――― シャルロット・デュノア ―――
私たち国家代表候補生、特に専用機持ちには特別任務を命じられることがある。
その任務内容は時によって要人警護だったり拠点警備だったりバラバラだけど、私が今回命じられたのはIS装備の護送任務だった。
今日の夜、IS学園の近くにある港に各国のIS企業から試作装備が学園宛に届くので、それを無事にIS学園まで護送するのが今回のミッション。
IS学園は研究機関の側面も持っているから、たまにこういう依頼が企業や国からくるんだよね。それでもここまで大量の試作装備が届くのは久しぶりみたい。
しかしだからこそ、その企業の技術の塊ともいえる試作装備を狙う人間も出てくる。
それはISの技術発展が遅れている国だったり企業だったりするけど、そんな連中から試作装備を守るのが私の役目。銃を持った警備員も荷物の護送に着いて来ているけど、もし敵がISを出してきたら私が対処しなくちゃいけない。
本来ならラウラとかセシリアとかにも応援を頼むべきだったんだけど、あいにく他の代表候補生は別の用事があって無理だった。代表候補生じゃない箒も神社の手伝いがあるとかで都合がつかなかったから、仕方がないので同じく代表候補生ではない一夏に一緒に来てもらったんだけど、これで本当によかったのかな?
私は一夏の秘書で、一夏にもしものときがあった場合の護衛の役目も兼ねている。一夏の方が強いけど。
それなのに、私の任務のために世界で唯一の男性IS操縦者を危険な目に遭うかもしれない場所に連れて来てよかったのかな? 白式・ウルフヘジンの方が強いけど。
もし一夏が怪我なんかしたら大事になっちゃうし、私個人的にも一夏を危険な目に遭わせるのは嫌だ。
「
好みじゃないけど、そろそろ好き嫌いは止めて苦手分野にもチャレンジするべきか……」
でも一番嫌なのは、もしISが襲ってきて一夏がそれを捕縛したら、一夏が新たなISコアを手に入れるのに近づくことなんだよね。
そしたら一夏のことがますます手に負えなくなっちゃう。
絶対一夏はISが襲ってくるのを期待している。舌なめずりしてテロリストを待ってるよ。
だってブログで今回の護送任務について何も言及していないんだよ。一夏が護送任務に参加するとネットで呟いたりするだけで抑止効果があるだろうに、それをしていないということは抑止する気がないということだもの。
襲われたのを撃退し返されたのなら、誰も文句をつけることが出来ないISの不法使用の現行犯となる。そうなったらそのISコア所有者は間違いなくコアを没収される。
一夏が不法使用ISコアを五個没収したら、一夏にもコアが一個まわってくることになっているけど、この護送任務への協力をノリノリで受けたのはコレが目的だろうね。
……一夏に協力をお願いしたのは間違ってたかなぁ。
というか
「いや、俺には零落白夜があったから、早急に身を守るために効果的な近接戦闘と機動技術の訓練だけをしてきただろ。
だけどそろそろ射撃訓練とかにも手を出すべきかな、と最近思い始めてきてさ。ウルフヘジンの操縦にも慣れてきたし、近接戦闘と機動技術は千冬姉さんからお墨付きを貰ったことだしな」
「そりゃ週一ペースで専用機持ち六人を同時に相手していたら操縦技術も上がるって」
「デュノア社からラファール・リヴァイヴ借りてた時は射撃訓練もしてたけど、そんなに上達しなかったんだよ。それにその頃は大抵マニュアル操縦じゃなくてオート操縦にしてたしさ。
今でもペイント弾やトリモチ弾、テイザー銃みたいな対人装備はウルフヘジンに積んであるけど、対ISの遠距離武器がないからなぁ」
「一夏の適正は明らかに近距離なんだから、今のままでも別にいいと思うけどね」
「ああ、ホラ。どうやら
それならコッソリ遠距離武器を練習しておいて、いざ事が起こったときに相手の意表を突くというのも効果的なんじゃないかと思ってな」
「あー、なるほどね」
相変わらず嫌らしい手を考えるね。
というか相変わらず嫌がらせには手間暇を惜しまないよね。シュート二万本でも練習してみる?
