――― ラウラ・ボーデヴィッヒ ―――
一夏に全然勝てん。
まあ、白式単体なら零落白夜があるので油断出来ないとはいえ、何度か負けることはあっても基本的に勝てている。
しかし白式・ベルセルクルになったらまったくもって一夏に勝てん。ついでに箒の紅椿にも勝てん。
機体の性能差があるから仕方がないとハインリヒ大佐は慰めてくれたが、それでも一緒に訓練をした間柄としては負けっぱなしは性に合わん。
今日はクラス代表戦があるので模擬戦は出来ないが、明日にでも白式・ベルセルクル相手にチャレンジしようとは思うのだが、むしろ勝つための新装備や新しい戦術を考える方に力を入れた方が良いかもしれん。
セシリアが迷っていたように、今のまま続けていても勝てるとは思えんしな。
日本に来る前から、一夏たちがいるから退屈しない学園生活になるとは思っていたが、ここまで大変になるとは思ってもいなかったぞ。
だがこういうのも悪くはないとは思う。
シュヴァルツェ・ハーゼでは私が一番強かったので挑戦される側だったのだが、一夏を相手にしたら私が挑戦する側となる。
私としても一夏に是非とも勝ちたいとは思っているし、向上心を育むという意味では実に良い環境だろう。
それに箒以外の同い年の同性の友人が出来たのは嬉しい。
シュヴァルツェ・ハーゼの隊員に不満があるわけではないが、やはり私は隊長なのに他の皆より年下というアンバランスな関係なので、同い年の友人みたく付き合えないのは確かだ。
というか隊の皆が私を着せ替え人形にするのは年下に対する行動としてはおかしくはないのだろうが、隊長に対する行動としては間違っていると思う。
増えた友人の中でも、同部屋になったシャルロットには特に世話になっている。
やはり軍隊育ちということで私は世間知らずの気があったらしく、色々なフォローをしてもらっているのだ。
まあ、私は隊の皆から結構な数の衣装を贈られていて学園に持ってきているのだが、それを見たシャルロットが私を着せ替え人形にしようとしたのには困った。
慣れているので別に着せ替え人形扱いされるのは構わないが、やろうとする者に限って私に子供っぽい服を着させてくる。
それはそれで構わないのだが、どうせなら大人っぽい服の方が良い。それも一夏にドキッとさせられるような服が。
これは私だけが思っているらしいことなのだが、箒たちは一夏の好みは年下だと思っているが私はそうじゃないと思う。
確かに私が子供っぽい服を着たり、お兄ちゃんと呼んで甘えたら可愛がってはくれるのだが、本当に可愛がっているだけで異性として見ているわけではないように感じる。
どちらかというと犬猫を可愛がるような感じなのだ。
だから一夏をドキッとさせるためにも、更識会長がしたという伝説の裸エプロンを試してみようと思ったのだがシャルロットに止められてしまった。
何故かと聞いたところ、どうやらシャルロットが言うには裸エプロンイベントを起こすための一夏の好感度がまだ足りないらしい。
裸エプロンをやったとしても、一夏に怒られるか引かれるかのどちらかになるだろうということだ。
妹としての好感度は充分なのだろうが、やはり重要なのは異性としての好感度の方か。
異性としての好感度を上げるための裸エプロンなのに、その好感度が足りないために裸エプロンが出来ないとは何たる不条理。
とはいえ箒にさえも止められてしまったので、ひとまずは裸エプロンは諦めるとする。
……まあ、止めておいてよかったのだろう。
一夏が紳士的で忘れていたが、よくよく考えたら裸エプロンを見せてもし一夏が暴走したりしても困る。
別に将来的には暴走されても構わないのだが、私としても心の準備というものが必要なのだ。
一時期はクラリッサによる性教育で男性恐怖症に近い状態になった私だが、実は今でも普通に付き合える男は一夏とハインリヒ大佐ぐらいしかいない。
せっかく一夏が暴走して一線を越えようとしてくれても、もしかしたら性教育で見た教材がフラッシュバックして私が一夏を拒絶してしまうかもしれん。
それではせっかく襲ってくれた一夏に悪いだろう。
なのでこれからはシャルロットが言うように、一夏から手を出してもらうのを目指すぐらいの慎重さで進めていくことにする。箒も鈴も諸手を挙げて賛成していたぐらいだから、きっとシャルロットの意見は正しいはずだ。
私が脅えるようなことになっても、きっと一夏なら何とかしてくれると信じている。……正直そういうことするのまだ怖いし。
そういえばシャルロットいえば、何故か箒と鈴、そして簪と一緒に生徒会室に殴り込みに行ったんだがいったいどうしたんだろうか?
