黒子のバスケ ifストーリー 「もし、黒子が桃井の事を好きだったら」 作:和泉春
黒子の話から終わらせようと頑張っています。
よろしくお願いします!
中2の冬が、始まろうとしている。
僕は昨日青峰くんに宣言した通り、桃井さんに告白した。
「急に呼び出してしまって、すみません。」
「ううん、大丈夫だよ。どうしたの?」
いつもの、優しい笑顔。
人気の少ない一軍体育館裏の少し開けた木の下に、
僕は桃井さんといた。
少しの沈黙。
聞こえてくるのは、校庭で活動する野球部とサッカー部の声。
今日は体育館の修理があるらしく、
バスケ部一軍は二軍の体育館にスペースをかりている。
僕は赤司くんに長めの休憩時間をもらって、
桃井さんを連れ出した。
すると赤司くんは、
ついでに一軍体育館の様子を見てきてくれと、それは少し悪戯に微笑んで。
「あの…桃井さん。」
心臓が痛い。
自分の気持ちを伝えるということは、こんなにも、
緊張して、熱くて。
こんなにも、恐ろしいことなのか。
「うん…テツくん。」
その笑顔に、僕は何度も救われてきた。
言わなくていい、と。
分かっているよ、と。
そう言ってくれているようなその笑顔に、
僕は、何度も言葉を飲み込んできた。
そうやって、なんでも察してくれようとするから、
僕は君の優しさに甘えてきてしまっていた。
嗚呼、なんて、なんて素敵なんだ。
こんなにも自分が彼女を好きだったのかと、
今になって気がついた。
好きだ。好きだ。好きだ。
嗚呼こんなにも、君が好きで好きで、たまらない。
そのセミロングの髪も、触れるとこんなに暖かい。
驚いたように見開く目が、僕を映す。
愛しくて愛しくて、泣いてしまいそうだ。
今だけ、今だけでいい。
ほんのこのひと時だけ。
君に触れることを、どうか…許してほしい。
溢れてくる感情が止められなくて、
気がついたら僕は彼女を抱きしめていた。
「テ、テツくん!?」
「すみません桃井さん…少しだけ、今だけこうさせてください。」
「………。」
困っていることは、何となく分かっていた。
けれど、本当に今だけ。
君を想わせていてほしい。
この手を離した瞬間、君への気持ちを打ち砕くことを約束するから。
「…!」
桃井さんの手が、僕を背を慰めるようにさすった。
それはまるで、今にも泣きそうな子供をあやすように。
僕は自分を情けなく思うと同時に、嬉しくなってしまった。
きっと、彼女は僕の気持ちを否定しない。
気のせいだとも、思い違いだとも、
勘違いだとも言わないだろう。
きっと、ただ、僕の気持ちを受け入れてくれる。
返すこともなく、拒否することもなく、
受け入れて、それは宝物のように大事にしてくれるのだろう。
そういう人なんだ。
この人は。
そういう人だから、好きになったんだ。
僕は桃井さんから手を離し、彼女から一歩遠ざかった。
「全く…かないませんね、桃井さんには。」
そう僕が微笑むと、桃井さんもまた、優しく微笑んだ。
「桃井さん…僕は、桃井さんのことが好きです。」
やっと告白した…。
しましたよ…!
黒子くんの恋の描写って
きっと少し文学的なんじゃないかと勝手に思っています(笑)
気長に楽しんでもらえると嬉しいです。
次話もおたのしみに!