もちろん苦手分野にもチャレンジするってのはいいことだよ。
私たちはどうしてもルールが絶対のIS競技者としての思考になっちゃうけど、
一夏は私たち相手なら問題なく勝てるけど、そんな相手なら何が起こるかわからないもの。
一夏がなりふり構わず新たなISコアを手に入れようとしているのも、きっとテロリストから皆を守るため…………だったらいいな?
傍から見ていると一夏が趣味で手に入れようとしているようにしか見えな「ドオォォーーンッ!!」って爆発!? テロリスト来ちゃったぁっ!? ISは来ませんようにっ!
私たちは港に置かれているコンテナの上にいたけど、少し遠いところに爆発が起こったのが見えた。
警備員もそちらに集まっていったけど、その前に侵入者発見の報などがなかったことからしておそらくこれは陽動だと思う。テロリスト自身が爆発を起こして、人目を爆発に引き寄せたいんだろう。
「来たぞ!」
一夏の視線の先を見てみると、今度は大型トラックが金網フェンスを無理やり突き破って港湾敷地内に入ってきた。やっぱりこっちが本命か。
侵入してきたトラックが急ブレーキをかけて停止。どうやらトラックは側面開閉車だったようで、荷台の側板が開き始「出迎えの抱擁だぁっ! 受け止めてくれぇ!」ちょ、早い!? 仕掛けるの早いよ一夏!
止める暇もなく、一夏がトラックに向けて突撃する。
すぐさま私もスラスターを吹かせて追いかけるけど、流石の白式・ウルフヘジンだから私とラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡじゃ追いつけない。グングンと距離を離された。
そのまま一切の減速をせずにトラックに突っ込む一夏。
荷台の側板が開きかけていたのでISの足らしきものが中から見え始めていたけど、一夏がそのトラックの側板に激突したために、その開きかけていた側板が無理やり閉じられてしまった。
側板はベッコリと凹み、そしてそれでもなお突撃の衝撃が上回ったためにトラックが横倒しに引っくり返される!
『えええぇぇっ!?』
『い、いったい何だ!?』
トラックは一回転以上して、開きかけていた側板を下にした状態になってようやく転がるのが止まった。
あ、もう中の人が出れないじゃん。
そしてトラックの中からは二人分の悲鳴。一夏の突撃のせいで側板開閉装置が壊れたのか開閉動作が止まったみたいだし、そもそもあんな風に転がったトラックの中にいたなら身体を壁にアチコチぶつけているだろうなぁ。
IS反応が二機分することから、きっとどこかの企業がスパイか何らかの目的でISをこの場所に送り込んだみたいだけど、生身でトラックに乗ってなくてよかったね。
……九分九厘はテロリストだったとはいえ、念のために警告しなきゃいけなかったんだけどなぁ。
まあ、金網フェンス突き破って乱入したということだけで罪状は充分だけど。
「ハハハハ、アハハハ! アーハッハッハ!」
凹んだトラックの側板の上に立って笑う一夏。そして白式・ウルフヘジンの隙間から何十本もの触手を展開してトラックに巻き付けていく。
あ、数本の触手が側板の隙間から荷台の中に入り込んでいった。
「レェェエスト・イィィン・ピーースッッ!!」
『き、気色悪……って雪片!? まさか織斑一グギャッ!?』
『スタンガン!? 零落白夜でシールドバリアガッ!?』
……アレ、もう終わった?
