遊戯王GX~星屑の竜の軌跡・リメイク~   作:しえ&翼樹

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 今回はデュエル無しで、竜星のレッド入り理由も次回に持ち越しになってしまいました。
 すみません。


TURN03―もう一人の試験決闘者

SIDE:白夜

 

 校長先生のありがたいお言葉を聞いて俺は自分がこれから住むレッド寮へと向かった。

 白い鎧に赤い翼の半透明の相棒が隣で何だか「何でレッド寮にしたんだ」とうるさいが無視して寮へと向かう。

 校舎から遠い道のりを歩いて見えてきた寮は――

 

 

 予想通りおんぼろアパートです、本当にありがとうございました。

 

『おいおい、ここに住むってのかよ』

 

「仕方ないだろう」

 

『てか、何でここを選んだんだよ。お前の筆記や実技の成績なら十分にイエロー行けたじゃねぇか!』

 

「いいじゃねぇか、趣味だ趣味! 豪華なところはにあわねぇんだよ」

 

 口うるさい相棒をあしらいながらあてがわれた部屋のドアを開ける。

 

「こんにちわーっと……え?」

 

「は?」

 

 …………えぇっと、俺の見間違いでなければ目の前にいるのは試験会場でシンクロ召喚を披露してご活躍なさっていた不動竜星さんではないでせうか?

 

 固まっている俺に不動は「あぁ」と悟ったように一人頷く。

 否、一人ではない。後ろで白い衣を纏った美少女や紫の装甲の戦士、ネジの突き刺さったハリネズミや桃色の鳥まで、いろんな生物、ではなく俺の隣にいる相棒と同じ存在のモノ達が俺を見つめてきた。

 

 そんな彼らには目もくれず、不動は俺に手を差し出した。

 

「お前が俺のルームメイトか。俺は不動竜星。よろしく」

 

「あ、あー俺は天堂白夜。よろしくな不動」

 

「竜星で良い」

 

 女の子が見たら一発でハートを射抜かれるであろう微笑を浮かべて差し出してきたその手を、俺は「これからこの美形と一緒に生活するのかー」と混乱から抜け出せない頭で考えながら、握って自己紹介をした。

 

 

「しかし、やはり海馬さんは俺達、試験決闘者を同じ部屋に割ったか」

 

 その言葉に飲んでいたお茶を思わず噴出しかける。

 ゲホゴホと咽ながら俺は、

 

「な、なんでわかった!?」

 

「いや、制服着てるだろう」

 

 その言葉に俺は自分の制服を見つめて納得した。

 試験決闘者の制服は普通のデュエルアカデミア生徒の制服とは違うデザインだ。だから誰が試験決闘者かなんて一目でわかる。

 そういえば、竜星も俺と同じ制服を着ている。っていうか、試験で思いっきりシンクロ召喚使ってたなそういや。

 

『やっぱりデュエル以外のことはバカか』

 

「んだとゴラー!?」

 

 ボソリと呟かれた言葉に思いっきり叫んで相棒へと突っかかる。しかしハッとして竜星のほうを見た。

 キョトンとして俺を見ている。

 

「あ、いや、今のは、その」

 

 ま、マズイ、絶対電波だと思われたー!!

 相棒はカードの精霊だ。そんな精霊が見える人間はほぼいない。なのに精霊と話してたら見えない人間には「何こいつ、気持ち悪っ!」と言われるのがオチである。

 

 ちなみに一度それで遠巻きにされて悲しい思いをした。

 え? なに、泣いてないよ?

 

「お前、まさか……」

 

「違います違います電波じゃないよ俺!? ドチクショー!」

 

 そのときだった。言い訳を必死で考えてる俺を救済するかのようにコンコンと扉がノックされた。

 

「おーい、白夜ー」

 

 十代だ! 十代というのは先ほど知り合った同じレッド寮の仲間。E・HEROデッキを使い、これから数々の敵を倒していく。

 は? 何で俺がそんなことわかるんだって? それは――

 

「白夜ー?」

 

 まあ、いつか話そう。

 

「はいはい、今出ますよーっと」

 

 そう言ってドアを開ける。いたのは十代と同じくレッド寮の仲間の丸藤翔だった。

 満面の笑みの十代は俺の腕を引っ張り弾んだ声で言った。

 

