「……並行世界への転移技術、ですか?」
新世界へと移行してからこの方、これまでのニートっぷりが嘘のように精力的に忙しそうにしていた水銀の蛇ことメルクリウスだが、久々に呼び出されたと思ったらなにやら素敵ワードが聞こえたのは気のせいだろうか。
「そうだ。以前君の魂を利用して上位世界の情報をダウンロードしたが、あれから君の魂を再度精査しつつ、改良、発展させ、ああ…ついに今日日の目をみることとなったのだ!」
いつのまに。ていうかなんかやたら忙しそうにしてたのはそれが理由ですか…。てかさっきから変なダンス踊りながら喜びを表現してるんですけど。いつにもましてウザさに磨きがかかってる。
「…きもいから踊るの止めてください。それで、私を呼び出したのはどういうわけですか?わざわざ報告だけの為に呼んだわけでもないんでしょう?今日は久しぶりに蓮にごはんつくってあげようと思ってるんですから早くしてください」
「……君の料理は物によって極端に味の差が出ると先日愚息が零していたが。ああ確か、極めて普通とかなんとか」
ふつういうな。
「…私の料理のことはいいですから、もう。早く用件をお願いします!」
気にしてない。ホント気にしてないですからね!
「これはすまない。では単刀直入に言うが、完成したのは良いのだが、まだ一度も実際に使用してはいないのだよ」
あ、いやな予感的中。
「あー…それはつまり、私に実験台になれ、と?」
「実験台などと人聞きが悪い。むしろここは試用品を使ってみるぐらいの面持ちでいたらどうかね?安心したまえ、私が珍しく全力で作り上げた術式だ。モノは確かさ。遅れたがこれは君たちに贈るご祝儀のようなものと思ってくれ。これで、新婚旅行にでも行ったらどうだね?」
随分と胡散臭いご祝儀もあったものですね。
「拒否権は…ないんでしょうね。はあ。わかった、わかりました!やればいいんでしょう、やればっ!」
「結構。では早速説明するが、転移そのものは君の任意で術式が起動、実行される。ああ、あらかじめ行先はランダムで設定しておいたから心配しないでよろしい。ああ、それと君にはこの言葉を贈ろう」
何やら大仰なしぐさでポーズをとると水銀は言った。
「未来を変えてはいけない、未来を知ることだ!」
メ○ルギア!?
「いやはや、これが存外面白い人間模様に彩られた作品でね。旧世界では楽しめなかっただろうが、つい、言ってしまった」
「…何やってんですかこのニート神は。まあいいですが。要するに、余り行先で余計な真似をするなということですね?」
タイムパラドックスがどうとかなのだろうか。
「わかればよろしい。では始めようか。最初はこちらで補助を入れるから、転移と念じたまえ。では、三、」
水銀が術式を展開しつつカウントし出したので仕方なく念じる。
転移転移転移。
「二、」
私の魂が震え、放電し始める。
なんか半分以上ノリで始めちゃいましたけどなんかいける気がする。
転移転移転移。
「一、」
転移転移転移。
「〇」
転移て…あ。
バチィッ!!
バチィッ!!
「―――早く」
「―――早く」
ん、どうやら成功したようですね、ってここは。
「一秒でも早く、私が勝つ!」
「一秒でも早く、僕が勝つ!」
よりにもよってここかよ!!!!
『これはとんだ場所を設定してしまったようだ。許してくれたまえ』
こ、この腐れ神は。後で殴る。ってか近っ!二人ともお互いのことしか目に入ってないせいかすぐ傍の私に気付いてないし!。
「ねえ、気のせいかしら、シュピーネ、ベイ。ヴァルキュリアが二人いるように見えるんだけど気のせいかしら…?」
「いえ…わたくしにも二人に見えますが…。最近仕事のし過ぎで疲れたのでしょうか…?」
「…俺の眼もなんだかおかしいぞおい。俺も歳かね…」
ちょっ危ない!?全力で走り抜けて避け…ってそこ、邪魔!?
「ん?何やら幻覚が近づい…でぼわあッ!?」
「なんか来てるような気が…どわああッ!?」
…勢い余って何か轢いてしまいました。って、転移で逃げればよかったですね。反省反省。では転移。
バチィッ!!
「ちょっ、ベイとシュピーネが海に沈んだー!?なんだったの今のー!?」
バチィッ!!