二人の悲鳴が聞こえてからは何も聞こえない。ISが動いているような音もしておらず、荷台の中では沈黙が落ちている。
せっかくのISを使った企業スパイだったのに、トラックから出ることすら出来ずに終わった。可哀想に。
触手を荷台に潜り込ませ、遠距離量子化解除で雪片弐型(改)とスタンガンを触手に装備。雪片弐型(改)で敵ISのシールドエネルギーをゼロにしてISを強制解除させ、更にはスタンガンで意識を奪う。一夏の取った戦法はこんなところだね。
流石のISでもトラックの荷台に閉じ込められていたらその機動力を発揮出来ないし、触手の奇抜さに気を取られて隙を作ったみたい。
こんなことを行うぐらいだからそれなりの腕を持っていた人たちなんだろうけど、それでも一夏の前にはアッサリと倒されちゃった。
これはもしかしてゲッターⅡ対策というか、雪片では届かない敵対策で考えついたやつなのかな。
白式・ウルフヘジンの攻撃方法はどれも直線的で、地面の下や壁を挟んだところにいる敵には為す術がなかったけど、触手を使えばこんな風に戦えるんだね。
インコムアンカーでも似たようなことは出来るかもしれないけど、あれも機動は直線的だしアンカーが大型なので、今回のように荷台の隙間から潜り込むなんてことは出来ない。
だけどこの触手なら直径10cmもあれば余裕で潜り込めるからね。しかも遠距離量子化解除で雪片弐型(改)を触手に装備させれば攻撃力は補えるから、インコムアンカーの破壊力も魅力的なんだろうけど一夏は触手の利便性の方を求めたみたい。
……これで見た目がもうちょっとマトモだったらなぁ。
「運転席は無人か。ならさっさと中の二人を引きずり出すか。
シャルロットは周囲の警戒を頼む」
「ん、了解」
トラックの運転席には誰もいなかった。
荷台にいたIS操縦者が操っていたのかな?
それにしても瞬く間にIS二機を撃破。いくら奇襲だったとはいえ、そして零落白夜があったとはいえ、一夏はやっぱり強いな。
強いというか迷いがない。私たちとの模擬戦でも利があると見れば躊躇いもなく危険地帯に踏み込んでくるから、零落白夜もあることも含めると一時も気が抜けない戦いとなる。
その躊躇いのなさというのも超々高感度ハイパーセンサーによる思考の高速化が大きな要因になっているのだろうけど、それでも危険地帯とわかりながら踏み込んで来れるのがおかしいよ。打鉄弐式の山嵐に真っ正面から突っ込むことぐらいは平気でやるし。
AISの豊富なシールドエネルギー量を信頼しているだけなのか、とも思えば、普通に白式単体でもあまり一夏の戦闘方法は変わらない。
心なしか
やっぱりAICを使うラウラには相性が悪いのでどうしても勝率は低いけど、他の私たちとはほぼ互角の勝率を保っている。
ただし箒は別格。というか紅椿を使う箒は一夏以外は誰も勝てないし、もし白式単体だったら勝率三割といったところだし。
何しろ絢爛舞踏を常時発動させ続けていれば、零落白夜がないとシールドエネルギーをゼロにすることが出来ないもん。白式・ウルフヘジンとはまたベクトルの違った反則機体だよ、紅椿は。
「シャルロット、預かっててくれ」
「わ!? ちょっとISコア投げないでよ」
雪片でトラックの荷台を斬り開き、中で気絶していた二人の載っていたラファール・リヴァイヴからISコアを取り外したみたい。
けど世界に468個しかない貴重なものなんだから、もっと丁寧に扱ってよ。というかトラックの側板を雪片弐型(改)で斬り開かないでよ。
それにしても…………ああ、ISコアを二つゲットなんだね。これで
しかも例の
白式を更に一夏に合わせるようにカスタム化して高機動化。更には雪片を装備させないので
まあ、
篠ノ之博士に依頼すれば、白式と同じように
……一夏の力と経験によって発現する
でも、それはまだ構わないんだよ。問題は白式・ウルフヘジンの方。正確に言うのなら
普段使うのは何かと言えばもちろん白式・ウルフヘジン。そして白式・ウルフヘジンはIS競技以外で使用するAISであり、そうであるなら
では問題です。
白式・ウルフヘジンを使っているときは
ですがあの一夏が
答え.白式・ウルフヘジンがコア三つ使用AISになります。
……駄目だこの一夏。早く何とかしないと……。
