魔法少女リリカルなのはStrikerS-King Seong clone of another-   作:炎狼

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襲撃が始まる的なことを言いましたがこの話の後にいたします
ご迷惑おかけして本当に申し訳ありません


時間

 六課全員での温泉旅行から少し経ち、聖は訓練場にて新人達四人と模擬戦を行っていた。

 

「はああああっ!!」

 

 スバルが気合を入れながら聖に接近にし、強烈な拳を聖に放つ。だが、聖はそれをシールドで一瞬防御すると、スピードに乗っていたスバルをいなす。

 

 態勢を崩したスバルの腹部に聖は肘鉄を見舞いする。

 

「くっ!?」

 

「まだまだ、攻撃が大振りだスバル!」

 

 スバルを叱咤しながら、肘鉄により後退した彼女に追撃を行う聖。

 

 だが、その眼前をオレンジの魔力弾が掠める。

 

『スバル! あんたは一旦下がって!!』

 

『了解!!』

 

 念話で送られてきたティアナの指令に、スバルは頷きつつ聖から後退する。

 

 すると、聖はスバルから目を離し、ティアナに目を向ける。

 

「ティアナさすがに前に出すぎたと思うが?」

 

「ご心配なさらず、これも――」

 

 そこまで告げたところでティアナの姿が空気中に溶けるように掻き消え、同時にそこからストラーダを構えたエリオが高速で接近する。

 

「戦略の一つです!!」

 

 ……幻覚をうまく使ってるな。だが、

 

「それだけじゃあ俺は倒せねぇぞ! っ!?」

 

 瞬間、キンッ、という鉄を打ち鳴らしたような甲高い音が響いたかと思うと、聖の四肢を桃色の鎖が這い回り、拘束した。

 

 ……チェーンバインド!? キャロか!?

 

 聖が動く頭で辺りを見回すと廃ビルの一角からキャロが聖を補足していた。既にエリオは聖の眼前に迫る。

 

「ストラーダ! ロードカートリッジ!!」

 

 エリオの声とともに、ストラーダから薬莢が吐き出される。

 

 同時にエリオがさらに加速し、聖に光速の刺突を放つ。

 

 普通であれば、この距離でよけることは不可能だろう。

 

 だが、

 

 聖は不適に笑うと、

 

「はぁっ!!!!」

 

 気合と同時に全身から魔力を溢れ出させ、自分を拘束していたチェーンバインドを一瞬たわませ、四肢を引き抜くと同時に体を捩り、ギリギリでエリオの刺突を回避する。

 

「なっ!?」

 

 エリオが驚愕の声を上げるが、聖は駆け抜けたエリオの足を捕まえぶん投げる。速さがついていたためか、エリオはかなりの速度で廃ビルの壁に叩き付けられた。

 

「さぁて……今度はこっちの番だ!!」

 

 聖は反撃の態勢に入った。

 

 

 

 

 数分後。

 

 聖の前には泥だらけになった四人の姿があった。

 

「四人ともいい攻めだったぜ? ただまだまだ荒削りな部分が多いけどな」

 

「「「「はい!」」」」

 

 四人は頷きながら返事をする。するとそこへ、

 

「皆お疲れ様ー」

 

 なのは達がやって来た。ヴィヴィオもフェイトとなのはに両手を握られながら嬉しそうだ。

 

 3人の後ろには浅葱色の髪の眼鏡をかけた女性と、薄い藍色の長めの髪を後ろで結わいた女性がいた。

 

 皆がやってくると、ヴィヴィオは二人の手から離れ、聖の足に抱きついた。

 

 それを苦笑しながら抱き上げると、ヴィヴィオは満足そうに笑みを浮かべる。

 

「えーっと、今日の午後の訓練から陸士108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹がしばらく出向になります」

 

 なのはが皆に告げると、ギンガが一歩前に出て、

 

「108部隊ギンガ・ナカジマ陸曹です。よろしくお願いします」

 

 しっかりとした口調で四人に敬礼した。

 

「ナカジマってぇとスバルの姉ちゃんか?」

 

「そうだよ。あれ? 聖知らなかったっけ?」

 

「まぁ会った事はねぇな。ヴィヴィオを保護した時に手伝ってくれたってのは知ってるが」

 

 フェイトに耳打ちしながら聞くとフェイトも小声で答える。すると、なのははもう一人の女性に手を向けながら、

 

「それで、こちらの人が10年前から隊長達のデバイスの調整をしてくれている。本局技術部の精密技術官」

 