「おまえが―――」
さて次は、って…。
「俺に惚れなきゃ、意味がねえだろッ!」
また修羅場ですか!?てかこの世界の蓮も恥ずかしげもなく主役はってますね!っと、隠れて隠れて。わーすごい戦い。あ、メルクリウス出てきた。
「お控えなさい、獣殿」
あーいつもの調子でそこはかとなく苛立つ喋りですね。うざいです。あっちの三人もなんか睨んでますし。あーうざい。殴りたいけど我慢我慢我慢…。
「死んだかな、ゾーネンキント」
我慢我慢我慢…。
「それとも、背中を向けて逃げるかね?追いはせんよ。また六十年なり百年なり、私達の再来を恐れながら、安穏に逃避も一興」
我慢我慢我慢我慢我慢我慢……。
「とまあ、そういう次第だ。理解したかね?正直……」
我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢がま、できるかアッ!!!!
「……怖気づかれたのではつまら「うざいんじゃこのニートがあああッ!!!!」ぶほおッ!?」
ふう、すっきりした!…あ。
「ベア…トリス?え、なんで…え?」
「おいおいあの姉ちゃん死んだんじゃなかったのかよ。蓮、お前その剣どっから調達してきた?東○ハ○ズか?」
「んなわけねえだろ、馬鹿!一体何がどうなって…」
…余りのウザさについやっちゃったようですね、これは。
『つい、で蹴り飛ばされたくはないがね』
そこうるさい。てかやばい。収拾がつかなくなりそう。あ、ハイドリヒ卿がいい笑顔でこっちを見て…逃げます。
「螢に蓮、二人ともお幸せに!では失礼、転移!」
バチィッ!
「…何だったの、今のは?」
「なあ蓮。恥ずかしがらずに本当のこと言えよ。ホントは○急○ンズで買ったんだろ?」
「だから違うって!?」
バチィッ!!
「ふふ、ふふふは、はははははははははははははははははは―――ッ」
こんどはこいつか!?
「くくく、なるほど、なるほどそうですか。ははは、これはこれは、なんともはや勇ましい!」
もうキレますよ私。あーこいつもイライラします。我慢は止めです。この…。
「負けぬと、勝つと言いますか。この私に?我々に?あなたが?ははは―――愛を信じて?打倒すると?なんてま「外道神父は水で頭冷やせやこらあああぁッ!!!!」べぶらッ!?」
ふう。また一人、神父を蹴り落としてしまいました。元の世界の神父は南極のクレバスだったことを思えばむしろ優しいですね、私。
『私怨丸出しだったような気がするのは気のせいかな?』
「シャラップ!」
あなたは黙ってなさい。
「…じゃあね、蓮。あなたも頑張って!では転移!」
バチィッ!
「…何なんだいったい」
「おーい蓮、帰るぞー!」ブロロー
「あ、うん」
バチィッ!!
「く、はは……はははは。はははははははははははは―――」
またおまえか!!!!
「ああ、もどかしい。歌い上げたい、詩に書き留めたい、本へと綴り後世へ伝えたい、希うよ留めたかったほど。心から喝采しよう、君を創って本当によか「うざ過ぎじゃボケえええぇーーーッ!!!!」だばッ!?」
もういいですから既知感は!いや本当に。
『…なんだか蹴り飛ばしてばかりいるね。私の気のせいかな?』
うるさい。
さて、なんか女神があたふたしてるけど一つだけ。
「あなたはあなたの思う世界を描けばいいの。…ただ、おせっかいかもしれないけど、人は皆、違うのだから、時には背中を押してあげるのもいいんじゃないかな?よく考えてみて。…ではさようなら!次の世界へ転移!」
バチィッ!!
「…わたしのおもう、世界……」←水銀をさりげなく踏みながら
バチィッ!!
「…ん、ここは。何か空気が…。あれは、屋敷?何やら見たことがあるような。人っ子一人いませんけど。…ん?人の気配。隠れましょうか」
さて、今度はいったい誰が、ってあれは。いや、まさかここは…。
「んー。っかしいなあ?今確かにここにヌキヌキポンな美人がいたような気がしたんだがなあ?」
「…とうとう幻覚まで見るようになっちまったか、この馬鹿は。馬鹿なこと言ってねえでさっさと調べるぞ」
「へいへいどうせ俺は馬鹿ですよーだ。ま、気のせいか。じゃあちゃっちゃと中に入りますか」
……まさかとは思いましたが。やはりここはkkkの世界だったようですね。てか私ここにいて大丈夫なんでしょうか?
『安心したまえ。ここは彼らの領域だ。第六天の手は及ばぬよ。私の方からも可能な限りの隠蔽をおこなっているしね』
安心、していいのでしょうか、私?
