SIDE:???
そいつが出てきたとき会場は騒然となった。
無理もないと思う。推薦番号2番と呼ばれたそいつ―不動竜星はかなりの美形だったから。射抜くように鋭い金色の瞳と銀髪に蒼いメッシュの入ったロングヘアー。
世にはこんな絵に描いたような美形がいるんだと感嘆してしまった。
『白夜~、試験官待ってるぜ?』
「あ、そうだな」
俺に声をかけてきた
「推薦番号6番、
自分の名前を名乗りにかっと笑う。それに先生は大きく頷き、
「元気でよろしい! 私が君の試験を担当する大谷だ」
「んじゃ大谷先生、さっそくよろしくお願いします!」
「うむ」
俺の言葉に大谷先生は大きく頷きデュエルディスクを構える。
俺も自分のディスクを構えて――
「「デュエル!」」
その頃、別の所では――
「ハ―ッハッハッハ!! 弱ぇ弱ぇぜ! 先生さんよぉ! インフェルニティ・アーチャー、止めを刺してやんなぁ!」
「ぐわぁぁぁ!!」
試験官
LP2000→0
「ハッ! この程度かよ……興醒めだぜ」
「さあ、最後の舞を贈りましょう。桜姫タレイア、踊りなさい!」
「ぐぉぉ!?」
試験官
LP1000→0
2人の受験生が試験官を倒していたり、
「なかなかやりますね、ですがここまでです。ジェムナイト・マディラ、勇敢なる彼に敬意を払って、攻撃!」
逆に一人の受験生を試験官の青年が倒していた。
そしてまた、竜星のデュエルも始まっていた。
「「デュエル!」」
先攻・竜星
LP4000
後攻・試験官
LP4000
――ターン・不動竜星――
「俺のターン、ドロー」
デッキトップからカードを1枚引き抜き、それを一瞥すると竜星は手札と見比べる。
「俺はマジック、ワン・フォー・ワンを発動! 手札からボルト・ヘッジホッグを墓地へ送り、デッキからレベル1モンスター、レベル・スティーラーを召喚」
レベル・スティーラー/DFE0
「カードを2枚伏せ、ターンを終了します」
竜星
LP4000
手札2枚
モンスター:レベル・スティーラー(DFE0)
魔法・罠:リバース×2
――ターン・試験官――
「ふむ、私のターン、ドロー! 切り込み隊長を召喚!」
切り込み隊長/ATK1200
「切り込み隊長の効果で手札からレベル4以下のモンスター、コマンド・ナイトを特殊召喚! そしてコマンド・ナイトの効果で私のフィールドの戦士族モンスターは攻撃力が400ポイントアップする」
コマンド・ナイト/ATK1200→1600
切り込み隊長/ATK1400→1600
「コマンド・ナイトでレベル・スティーラーを攻撃!」
コマンド・ナイトがその剣でレベル・スティーラーを真っ二つに切り裂く。
「切り込み隊長でダイレクトアタック!」
「……」
竜星
LP4000→2400
「カードを1枚伏せてターンエンドだ」
試験官
LP4000
手札3枚
モンスター:切り込み隊長(ATK1600)
コマンド・ナイト(ATK1600)
魔法・罠:リバース×1
――ターン・不動竜星――
「俺のターン、ドロー……。よし……」
ドローしたカードを見ると竜星はほくそ笑んだ。
「俺はまず永続魔法、ドミノを発動。そしてチューナーモンスター、ジャンク・シンクロンを召喚!」
「「「チューナーモンスター?」」」
聞きなれない言葉に会場は沸く。
そして全員が注目した。
ジャンク・シンクロン/ATK1300
「ジャンク・シンクロンの効果、このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスターを表側守備表示で特殊召喚する! 戻って来い、レベル・スティーラー!」
レベル・スティーラー/ATK600
「そしてボルト・ヘッジホッグの効果発動! 自分のフィールドにチューナーがいるとき、このカードは墓地から特殊召喚できる!」
その言葉とともにボルトが突き刺さったハリネズミのようなモンスターが現れる。
ボルト・ヘッジホッグ/DFE800
「レベル2のボルト・ヘッジホッグにレベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!!」
レベル3+レベル2=レベル5
ジャンク・シンクロンが3つの光の輪となり、ボルト・ヘッジホッグがその中を潜り抜ける。
その光景に試験官は身構えた。
「集いし星が新たな力を呼び起こす。光さす道となれ! シンクロ召喚! いでよ、ジャンク・ウォリアー!」
光の輪の中から現れたのは紫の装甲に白いマフラーのジャンクの戦士。
ジャンク・ウォリアー/ATK2300
『これがマスター助ける第一歩や!』
そして何故か関西弁……しかしそれは竜星にしか聞こえていない。
「そうだな、これがマスターを助ける”私”達の戦いの始まりだ……! ジャンク・ウォリアーの効果発動!」
ジャンク・ウォリアーの声に竜星は頷き、叫んだ。
「このカードが召喚に成功したとき、このカードの攻撃力はフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分アップする!」
「なに!?」
「パワー・オブ・フェローズ!」
ジャンク・ウォリアー/ATK2300→2900
(しかし、私の場にはミラーフォースがある……そう簡単には……)