「マリエル・アテンザです。よろしくね」

 

 なのはの声に続くようにマリエルは皆に挨拶した。四人も元気よくそれに返す。

 

「じゃあ、とりあえずまずは皆お昼ね。食べた後は午後の訓練がんばるよ!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 一通り挨拶が終わり、なのはが皆に告げると、それぞれ隊舎にある食堂に向かう。聖は抱き上げていたヴィヴィオをフェイトに預けるとマリエルに声をかけた。

 

「お久しぶりです。マリーさん」

 

「そうだね聖くん。こっちでも随分うまくやってるみたいだね?」

 

「まぁそうっすね。でも何で急に?」

 

「うん。はやてちゃん達のデバイスを見ておこうと思ってね。まぁ他にもあるんだけど、安綱も見てあげるよ?」

 

「じゃあ、後で行きます」

 

 聖はマリエルから離れ、なのは達の元にかけていった。

 

「聖くんはマリーさんと知り合いなの?」

 

「ん? ああ、本局にいたときに結構世話になっててな」

 

〈私の整備などもしてくださいました〉

 

 なのはの問いに聖と安綱が返答した。するとなのは少し俯きながら、

 

「……よかったー。マリーさんとは何もないんだー……」

 

 小さくポーズをしていた。

 

 因みにそれを聞いていたフェイトも妙に笑顔だった。

 

 

 

 

 

 昼食を皆でとった後、スバルとギンガ二人だけでの模擬戦が行われた。

 

 二人は互いにウイングロードを駆使し、空中で空戦と同様な動きをしながら戦っている。

 

「へぇー、うまいもんだな」

 

「ウイングロードはあの二人の特有の魔法だからね。うまく使えば空戦も可能になるよ」

 

「まぁ実際今も空戦みたいなもんだしな」

 

 すると一際大きな音がしたかと思うと、どうやら決着がついたようで、スバルの喉元にギンガが拳を衝きたてていた。

 

「はーい、二人ともそこまでー!」

 

 なのはの声が響き、ギンガが拳を引いた。

 

「なのはの訓練受けてても、やっぱり姉ちゃんのほうが強いみたいだな」

 

「みたいだね。でも、結構いいところまで行ってたよねスバルも」

 

「それに嬉しそうでもあったな、やっぱり姉ちゃんと互角に戦えるってのは嬉しいもんか」

 

 聖は戦い終わり、笑顔でいる二人を見ながら小さく言う。

 

 二人が戻ってくるとなのはがレイジングハートをデバイス状態にし、小さく笑い、

 

「さて、じゃあ新人たち四人とギンガもあわせて隊長戦やろうか?」

 

「へっ?」

 

 ギンガは一人キョトンとするが他のメンバーは皆バリアジャケットを展開し、やる気満々だ。

 

「ギン姉。油断しないほうがいいよ?」

 

「隊長たちかなり本気で来ますから。それに今日は聖さんもやるみたいですし」

 

 エリオの視線の先には既にバリアジャケットを展開し、戦闘準備に入っている聖の姿があった。それ以外にも、フェイトやヴィータ、シグナムも準備を始めている。

 

 最初はそれに戸惑いを見せるギンガだったが、すぐに状況を飲みこむと小さく頷き準備を始めた。

 

 

 

 

 

 およそ二十分後、新人達とギンガは地面にへたり込んだ。

 

「ほい、終了。で、いいんだろなのは?」

 

 四人の前に立った聖が安綱を鞘に納めながらなのはに聞いた。

 

「うん。今日の訓練はコレでおしまい。皆よく動けてたよ」

 

「まっまだまだダメダメな部分も多いけどな」

 

 褒めるなのはとは対照的にヴィータは辛口だ。それに皆が苦笑いをしていると、ギンガが聖に話しかけた。

 

「あの、白雲執務官」

 

「聖でいいぜ、ギンガ」

 

「あ、はい! 聖さんもいつもこの訓練に出てらっしゃるのでしょうか?」

 

「いや、俺はたまーにだ。いつもは一人での訓練が多いな。でもどうしていきなりそんなことを?」

 

「えっと、スバルがよく手紙に書いていたので少し気になってしまって」

 

 ギンガの答えに聖はスバルを見ながら苦笑する。

 

「まったく、何書いてんだかなアイツは」

 

「とってもいい人だって言ってましたよ? サポートもしてもらってるみたいで、妹の面倒を見てくれてありがとうございます」

 