「シャルロット、さっきの火災はどうなっている? どこかに引火するような感じはあるか?」
「うん? ……いや、大丈夫。もうほとんど鎮火されてるよ。
私たちに気付いた港湾警備員も集まってきたし、パトカーのサイレンの音も聞こえるね」
その拘束している二人を警察に引き渡したら、次は警察からの事情聴取だね。
それとこんなことになったからには試作装備の搬入も後日になっちゃうかな。こんな事態になったからには仕方がないけどさ。
ああ……
――― 凰鈴音 ―――
「ハァッ!」
「クッ!?」
チッ、雪片弐型(改)で双天牙月の一本を弾き飛ばされた。
やっぱり零落白夜無しルールでも、近接戦闘では私より一夏の方が上か。
今週の水曜日である今日の放課後は私の番。
一夏とは日曜日に六対一の模擬戦をすることが毎週のお約束なので、機体へのダメージを考慮して暗黙の了解的に日曜日の前後は激しい模擬戦をしないことになっている。ISは自己修復するとはいえ修復には時間がかかるからね。
なのでこうやって一夏と一対一で本気の模擬戦を行えるのは水曜日ぐらい。
今日の試合ルールとしては零落白夜無しの触手無しだけどウルフヘジンは使用可。
まあ、零落白夜有りだったら、AISのシールドエネルギー頼りに特攻されちゃって、あっという間に試合が終わっちゃうから仕方がないのよ。それと触手は見た目がイヤ。
「離れなさいっ!!」
臨海学校で追加した機能増幅パッケージ“崩山”によって、不可視の弾丸から赤い色をした拡散衝撃砲に変化した龍咆を牽制にばら撒く。
しかしその三門の龍咆から発射された拡散衝撃砲も一夏にかすりもせず避けられる。相変わらず出鱈目な機動をするわねぇ。
だけど距離は取れた!
「まだまだぁっ!」
龍咆をばら撒きながら後退し、さっき弾き飛ばされた双天牙月を回収。体勢を立て直してもう一回突撃!
双天牙月はさっきみたく両手にそれぞれ持つんじゃなくて、連結させて両手持ちに。
四門ある龍咆のうち三門は牽制、そして残りの一門は
戦闘機のような相手の背後を取るのではなく、横に並んで飛びながらのドッグファイト。
龍咆を一夏に向けて発射しつつ、私の隙を見た一夏が雪片弐型(改)で斬りかかってくるのを双天牙月で打ち払う。
癪だけど、近接戦闘では一夏に敵わないので双天牙月は防御用。遠距離攻撃方法を持っていない一夏相手なので双天牙月で防御し、龍咆で牽制をしつつシールドエネルギーを削っていく。
これが私が一夏と戦うときの戦い方。
「あー、もうっ!」
だけどやっぱり攻撃が当たらない! 砲身の稼動限界角度がない龍咆を拡散型にして撃ちまくっているのに当たっておらず、それどころか隙を突かれて接近されて雪片弐型(改)で打ち据えられる。刻一刻とシールドエネルギーが削られていく。
同じく機動力に優れる紅椿相手なら、もうハチの巣に出来るぐらいの攻撃を仕掛けているってぇーのにっ!
それと横に並んで飛びながらと言ったけど、正確には横にはいるけど並んではいない。
白式・ウルフヘジンの豊富なスラスター数を最大限に活かして“傀儡舞”と呼んでいる変則機動で、私の周りをグルグルと……ではなくギュンギュンカクッギュンカクッって感じに飛び回っている。
相変わらず何なのよ、この傀儡舞は。
クラス対抗戦の時の
しかもそんな変則機動をしていながら、真っ直ぐ飛んでいる甲龍の速度に着いて来ている。私の周りをウロチョロしているくせに相対速度はほぼ一緒だなんて、起動特化型である白式・ウルフヘジンの本領発揮って感じね。
ベルセルクルのときだったら龍咆がたまには当たっていたのに、ウルフヘジンになってからは全然当たってくれない。
しかも白式・ウルフヘジンの機動力はまだ全力を発揮していないのが恐ろしいわね。
まあ、全力稼働は千冬さんでも無理だろうって篠ノ之博士が言っていたぐらいのブッ飛んだものだから、一夏が身体に悪影響を残さない範囲で動かしている現状なら発揮出来る力は四割程度。もっとウルフヘジンに慣れたら五割を越せるんだろうけどさ。
ここまで機動力がアップするなんて反則よね。
もう違う戦法を考えなきゃ駄目かなぁ。
「こんな風にさっ!」
「!?」
数本の
そして横転回数を増やした高速のバレルロール!!
