜の頭からなった。

 

 説明しよう! 激おこどころの騒ぎではない血塗れの黒ウサギが、ハリセンで俺を叩こうとしたので十六夜を引き寄せて身代わりにしたのだ。む、十六夜ともあろうものが気絶してしまった。

 

 やわな鍛え方してるからそうなる。倒れてきた防御(十六夜)を抱きとめて、ちらりと金髪の横から頭を覗かせてみると、そこにはなんと化け物が。

 

 見たことあるぞ…あれはウサビッチに出てきたキレネンコが怒った時のスーパーキレネンコ状態だ。黒ウサギの綺麗な顔が怪物のように変化している。見ろ、周りの奴らが恐れに恐れているぞ。

 

 ふむ…つまり黒ウサギがガチギレしたのはこれが初めてか。スーパー黒ウサギ状態と言ったところだろう。いや、“スーパーキレ黒ウサギ”状態か。

 

「GRUaッ!!」

「危ねッ、落ち着け黒u…スーパーキレ黒ウサギ。何をそんなに怒っているんだ、ほら、言ってみるがいい」

 

 凄まじい勢いで振られるハリセンを全て十六夜で防ぎながら効く。十六夜にハリセンが当たるたびに顔が腫れ上がっていっているような気がするが、まあよかろう。黒ウサギのせいだと言うことにすれば。

 

「突っ込んできたッ、血塗れの肉達磨にッ、押しつぶされてッ!」

「む……」

「漸く出れたとッ、思ったらッ、新しい死体にサラ様共々潰されたのでございますよッッ!!」

「あ~……」

「全部零さんがこっちに捨てたやつのせいですからねッ!!」

「なんか……すまん…」

 

 ボコボコの十六夜を捨てて暴れるスーパーキレ黒ウサギを抱きしめて動けないようにしたら、胸を思いっきり叩きながらそう叫んできた。

 

 うん、まあ…俺のせいだな。二割は十六夜、三割は巨人、一割は働かなかったあいつらのせいだが、残りの四割は俺のせいだからなぁ…謝っておこう。

 

 言い切った黒ウサギは少し落ち着いたのか、スーパーキレ黒ウサギ状態から、普段のおこ状態の黒ウサギに戻ってきて、顔が元に戻った。吃驚した…これで顔が戻らなかったらどうしようかと思った。

 

 もう大丈夫だろうと思った俺は黒ウサギを離した瞬間、いつもの様にハリセンで頭を叩かれた。いつも敢えて避けないから今回も甘んじて受け入れよう。

 

 スパンッといい音共に俺の頭に軽い衝撃が走る。それにちょっとはスッキリしたのか、ため息を吐いている黒ウサギに苦笑しながら全身の汚れを消してやった。

 

「もう…やっとスッキリしましたよ」

「悪いな。潰されるとは思っていなかった」

「もういいです。零さんと十六夜さんの暴れたおかげで敵は居なくなったんですし」

 

 そう言いながらも黒ウサギは十六夜を見ても助け起こそうとしない。こいつは十六夜のせいでもあると思っているのだろう。事実そうであるのだから俺も何も言わんがな。

 

 そして背後から恐る恐るという風に飛鳥がやってきて、ビクビクしながらも黒ウサギを俺の影から見る。あれは別人だったからな、もう。

 

「く、黒ウサギ…元に戻ったかしら?」

「え? あ、もちろんデス! もうスッキリしましたから」

「そ、そう…」

「いつも通りだから心配せずともいい。それに、お前に怒っているわけではないからな」

 

 そう言いながら頭を撫でてやると、安心したかのようにほっと息を吐いて目を細めながら大人しくしている。

 あの黒ウサギはもう色々放っていたからな。闘気やら殺気やら覇気やら。ビビっても仕方ないさ。

 

 頭を撫でるのをやめて、俺の後ろから前に出すように腰に手を当てて押してやり、黒ウサギにポイする。俺は十六夜を回収しなければ。

 

「わきゃっ!? あ、飛鳥さん、何するんですか!?」

「む…本当に大きいわね…」

 

 戯れ合うのもいいけど、場所を考えろよー、と声をかけながらも十六夜を回収して叩き起こす。ギャグ漫画のように膨れ上がった頬が俺の能力によって消え去った。ただ、痛みだけはそのままにしておいた。其のほうが面白いだろう?

