進撃のイスカリオテ~Titan to Dust~ 作:マイン
本編含めなんかクリスタ優遇してる気がするけどしょうがないよね!天使だし!女神だし!結婚したいし!……ほんとはクリスタのポジションってすげえいじくりやすいんだよね
あとあくまで短編なので本編との関係及び時系列はめちゃくちゃです。
「がはぁ!!」
ウォール・シーナ内に存在するレイス家。その敷地内にある兵団の戦没者慰霊碑の前で、二人の男が相対していた。しかしそのうちの一人の胸には杭が刺さっており、今にも崩れ落ちそうである。そんな男が、口を開く。
「…私の…負けか」
「そうだ、貴様の負けだ」
そう応えたもう一人の男が、倒れそうな男の胸ぐらを掴みあげさらに詰め寄る。
「配下の人間も、巨人も死に絶え、娘にももうお前が愛した証は無い。お前にはもう何もない」
男を拾ったのはほんの偶然、ほんの気まぐれであった。その男は弱っていたにも関わらず、何も口にしようとしなかった。しかしある時、娘が様子を見に行った日を境に、男は見違えるように生気に溢れ、恩返しとばかりに巨人共を殺しまくった。
人々は歓喜した。救世主が現れたと。代わりに娘が食事を摂らなくなり、昼間部屋から出てこようともしなくなった。
不審に思い、男が娘の部屋を訪ねた際、こっそり様子をうかがうと、そこで見てしまった。
男と愛しい娘が、互いの首筋に牙を突き立て、血を吸いあっているのを。
思わず飛び出し問い詰めると、男はすんなり白状した。
自分が吸血鬼であることを。
元気になったのは処女である娘の血を吸ったからだということを。
そしてそのせいで、娘が女吸血鬼(ドラキュリーナ)になってしまったということを。
私は激怒し、警護の精鋭や、当時最強と謳われた調査兵団の面々と共に、男に闘いを挑んだ。
だが、男は予想以上に強かった。手にした大きな銃の一撃は人体など軽く吹き飛ばし、腕を振るえば体が裂ける。いくら切っても死なないうえ、亡霊のような人や巨人の形をしたナニカを放ってくる。
次々と仲間が死んでいく中、私は諦めなかった。迫り来る死を潜り向け、銃弾を躱しながら遂に男の心臓に杭を突き立てた。
「そうだ、もうお前には何もない!哀れな不死の王(ノーライフキング)よ!」
そう言い放った私―エイブラハム・レイスの眼前にて、男は静かに目を閉じた。
それから数十年が経ち、かつて現れた救世主のことなど泡沫の夢のように忘れ去られようとしていた時、レイス家の一室にて、一人の少女が父親らしい男に縋り付き、
バチィン!!
強烈な平手の一撃にて打ち伏せられていた。少女の口から血が流れ、それが床に落ちる。
「もう貴様の顔など見たくもない!今後、レイスの姓も、ヒストリアの名を名乗ることも許さん!分かったらとっとと出ていけ!」
そんな父親の冷たい宣告に、少女は泣きながら部屋を飛び出す。あとに残ったのは、少女の血痕。
それが床を染み入り、部屋の真下、先々代の頃より立ち入り禁止とされていた地下室の中にあった、まるでミイラのような亡骸の、僅かに開いた口の中に、入った。
数年後、ウォール・ローゼ内トロスト区にてかつて屋敷を追い出された少女、クリスタ・レンズは同期であるコニーとユミルの口論の仲裁に入っていた。それは善意や義務感から出たものではない。つらい目にあったからこそ、誰よりも人を思いやれる彼女の純粋な優しさであった。
「さすが私のクリスタ!この作戦が終わったら結婚してくれ」
ユミルのある種過激なスキンシップを受けながら、クリスタは思う。そうだ、今はいがみ合っている時じゃない。生き残るために、皆で協力しないと。
そして、コニーの隣にいる、親友を食われたらしい意気消沈しているアルミンに声をかけようとした
その時、
「!ユミル!後ろだぁ!」
その声に思わず振り返ると、そこには口を開けた巨人が立っていた。
しまった、気を取られて接近に気が付かなかった。
「ユミルゥ!」
「!?馬鹿っ!クリスタ!」
振り返ったユミルが状況を把握するよりも早く、クリスタがユミルを突き飛ばす。必然、標的はクリスタへと変わる。
ゆっくりと感じる時間の中で、クリスタは安堵していた。
これでいい、自分よりユミルの方が要領いいんだから、これでいいんだ。
ふと前を見ると、突き飛ばされながらもこちらなにか叫んでいるユミルがいる。
約束、守れなくて、ごめんね。
クリスタの脳裏にこれまでの走馬灯が走る。その中で聞き取れたのは祖母の言葉、妾の子である自分に、他の兄弟以上の愛情を注いでくれた今はもういない祖母の言葉が、はっきりと聞こえる。
「いいかいヒストリア。もし、お前がどうしようもなく危険なことになった時、こういうんだよ―」
その言葉を、当時は作り話としとしか思ってなかったその言葉を、無意識に紡ぐ。
「助けて、吸血鬼…!」
そしてクリスタを巨人の顎が噛み潰す―
ドゴォン!!