「つぁっ!?」
「当たったぁっ!」
バレルロールで一夏に近づいていたのと、龍咆による牽制で逃げるスペースがない状態だったことで一夏に見事に当たった。
でも当たったのは二本だけか。残りは位置が悪かったのと雪片弐型(改)で防がれた。
だけどバランスは崩せた!
「まだまだぁっ!」
今はそれよりもバランスを崩した隙に畳み掛けるのが先決。こんなチャンスは滅多にないのよ。
バランスを崩した一夏に向けて、接近しながら龍咆を発射。
一夏に接近するのは自殺行為とも言えるけど、拡散衝撃砲にしてある龍咆なので遠距離では威力が出ないからこれも仕方がな「さいならっ!!」ってあ゛あ゛ーーーっ!? 逃げられたっ!!
バランスを崩して落ちかけた一夏は、逆にそのまま真っ直ぐ下降。地面スレスレ…………というかギャリギャリと地面を削りながらも方向転換に成功して、龍咆が届かないぐらいまでの距離を取った。
あー、もう! 相変わらず逃げることを何とも思っていないわねぇ!
「考えたな、鈴。その攻撃方法をするなら、俺だとずっと鈴に近寄ることが出来ない」
「フンッ! こんなのどうせ小細工でしょ。今みたいに零落白夜無しの雪片弐型(改)のみ縛りじゃないと使えないわよ。
縛りがなかったら触手で動きを止めればいいんだし、そもそも被弾覚悟で零落白夜で攻撃すればいいだけなんだし」
ダメージを与えたといっても300ほどしか削れていない。しかもそのうちの100ぐらいはさっき逃げるときに地面を削ったせいで消費したもの。
それに対して私は既に500以上ダメージを受けている。雪片弐型(改)の攻撃は数が多いくせに、速度を乗せているせいでやっぱり一撃一撃が重い。
シールドエネルギーボーダーラインの100は削れたけど、そもそも一夏には縛りしてもらってコレだからなぁ。
縛り無しだったらあっという間に零落白夜で斬られて終わりになって、全然訓練にならないからハンデ付けてもらうのは仕方がないことなんだけどね。
しかし、やっぱり対一夏については近寄らせないようにすることが一番か。
ラウラのAICはウルフヘジンになってからは無意味になってしまったけど、ベルセルクルのときのだったらAICで捕まえられたし、ゴーレムⅡのようにそもそも攻撃が届かない位置にいればいい。
だけど一夏もそれについては対処を常に考えているのよねぇ。
特に最近使いだした触手があれば、地面の下でも遠距離量子化解除使えば攻撃出来るようになったみたいだし、戦えば戦うほどドンドン隙がなくなっていくわ。
バレルロールからの
まあ、今回の
「よし、続けるか。もう時間がないことだしな」
「あら、もうそんな時間?」
やっぱり一夏を相手にしていると緊張感で時間を忘れちゃうわ。
更にこれが零落白夜有りだったら緊張感倍率ドン。
私の残りシールドエネルギー量は200未満。対して一夏は2000以上残っている。ワォ、絶望的。
だからって最後まで諦める気はないけどね。
せめて双天牙月で一発ぶん殴る!
