今まで放置しててすみませんでした!(土下座
これから敵が少しずつ動き出します。
本格的に動き出すのはセブンスターズ編に突入してからですが……。
それでは久々の星屑の竜の軌跡、月一試験編をお楽しみください!
TURN06―微かな異変
「それにしても竜星も精霊が見えたとはなー。俺、電波扱いを心配しなくて良かったんじゃん」
白夜のケラケラ笑う声に竜星はハハッと乾いた笑みを浮かべた。
なんとまあ、仲間の精霊達が呼んだのはルームメイトの白夜だったのだ。
自分を運んで包帯をグルグル巻いて手当してくれた白夜も精霊が見えたらしい。
憑いてたのはわかったが見えるとは思わなかった。
自分をベッドに寝かした白夜が「で?」と言いながらどこか黒い笑みを浮かべて――
「どうしてあんなとこにいたのかなぁ?」
肩をグワシッと掴んで竜星に問いかけてきた。
掴んでいる手に込められた力が強くなっているのは肩がだんだん痛みんできていることからも明白だった。
「全部洗いざらい……HA★NA★SEな?」
「わ、わかった、他言無用だからな! それさえ守れば話すから、手を放してくれ、ください!! イタイタイタイタイタイタイタイタイギャァァァァァァァァァァァ!!!!」
こんな感じで全部吐かされた。
痛みから解放された竜星は自分の正体を知って目をキラキラさせた白夜に「カッコいい!!」を連発され恥ずかしさのあまり主を守るという使命がなければ死にたくなったとかなんとか呟いていたらしい。
そんなこんなでアカデミアに来て数日がたった。
怪我ももう治った(先生達には探索してて崖から落ちたとか適当なこと言っておいた)ので、問題はない。
しかし竜星は謎の少女の残した言葉の意味がわからず、なおかつデュエルで気絶してしまい、さらには主の手がかりも進展なしで、気分が沈んでいた。
しかしいつまでも落ち込んではいられない。なんといっても今日は――
『月一試験の日やからなぁ』
『まずは筆記試験、頑張りましょー!』
精霊達が見守る中(ハッキリ言って邪魔)、竜星はシャーペンを持って問題を解き始めたのだった。
――数十分後――
『終わったなー』
筆記が終わり、生徒達が立ち上がる中、竜星はパッタリ机に突っ伏していた。
精神的に疲れた。主に後ろで騒ぐ精霊達のせいで。
思えば推薦は筆記が免除だからこういう人間のペーパーテストの風景は初めて見るのだろう。
自分は初めてやる方だったが。
「おい、生きてるかー?」
ぺしぺしと後ろでポニーテールに纏め上げている銀髪を叩き、そう声をかけられたので竜星は顔を上げる。
そこには自分の記憶より少し幼い見知った顔があった。
「俺、遊城十代! よろしくな」
あぁ、知っている。だって目の前の彼はかつて主と一緒に自分を救ってくれた恩人なのだから。
――廊下――
「……」
優斗は顔に陰を落としながらトボトボと歩いていた。
万丈目がクロノスからカードを貰い、十代を下そうとしている現場に出くわした彼はすぐさま止めようとした。
しかし――
「万丈目さんの邪魔してんじゃねーよ!」「俺らはレッドのくせにでしゃばる110番に世間の広さを教えてやろうとしているだけなんだからよ!」
そう言った取り巻きに殴られ、気絶してしまったのだ。
ボロボロと涙が流れる。
「うっ……っく、ふぅ……ッ何が、世間の広さだよ……! ただ君達は相手を見下したいだけじゃないか……ッ……なんで、そんな卑怯な奴に変わっちゃったんだよ……」
幼馴染の名前をポツリと呟く。今ではもう呼ぶことの許されない昔馴染みの名前を。
――「準君」と。
「幼馴染を、止めたい?」
廊下に響くソプラノにハッと振り返る。
「君は!」
「なら、力を上げましょう」
その人物から投げられたカードは黒い光を放ち、優斗を包み込んだ――――。
明日香の情報で新発売のパックを見に購買にやって来た竜星はすでにパックが買い占められているという事実に唖然とする十代達を尻目にパンを買っていた。
