俺の扱いがすごいです。   作:朧月朱狐

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出会ったのは…(上)

あの後結局ジョーイさんに見つかり、連れ戻された。

クサカはそのまま病室に戻り、俺は部屋に戻った。

ただ俺がいなくなったことに気付いたソウビにこってりしぼられたけど。

今回はがっちりソウビに服を掴まれながら再び横になった。

 

 

 

日が昇り始めた頃、俺は目が覚めた。

いつもならまだ眠っている時間だが、また寝ようにも変に目が覚めてしまい、寝るに寝れない。

ちょっと走ろうかなと思い、服を掴んでいるソウビの指をゆっくりと離す。

起こさないようにベッドから抜け出し、足の状態を確認したけどしっかり立てるし歩ける。

これならいけるかなと思い、そっと部屋から抜け出した。

外に出ると早朝特有の少し冷たい風と、登り切っていない太陽の光。

葉っぱなどを見ると朝露ができている。

 

「やっぱり早朝ランニングは気持ちがいいな」

 

シンオウにいた頃も早朝は走っていたが、こっち来てからはあまり走っていなかった。

周りを警戒しながら、いつもより遅めの速さで走る。

タッタッとリズムよく走りながら日が昇るのを感じていく。

久しぶりに早朝に走ったせいか気付いたらポケモンセンターより少し遠くに来ていた。

これ以上はと思い、引き返そうとしたら小さな川を見つけた。

走っていて喉が渇いたから丁度いいと思い、川に近づき手で水を掬い口に持ってくる。

飲んでみると冷えていておいしかった。

 

日が始め見たときより昇っていてもうそろそろ野生のポケモンたちも動き出すだろう。

それでもちょっとだけと思い、靴下と靴を脱ぎ、足を川の中に入れる。

ヒンヤリとしていて気持ちがいい。

 

「ほぅ」

 

一息つくとこれまでのことを振り返る。

マサラタウンを出て今日で約六日、一昨日はニビジムでジム戦を行い

昨日は初めてになるのか、初めての野生ポケモン、クサカのゲット。

ソウビはあれだし、コウキもあれだ、何だか俺の仲間は訳ありが多いなぁ。

でも仲間だし、家族だし、別にいいか。

何か言ってくる奴がいたらぶちのめすだけだし。

さてと、もうそろそろ危ないし帰るか。

と思ったのはいいけど、少し遅かったかも……

 

「…あ~遅かった」

 

周りには何故か五体のスピアーが囲んでいる。

この事がソウビたちに知られたら……考えたくないなぁ。

 

「さてと、どうやって逃げるかなぁ」

 

ソウビもコウキもクサカもポケモンセンター。

助けを呼ぼうにも少し遠くに来てしまったし、逆に他のポケモンが来そうでやれない。

走ろうにも今は裸足だし、朝から不運だわ。

 

「大人しく返してくれる…訳ないか」

 

スピアーたちがさっきから忙しなく羽を動かして威嚇してくる。

少しでも動けばヤラレル。

 

 

【ちょっとそこの坊やっ!! 伏せなさい!!】

 

 

「うぇ!?」

 

いきなり声が聞こえ、反射的に体を伏せる。

反射的に伏せてしまい、何が起こったのか把握できない。

少し顔を上げてみると、スピアーたちに水鉄砲が当たっていた。

だが俺の前に居た二匹しか当たっていない。

後ろを振り返ってみると色違いの“ゼニガメ”がいた。

あぁだから声が聞こえたのか。

っていうかこれ、言葉がわかんなかったらスピアーじゃなくて俺に当たってない?

それ以前に昨日と続いて色違いに会うなんて、爺さんの特典の力がばっちり働いている証拠だよなこれ。

なんて考えていたらあのゼニガメ、スピアーに突っ込んでいった。

えぇっと確か相手は虫と毒タイプ、ゼニガメは水タイプでダメージはお互い通常ダメージの筈なんだけど、いや、あの、えっ?

 

「えぇぇ……」

 

何とゼニガメがアクアテールで五タテしました。

いやその内の二体は水鉄砲で先にダメージは受けていたけど、それでも一発K.O.って

しかもアクアテールってレベルが確かえっと28だっけ? それぐらいしないと覚えられない技じゃなかったっけ? そうなるとあのゼニガメどんだけレベル高いんだよ!?

野生だよな!? 元トレーナーの手持ちだったら納得いくけど!?

ちなみにこの近くに人間がいないのは把握済み。

ゼニガメが出てきたときに、近くにトレーナーでもいるのかと、波動を使って探してみたけど、俺以外の人間の波動がなかった為、このゼニガメが野生だとわかった訳だけど。

 

「それでもすげぇ……」

 

ポカーンと眺めていると、ゼニガメが近づいてきて怒った顔で

 

【危ないとこだったわね、いくら早朝だからってポケモンなしで森に入るなんて

あんた死にたいの!?】

 

「いや、普通死にたくないよ? ただ今日は油断してのんびりし過ぎた俺のせいだし」

 

【のんびりってそれでも…ってあなた私の言葉がわかるの!?】

 

「えっわかるけど」

 

このやり取りコウキと初めて会った時以来だなぁ。

ソウビもこんな感じだったし、クサカは…何かナチュラルに流していたし。

あれ? もしかしてクサカって天然?

 

【分かるのなら話は早いわ、ここはスピアーたちが毎朝水を汲みに来るところなの。

人間たちは、あまりこんな早朝にこの場所に、来ることがないから知らないのよ。

それよりあなたは他のポケモンは? トレーナーなら手持ちのポケモンがいるでしょう?】

 

ここはスピアーたちの縄張りみたいなものだったのかぁ。

まぁゼニガメならトレーナーは御三家の一体を選ぶことは知って…いるよな?

この子色違いだから、研究所で最初の御三家にはならないと思うし、

そもそもこの子、生まれた頃から野生なのだろうか、御三家の三体は野生ではまず

滅多に会えない、それこそ、トレーナーに捨てられるぐらいじゃないと。

………自分で考えておいて嫌になった。

 

「仲間はこの近くのポケモンセンターにいるよ、俺はちょっとランニングするために

出てきたから一人なんだ」

 

起こすのも忍びないし、クサカとコウキはまだジョーイさんの元だし、ソウビは起きてるかな。

 

【そう、なら送るわ。また襲われたりしたら嫌だもの】

 

「それは助かる」

 

実際に大いに助かります。

この騒ぎで他のポケモンたちが起きて、攻撃されてきても嫌だし。

 

「ちょっと失礼」

 

【ん? きゃっ!?】

 

前にいたゼニガメを持ち上げ抱え歩き出す。

 

【ちょっといきなりどうしたのよ!?】

 

「いや、こうやった方がいいかなぁと思って」

 

少しおもゲフンっ、甲羅が体に当たるような背後から抱え込んだ抱え方をした。

これ何て抱え方なんだろ。

羽交い絞めに似てるけど、あれって脇の下から手を入れて、手を上にあげて持ち上げたりする拘束術だし、違うか。

走ると揺れるから、早足でポケモンセンターに向かう。

 

ソウビ絶対起きてるだろうなぁ…。

 

 

 

 




前回の更新より一年遅れですみません、リアルでいろいろとありまして、書き上げるのに時間が
かかりました。

文字数は大丈夫なのですが、上下編に分けてみました。
…理由はどんな結末で経緯で仲間になるかが纏まってないからです。

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