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「疲れたぁ……。一夏、アンタもスポーツドリンク飲む?」
「イヤ、今飲んだら吐く」
模擬戦終了後、ISの整備を始める前の小休止に一夏にスポーツドリンクを薦めてみたけどアッサリ断られた。
まあ、顔色も青くなっているし、いつものことだから気にしないけどね。
まったく。白式・ウルフヘジンなんか乗っているからよ。
バーサーカーシステムとかDDS内蔵スーツとか色々な対処はしてあるけど、あんな滅茶苦茶な機動をしておいて無事で済むはずがないもの。
そりゃ最初に比べたらウルフヘジンにも慣れてきたんでしょうけど、使い初めの頃はしょっちゅう訓練終了後に吐いてたんだから。
強くなろうとするのはいいんだけど、もっと自分の体を大事にしなさいよ。
「アンタね、ウルフヘジン使うのいい加減止めなさいって。もしくは制限かけなさい。
確かにアレは強力よ。だけどこのままあんな馬鹿げた機体を使い続けていたら、絶対いつか身体壊すわよ」
「せめて修学旅行が終わるまで待ってくれ。修学旅行のときに
そうすればよっぽどのことがない限り、今後俺に手を出そうと考える人間は出てこなくなるだろうから、それまではもうちょい頑張る。
……正直、自分でも無茶しているって自覚はあるから安心してくれ。その後は休むなって言われても休むから」
「…………ハァ、しょうがないわねぇ」
相変わらず自分一人で背負い込む性格しているわね。
もしくは夏休みの宿題は初めの一週間で終わらせる性格というか、ゴールが見えているなら無茶してでもゴールしてそれからゆっくり休もうとする性格というか。こういうのも貧乏性っていうのかしら?
とはいえ、その性格のおかげでここまで一夏自身の力を手に入れて立場を築いたんだから、怠ける人間よりはよっぽどマシなんだけど、それでも身近にいてアンタのその無茶を見せられるコッチの身にもなって欲しいわ。
……いや、そういうところもカッコいいとは思っているんだけどさ。
もし私に何かあったとしたら、同じように無茶してでも私の力になってくれるってわかっているし。
「頑張るのはいいけど体調はしっかり整えなさいよ。修学旅行の日に風邪でも引いたら元も子もないじゃない。ホラ、さっさと汗を拭かないと身体が冷え……って既に冷たっ!?
ちょっと!? 身体が冷え過ぎよ!!」
「調子に乗って傀儡舞やり過ぎた。
でも大丈夫。結構温まってきてるから、このペースなら10分もすれば元に戻る」
「アンタ最近自分の身体イジメるのが癖になってきていない!?
あー、もうっ!! ジッとしてなさい」
ガバッ、と一夏の背中に抱き付く。
私はさっきまでISの操縦していたので身体が温まっているけど、一夏の背中はまるで低体温症になったかのように冷たい。私の火照った身体の熱が一夏に奪われていくのが気持ち良いわ。
まあ、一夏のことだから本格的にマズいのならIS展開して操縦者保護機能を働かせているはずだから、こうやって生身でいるってことは大丈夫なんでしょうけどね。それにこういうことはウルフヘジンを使い始めた当初は毎回のようにあったし。
……でも一夏の膝の上に座ることはよくあっても、こうやってラウラみたいに抱き着くのはあまりしてなかったわよね。
そう考えたらちょっと恥ずかしいかな。
ま、一夏の身体のためなんだから仕方がないわよね。一夏の身体がヒンヤリしていて気持ちいいし。
それにラウラが普段からしていることだし、今日は私の番なんだからこうしても問題はない!
「あ、当たっている……と思うぞ? 鈴」
「コロスワヨ」
疑問形にしないで! 気ぃ遣われる方がムカつくわよ!
やっぱりアンタも箒みたいな巨乳がいいってぇーの!? 確かに一緒にお風呂に入ったときも劣等感に苛まれちゃうぐらいに凄いけどさ!
でもあんなのは将来的には垂れちゃうから、ずっとスタイルの変わらない私の方が長い目で見たらお得なのよぉっ!!
アクセス――――我が
全然バトルを書いていなかったので、アニメ二期第六話場面でバトルさせようとしたら何故か一瞬で終わってしまいました。アレ、おかしいな?
この織斑一夏、容赦せん!
あと鈴ちゃんがやっぱりこの作品でも不遇な扱いをしている気がしてきたので救済措置を。
それとネタにしておいてなんですが、実は“PARADISE LOST”はやっていないんですよねー。でもルネッサンス山田さんの熱演をニコニコで聞いてからは、実際にゲームでやって聞いてみたくなりました。
買うべきか買わざるべきか。それともやはり先に“相州戦神館學園 八命陣”を……。