「アナタは、パックいらないの?」
何故か隣にやって来た明日香が問いかけてきた。
竜星はそれにフルフルと首を振って、
「俺は試験決闘者だから」
「あぁ、もうすでにカードはテスト用として支給されてるのね」
合点がいったとばかりに頷く明日香の手元をじっと見つめる。
はてなマークを浮かべた明日香は少し考えてから「あぁ」と呟いた。
「ドローパンよ、これ」
「ドローパン?」
きょとんとして興味津々に自分の持つドローパンを見つめてくる竜星にクスクス笑いながら明日香は説明する。
意外とかわいいなと心の隅で思いながら。
午後行われるのは実技試験。
本来なら同じ寮の生徒同士で行われる試験は推薦者のみ上位の寮と行われる。
もちろん、白夜や竜星も。
『オシリスレッド、不動竜星、第2デュエルフィールドに降りるノーネ!』
自分の担任であるクロノスという教師の声にスクッと竜星は立ち上がる。
先程ブルー生徒とデュエルを終えた白夜は入れ替わりにフィールドに入っていった竜星に手を振り、席に戻った。
席では気の合う友人の三沢大地が待っていた。
「やあ白夜。ナイスデュエルだったぞ」
「サンキュー! シンクロ使うまでもなかったなー」
笑いながらそう言う白夜に三沢は苦笑する。
「相手はブルーでもトップの方にいたのに、さすがだな」
「うっせーよ、ダメージ通さずに相手下したお前に言われたくねー」
「たまたま今日は引きが良くてな。それより――」
視線を先程まで白夜のいた第2デュエルフィールドに向ける。
そこでは竜星がデュエルを始めようとしていた。
相手はオベリスクブルーの城之内優斗。
優斗は始終顔を俯かせているので表情はうかがえない。
白夜は三沢の隣でそんな優斗に違和感を覚えた。
「デュエル!」
「……デュエル」
ワンテンポ遅れて優斗が呟いた。
竜星
LP4000
優斗
LP4000
――ターン・竜星――
「俺のターン、ドロー」
竜星は手札を見てフッと笑みを浮かべる。それは彼の主似の綺麗な微笑だった。
「俺は手札のモンスターを墓地に送りクイック・シンクロンを特殊召喚!」
現れたのはカウボーイ風のレベル5のチューナー、クイック・シンクロン。
クイック・シンクロンは銃を優斗に向けてから竜星のフィールドに立った。
クイック・シンクロン/ATK700
「そして俺はボルト・ヘッジホッグを召喚!」
ボルト・ヘッジホッグ/DFE800
「レベル5チューナー、クイック・シンクロンをレベル2のボルト・ヘッジホッグにチューニング! 集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ!」
レベル5+レベル2=レベル7
「シンクロ召喚! 燃え上がれ、ニトロ・ウォリアー!」
現れたのは緑色の体の悪魔のような風貌をしたモンスター。
白夜は現れたそのモンスターにポツリと小さく呟いた。
「マズイな」
「あぁ。確かにマズイ。シンクロモンスターは試験用カードとあってまだ世間に発表されてないから効果が不明だし「いや、違う」は?」
頷く三沢は白夜の言葉にはてなマークを浮かべながら問いかけた。
「何が違うんだ?」
「シンクロ召喚は特殊召喚と同じだ。そして優斗のデッキは――」
優斗と一度戦い、彼が何のカードを使うか知っている白夜は目を細めて言葉をそこで区切った。
出てきたニトロ・ウォリアー(精霊)は「ヒャハハハ! 俺の時代だぜー!」と叫んでいるがその以西はいつまで保つか……
「次のターン、優斗はあのシンクロモンスターをブッ飛ばすはずだぜ」
手前に目を向けると竜星がカードを1枚伏せてターンを終了したところだった。
竜星
LP4000
手札3枚
モンスター:ニトロ・ウォリアー(ATK2800)
魔法・罠:リバース×1
一方こちらは万丈目SIDEである。彼はいつもと様子の違った幼馴染に苛立っていた。
(クッソ、何故あいつは顔を上げない! 何故、いつもの様子でデュエルしないんだ!!)