汚染源を断つためと言っていたが、何のことかサッパリわからん。もうすぐクラス対抗戦のトーナメント表が発表されるというのに……。
「チッ、逃げられたか」
「のほほんさんが邪魔しなければ
「……あの変態がゴメンね」
「簪のせいじゃないよ。
でもラウラにこれ以上の悪影響がいかないように、早めに処理しないとね」
あ、戻ってきた。
4人とも少し髪が乱れているけど、何をしていたんだ?
「何、IS学園の消毒処理さ」
「汚物は消毒しないとね」
「熱消毒のためにも山嵐の焼夷弾頭も用意しとかないと……」
「残念ながら失敗しちゃったけどね。
ラウラは別に気にしなくてもいいよ」
フム? 人体に有害な物質を使っているISの装備に不具合でもあったのかな?
私は軍隊でそういうことも齧っているから、手伝えることがあれば手伝うが…………ま、皆がいいと言っているのならいいのだろう。それにシャルロットが有無を言わせない迫力を出していることだしな。何か怖いぞ。
お、そうこうしているうちにトーナメント表が発表されるな。
「これは……」
「何というか……」
「面白みがない」
「…………アレ?」
何だ。トーナメント表といっても、ただ単純に1組から8組までが順番に並んでいるだけか。
だから一夏は最初は2組のクラス代表、次は3組か4組のクラス代表と戦っていくわけか。そして5~8組の中で勝ち上がってきたのと戦って、最後には決勝シードの兎組のゴーレムⅡと戦う…………ゴーレムⅡ? それに兎組?
……何それ?
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「山田君、これはどういうことなんだっ!?」
「わ、わかりませんよぉっ!
確かに兎組のゴーレムⅡ選手なんかトーナメント表に載っていなかったのに、電光掲示板にアップしたらいつの間にか増えていたんです!
アップする前のトーナメント表は織斑先生にも確認してもらったじゃないですか!」
「…………
(それにしてもゴーレム“Ⅱ”……か?)」
「ウチの姉がすみませんでしたぁっ!」
大騒ぎになっている職員室。
一夏と箒によれば、間違いなく篠ノ之博士が関わっているらしい。
まあ、IS学園のコンピュータに侵入してこんなことが出来るのは、篠ノ之博士以外にはそうそういないだろう。
それに篠ノ之博士はウサ耳のカチューシャを好んでしていると聞く。ゴーレムⅡが1年兎組所属ということは、これも篠ノ之博士が関わっているという傍証となるな。
「しかし……いったい篠ノ之博士は何がしたいのだ?」
「ただ単にお祭り騒ぎに混ざりたいだけだ、ラウラ。
今年は私と一夏がIS学園に入学したからな」
「あと考えられるのは面白いものを開発したから自慢しようってところか。
ゴーレム……意味としては泥人形か胎児だけど、この場合だと泥人形の方だろうな。
もしかしてASを発展させて無人でも動かせるIS……無人機でも作り上げたか?
