問題児が召喚されたようですよ?   作:神ジーク

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久々の更新です。張り切っていきます。


第十三話 宝物が盗まれてしまったようですよ?

デルフリンガーを買ってから一週間、十六夜はこれを調べることに夢中だった。

具体的には、また図書室で資料を読み漁り、刀身を岩にぶつけたり、一日中振ってみたりといろいろだ。

結果、わかったことは、自分がどの程度性能アップするのかといことと、相手の魔法を吸収するらしいということだけだった。

これには一応の協力をしたルイズも憮然とした表情を見せたが、十六夜はむしろ謎が深まってわくわくしていた。

ちなみに、色気たっぷりの赤髪が何度か誘惑まがいのことをしてきたがまったくの無駄骨だったことは余談である。

 

そして、今日は何をやっているかといえば、

 

「おい、御チビ様。ストレスがたまっているのはわかるが、これはどうかと思うぞ」

「わ、わざとじゃないわよ!」

 

二人してもうもうとたちこめる煙を眺めていた。

十六夜は呆れたように、しかし、口元は笑いながら。

一方、ルイズはまさにやっちまったという顔をしている。

原因は至極単純。

煙の先を見れば、一目瞭然だろう。

そこには瓦礫の山が建設されているのだから。

 

 

 * * * * * *

 

 

事の始まりは一時間前、十六夜がルイズにある提案をしたところからだった。

内容は以下のとおりである。

 

「なあ、御チビ様。デルフは魔法を吸収するんだろ?」

「そうみたいね」

「それなら、御チビ様の爆発を吸収させてみねえか?きっと面白いことになるぜ」

 

当然、最初はルイズも難色を示したが、言葉巧みに言いくるめられたのだ。

 

 

 * * * * * *

 

 

で、今に至る。

 

「大体、あんたがやるって言いだしたんじゃない!」

「ヤハハ、この場合どっちもどっちだと思うぜ」

 

実際、協力したルイズも同罪であった。

それを認めずして責任問題の追及は見苦しいだけである。

十六夜は大分煙の晴れてきた瓦礫の山を見て言う。

 

「気にすんなよ、御チビ様。見てみろ。別に本塔が壊れたわけじゃねえ。壊れたのはただの渡り廊下だ。これは不幸中の幸いって奴じゃねえのか?」

 

ルイズは眉を吊り上げて反論する。

 

「そういう問題じゃないの!校舎の一部でも破壊してしまったことが問題なんだから!」

「そうか?御チビ様がいつも教室を破壊してるのを見るのは気のせいだったんだな」

 

十六夜の言葉にルイズは口を噤む。

事実なので反論の余地もなかった。

 

それはそうと、と十六夜が煙のさらに奥を指し言う。

そこにあるべきは本塔だった。

だが、本塔はある遮蔽物に隠れて見えない。

 

「何、あれ・・・?」

 

ルイズが目を丸くしている。

 

「あれは・・・・・・」

 

十六夜の顔は笑っている。

 

「ゴーレムか?」

 

十六夜の声をかき消すように岩でできた巨体が轟音を鳴らして一歩を踏み出した。

その岩の巨人―――ゴーレムはまっすぐに十六夜とルイズを見ていた。

そして、一直線に駆け出す。

目標は目の前にいる人間2人以外ありえなかった。

 

「しかし、俺が知ってるユダヤ教の伝承に登場するモノとはまったくの別物に見える。どっちかっていうと、ドラクエなんかに出てくるモンスターに近い感じがするな。いや、動きに自然性がないから操り人形の可能性の方が高いか」

 

冷静に考察する十六夜。

流石である。

逆にルイズは大慌てだった。

 

十六夜の腕を掴み、

 

「何ブツブツ言ってんのよ!速く逃げなさい!」

「ちょっと待てよ、御チビ様。俺はいいから先に逃げてろって」

 

避難する素振りは全くなかった。

 

「あんたが強いのは知ってるわよ!でも、あんなのに勝てるわけないじゃない!」

「聞き捨てならねえな、オイ。誰が勝てねえって?」

 

そうこうしている間にゴーレムは目前まで迫っていた。

ゴーレムは全身を使って十六夜たちを押しつぶそうとする。

衝突まで残り一メートルもない。

ルイズは死を覚悟した。

 

「邪魔だ、クソッたれ!」

 

その覚悟を十六夜はいともたやすく吹き飛ばす。

十六夜の拳の一撃で粉々に砕かれたゴーレムの破片は第三宇宙速度にも匹敵する速さで飛んでいく。

目にも留まらない速さで飛来する破片はまるで隕石のごとく渡り廊下の屋根を貫通して本塔の外壁に衝突していく。

 

十六夜は結果を認識して文句を言おうとするルイズを制して言う。

 

「安心しろよ。正当防衛だ」

「過剰防衛よ!」

 

ヤハハと笑う十六夜。

怒り半分驚き半分のルイズの視線の先にあるのは、

 

衝撃に耐えられず、全壊した渡り廊下と、

余りある威力に蹂躙され半壊した本塔。

 

もはや過剰防衛どころかテロ行為である。

 

 

 * * * * * *

 

 

フーケは本塔の近くで事の結果を呆然と見ていた。

目の前であったことが信じられないという顔だ。

おそらく十六夜が元いた世界では彼の知り合いが一度は見せた顔であったことをフーケは知らない。

フーケは今更ながらに自分が雇っている男の負った傷を思い出した。

あれは異常どころではない。

正真正銘の化け物だとフーケは思い知ることになったのだ。

 

だが、この展開は彼女にとって悪い展開ではない。

むしろ好都合であった。

何にせよ壁が破壊されたのだ。

フーケは悠々と宝物庫に入り込み、目当てのものを探す。

 

(見つけた!)

 

それは全長一メートルほどの長さで見たこともない金属でできている。

鉄のプレートには『破壊の杖』とご丁寧に記されていた。

フーケは手に取ったそれの軽さに驚くが、すぐに本塔を飛び出し、姿を消した。

 

 

 * * * * * *

 

 

跳んで駆けつけた十六夜がそこで見たものは壁に刻まれた文字。

 

『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』

 




あと少し。あと少しで一巻終わります。いや、本当にスローペースですね。

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