寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第45話 祝福

 閃光迸る爆発の第一陣で要塞の急所を爆破し亀裂を生じさせ、続く第二陣の爆発で内部に凝縮した圧力が噴火の如く要塞の岩石を砕き一気に噴出した。

 ギレンの芸術的爆破でN、Sフィールドには無数の岩石が撃ち出され群がっていたティターンズ艦隊に襲い掛かるが、撤退中のジオン艦隊がいるWフィールドにはほとんど岩石は打ち出されなかった。

 これによりティターンズ艦隊の半数が撃沈するのであった。

 

「おのれギレン、まさか要塞ごと爆破するとは。

 動ける部隊は我が艦を中心に集結をしろ」

 何となく流れでティターンズ艦隊の提督になっていたティアンム。後方で指揮を執っておかげで前方にいたサラミスが盾になる形で乗艦するマゼランは無事だった。

「再集結が済み次第、ジオン艦隊に追撃戦を行う」

 ティアンムは状況を見てティターンズ艦隊が半数も残っていると踏み、半数もあれば逃げるジオンを踏み付けられると嗜虐心を滾らせた。

 これは自爆に引っ掛かった怒りもあるが、半数に減った以上ここでジオンを逃がすと今後が危ういとの冷静な計算もあった。

「それと、シロッコの小僧はどうなった?」

 ティアンムにしてみれば幾ら連邦秘蔵の天才とはいえまだ十代の自分の子供くらいの男に偉そうに言われるのは腹に据えかねていた。ただシロッコの天才が生み出すテクノロジーが必要だから我慢していただけのこと。

 だが勝負がほぼ付いた今なら・・・。

「分かりません。Sフィールドでガンダムと交戦していたところまでは分かっていますが爆発後は不明、現在確認中です」

「ふんっ死んだかあの小僧」

 鬱積していた分だけ溜飲が下がりティアンムの顔は晴れ晴れとしていた。

「てっ提督」

「どうした」

「砕かれた要塞の中央から何か巨大なものが浮上してきます」

「なんだと! 直ぐに近くにいる部隊に偵察に行かせろ」

 流石名提督素早い決断で近くにいたサラミスとジム三機を偵察に向かわせるのであった。

 

 少し前。

「うぅうぅ、凄い揺れだったな。

 セイラにセシリアは無事か?」

 日本人でも滅多に経験しない震度6クラス以上の揺れはあった。シートベルトをしてなかったら四方の壁に打ち付けられシェイクになるところだった。

「はい、なんとか」

「私も大丈夫です」

 二人とも特に外傷は無いようで強烈な揺れで軽い目眩がしている程度のようだ。

「そうか、今確認したのだがティターンズ艦隊の半数を沈められた」

 宇宙要塞一つと敵の半分、安いのか高いのか。分かっているのはこれでジオンは最後の防衛線を失い、次は本土決戦しかない。

 問題は敵がしかも、どちらと思ったかだ。

 このまま大人しく地球に帰ってくれればいいんだが。

 

「ギレン様、ティターンズ艦隊戦闘隊形で再集結を計っています。逃げるジオンの追撃戦を行う可能性大です」

 セシリアが状況分析を続けるヤマトからのデータを生き残ったレーザーアンテナで受信して報告してきた。

 まだやる気か。

「ならば作戦はプランBを実行する」

「「はい」」

「各部チェック開始」

「動力炉OKです」

「モニターに異常なし」

「システムオールグリーンです」

「よし、ネオビグザム発進する」

 そうここは試作ビグザムをパワーアップしたネオビグザムのコクピットだったのだ。

 試作ビグザムと言っていたが正確にはビグザムの未完成品であり、メガ粒子砲のテストが上手くいけば、これに足とIフィールド発生装置を付ければ本編ビグザムになる(こんな大量に資材を使う機体を試作が終わってぽい出来るわけが無い)。つまり物理的に分厚い装甲は健在だった。

 これに目を付けた。自爆して差し違える気などさらさら無い俺は、これをシェルター代わりにして要塞内のW側に引き籠もり司令所とケーブルを引いてデータを貰い指揮を執っていたのである。

 計算ではネオビグザムには影響が及ばないはずだったが、流石に全てが計算通りとは行かず此方にも爆破の影響で激しい揺れに襲われ瓦礫に埋もれてしまった。下手にケチってザクレロにでも引き籠もっていたら潰れているところだった。

 だが、流石ネオビグザム何ともないぜ。

 