「チッ、駄目だあのバカ。電話に出ようとせん」
無人IS? 確かにASの技術を使えば出来るだろうし、篠ノ之博士の技術力なら簡単なことなのかもしれない。
アメリカでも無人ISの開発が進められていると聞いたこともあるし……。
「一夏、わかっているとは思うが決勝に行くまで、ゴーレムⅡとやらに当たるまで負けるのは許さんぞ。周りに合わせるために白式単体で今日のクラス対抗戦を行うつもりだったみたいだが、負けることは万が一も許さん。
最初っからベルセルクルを使え。幸いベルセルクルを使っても、試合ルールには抵触しない。
……白式だけでもいけるとはわかっているんだがな」
「大丈夫、わかってるさ。
ゴーレムⅡがどんなもんかは知らないけど、
いくら何でも一般生徒に
「いやウチの姉がホントごめんなさい」
「あまり気にするな、箒。2組の代表とカードをすり替えられたり、試合の途中に乱入されるよりはマシだ。
それに決勝シードとはいえ、実際にはクラス対抗戦自体には影響はないんだ。クラス対抗戦終了後のエンターテイメントと思えばまだ何とかなる」
「ああ、来賓へはその言い訳をすることにしてある。
束からのサプライズイベントで私たちも詳しくは聞いていないが、きっと驚くことが出来るだろうと……」
「そこまで断定してよろしいのですか、教官?」
「……い、一応姉さんの仕業だと決まったわけではないのですが……」
「自分を騙せない嘘をつくな、篠ノ之。
それと織斑先生と呼べ、ボーデヴィッヒ」
会ったことはないし、噂でしか聞いたことはないが、やはり一夏が言っていたように篠ノ之博士は自由な人なのだな。
まあ、ベルセルクルを使用した一般生徒に一夏が負けるわけはないから、ゴーレムⅡに相手するのは一夏となるので安心だろう。
あとは指示通り、私たち専用機持ちがいつでも出撃出来るようにピット内に待機しておいて、他にも手の空いている教員と3年生に動かせるだけの打鉄とラファール・リヴァイヴでアリーナの外周を警備させておけば対応出来るISの数は20を越える。
これならいくら相手が篠ノ之博士とはいえ問題ないだろう。
それに一夏や教官、箒の様子を見る限り、倦怠感や脱力感は見られても悲壮感などは見られない。
というか、呆れてるというのが一番合っていそうな状態だ。
危険なことは無いとみていいな。
「ライオンが無邪気にじゃれついただけで人間は死ぬんだぞ、ラウラ」
「……それもそうだな。油断せずに警戒は怠らないようにしよう」
「自分の姉のことなのに否定出来ない……」
ヤダ。一夏と箒がそんな不安そうな顔してたら、コッチまで不安になってくる。
……大丈夫、だよな?
白式・ベルセルクルを使った一夏に勝てるのは教官ぐらいのものだろうし、それに加えて箒の紅椿までいる。
何せインコムアンカーで白式と紅椿を接続し、常時絢爛舞踏発動で白式にもアンカー経由でエネルギー供給する戦法をとったら、
インコムアンカーにはシールドバリアーが張り巡らせているので生半可な攻撃では切断出来ないし、一夏が前衛で突っ込んできて暴れまわり、箒が後衛からエネルギー刃を乱射しまくってくるからそんな余裕はないのだ。
現に一夏と箒の2人相手では、私たち代表候補生組5人で挑んでも負けてしまう。
私が常にAICを展開して一夏を近寄らせないようにして、私の後ろからAIC力場を関係なく透過して攻撃出来るセシリアのブルー・ティアーズが牽制しつつ、隙を見つけた簪が山嵐でアリーナ全空間を焼き払い、最後に一夏がAIC力場を迂回してこないように私の左右で警戒していたシャルロットと鈴が突撃する。そしてあとは同士討ちも恐れずに最大火力で攻撃をし続ける。