「よしてくれや、そこまで面倒見てねぇって。ほんとに偶にしか見てねぇから」

 

 聖はギンガの感謝に頬をかきながら聖は照れ隠しをする。だが、そんな聖の耳をフェイトが引っ張る。

 

「いでででででっ!? なにすんだフェイト!!」

 

「ギンガに色目を使ってる淫獣な聖を懲らしめてるだけだよ」

 

「はぁっ!? 誰が色目使って――!?」

 

 聖の言葉はそこで止まる。なぜならフェイトの先には笑顔を見せつつ、周りに黒いオーラを纏うなのはの姿があったからだ。

 

「……聖くん。向こうでO☆HA☆NA☆SHI、しようか?」

 

「いや、まて。お前等少し勘違いをしてるぞ? 俺はただギンガと話をしてただけ――」

 

 最後まで言わせてもらえないまま、聖はなのは達に連れ去られそのまま消えていった。

 

 残されたのは、ただただ首をかしげるギンガと、苦笑いを浮かべる皆の姿だった。

 

 数分後、聖が連れ去れたた方向から聖の絶叫と、大爆発がしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 その日の夕方、聖は首元を押さえながらげんなりとしていた。

 

「いてー……ったくアイツらー、容赦なしにぶっ放してきやがって……」

 

〈あれはまぁ理不尽でしたねー〉

 

 安綱はそういっているものの、妙に声が楽しそうだ。

 

「おい、今確実に笑ってるだろ」

 

〈なんのことやら〉

 

「ったく妙に器用だなテメェは」

 

 毒づきながら聖はマリエルのいるデバイスルームに向かっていた。

 

「うーっす」

 

 軽めの挨拶をしながら室内に入ると、

 

「いらっしゃーい。じゃあ二人とも今日の夜にね」

 

 中にいたのはマリエルのほかに、スバルとギンガがいた。

 

「わかりました」

 

「では、またお邪魔します。聖さんもまた」

 

「ん、おう。またな」

 

 二人は聖に軽く会釈をすると、部屋から出て行った。

 

「二人は何か会ったんスか?」

 

「んー、まぁちょっとね。それよりも聖くんが来た用事は安綱かな?」

 

「ええ。調整よろしくお願いします。どんくらいかかりますかね?」

 

「そうだねぇ……今日はスバルたちと約束があるから明日の朝までにはできてるよ」

 

 マリエルの返答を聞いた聖は安綱を渡した。

 

「じゃあ、しっかり調整されて来い。ついでにそのへらねぇ口も少しは制限してもらって来い」

 

〈お断りです〉

 

「アハハ……。相変わらずだね二人は」

 

 二人の言いあいを見ながらマリエルはぎこちない笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、また来ますんで。安綱頼みます」

 

「はい。わかりました」

 

 聖は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

「さて……安綱もいなくなったしどうするか」

 

 聖は手持ち無沙汰になってしまいあたりを見回してみるが、特にこれといって何かあるわけでもない。

 

 仕事は既に終わっているし、はやてからの呼び出しもない今、聖は非常の暇なのである。

 

「うーん、飯になるまでヴィヴィオの相手でもしてるか」

 

 思い至ったように聖は自室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「大分無茶してるみたいだね安綱」

 

〈そこまで行っていましたか?〉

 

「うん、フレーム自体は大して損傷はないけど……コアのほうにダメージが残ってるよ」

 

 聖のいなくなったデバイスルームでマリエルと安綱は静かに話しをしていた。

 

〈……あとどれくらい持ちますか?〉

 

「……今のまま使ってれば多分一ヶ月。でも今日整備するからまだ少し延ばせるはずだよ……」

 

〈そうですか。……まぁそれぐらいあれば十分です〉

 

 安綱の言葉にマリエルは唇を噛む。

 

 安綱のコアには誰が付けたのかわからないが、あるプログラムが組み込まれていた。それは自壊プログラムだ。時が来れば自動的に発動するようになっていて、マリエルの手を持ってしてもそれを解除することは不可能だった。

 

 因みに行っておくと、その自壊プログラムの期限は既に過ぎていて、今は何とかそれを伸ばしているに過ぎないのだ。

 

「ねぇ……やっぱりこのこと聖くんに伝えたほうが!!」

 

〈なりません〉

 

「どうしてっ!?」

 

〈自らの主に心配事を増やさせるなど私の理念が許しません。それになにより、私如きのことであの方を悩ませたくないのです〉

 

