そんな予定なかったんだけども…
今川を退け、織田信奈率いる織田軍は尾張に向け帰還する道中であった。その中に弦之介も加わっていた。聞くところによると今いるのは群雄割拠率いる武将が争う戦国の世であるのは確かであるようだ。だが、自分の知っている知識と大きく異なるところがあった。ここでは姫大名、姫武将といったものが存在し、女性であろうとも家を継いでいるというもの。また、第六天魔王と呼ばれた織田信長は存在せず織田信奈という少女が現在織田家の当主であるようだ。その当主直々に士官の話を持ちかけられたが少し考える時間を頂きたいと申してひとまず返事は保留にしてもらった。「士官の返事が決まるまで清須城の一室を使いなさい。」との信奈殿の言葉に甘えさせてもらい、数日清須城に泊まることとなった。
「弦之介、紹介がまだだったわね。彼女は柴田勝家、あだ名は六よ。」
信奈はそういいながら馬上の女子を指す。先ほどの戦で駆け付けた女子であった。彼女も姫武将というものであろう。
「拙者は甲賀弦之介と申す。柴田殿の先ほどの槍捌き、見事でござった。」
「いえ、大したものでは…。弦之介殿、先ほどは信奈様をお守りいただき感謝します。」
「礼には及ばぬでござるよ。こちらこそ柴田殿に助けられ申したゆえ。このたび、信奈殿に仕えさせていただくことになり申した。以後、よしなに」
「はい、こちらこそ。」
柴田勝家といえばその武勇で名をはせた武将。戦場でみせた槍捌きは鋭く、女となろうともその武勇は健在であるようだ。会うまでどのような方かと思うていたが、話してみると生真面目な性格だが悪い方ではないようだ。世間話を柴田殿としながら尾張の清須にむかった。
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目的地である清須につき、現在、弦之介は清須城大広間にいた。織田信奈、柴田勝家、丹羽長秀、前田利家、そして甲賀弦之介が集まっていた。信奈は姫武将たちの簡単な紹介をしていき一通り終わると姫武将の一人が口を開いた。
「それで…信奈様、この方は?」
そう信奈に言う彼女は丹羽長秀、あだ名は万千代。知性に富んだ瞳のとおり織田家の参謀をしているとのこと。
「甲賀弦之介。私が今川兵に刀を折られた時に助けられて、その時の弦之介の刀裁きをみて私が士官しないか持ちかけたの。で、返事を待ってほしいって言われたから助けられたお礼も兼ねて清須城に泊まっていくように言ってつれて来たのよ。」
「なるほど。甲賀様、このたび信奈様をお助けいただきありがとうございます。」
と、万千代は頭を下げる。それをみて弦之介も頭を下げる。
「いえ、感謝されるほどのことはしてはござらんよ。それに、こちらは招いていただく側。甲賀様とではなく信奈様のように弦之介とお呼びを。」
名の知れたものならともかく、見ず知らずの地位もない自分に感謝を示す姿勢は織田の礼節を重んじる意向を見てとれ、とても好感を持てた。主君がよいのか、家臣がよいのか…。おそらくは両方であろうが。されば、こちらも誠意をもって接するべきであろうと思い、より深く頭を下げた。
「わかりました。では、よろしくお願いしますね。弦之介」
「しばしの間、よろしく頼み申す」
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大広間での顔合わせを終えた弦之介は犬千代に城内の案内についていき、大広間には信奈、六、万千代の3人になった。
「で、どうだった?あなた達から見た弦之介は?」
「只者ではありませんね。戦から帰る道中まったく隙が見られませんでした。刀を交えなければどれほどの武をもつか正確にはわかりませんが、そこいらの者では相手にならないでしょう。」
「万千代は?」
「人となりもよいですね。六がそれほど評価する方ならぜひ家中に迎えるべきかと。82点です。」
(二人の評価もいいわね。これで確信が持てたわ。)
「そうね。男が苦手な六も楽しそうに話してたし…」
「あらあら~
」
万千代は扇子で口元を隠しながら六を見る。目は明らかににやけて面白いものでも見つけたような顔をしている。それを見た六はあわてて
「の、信奈様違います。私はただ弦之介の話す故郷の方の話が気になっただけで」
と顔を赤らめて弁解する。
「まあ、そういうことにしておきましょう。」
「ただ……」
と、六
「?ただ…どうしたの?」
「あ、いえ…大したことでは…」
「いいから言ってみなさいよ。」
と、信奈が促すと言いずらそうにしながらも口を開く。
「弦之介殿はときどき遠くを見つめるのですけど、その瞳が悲しげで…。それが少し気になって…。」
………。
「六にも春が来ましたね。信奈様。」
「そうね。」
と、ふたりは六に生暖かい目を向ける。
「だから、違いますよ~~~!!」
投稿遅くなってすみません。
大学のレポートが鬼畜じみてきてあんまり余裕がないです。
なんで、以後もゆっくり更新していきます。