彼はわからない。自分が彼に向ける苛立ちがどこからくるのか。わからないから今まで彼に冷たい態度をとってきたのだ。
――それが彼を傷つけているとはわからずに。
――ターン・城之内優斗――
「僕のターンだ……」
静かに、低く地を這うような声で宣言しカードを引く。
その顔は伏せられて表情はわからない。
「コアキメイル・ウルナイトを召喚」
コアキメイル・ウルナイト/ATK2000
「ウルナイトの効果発動……1ターンに1度、手札のコアキメイルの鋼核を相手に見せ、デッキからレベル4以下のコアキメイルモンスターを特殊召喚する……コアキメイル・アイスを召喚……」
コアキメイル・アイス/ATK1900
「あれは……!」
三沢は目を優斗の前に特殊召喚されたモンスターを凝視し、同時に白夜の言葉の意味を悟った。
コアキメイル・アイスの効果は確か!
「手札を墓地に送って特殊召喚された君のニトロ・ウォリアーを破壊させてもらう」
そうか、確かにコアキメイルは特殊召喚に対してメタ能力を持っている。
シンクロ召喚が主体の竜星のデッキとは相性が悪いのだ。
「白夜、君は彼が使うカードを知っていたのか」
「あぁ」
頷いた白夜の視線はフィールドを向いたままだ。
彼はポツリと、「これでリバース1枚だけだな」と呟く。三沢もフィールドに目を向けた。
竜星の場のカードが攻撃を防ぐカードでなかった場合、とんでもない大ダメージによって一気に彼は不利になる。
「コアキメイル・ウルナイトで攻撃する」
大剣を持ったコアキメイルが竜星に向かって突撃してくる。
「ぐぅ!」
竜星
LP4000→2000
その様子に三沢は伏せているのは攻撃対応のカードではないと考えた。しかし――
「アイスで攻撃する」
その瞬間、竜星はディスクを操作した。
「トラップ発動、コンフュージョン・チャフ!!」
「あれは確か今日のパックに収録されたはずの新規カードだな」
白夜の言葉に三沢は目を丸くし心の中で「パックを買っておけばよかった」と呟いた。
まあ結局はクロノスに買い占められていたのだけど。
白夜は内心orz状態の三沢に説明した。
「確か海馬さんに販売おkカードの一つとして報告した奴だよ。効果は……」
「1度のバトルフェイズ中に2回目のダイレクトアタックが宣言された場合、その相手モンスターは、1体目ダイレクトアタックをしてきた相手モンスターとバトルする!」
「っ……」
「な!?」
「は……?」
アイスの目の前にワープしたウルナイト。アイスが破壊され爆発する。
白夜は風の影響で少し見えた優斗の表情に目を見張った。それは別の場所で観戦していた万丈目も同じだった。
優斗
LP4000→3900
「痛い、ね……」
感情の読めない声で呟いてから、
「カードを伏せる。手札のコアキメイルの鋼核を墓地に送ってウルナイトを場に残してからターンエンド」
エンド宣言をした。
万丈目は愕然としながら信じられないといった風に呟いた。
「なん、で……」
優斗の表情は能面のように無表情で、感情のこもってないガラスのような瞳だった。
優斗
LP3900
手札2枚
モンスター:コアキメイル・ウルナイト(ATK2000)
魔法・罠:リバース×2
観客席で生徒に化けてその様子を見ていた少女―セツナは嗤う。
「例えその中に秘められた思いが純粋だったとしても歪んだ感情を向けていれば、いつしか相手は自分から離れてく……そんな事も気づかなかったなんてバッカみたいだねー」
クスクスと嗤ってセツナは視線を万丈目にだけ注いで――
「まあ、せいぜい離れてしまった心を取り戻す努力でもすれば良いよー。手遅れだろうけどねー」
笑みを嘲笑に変えてそう言ったのだった。
――To be continued……。
今回少し短かったですね。
次回は引き続き月一試験です!
アカデミアで月一試験中に異変が起き、優斗と万丈目の過去が少し垣間見えます。
それでは、次回も待っててほしいです!
感想もらえるとうれしいです。