さすがにこれなら一夏のシールドエネルギーもかなり減らせることが出来たのだが、それもインコムアンカー経由の絢爛舞踏で全て回復されてしまったのには本気で絶望した。
アンカーを切断しようにもシールドバリアーがあるせいで爆弾などでの切断は無理だし、アンカーは軽いのでレールカノンを当ててもシールドバリアーで防がれた上にアンカー自身が吹き飛ばされるだけで終わりだ。そしてプラズマ手刀などで接近して切断するということは、逆に言えばそれは一夏に接近するということでもある。
そんなわけで1人、また1人と零落白夜で落とされていき、結局は5対2で負けてしまった。
ウン、アレ勝つの無理。
まあ、そんな一夏と箒もいることだし、きっと大丈夫だろう。
とはいえ油断はしないようにと注意されたので、私もシュヴァルツェア・レーゲンの再確認をしておくか。
確認が終わったらピット内で待機。一夏が戦うところをモニタでしか見えないのは残念だが、ベルセルクル使うんなら弱い者虐めみたくなるだけだし別にいいか。
――― 織斑千冬 ―――
クラス対抗戦は順調に進み、一夏は無事に決勝に進むことになった。
まあ、さすがに一般生徒にベルセルクルを使って無双をするのは気が引けたのか、
その代わりに今までの直線的な動きの戦い方ではなく曲線的な動きによる戦い方をしたが、なかなかの練度だった。
私に隠れて練習していたな、一夏の奴め。
おそらくは他のクラス代表も一夏の
現にこの動きについて知っていたらしい箒とデュノア以外の4人は、また厄介な動きをするようになったと頭を抱えていた。
試合の結果、どの生徒もシールドエネルギーを100減らすことが出来なかったので、ベルセルクルを使ったことについての文句も出ないだろう。
それと零落白夜を使わずに雪片偽型で戦ったが、雪片弐型(改)で戦ったら試合相手の見せ場がなくなるからな。これは仕方がない。
一夏の新技のお披露目ということで
クラス対抗戦は無事に終わったと思っていい。
しかし問題はこの後だ。
襲来してくるであろうゴーレムⅡ。あの
出来る限りの準備をしておいたが、いったいどうなることやら。
まあ、準備といっても出せるだけのISを出したのと、一夏の提言通りにアリーナのシールドを本来のドーム状ではなく、観客席をグルっと覆うようなドーナツ状の展開に変更しておいたぐらいだ。
ロシア代表である更識姉を代表とした専用機組もISを稼働させた状態で待機させてあるし、出来る限りのことは出来ただろう。あとはもう一夏に任せるだけだ。
……その更識姉がやけに落ち込んでいるのが気になるが、きっと大丈夫だろう。
シールドエネルギーの回復をした一夏は再びアリーナに戻り、今では空を見上げている。アリーナ外周に配置しておいた教員や3年生からは不審なモノを発見したとの報告は受けていない。
となると、おそらく束が仕掛けてくるとしたら空からだ。ミサイルでも飛ばしてくるんじゃないのか、アイツ?
「レーダーに感有り!」
遂に来たか!?
「数1! 高度2000m! 時速約900kmで接近中!
……かなり小さいです。到着まであと2分!」
やはり空からか。
山田先生の声が待機している全員に伝わり緊張が走った。
それにしても時速900kmとは遅いな。これでは普通のジャンボジェット機並だ。一般の打鉄とかならおかしくはないが、束が用意したものなら遅すぎる気がする。
この速度なら反応にあるのはミサイルやIS本体ではなく、ISを運搬するロケットのようなものかもしれん。
『山田先生、他に反応は?
