問題児が召喚されたようですよ?   作:神ジーク

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小説家になろう!でオリジナル作品を書き始めました!Gesamtsiegで調べれば出ると思いますのでよければそちらもどうぞ!


第二十四話 現実はいつも突然来るそうですよ?

真紅の髪に整えられた髭。真っ黒な燕尾服にシルクハットを組み合わせた容姿は、異常とまではいわないまでも普通ではない。

だというのに、周囲の通行人は誰一人として彼に意識を向けようとはしない。

ある意味、それが一番異様であった。

彼は今、数分前に偶然耳にした少年達の会話を思い出している。

それは、少年二人と少女二人の内、少年二人が王女から極秘任務を受けているという内容で、政治や戦争に興味がない彼もいくらか興味が湧いた。

 

「ふむ。介入してみるのも、面白いか」

 

呟いた声は辺りの空気を一切震わせなかった。

脳に直接響くような音。

それを知覚したところでようやく通行人たちは彼の存在を認識する。

突然の出現に唖然とする者。服装を訝しむ者。声の正体に悩む者。

その内の誰かが彼から視線を外した時、すでに彼は消えていた。

 

 * * * * * *

 

十六夜達がラ・ロシェールに着いて二日後、遅れに遅れてルイズとワルドの二人がラ・ロシェールにたどり着いた。

しかし、そこには十六夜達はいない。

シルフィードという航空手段がある以上留まる理由もなかったのだ。

だからといって、何もしないわけにもいかず桟橋まで乗船許可を貰いに向かったところ、翌日までは無理だという。

もはや、十六夜達に追いつくことは不可能に等しい。

 

「・・・・・・あの馬鹿、本気で置いてくなんて・・・」

 

愚痴を言いたくなるのも仕方がないのかもしれない。

しかし癇癪を起して喧嘩別れを引き起こしたのはルイズであるため、文句を言えるはずもない。言う相手もいない。

 

「グリフォンで浮遊島まで飛ぶのは難しいな。仕方がない。今夜はこの町で一拍しよう。いいね?ルイズ」

「・・・はい」

 

知っていたならば無理矢理にでも進んだだろう。

だが、ルイズは知りえない。

もう二度と以前の彼と会うことはできないのだと。

 

 * * * * * *

 

「ねえダーリン」

「どうした?」

「本当にルイズを置いて来てよかったの?」

 

大空を舞う竜の背中、やけに心配そうに自分に問うたキュルケに十六夜は茶化すことなく答える。

 

「さあな」

 

十六夜とて全く気にしていないわけではない。

化物扱いされることは慣れていても、親しい―――自分の認めた相手に剥き出しの感情をぶつけられることが慣れるはずもないのだ。

それを知ってか知らずかキュルケも不用意に踏み込むことはない。詳細は知らずとも彼の雰囲気でおおよそを感じ取っている。

しかし、まあ、どこにでも空気をぶち壊してくれる人間はいるもので。

 

「君達!何をしんみりしているんだい!?あれ見て見ろよ!天空に佇む大地!なんて神秘的なんだ!」

 

そのおかげで場は解れ持ち直したわけでもあるが。

 

「確かに神秘的だ。が、どうもあれ見ると連想しちまうものがある」

 

もちろん、日本が誇る宮○駿名作シリーズ『ジブ○』が一つ『天○の城ラ○ュタ』である。

○ルス!と叫んだら落ちるかもしれない。

 

「・・・右方注意」

 

抑揚の少ない声で警報。

それは正しく警報であった。

訝しんだギーシュの鼻先を風の刃が通り過ぎる。斬れた前髪が宙を舞った。

 

「うぎゃあ!」

「全員伏せろ!」

 

十六夜の怒号で慌てて伏せる。

直後、ギーシュの前髪を切ったものとは比べ物にならないほど巨大な風が吹き付けた。

制御を乱されたシルフィードが大きく揺れる。

キュルケ、タバサ、ギーシュは全身全霊をもって背中にしがみついた。そうでもしなければ確実に落ちるからだ。100メートルをも超える高さから海面にダイブすれば末路は考えるまでもないだろう。

一方十六夜は片足をつくだけで耐えている。

そして、それだけではなく、

 

「しゃらくせえ!」

 

飛んでくる風の刃を全て叩き壊していた。

刃の発生源はわからない。

ただ言えるのは、

 

(これはこの間の黒装束じゃねえ)

 

ということだ。

直感と手ごたえからくる推論だが、不思議と間違っていないように思える。

明らかに黒装束よりも威力が弱いのだ。

だが、危機に晒されているのは間違いない。

このままだと落下し、十六夜は兎も角他が死ぬ。

刃は数を重ねるごとに鋭さを増し、速度を上げている。

まるで魔法に慣れ始めているかのように。

 

「タバサ!」

「・・・何?」

「今からこのうざってえ風を一瞬消し去る!その間に竜の制御を取り戻せ!」

「・・・わかった」

 

刃を殴る勢いを止めず、それどころか加速して、音速を遥かに超えて腕を振り回す。

爆風が生易しく思えるほどの拳圧が風を全て吹き飛ばし、一時的な無風域を作り出した。

その間一秒。

その一秒の間にタバサは見事シルフィードの制御を取り戻した。

シルフィードは翼に力を振り絞り、空域を脱する。

ジェット機の如き速度は襲撃者を置き去りにし、アルビオンに大きく近づく。

岸にさえ立つことができれば自分の独壇場と、十六夜は疑わなかった。

が、それを許すほど敵も甘くはない。

今までより一際大きな刃が背後からシルフィードに迫る。

察知した十六夜が蹴り砕く。

大気が大きく揺らぐ。

そして、

 

「ジ・エンドだ少年」

 

十六夜は水面へ叩き落された。




原作問題児も第一部が佳境に入ってます!実をいうとこの作品も今回が分水嶺です!十六夜の未来は如何に!?

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