 瓦礫を押しのけ浮上していくネオビグザム。

「ギレン様、前方にジム3、サラミス1」

「セイラ任せた」

「はい」

 セイラが何やら操作をするとネオビクザムに先行してデブリを掻き分け二連装メガ粒子砲が飛び出した。

「あれは何だ?」

 ジムのパイロットはそれが何であるか理解する前に閃光に消えた。

 今のは試作ビグザムの無い足の代わりに付けたブラウブロに装備する予定だった有線制御式メガ粒子砲塔による攻撃である。

 Iフィールド発生器がないので出力は余っているからと突貫工事で取り付けたのだ。有線の巻き戻しは出来ないので絡まりやすいが対空砲の足の代わりになる。

「新装備は良好のようだな」

「はい、なんとか」

 セイラが答える。折角のニュータイプのセイラだが、この砲塔はブラウブロのようにサイコミュによる操作で無く有線による完全手動コントロール、インコムである。よって見えない敵には攻撃できない。

 だが今はそれで十分ハッタリが効く。

 

 有線制御式メガ粒子砲塔により近場の掃討が終わり、ついにネオビグザムが要塞の残骸から飛び出し、その全容を晒した。

「ふっふ、怖いか。恐れおののけ」

 ティターンズ艦隊が全容を表した巨大MAの姿に恐慌に陥っている内にやるべき事を済ませる。

「セシリア頼む」

「はい」

 セイラが有線制御式メガ粒子砲塔で敵に牽制を行いつつ、セシリアの今まで鍛えたカメラワークによって偉そうで偉大なギレンの姿がネオビグザムの上に方にホログラムで映し出され、ヤマトを通じて全宇宙に配信される。

 さあ、最後の大演説の始まりだ。

 

「我が愛するジオンの兵士諸君。

 君達は劣勢の状況下良くやってくれた。

 君達一人一人の奮戦は決して無駄では無い。

 君達の戦い一つ一つが明日のジオン、希望へと繋がったのだ。

 今その希望を見せよう」

 ギレンの頭上にまばゆく輝くラプラスの箱の中身が映し出されたのだ。

「見よ。これが真の宇宙世紀憲章である」

 もちろん偽物である。

 最後のガノタの知識を駆使して作り上げたレプリカ。

「心に刻むのだ。

 この条文を。

 この祝福を」

 内容は正真正銘の本物。

 これが偽物であることを知るものは本物を知るものであり、本物を知るものは条文が本物であることを知る。

 何も知らない民衆は、本物の条文を読み情勢に流されながらも真偽を判断する。

 今この時、ラプラスの箱は開けられ希望は飛び出したのだ。

 後は条文の持つ力が世界を動かしていくだろう。

 

 仮に本物のラプラスを手に入れ公表したとしても連邦首脳は偽物で自分達が持つラプラスこそ本物であると言うだろう。

 結局は水掛け論。

 憲章が刻まれた石碑が本物かどうかは重要じゃ無い

 その本当の条文が公開されるかどうかが重要なのであると気付いたからこその奇策である。連邦も必死になってその条文を死守し、サイクロプス隊やシーマ海兵隊を退けたが、中身を知っている俺が現れた時点で全ては無駄ごとだったのだ。

 

「本来ならば宇宙世紀は祝福と共に始まるはずだった。だがエゴに駆られた一部のアースノイドにより、宇宙世紀憲章はラプラスと成り宇宙世紀を呪う呪物となった。

 だが今ギレンが宇宙を蔓延る全ての呪いを浄化する。

 エゴからの解放。

 スペースノイドに祝福あれ」

 ここで放送は終わった。

 後は放送を聞いたものが自分なりに咀嚼し行動していくだろう。

 俺の仕事は終わった。 

「セイラ、セシリア。

 行くぞ。男ギレンの花道を手伝ってくれ」

「はい」

「もちろんです」

「よし、セイラは有線制御式メガ粒子砲塔のコントロールに専念。

 セシリアは状況分析。

 メインパイロットはギレンが努める。

 宇宙に蔓延るエゴを一掃する」

 

 ヤマトで中継された記録によれば、ここからはネオビグザムは混乱するティターンズ艦隊が立ち直る前に猛攻を仕掛け更にその半数を撃沈したとある。

 だが最後にはその巨体が仇となり立ち直った艦隊の艦砲射撃で次々と被弾していく。

「うおおおおおおおおおお、まだまだティアンムせめてお前だけは・・・。

 スペースノイドに祝福あれ」

「やっやめろーーーーーー俺が何をした」

 ギレンが叫び、ネオビグザムは最後ティアンム乗艦に特攻をし宇宙世紀憲章と光に包まれた。

 この光こそ希望の輝き、この輝きを持ってティターンズ艦隊は事実上の壊滅。宇宙が地球連邦の圧力、いやエゴから解放された瞬間であった。

 この輝きに導かれ、スペースノイドは新たなる道を模索する。


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