問題児が召喚されたようですよ?   作:神ジーク

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オリキャラの晴れ舞台です!これで少しは十六夜が退屈しないで済むと思います。


第六話 本当の戦いはこれからのようですよ?

「聞こえねーのか?だったらこっちから行ってやるぜ」

 

十六夜は勢いよく地面を蹴る。

周囲が気づいた時には十六夜はすでに一本の木の前にいた。

彼は拳を握り、目の前の木ごとその先を殴った。

あまりの威力に木は木端微塵になり、地面にはクレーターができている。

だが、十六夜の拳が木に届く前に木の陰から何か飛び出していた。

それに気づいたのは十六夜のみである。

十六夜は飛び出してきた者の方を向いて、

 

「よお、覗き魔。ここ最近ずっと見てただろ?」

「やはり、気づかれていたか」

 

現れたのは全身黒ずくめの人間だった。

顔すら見えない。

わかるのは体格から男であると言う事だけ。

いや、もう一つ。

雰囲気が一般人や並の兵隊とは一線を画すほど、危険なものに満ちていた。

殺気と言い換えてもいい。

 

「男一人をずっとストーキングし続けるとは・・・・・・お前、まさかそっちの趣味か?悪いな。俺受け入れられねえわ」

「何の話をしている?」

「全く冗談が通じねえのな。・・・それで何で俺をつけていやがった?」

「貴様に話す理由はない」

「そうかよ。じゃあ、とりあえず・・・・・・」

 

十六夜は先ほどギーシュに見せたものとは比べ物にならないほど獰猛な笑みを浮かべ、

 

「ちょっと遊んでけよ、黒装束!!」

 

言うが早いか、音速を凌駕した拳が黒装束の顔面をとらえようとする。

しかし、驚くべきことに黒装束は後ろに跳んで躱した。

風圧で吹き飛び、後ろの木に衝突しそうになるも、空中で体制を整え、一回転し見事に着地した。

何という反応速度である。

というか、この一幕だけですでに人間の戦いではない。

十六夜は驚いた顔をし、次の瞬間には喜悦に顔を歪ませた。

 

「へえ、予想以上だ、黒装束!これくらいじゃくたばんねえだろうと打ち込んでみたが、まさかあそこまで完全に避けられるとは思ってなかったぜ!」

「貴様は化け物か?」

「失礼だな。これでも分類学上は人間のはずだぜ?」

「信じられんな。だが、手を抜いていられる相手でも逃げることができる相手でもないようだ」

「ああ。来いよ!」

「・・・・・・参る!」

 

黒装束は目にも映らぬ速度で走り出す。

彼の走りは音を置き去りにした。

十六夜も黒装束と同等以上の速度で走り出した。

2人が衝突した時、先制攻撃を仕掛けたのは黒装束だった。

十六夜の胸に黒い刃物・・・小剣が突き込まれる。

十六夜はそれを避け、カウンターに蹴りを放つ。

が、避けられる。

衝撃波は発生したが、黒装束はそれを利用し、風に乗った。

無論、魔法である。

黒装束はカウンターのカウンターを試みて三本の小剣を投擲するが、

 

「しゃらくせえッ!」

 

拳の風圧であらぬ方向に飛んでいく。

魔法で風の弾丸を打ち出すも、

拳で砕かれた。

魔法を砕くなどありえないはずだが、と黒装束は思考するが、すぐにやめて目の前の敵に集中する。

今度は魔法で作り出した風圧で十六夜の身を包み、圧迫する。

一方向からでも大岩を破壊する圧力だ。

常人なら一瞬で肉塊と化すだろう。

だが、

 

「効くかよ!」

 

それすらも、十六夜は砕いてしまった。

黒装束は大きく距離をとり、構えた。

十六夜は何事もなかったかのように泰然と佇んでいる。

 

(なんという出鱈目な力だ。一撃でもくらえば死あるのみか)

 

男の背筋に冷たい汗が流れる。

だが、同時に仮面の下の顔は自分でもはっきり分かるほど、狂喜に満ちている。

 

(楽しい。・・・?楽しいだと?この己が?)

 

黒装束はそれを自覚した瞬間、驚いた。

 

(己が戦闘を楽しんでいるというのか?)

 

ピクリとも動かない黒装束に十六夜はしびれを切らして語り掛ける。

 

「オイ、どうしたよ?そっちが来ないならこっちから行くぜ!」

 

さっき以上の速度で突貫する十六夜。

狙うは胸の中央。

山河を砕く一撃が黒装束に襲い掛かろうとしていた。

予想以上の速さに黒装束の反応が追いつかない。

すんでのところで身を反らして避けるが、掠り、砲弾を生身で受けたような衝撃が胸を直撃した。

耐えきれず膝をつき、血反吐を吐く。

 

「ガフッ」

 

肋骨も何本か折れただろう。

その程度で済んだのは黒装束の技量の賜物だった。

追撃するかと思われた十六夜は目を見開いて、黒装束の胸の中央を見ていた。

 

「お前、ナニモンだ?」

 

そこにあったのは十六夜が、いや地球人なら誰でも知っているものだった。

今の一撃でひしゃげているが、それは・・・・・・

 

「何でこの世界の人間が十字架の首飾りなんか持ってやがる?」

 

この世界にあるはずのない物だった。

ハルゲニアの民は始祖ブリミルを信仰している。

法で義務づけてもいる。

異教者は厳しく罰せられるほどだ。

では、この十字架は何だというのだ。

十字架はキリスト教の象徴であり、信仰心の薄い日本人でも知らない者はいないだろう。

十六夜の様に人間がサモン・サーヴァントで召喚されるのとはわけが違う。

十六夜は直感的にそう感じた。

同時に元の世界に帰る手掛かりになるとも。

帰る気なんてさらさらないが。

 

「答える義理はない」

「じゃあ、無理にでも語ってもらうとするぜ」

 

十六夜が手を伸ばし、黒装束の首を掴もうとする。

しかし、それは叶わなかった。

 

「グッ、またこれかよ!お前の仕業だったんだな!」

 

金縛りに襲われた。

ほんの少しずつしか体が動かない。

黒装束はよろめきながら立ち上がった。

 

「己の術を受けてまだ動くか。真に恐ろしい男だ。今のうちに始末させてもらう」

 

冷たい声で言い放つと、懐から小剣を取り出し、その切っ先を十六夜に向けた。

小剣の刃が十六夜の胸に突き立てられる。

だが、その小剣は黒装束の腕から地面に落された。

突如、黒装束の横の地面が爆発し、離して跳び退くしかなかった。

そして、煙が立ち込める中に人影が現れる。

 

「誰だ?」

 

黒装束は問うた。

煙の中には、

 

「不審者に名乗る名前はないわ!」

 

桃色の髪に小柄な背丈。

間違いなくルイズだった。




やっとルイズを目立たせることができました。オリキャラも結構活躍したし。

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