あっ、少佐出てきた。黒髪だとなんか新鮮ですね。溜息なんかついちゃってますよ。…苦労が多そうですよね…あの面子を引率するのは。…あれっ、なんかこっち見て…。
「…もう出てきていいぞ。いるのは分かっている」
いきなりばれました!?
…そのまま隠れていても良いことなさそうですので出ますか。
「…ほう。これは…また随分と懐かしい顔だな。いや、懐かしすぎるか。貴様、私の部下ではないな」
「…そんなことまでわかってしまうんですね。やはりどこの世界のどの時代でも、あなたの眼はごまかせないようですね…ヴィッテンブルグ少佐」
古き咒で彼女のことを呼ぶ。
なんだか彼女の雰囲気は、とても丸く感じる。これも長い経験の賜物なのだろうか。
「…なにやらお互い色々あるようだが、こんなところで立ち話もなんだ。茶の一つでも出そう。どうせあやつらはしばらく出てこぬ。…どうかな?客人」
―――その誘いを断る理由は、今の私にはなかった。
~おまけ・魔王のサイン~
せっかく何の因果か歴史を知って、その中を今まさに生きているのだから、息抜きがてら、歴史をみてこようと思い、この基地に来てみたが、余計な荷物までついてきてしまったようです。
「…なんであなたまでついてくるんですか?…暇なんですか?」
ジト目を水銀に向けてみるが、まるで効いていない。むかつきます。
「何、戦乙女が噂の英雄殿に興味を持っているとと風の噂で小耳にはさんだものでね。いてもたってもいられずこうして駆けつけた次第。許されよ、観覧は数少ない私の趣味なのでね」
どんな風の噂だ。っていうか何を観覧するつもりですか何を。まったく。
「…いいですけど。邪魔しないでくださいね。でも自分で来といてなんですが、そうそう会えるような人ではな「中佐!勘弁してください!骨が!ちょっ、負傷してるんですが!!」「休養などはとっていられない。すぐに出撃だ!」…いましたよ、ここに。あなた何かしましたね?」
「人聞きの悪い。私は何もしていないよ」
どうだか。
あ、こっちに来ますね。
「…ん?これはかわいらしい御嬢さんだ。こんな辺鄙な基地に何の用だね?」
…!は、話しかけられちゃいましたよ!?ど、どうしましょう!?
「…は、はッ!私は、
動揺のあまりつい手帳出してしまいました…。しかも噛んじゃうし。は、恥ずかしい。
「これはこれは、
ホントに書いてくれちゃうし…。あ、どうも。
「あ、ありがとうございます、中佐殿!任務、頑張ってください!!」
「戦乙女の声援があれば、百人力だな。こちらこそありがとう!では失礼する。さあ行くぞ、ガーデルマン!アカどもが私を待っている!時間は有限だ!」
「き、君、た、助け…」
後部機銃手の少佐殿がなんか私に助けを求めていましたがスルーします。…人間、あきらめが肝心ですよね。
「…なんであの人死なないんですかねー?あなた、何かしましたか?」
「…遺憾ながら何もしていない。マルグリットに誓ってもいいよ。私は、何も、していない。いや、本当に」
何やら口数が多くて気になったので聞いてみる。
「彼を黒円卓に入れようとは思わなかったんですか?色々と凄そうですが」
一瞬固まった後に答えるメルクリウス。
「ああ、かつて一度だけ、試しに入れてみたことがある。その時は…」
「…その時は?」
「…思い出したくないね」
いったい何があったんですか!?…いや、まあ、なんとなく想像がつかないでもないのがアレですが。
「…魔王、いったい何者なんだ……?」
私の問いに答えられる者は、いなかった。
おまけのおまけ
P博士「これぞ試作超重戦車マウス!!これを全軍に配備した暁には(ry」
ベア子「自重しろ」
後半へつづく(キートン山田調
長文でもう死にそう(爆)
はい、おふざけ全開の駄文ですね!
あ、このベア子の料理の腕は、前世で実際に作ったことがある物は美味く作れます。
それ以外は軒並み普通(笑)ですがw
魔王に関しては…まだスワスチカが全部開ききってないのに大隊長三人どころか黄金、水銀も無理やり出撃させて軒並み打倒してしまうという悲劇(笑)があったりしますw水銀はあわや完全消滅させられそうになりましたが、必死で永劫回帰しましたwそれ以来避けてますw
水銀「試しに一度やらせてみよう」はフラグでしたね、はいw
後半はさらっと流す予定です。
あー、とうとう次で電池切れかな。誰かいないかなー続き書いてくれる人。