 

「ほら、起きろ十六夜」

「ぅ……ん…なぁ、顔中が痛いんだが……」

「黒ウサギ、ハリセン、激おこ以上」

「おk、把握」

 

 顔を擦りながらも俺の腕の中から起き上がって身体を伸ばしていた。そしてそのまま黒ウサギの元へ。

 

「おい黒ウサギ、春日部のやつはどうした?」

「あ! そういえばレティシア様も!」

「レティシアは攫われたじゃないの。まずは春日部さんを探しましょう」

「YES! 零さんもお願いします」

「了解した」

 

 それから皆で分担して探しまわった。しかし、どれだけ探してもいないことから不思議に思ったので気配索敵範囲を意図して広げてみると、まさかの上空に居るという始末。

 

 しかも複数人居ることからそこから迂闊に動けないだろうな。ギフト“異動”でメモ付きの食料や飲料水を収納の腕輪から出して送っておいた。体力が回復して元気になるようなのを大量に送っておいたから大丈夫じゃないか?

 

 メモには無茶をしないようにと書いておいた。俺からのメモだからいうことは聞くだろう。俺達が行く? その選択肢は消去されました。耀の成長のためにも。

 

「………駄目だな。これだけ探して見つからないとなると、春日部もなにか厄介事に巻き込まれたのかもしれない」

「で、でも、春日部さんは空を飛べるから大丈夫じゃない?」

「逆だぜ、お嬢様。空を飛べるし五感も鋭いというのにいないということは、同しようもないということだ。零、何かわかったか?」

「ん? ああ、まあな。どうも上空に多数の気配があるから、集団で固まっていると思うぞ? 一応、長期戦に備えさせるように食料とかだけ送っておいた」

「あ、相変わらず規格外の気配察知能力だな。箱庭の端に居ても見つけられるんじゃね?」

「やろうと思えば余裕だが?」

「マジかよ…」

 

 煙管を吸いながらも、少し安堵した飛鳥の頭をポンポンと撫でながらも十六夜に答えていく。

 そしてゲームのことについて話していると、黒ウサギとジンとペストが帰ってきた。そういえばペストとジンを忘れていたな。黒ウサギと合流したのか。

 

「零さん! 十六夜さん! 飛鳥さん! 耀さんの行方がわかりました!」

「あ、黒ウサギ、それはもうわかってるから。零さんのお茶でもどう?」

「零さんのですか!? 絶対に頂きます!」

 

 ジンが背後で「あれ? この緊急時にまったり……まあ、零さんだからいいか」なんて納得していたが、それでいいのか我らがリーダー。ノーネーム一同は既に俺に毒されていた件について。

 

 そんなジンも俺が先ほど出していた机と椅子に席付き、黒ウサギも俺が渡した紅茶を笑顔で飲んでいる。十六夜は俺の作ったマカロンを一心不乱に食べているぞ。口に入れてサクッと噛んだ瞬間に口全体に溶けて甘い風味が広がる。

 

 これも中々の出来だ。量は増やせばいいから困らんしな。

 

「マスター、お疲れ様。大丈夫だったかしら?」

「ふっ、誰に聞いてるんだ? お前の主人はそんなに弱く見えるか?」

「…愚問だったわね。私のマスターだものね」

「その通りだ。おいで」

 

 そんなやりとりをしながらペストを呼び、来た所で膝の上に座らせて首の横から腕を出して軽く抱きしめる。聞くところによると、ペストも巨人を殺していたようなのでそのことについても褒めてやり、頭を撫でてやる。

 

 嬉しそうにするペストにマカロンを一つ、口元に差し出してやると少し赤くなりながらパクリと食べた。

 

「どうだ?」

「お、美味しいわよ…?///」

「なら良かった」

 

 ペストの分の紅茶も出してやり、それから頭に顎をおいてグダる。時々、雛鳥が親鳥に餌をねだるかのようにする飛鳥にマカロンを腕を伸ばして食べさせながら。

 

 飛鳥に指先を軽く舐められる感触を感じて、軽くデコピンしながら耀のことを思い出す。黒ウサギが言うに子供を助けようとして城に向かったとのことだが、何をしていることやら。

 

 ま、いつかにプレゼントした御守も含めたイヤリングがある限り死ぬことはないだろうから大丈夫だろう。

 

 それに、“龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)”連盟の庸人も行方不明になったとウサ耳に挟んだとのことだから、救助隊も出るだろう。どこまで当てになるのかは知らんがね。

 

 さて、もう少しで始まるだろう話し合いまでのんびりしていようか。

 

 




それじゃあ語りますか…最悪の出来事をね!

……と言うのは冗談で、いつまでもこの話を残しておくのは恥ずかしすぎるので消しました。気になる方は感想欄見れば多分、少しは把握できるかな?

それと、感想で頂いたアイデアは色々面白かったです!感謝感激デス!





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