それが囮で別にステルス状態で接近しているとかは?』
「いえ、今のところそのようなものは確認出来ません、織斑君。
……ただ、篠ノ之博士が本気でステルス技術を駆使して隠れたのなら、学園の設備で発見できるかどうかまでは……」
「あの
いいか、あくまで最初に戦うのは織斑だ! 待機中の人員は別命あるまでその場で待機! 決してお前たちからは手を出すな!」
アリーナを監視しているモニターには、何が起こるのか楽しみにワクワクしている事情を知らない来賓と生徒たちの姿が写っている。
幸いにも騒ぎは起こっていないようだが、幸い中の不幸はそんな中で必死に対応している私たちの存在なのだろう。
「到着まであと1分。飛来物を望遠で確認。
これは……ニンジン? は? ……えっと、ミサイルか何かでしょうか? それとも中に何か入っている?」
「量子変換してIS本体を格納しているのかもしれんな」
一夏もハイパーセンサーで確認したのだろう。雪片弐型(改)を展開した。
大丈夫だ。一夏なら、一夏ならきっと何とかしてくれる。
白式・ベルセルクルの機体性能も優れていることもあるが、一夏自身も機体性能の良さに奢らず真面目に訓練している。
今の白式・ベルセルクルを使った一夏相手なら、私がモンド・グロッソで戦ったような国家代表でも勝つのは至難だろう。
それに束のことも何だかんだで信じている。悪戯でとんでもないことを仕出かすかもしれないが、一夏や箒へ能動的に危害を加えることはしないだろう。遊ぶことはあっても。
あんなのでも友人だからな。
到着まであと30秒。
一夏は飛来してい来る方向を睨み、PICを使ってわずかに空に浮き上がる。
取った構えは脇構え。
脇構えは相手に刀身の長さを悟られずに済むが、現代の剣道では竹刀の長さが規格で決められているのであまり意味はないとされている。
刀を上に真っ直ぐ立てる八相の構えと同じく、現代剣道では他の上・中・下段の構えに比べて使用する人間がいない構えなのだが、一夏は好んでこの構えを取る。
それは脇構えのもう一つのメリット。“相打ち狙い”には有効というのが理由だ。
もちろん現代剣道では先に当てた方が勝ちだし、打突部位も厳格に定められているので意味はない。だが一夏がしているのは剣道の試合ではなくISの試合だ。
シールドバリアーがあるので一撃を当てられたぐらいでは負けにならないし、何よりも白式には零落白夜がある。たとえ同時に、もしくは一息遅れて一夏の攻撃が当たったとしても、零落白夜が当たりさえすれば結果は相打ちではなく一夏の勝利となる。
更にはベルセルクルでシールドエネルギーが増量されているので、一撃どころか十数撃当てられたところで負けはしない。
何よりも勝つことを優先して、その他のことは切り捨てる一夏らしい戦い方だ。
到着まであと10秒。おそらく肉眼でも既に確認出来る位置まで近づいてるはずだ。
一夏はスラスターにエネルギーを貯め、いつでも
おそらく一夏のことだ。戯言は抜きで間合いに入った瞬間に斬りかかるだろうな。
だがそれでいい。あの
そして一夏がスラスターエネルギーを解放して、
『アッハハハハ! 引っ掛かったね、いっくん!』
1体のISがアリーナの地面を
あの
つーか、やっぱり犯人は束か!
アリーナのスピーカーまでジャックしやがって。音声がアリーナ中に響き渡っているぞ!
『くっ!?』
幸いにも一夏は
とはいえ不意を突かれたこともあってまったくの無傷というわけにもいかず、シールドエネルギーが100近く減少した。掠めただけのように見えたが、あのドリルは掠めただけでかなりのダメージを喰らうようだ。
そして一拍遅れてアリーナに飛来物、ニンジン型のロケットが突き刺さった。
アレがゴーレムⅡか。一夏の推測通り、
全身は細く構成されており、頭部と胸部は白色、腹部は黄色、腰部から下は赤色に塗装されていてかなり目立つ機体だ。しかしゴーレムⅡのステルス能力なのか、何故か顔にモザイクがかかって見える。肉眼で直接見てもモザイクがかかっているのだろうか?
武装は左手が巨大なドリルとなっており、右手は巨大なペンチ型の手となっている。
……しかしあの機体、何かどこかで見たことあるような?
