寝オチしたらギレンになっていたが 何か?   作:コトナガレ ガク

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第16話 ステルス

「我がジオンが誇るエース達よ。良く来てくれた」

 俺の前にはジオンの誇るエース、ジョニーライデン、シン・マツナガ、ランバ・ラル、シャア、ヴィッシュと揃い踏みである。

 彼等も総帥を前に緊張しているが、平和で日本で生きてきた俺もこんな歴戦の勇士を前にしてちびりそうである。

「光栄です。ギレン総帥。この戦況が逼迫する状況で、戦線からこれだけのメンバーを引き抜いたのです。何をやらされるのか緊張します」

 シャアの俺を見る目が怖い怖い。あれ獲物を狙う鷹の目だよ。

「はっは、シャア。君らしくもない謙遜だ。君はもっと傲慢だろ」

「ご冗談を」

 怖い怖い、今ここで抜き撃ちされそうで怖い。

 この人まじで怖いよ。ガルマなんで此奴の友人なんてやってられたんだ、聖人か。

「まあ、冗談はここまでにしよう。

 君達には戦局を左右する極秘作戦を行って貰いたい。

 まずはこれを見てくれ」

 俺はこのメンバーが集められた格納庫にある黒光りするニートゥを指し示す。

「見たところ、MSより一回り大きな宇宙戦闘機のようですが、こんなもので今更どうしろとおっしゃるのですか?」

 さっきからシャア以外は黙って、その分シャアが遠慮なく来るな。

 まあ、この疑問は当然だ。MSより一回り大きかろうが宇宙戦闘機ではMSに歯が立たない。

「これは最新鋭可変分離MS「ニートゥ」。

 可変分離機構を有し目的までは宇宙戦闘機の形態で進み、作戦宙域到達次第外装をパージしてMSに可変し戦闘を行う」

 まあ言ってしまえばリ・ガジィです。中からガンダムもどきでなくザクRF改が出てくる違いはありますが。

「なるほど長距離からの奇襲が可能となるわけですか」

「それだけではない。

 ニートゥにはこの時代には珍しいステルス機能があり、ミノフスキー粒子を播かなくてもレーダーに感知されにくくなっているのである。

 なので予め言っておく、ステルス機能の為、外装は黒一色、変更無しだ」

「黒」

「黒ですか」

「黒なのか」

「黒かよ」

 ここで初めて歴戦の雄志達に戸惑いが走った。君達そんなにパーソナルカラーに拘っているの?

 しかし機能上必要なんだからしょうがないだろ。ミノフスキーを遣えばレーダーに感知されないが、逆に敵が接近することを教えることになる。つまり本当の意味での奇襲は出来ない。

 だが、これなら人知れず忍び寄れる。

「更にはニートゥには簡易居住区が設置され、最長一週間の滞在が可能になっている」

 三畳の自室。ネット接続は出来ないが、ここでは最新ゲームから漫画までとても一週間では見切れないほど揃えてある。ゲームがいやならプラモも補充しよう。

 俺なら余裕で引きこもれる。

「そんなものをわざわざ開発するということは、何処に奇襲を掛けさせられるのか答えを聞くのが怖いですね」

「ルナツーだ。

 君達には月のマスドライバーより発進し、楕円軌道を描いてルナツーを裏側から奇襲して貰う」

「この人数でですか?」

「そうだ。

 ニートゥには極めて強力な爆弾が搭載されている。それをルナツーの重要拠点に設置して爆破して欲しい」

「極めて強力ですか」

 シャアが意味ありげに呟くが、核じゃないよ。核は最後の切り札。今のところ此方で使用してない為か、連邦も使ってこないでいる。南極条約を結んだ訳ではないが、暗黙の内に核は互いにタブーになってきている。それを此方から破って悪役になっては、折角のイメージ戦略が台無しだ。

 綺麗なギレン。このイメージを崩すわけにはいかない、政治家はアイドル以上の人気商売なのだよ。

「それと当然だが作戦行動中は一切の外部との交信を禁じられる。この作戦にはMS操縦能力だけでなく、長期の孤独に耐える精神力も必要とされる」

 ここ重要。一人でいることを苦とも思わない精神が必要とされる。そこいらにいるニートなら余裕だと思うだろうが、彼等は意外とネットを使って外部と接触している。今回はそういうの一切無し、本当に孤独に追い込まれる。仏教の悟りを開く修行に近い。

「勿論君達だけを危険に晒しはしない。

 軌道修正の噴射は既に計算され全てオートで行われ、そのタイミングで我々も陽動をルナツーに仕掛ける」

 これで万が一に噴射を観測される危険を減らす。

 そして今のジオンの残存兵力ではルナツーに陽動を仕掛けるのも中々命懸け。

「バックアップは完全ということですか」

「当然だ。我々は君達の奇襲が成功するものとしてタイミングを合わせてルナツーに総攻撃を掛ける。君達が失敗すれば我々も全滅、一蓮托生というわけだ」

「心が躍りますな」

「では君達に問おう。

 この作戦受けるかね?」


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