「校内探検しようぜ!」

 

「えー」

 

 まあ良いけどさ。

 ついでだと思って中にいる竜星に声をかける。

 

「竜星ー」

 

「なんだ?」

 

「せっかくだし校内探検行こうぜー」

 

「校内探検、か」

 

 竜星は少し考えてから腰を上げる。

 

「行こうか。生活するにもどこに何があるのかは知っておかないとな」

 

 SIDE:白夜END

 

 ――アカデミア校舎・デュエルフィールド――

 

 竜星達は互いに自己紹介をしながら校舎を歩き、デュエルフィールドへとやって来ていた。

 さすがはデュエリスト育成学園・デュエルアカデミアのデュエルフィールド。設備はすべて最新型のものだった。

 翔はそれにはしゃぎ、十代はデュエルをしようと言い出す。竜星はまるで興味がないというような雰囲気だ。

 白夜は疑問を覚える。

 何故、さっきから何かを探すように視線を動かしてるのだろう?

 

 しかしその片やはしゃぎ、片や何かを探すという雰囲気に水を差す声が響いた。

 

「あの紋章が見えないのか? ここはオベリスクブルー専用のデュエルフィールドだ」

 

 偉そうなブルー生徒2人が立ちはだかった。

 翔は謝ろうとするが十代はそれはおかしいと言う。そして何か探し終わって落胆したような表情を浮かべた竜星も、表情を一転、真剣な顔でそれに賛同した。

 

「そうだな。生徒手帳には学園内の施設はどんな生徒であろうと共有できる権利があるという内容が書かれている。お前達の言い分は人を見下してる心からくる戯言だ」

 

「っ、なにぃ!?」

 

 今にも掴みかかろうとするブルー生徒だったがそれをある生徒の声が止めた。

 

「止めろ、お前達」

 

「「万丈目さん!?」」

 

 万丈目と呼ばれた黒髪のブルー生徒は観客席に座りこみ、竜星達を見下ろしていた。

 後ろには紫色の髪色をしたブルー生徒がいた。

 

「そいつら、お前達よりやるぞ。とくに、そこの蒼いメッシュと黒髪の試験決闘者はな」

 

「試験決闘者!?」

 

「た、確かに、あのメッシュはあの日、試験会場でシンクロ召喚とかいうのでデュエルしてた推薦番号2番……でも、何でわかったんですか?」

 

「そいつらの制服だ。そこの黒髪の奴とメッシュの奴は制服が110番達とは違う。それこそがまぎれもないKCとI2の試験決闘者だという証拠だ」

 

 万丈目の言葉に白夜はニヤリと笑い、

 

「へぇ、中等部トップの成績と未来のデュエルキングって噂は伊達じゃないみたいだな。デュエル以外でも洞察力はなかなかのもんってか」

 

「ほう、俺のことを知ってるか?」

 

「あぁ。新ルール、新カードのデータ収集のためのデュエル相手候補として、成績上位者のことは叩き込まれてっから」

 

 その言葉に万丈目はニヤリと笑い返し、下へと降りてきた。オロオロと少し戸惑った雰囲気で紫の髪のブルー生徒も降りてくる。

 

「まあ、俺のことを知っていたのは褒めてやろう」

 

「そりゃどーも」

 

 偉そうな態度の万丈目に白夜は投げやりな返事を返す。

 

「気に入ったぞ。どうだ、俺に付かないかお前?」

 

 その勧誘の言葉に白夜は手をヒラヒラと振り、

 

「悪いんだけど、猿山の大将なんかについてて俺に得があるとは思わないね」

 

「何?」

 

「人を見下し、取り巻きをはべらせ、いい気になってる奴なんかの下についてて得なんかないって言ってんだよ」

 

「貴様ッ!!」

 

 万丈目の取り巻きのブルー生徒が白夜の胸倉につかみかかろうとした瞬間、鋭い女子の声が響いた。

 

「何をやっているの?」

 

 竜星は物陰に目をやる。そこから出てきたのは2人のブルー女子生徒。

 一人は腰まで長い金髪の、一人はセミロングの黒髪。2人を見たとき、竜星の中に自分の探し人の顔が浮かび上がる。

 