 悲痛な声を上げるマリエルに対し、安綱は気丈に言い切った。その声は機械音声で一定に聞こえるものの、確かな決意がこめられていた。

 

 少しの沈黙の後、マリエルは目じりに溜まった涙を服の袖でぬぐい端末を操作し始めた。

 

「安綱。確かにこのことは聖くんには言わないけど、安綱を大切にするようには伝えるからね?」

 

〈……それぐらいならば構いません〉

 

 安綱はマリエルの言葉に静かに返答し、そのまま一度も口を開くことはなかった。

 

 

 

 

 

 ヴィヴィオやなのは達と夕食を終え、時刻は深夜。

 

 聖は木刀を持ちながら六課の屋上で素振りをしていた。最近はヴィヴィオも聖がいなくても眠れるようになってきたので、聖は時折こうして夜の鍛錬をしているのだ。

 

「フッ! ハァッ!!」

 

 気合の声を時折挟みながら、聖は仮想の敵を決め木刀を振る。

 

「随分と気合を入れているな白雲」

 

 すると、聖の背中の方から凛とした声が聞こえた。

 

 声の方向を見ると、壁に背を預けた状態のシグナムが聖を見つめていた。

 

「シグナムさん。なんでここに?」

 

「いや、少し残業が残っていてな。部屋に戻ろうとしたところでお前が屋上に上がっていくのが見えたので付いて来たまでだ」

 

「そっすか。でもめずらしいっすねシグナムさんが残業なんて」

 

「今度意見陳述会が開かれるからな。それの打ち合わせなどがあったのさ」

 

 シグナムは片手に持ったスポーツドリンクの入ったボトルを聖に放る。

 

 聖はそれを受け取ると、軽く頭を下げ、ドリンクを一口飲む。

 

「イメージトレーニングだけでは限界があるだろう。少しだけだが手伝ってやる」

 

「え、いいんすか?」

 

「構わんさ。私も体を動かしたかったのでな」

 

 そういったシグナムは何処から取り出したのか木刀を構え、上着を一枚脱いだ。

 

「さて、はじめるか。今回は相手に膝を着かせたらまけというルールでいいか?」

 

「ええ、構いませんよ。それじゃあ、よろしくお願いします!」

 

「ああ、来い!」

 

 聖とシグナムは互いに駆け出すと、木刀を打ち鳴らす。渇いた音を鳴らしながら二人は数度打ち合う。

 

「ハッ!!」

 

 小さく息を吐き出し、聖はシグナムに逆袈裟斬りを放つ。

 

 シグナムはそれを小さく後退して避けると、隙のできた聖に一気に迫り、上段から一閃する。聖はそれを木刀で受け止めると、そのまま攻撃を滑らせる。

 

「ここだっ!」

 

 聖は一呼吸でシグナムの後ろに回りこむと、シグナムの肩を狙う。だが、シグナムはそれに焦らずに、対応し瞬時に背中に木刀を回し受け止める。

 

 それを払いながらシグナムはまたも聖と正面で対峙する。

 

「いい狙いだが……今日のお前はどこかおかしいな。剣に迷いが見られるぞ?」

 

「え?」

 

「先ほどのところ、もっと早く私の肩に一撃を入れられただろう? なぜ一瞬遅れた?」

 

「それは……」

 

 聖は言葉に詰まる。

 

 するとシグナムは小さく溜息をつき、

 

「仕方あるまい。今日はこれで終わりにしよう。……白雲、悩んでいるのであれば一人で抱え込むな。お前も高町のようになるぞ?」

 

「……わかり、ました」

 

 シグナムの言葉に、聖は声を詰まらせながら返答した。それに対し、シグナムは静かに頷くとそのまま屋上から消えていった。

 

 シグナムが消えた屋上で、聖は大の字に寝転んだ。見上げた空に移るのは二つの月と、満天の星空だ。

 

「……時が来ればいずればれる事だよな。でも――」

 

 聖は目の上に腕を乗せながら、

 

「――まだ、言うわけにはいかねぇんだよな」

 

 小さくもらされた聖の言葉は、夜風とともに、消えていった。




はい、お待たせいたしました
申し訳ありません!!
StrikerSを見直していたらまたしても時間がかかってしまいました。
前書きでも言いましたが本来は襲撃回をするところを一個遅らせました。この作品を読んでくださっている皆様には多大なご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。

今回は安綱の秘密が明らかになりましたねw

次回は本当に襲撃回をやりますのでどうか今しばらくお付き合いくださいませ

感想お待ちしております

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