「切り込み隊長を攻撃! スクラップ・フィスト!」
「トラップ、聖なるバリア―ミラーフォースを発動! これで君のモンスターは――な!?」
試験官は現れたバリアが白銀のブレスによって粉々に砕ける光景を見て目を見開いた。
「悪いですね。伏せてあったトラップ、スターライト・ロードを発動させてもらいました」
そう言った竜星の背後に一体のドラゴンが降り立った。
白銀に緑の体を持つ、金色の瞳を持ったドラゴンが光の屑を纏いながら、竜星の背後に降り立った。
スターダスト・ドラゴン/ATK2500
――観客席――
「綺麗だなぁ……」
受験番号119番、丸藤翔が目をキラキラとさせて竜星の背後に降り立ったスターダスト・ドラゴンを見ていた。
「あぁ」
受験番号1番、三沢大地は息を呑んで見ていた。今までで見たどのモンスターよりも美しいその竜を。
「すげぇすげぇカッコいいー!」
受験番号110番、遊城十代ははしゃぎながら、ふと感じた疑問を三沢と翔に投げかけてきた。
「そーいや推薦番号ってなに?」
そんな十代に三沢が説明する。
「推薦番号っていうのは、デュエル界でもとくに有名な者の推薦を受け筆記試験が免除された受験生のことを言うんだ」
「へぇ~」
「推薦って6人いるけど、三沢君はどんな人が気になる? 僕は断然あの綺麗な竜を使ってる子ッス!」
「まだ全員のデュエルが終わってないからわからないけど、119番君と同じようにあの竜の使い手の推薦番号2番君と、さっきデュエルを終えた推薦番号4番君かな? 2人とも知らないカードを使ってるし、とくに4番君のインフェルニティというカテゴリのデッキは手札が0の時に効果を発揮するという今までに例を見ないものだったからな」
そう言って三沢は推薦番号4番としてデュエルをしていた少年、
白髪に紅い瞳のその少年は三沢と視線があうとニヤリと笑みを浮かべた。
「三沢~? どうしたんだ?」
「あ、あぁ、何でもない。だが、もしかしたら彼が噂に聞いた
「「てすとでゅえりすと?」」
ハモって「何々それ?」と聞いてくる2人に三沢は目を丸くする。
「知らないのか?」
「うん」
「推薦6人の彼らの中に、あのI2のペガサス会長とKCの海馬瀬戸が新カードと新ルールの試運転のために入学させる試験決闘者がいるという噂だ」
「え!? マジ!? あの中にいんのかよ!?」
十代は推薦番号として呼ばれた5人を見回して「くぅ~! 早くデュエルしたいぜ!」と飛び跳ねた。
――デュエルフィールド――
「コマンド・ナイトを攻撃! スクラップ・フィスト!!」
試験官
LP4000→2700
「くっ、やるな、だがまだ切り込み隊長が「ここでドミノの効果を発動! 相手モンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に存在するモンスターを1体、墓地へ送る事で、相手モンスター1体を破壊する!」何だと!?」
「俺はレベル・スティーラーを墓地へ送り、切り込み隊長を破壊する!」
「な!?」
ジャンク・ウォリアーによって屠られたはずのコマンド・ナイトが現れ、切り込み隊長を巻き添えに倒れこんだ。
「ここでトラップカード、スキル・サクセサーを発動! スターダスト・ドラゴンの攻撃力を400ポイントアップする!」
これでスターダスト・ドラゴンの攻撃力は2900。試験官のライフは2700。
よって――
「スターダスト・ドラゴンでプレイヤーにダイレクトアタック! 響け、シューティング・ソニックッ!!」
スターダスト・ドラゴンの口から白いブレスが試験官に向かって放たれた。
「ぐぉぉぉぉ!!」
試験官
LP2700→0
竜星の勝利だ。
試験官は立ち上がると、竜星に言う。
「見事だったよ、下級モンスターが上級モンスターに化けたのには驚いた」
「ありがとうございます」
竜星はそう言って試験官と握手をする。
「あれは確かシンクロ召喚と言ったか?」
「はい、デュエルモンスターズで新たに取り入れられる予定の新ルールですよ」
その言葉を聞いた試験官はハッと目を見開き竜星を見やる。
「もしや君が噂の試験決闘者か?」
「大正解です」
笑みを浮かべる竜星に試験官は笑いかけた。
「導入を楽しみにしてるよ。それと試験官に勝ったのなら合格は間違いない」
「そうですか。良かったです」
そんな竜星を見つめる影があった。
影はニヤリと笑い、囁くように呟く。
「ミィツケタ」
――???――
暗い暗いどこかの居城の一室で黒髪の青年がニヤリと笑った。
「楽しそうですね」
青年の背後にいたオールバックの茶髪の男が主である青年が上機嫌になるのを感じ取り、話しかけた。
「あぁ、楽しいよ。だってあの
「どちらでも良いですわそんなの。だーってわたくし達の敵ではありませんもの」
ピンクのゴスロリの少女はコロコロ笑いながらそう言う。それを隣にいた少年に咎められた。
「おいおい、仮にも彼は神と呼ばれる赤き竜の僕なんだよ?」
「でも に守護される我々が負けるはずはありませんわ」
「そうだね。 の言う通りだ。巫女はすでにこちらの手中」
青年はバッと手を広げた。
「さあ、始めようじゃないか! 主を守れなかった愚かな竜と僕ら選ばれし者達、新たなる星の民の世界を賭けたチェスゲームをね!」
そして