でもあんな
『ゴーレムⅡの“Ⅱ”はゲッ○ーⅡの“Ⅱ”かよ!』
『フハハハハ、ビックリしたでしょう、いっくん!
モザイク処理で著作権対策もバッチリ! ぶいぶいっ!』
『いや、バレバレだから無理でしょ』
ああ、それだぁっ!
詳しくは知らないが昔のアニメのロボットだ。TVで昔懐かしのアニメ特集とかをしていたので見たことあるぞ!
それにしてもいったいどうやって地中を進んで来たんだ?
ドリルで土を掘っていたのなら振動でわかるし、何よりアニメじゃあるまいしドリルで穴を掘り進めるなんて不可能だ。
『また変なものを作っちゃって……。
ところで
『ふっふーんだ! いっくんの考えることぐらいわかっているよ!
どうせいっくんがISを使える理由がわかったかどうか聞いて、機先を制しようと思ったんだろうけどそうはいかないよ! ……まだわかっていないのは事実だし。
このゴーレムⅡはそんないくら研究してもいつまで経っても、いっくんがISを使える理由がわからないことで溜まったストレスを解消するためにお遊びで作ったものだよ! そんなわけで私のストレス解消に付き合ってね、いっくん!』
『いや、まあここまで来たら付き合うけどさ。
それよりドリルで地中を掘って進むってのは、俺が前言ったこと実現したの?』
『その通り! このゴーレムⅡの基になったアイディアを出したのはいっくんでーす!』
また一夏かよ!
どれだけ変なアイディアを出せば気が済むんだ、あの愚弟は! だから束が囮なんて迂遠な真似をするわけだ! 結局はただの悪戯か!
『このゴーレムⅡはドリルで掘り進むときに発生する土砂を量子変換して
お前のドリルで地を突け! フゥーハハァーー!』
『おー、やっぱりその方法でいけるんだ。
掘るときに発生する音や振動は?』
『それもシールドバリアーのちょっとした応用だよ。
ちょちょいとシールドバリアーで音と振動も遮られるようにして、普通のISみたく大気中にしか展開出来ないんじゃなくて地中でも展開出来るようにしただけでOK!
さすがに大気中に展開するのより特殊になっちゃったから、探知しやすいバリアーになっちゃったけどね』
なるほど。単純だが、確かにそれなら出来るのかもしれない。
ドリルのみならず地中を掘ることで大変なのは、掘ることによって発生する土砂を如何に処理するかだ。
地面に近い間はいいだろう。ドリルで穴を掘る際に土飛沫となって周りの地面に飛び散る。しかしある程度地中に進んだら、土砂は穴の外に出ずに再び穴の中に戻る。そして掘っている上にどんどん土砂が積み重なっていき、最後には土砂の逃げ場所がなくなってしまうので掘ることが出来なくなってしまう。
地中の土砂を掘ると地圧で圧縮されいた土砂の体積が増えるので、掘った穴の容量以上の土砂が発生するからな。
ゴーレムⅡはそれに対処すべく、
まあ、どこまでも掘り進むことが出来るとは言ったが、
『なるほどねー。
……コレ、テロリストが使ったらマズくない?』
『うん。テロし放題になるよね。
でも大丈夫。ニンジンロケットにディスクが収納してあるんだけど、その中に地中でもシールドバリアーを展開出来るようにする方法と、地中に張ったシールドバリアーを探知する方法を入れておいたから対策出来るよ。IS委員会を通して関係各所に公開しておいてね。
いやー、さすがの私もこんなの開発したのは黙っていようと思っていたんだけどさぁ。でも私が言わずにいる間に、テロリストが自力で開発したらそっちの方がマズいじゃん』
『あー、確かにね』
『そんなわけでこんな感じに対応策も一緒に派手に公開しておけば、テロリストがこの技術を開発するよりも、世界各国が対策をとる方が早いと思ってね。対策だけ考えるなら、地中に展開したシールドバリアーを探知するだけでいいからさ。