轟音とともに巨人の上顎が吹き飛ばされなければ。
「「「「…え」」」」」
眼前の出来事に唖然とする四人。そんな四人の後方から、黒い影が来襲し、視界を奪われもがく巨人に襲いかかる。
ガブッ!ジュルルルルルルル!
ウォオオオオオオオオン!!
首筋に噛みつき、何かを吸い上げる影、うめき声を上げる巨人。
そんな光景を見ていた四人の前で、信じられないことが起きる。
巨人が、干からびていく。丸々としていたその体躯が、餓鬼のようにやせ細っていく。まるで、影が巨人の命を吸っているかのように。
そして巨人が身じろぎひとつしなくなると、影は離れ、クリスタの前へ立つ。そこで初めて影の全貌が明らかになる。
白いシャツに黒い服、その上から羽織る赤いコート。両手には見たことないような大きな白と黒の銃をもっている。しかし目を引くのはその顔。澄ましたように笑うその顔は芸術品のように整っており、抜けるような白い肌と漆黒のような黒い髪に、見ているだけで魅了されるような赤い瞳。
その男はクリスタのすぐ前まで歩み寄る。誰も止めれなかった。その男に、その存在に圧倒されていたから。
手が届くところまで来ると、男は突然跪き、口を開く。
「血の盟約により、これよりあなたの下僕となります。何なりとご命令を」
意味が分からなかった。突然現れて、項を削いだわけでもないのに巨人を殺し、あまつさえ下僕だと言い張る。
誰もが混乱する中、勝手に忠誠を誓われたクリスタが口を開く。
「あなた、名前は?」
「先々代、そしてあなたの祖母はこう呼んでおられました」
男は顔を上げ、優しげに微笑みながら名乗る。
「アーカード、と」
時は流れ、遂に訪れる巨人との決戦。その最前線に立つ人々の中、二人の男女の内男の方が数歩歩みだし、後方の少女に向かって叫ぶ。
「主よ!我が主、ヒストリア・レイスよ!命令(オーダー)を!」
その言葉に少女―ヒストリアは力強く応える。
「我が下僕、アーカードよ!眼前の敵を一掃せよ!人類の敵を、一匹たりとも生かして還すな!見敵必殺(サーチアンドデストロイ)、見敵必殺!!」
「了解、認識した、我が主(マイマスター)」
そう了解した僕―アーカードに、彼女はその枷を解く言葉を投げかける。
「拘束制御術式零号、解放!!帰還を果たせ!幾千幾万となって帰還を果たせ!!謳え!!!」
その言葉を受け、アーカードは謳う。死の唄を。
私は
ヘルメスの鳥
私は自らの
羽を喰らい
飼い慣らされる
河が来る、死の河が
そして、死人が舞い地獄が歌う
そして誰もが、喰い尽くされる
~舞台裏~
クリスタ「アーカードって血の他に何が好きなの?」
アーカード「麻婆だ」
クリスタ「マーボー?なにそれ?おいしいもの?」
アーカード「知らんのか。では特別に作ってやろう。」
クリスタ「わぁい!やったあ!」
~数分後、そこには青い顔をして口から麻婆を垂らすクリスタの姿が!!
クリスタ親衛隊による特に理由のある暴力がアーカードを襲う!!
(こぼした麻婆はサシャがおいしくいただきました)
これにて短編その一終了。
舞台裏に関してはお遊びですwww