 腰まで長い黒髪、金色のメッシュ、そして海よりも深い蒼い、藍色の瞳。

 肩幅が広く、華奢だけれど(無礼承知ではっきり言うと)体つきが女性的ではなく、髪を短くスカートすら履いてなかったときは女ではなく男に間違われてた彼女は、けれどもどんな女より輝いていた。

 

「マスター……」

 

 唇をキュッと引き締め、苦しいそうな表情を隠すように顔を俯かせ、ポツリと呟いたその言葉は万丈目の「行くぞ!」という言葉に掻き消され、誰かに聞こえることはなかった。

 

 そんな中、紫の髪のブルー生徒が白夜に近づきこっそりと万丈目達に聞こえないように言う。

 

「ゴメンね、いろいろと不愉快な思いさせちゃって」

 

「優斗君、いい加減に万丈目君から離れたほうが良いわよ。君がこれ以上、彼の傍にいて辛い思いをしても……」

 

 金髪の女生徒は紫の髪のブルー生徒―優斗に心配そうな顔で言うが、優斗はにっこり笑って「大丈夫」というと、再び「本当にゴメンね」と言って去っていった。

 

「へぇ、結構ブルーにもまともな奴がいんだなー。なあ竜星って、竜星?」

 

「――!? っあ、あぁ、何だ?」

 

 顔を俯かせていた竜星を心配した白夜に声をかけられた竜星は顔を慌てて上げる。

 

「いや、ブルーにも結構まともな奴いんだなって」

 

「あ、あぁ、そうだな」

 

「どうしたの2人とも?」

 

「それにしても、助けてくれてサンキューな」

 

 そんな2人に翔は質問し、そんな3人をスルーし、十代が女生徒へとお礼を言う。

 

「えぇ。でも、万丈目君達に関わりあいにならないほうが良いわ。彼ら、ろくでもない連中なんだから」

 

「明日香、あんな連中相手にカッカしていたら体が持ちませんよ」

 

 忌々しげに万丈目達の去った方向を見ながら金髪の女生徒―天上院明日香はそう言い放ち、黒髪の女生徒はそんな彼女を宥める。

 

「そうだ、俺は遊城十代! こっちは翔と白夜と竜星!」

 

「よろしくお願いしますッス」

 

「シクヨロー」

 

「……不動竜星だ」

 

「私は天上院明日香、こっちは私の友人の宮華(みやは)暮琶(くれは)

 

 暮琶と紹介された黒髪の女生徒はペコリと頭を下げ、

 

「宮華暮琶です。よろしくお願いしますね」

 

 そう言って笑った。それに十代は屈託のない笑顔で返事をし、翔は頬を赤らめ「綺麗な人だなぁ」と呟き、竜星と白夜はその笑顔に違和感を感じる。

 

((まるで、よくできた演技?))

 

「それより、そろそろ歓迎会が始まるわよ?」

 

「あ、そうか! 行こうぜ皆!」

 

 その言葉にいち早く十代が駆け出し、翔はそれを追いかける。白夜も「ご飯、ご飯ー♪」と走り出し、竜星も走り出そうとする、が――

 

「――?」

 

 背中に妙な視線を受け、振り返った。

 しかしそこには明日香と暮琶がいるだけで、気配も2人以外にはない。

 

『星屑の旦那、行くでー?』

 

『というより皆さんもう行っちゃいましたよ?』

 

「あ、あぁ……」

 

 竜星はジャンク・ウォリアーとエフェクト・ヴェーラーの言葉に走り出した。

 このとき、竜星は暮琶がそのアメジスト色の瞳に得体の知れない光を宿したことに気づかなかった――。




 次回は主人公格キャラの一人である白夜のデュエル+竜星のデュエルです。
 デュエル2本立てということで遅くなる可能性があります。

 これから夏休みですけど、受験生なもんでして……。

 白夜はオリキャラの優斗との、竜星は謎の人物との闇のデュエルの予定です。

 あと最後に、感想を下さった読者の皆さん、本当に嬉しくて胸が熱くなりました。
 ありがとうございます! 次回をお楽しみにしててほしいです。

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