それに掘りながら進むといっても速度は遅いしね。この穴も向こう岸の山から海の底を通ってここまで来るのに1日以上必要だったから、警戒さえしておけば問題ないと思うよー。
ま、何より私のお遊びを兼ねてちょうど良いと思ったからだけどね!』
くそっ、これでは怒るに怒れん。
こんな公の場でお披露目したのには言いたいことがあるが、確かにこの技術をテロリストに使われたら洒落にならん。それならこのように大々的に宣伝された方が世界各国も対策をとることを急ぐだろう。
テロリストは地中にシールドバリアーを展開する技術を自分たちで開発しなければならないが、私たちは束の開発したものを流用すればいいだけなので、テロリストがこれをテロに使うよりも私たちが対策を取る方が早い。
それ以前にこんなに派手に公表されたら、テロリストもわざわざ技術開発をしようとは思わないだろう。技術開発に労力を割いても、どうせ私たちが対策を既にとっているのだから。
これは1回だけしか通用しない奇襲方法だ。
その1回をいくらIS学園のイベントとはいえ、世界情勢に影響を及ぼさないクラス対抗戦で使用するのは確かに悪くはないと思う。
思うことは思うのだが……。
「……チッ。
おい、織斑。試合を始める前にそのニンジンを回収してピットにでも置いておけ」
『りょ、了解』
『あー、ちーちゃんヤッホー! 驚いた? ねえ、驚いた?』
「ああ、驚いたさ。
お礼に織斑がそのゴーレムⅡをスクラップにしてくれるそうだ。謹んで受け取れ」
『……お、怒ってる? ちーちゃんもしかして怒ってる?
でもこの技術は早めに公開しておかないとマズいなー、と束さんは思ったわけでして……』
理由はわかったし納得もしたが、せめて私ぐらいには先に伝えておけ! これからしばらくはこの後始末に追われることになるだろうが!
せめてあらかじめ伝えておいてくれれば少しは楽になっただろうに……。
「やれ、織斑。
壊して解して並べて揃えて晒してやれ」
『イ、イエス、マム!』
『ア、アレ!? ちーちゃん的には黙ってた方がよかったの!?』
「いや、そんなことはないぞ」
そんなことはないが、どことなく言い訳っぽいのが気に食わん。
“シャルロットさんは裏表のない素敵な人です!”
ラウラが裸エプロンしても一夏に引かれるか怒られるかのどちらかなのは間違っていませんし、一夏の性格的に手を出してもらうぐらいの慎重さで進めた方が良いのも間違っていません。
あくまでラウラのことを思って言ったことですので、箒や鈴と違って決して他意があるわけではありません。
何だかんだでシャルロットと箒はラウラのことを可愛がっていますし、鈴はラウラが変態に汚染されて一夏に変なことをしないように消毒作業を頑張ります。
簪? もう存在自体が許せないんじゃないかな? ま、対抗戦終わったらフォロー入れるから待っててくれ。
それはそれとして、前話からシャルロットさんが暗黒面に陥ったと勘違いした人もいらっしゃるかもしれませんので何度でも明言しておきます。
“シャルロットさんは裏表のない素敵な人です!”
はい、復唱ォ!
そしてISは、一分前のISより進化する。
一回転すればほんの少しだけ前に進む。
それがドリルなんだよ!!
というわけでゲッタ……じゃなかった、ゴーレムⅡさんです。
原作でもゴーレムのⅠとⅢはいるみたいですが、Ⅱはいないのでしょうか? 束さん的に銀の福音がⅡ扱い?
実はゲッターはスパロボでしか知らないのですが、スパロボFとスパロボDでゲッターの登場人物のキャラが違いすぎて戸惑った覚えがあります。
特に竜馬さんと早乙女博士が違いすぎでしょう。