黒子のバスケ ifストーリー 「もし、黒子が桃井の事を好きだったら」   作:和泉春

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二十一話です。

黒子の話から終わらせようと頑張っています。

よろしくお願いします!



少しだけ、

中2の冬が、始まろうとしている。

 

僕は昨日青峰くんに宣言した通り、桃井さんに告白した。

 

 

 

「急に呼び出してしまって、すみません。」

 

「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」

 

いつもの、優しい笑顔。

 

人気の少ない一軍体育館裏の少し開けた木の下に、

僕は桃井さんといた。

 

少しの沈黙。

聞こえてくるのは、校庭で活動する野球部とサッカー部の声。

今日は体育館の修理があるらしく、

バスケ部一軍は二軍の体育館にスペースをかりている。

 

僕は赤司くんに長めの休憩時間をもらって、

桃井さんを連れ出した。

 

すると赤司くんは、

ついでに一軍体育館の様子を見てきてくれと、それは少し悪戯に微笑んで。

 

 

「あの…桃井さん。」

 

 

心臓が痛い。

 

自分の気持ちを伝えるということは、こんなにも、

緊張して、熱くて。

こんなにも、恐ろしいことなのか。

 

 

「うん…テツくん。」

 

 

その笑顔に、僕は何度も救われてきた。

言わなくていい、と。

分かっているよ、と。

そう言ってくれているようなその笑顔に、

僕は、何度も言葉を飲み込んできた。

 

そうやって、なんでも察してくれようとするから、

僕は君の優しさに甘えてきてしまっていた。

 

嗚呼、なんて、なんて素敵なんだ。

 

こんなにも自分が彼女を好きだったのかと、

今になって気がついた。

 

好きだ。好きだ。好きだ。

 

嗚呼こんなにも、君が好きで好きで、たまらない。

 

そのセミロングの髪も、触れるとこんなに暖かい。

 

驚いたように見開く目が、僕を映す。

 

愛しくて愛しくて、泣いてしまいそうだ。

 

今だけ、今だけでいい。

 

ほんのこのひと時だけ。

 

君に触れることを、どうか…許してほしい。

 

 

溢れてくる感情が止められなくて、

気がついたら僕は彼女を抱きしめていた。

 

「テ、テツくん!?」

 

「すみません桃井さん…少しだけ、今だけこうさせてください。」

 

「………。」

 

困っていることは、何となく分かっていた。

 

けれど、本当に今だけ。

 

君を想わせていてほしい。

 

この手を離した瞬間、君への気持ちを打ち砕くことを約束するから。

 

 

「…!」

 

 

桃井さんの手が、僕を背を慰めるようにさすった。

 

それはまるで、今にも泣きそうな子供をあやすように。

 

僕は自分を情けなく思うと同時に、嬉しくなってしまった。

 

きっと、彼女は僕の気持ちを否定しない。

 

気のせいだとも、思い違いだとも、

勘違いだとも言わないだろう。

 

きっと、ただ、僕の気持ちを受け入れてくれる。

 

返すこともなく、拒否することもなく、

受け入れて、それは宝物のように大事にしてくれるのだろう。

 

そういう人なんだ。

 

この人は。

 

そういう人だから、好きになったんだ。

 

 

僕は桃井さんから手を離し、彼女から一歩遠ざかった。

 

 

「全く…かないませんね、桃井さんには。」

 

 

そう僕が微笑むと、桃井さんもまた、優しく微笑んだ。

 

 

 

「桃井さん…僕は、桃井さんのことが好きです。」

 




やっと告白した…。

しましたよ…!

黒子くんの恋の描写って
きっと少し文学的なんじゃないかと勝手に思っています(笑)

気長に楽しんでもらえると嬉しいです。

次話もおたのしみに!

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