バジリスク~異世界~(仮)   作:しゅっしゅしゅ

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ためてからとは言ってましたけどとりあえず2話まで掲載します。
タイトルまんまの内容です。
ひねりも何もありません。


異邦逢離(いほうあいり)

意識を失ってどれほど経っただろうか?意識を取り戻すとともに少し肌寒さと手や首に痒みを感じた。瞳をゆっくり開くと小川のそばにいたようだ。辺りは雑草が一尺ほどの長さまで伸び青々と生い茂っている。

 

「ここはいったい…」

(もしや、死後の世界というものだろうか?)

立ち上がると気配を感じた。気配は一人。茂みの中を歩いてだんだんとこちらへ近づいてくる。敵意のようなものは感じなかったが、ここがどこかも何が潜んでいるやらわかったものではない。幸いにも刀は腰に差したままあるようで手をかけ身構え警戒しておく。茂みの中から出てきた気配のもとは足軽の装備をした男だった。

 

「おぬし、何者じゃ!?」

 

「おぬしこそ何者じゃ?戦場の真っただ中にそれらしき防具も備えていないみゃ。」

その足軽の背には今川の旗印。今川といえば戦国の世にて織田に討たれ、その旗印は慶長19年には存在しないはず。もしや、ここは本当に死後の世界だというのだろうか?

 

「わしは甲賀弦之介と申す。ここはどこか教えてもらえないだろうか?」

 

「弦之介殿、おぬし奇妙なことを申すなあ。ここは濃尾平野。今川家と織田家の戦をしているみゃ。おぬしも知らないはずがないじゃろう?」

その男はうそをついているわけでもない様子。どういうわけか戦国の世に、過去へ来たということなのだろうか?

「どうやら記憶がなくなっているようじゃ。なぜここにいるのかもよくわかっていないのじゃ。」

 

「そうじゃったか。おぬし、不憫じゃったなあ。」

さすがに記憶がないとは苦しいかと思ったがひとまずやり過ごせたようだ。

ここいらは危ないみゃ。実はおいらは織田に隙を見て寝返るつもりじゃが一緒に来るかみゃ?といわれ、このままここにいるわけにもいかないと思い男についていくことに決めた。

 

「申し訳ござらん。おぬしの名前を聞いていなかった。」

 

「わしかみゃ?わしの名は木下藤吉郎だみゃ」

 

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弦之介と藤吉郎は合戦の中を突っ切っていた。右から矢が、左からは火縄銃が火を噴き、前からは刀や槍が迫る。それらを捌きながら走る。

 

(木下藤吉郎。よもや天上人、豊臣秀吉殿に合いまみえることとなるとは…)

 

休む暇なく茂みから刀を持った今川兵が切りかかってくる。弦之介の剣術は達人と評しても問題ないほどの腕前。薬師寺天膳には及ばなかったが、そこらの兵であれば遅れはとらない。今川兵の振り下ろした刀を刀で受け流し、隙ができた懐に袈裟切り命を絶った。そこに向けて茂みに隠れていた兵が現れる。

 

「危ないみゃ!」

弦之介に藤吉郎はかぶさるとそこに銃声とともに弾が甲冑を貫通し身をえぐる。二人は草むらに倒れ胸元は赤く染められ、鉄のにおいが強く鼻についた。

助けられてしまった。弾はどうやら肺にあたったようで咽て血を吐き出していた。

 

(この傷ではもう長くは持つまい。あって間もないというのに、藤吉郎殿、おぬしはわしをかばうために)

先ほどの兵も近づいてきている。弦之介一人逃げるのであれば苦も無く逃げることはできただろう。しかし、傷つき倒れた藤吉郎を残して去ることは弦之介にはできなかった。

藤吉郎を横に寝かし、立ち上がり草むらから出、静かにあたりの兵に目をやる。現れた弦之介にむけて弓を引き、刀で切りかかられたそのとき、弦之介の瞳が金色に輝くと周りの空気は一変した。辺りの兵は蛇ににらまれた蛙のように動けなくなり、自らののどをかき切るもの、仲間同士で弓を引き合うもの、数秒後には辺りに立っているものは弦之助のみとなった。

弦之介は前頭領甲賀弾正の孫というだけで甲賀の頭領をしていたわけではない。彼の圧倒的な強さにも甲賀の忍に信頼を置かれていた。その最たるものが彼の叔父、室賀豹馬より受けついだ瞳術である。それは彼に殺意を帯びて襲いかかった者を自滅させる必殺の瞳術。彼の金の瞳はまさににらまれたら死からは逃れることのできない伝説上のバジリスクの瞳のようであった。

 

ゆっくりと藤吉郎の元へと戻る。

「藤吉郎殿、すまない。」

藤吉郎殿の顔は血の気が失せ青白く、肺に穴が開いたためか唇も紫になっている。

「いい…みゃ。それより、先ほどのものはいったいなん…なのじゃ?おぬしは妖術使いなのかみゃ?」

 

「先ほどのは甲賀忍者の秘術でござるよ。これでも甲賀忍の頭領をやっていた。」

 

「そうであったかみゃあ。そいつはすごいみゃあ。おぬしとおれば夢も叶えることができたかもしれぬが…どうやらわしも…ここまでみたいだみゃ。わしの夢…一国一城のモテモテの夢をおぬしにたくしたみゃあ…」

 

弦之介は藤吉郎のすっかり冷たくなった手を取る。

「しっかりなされよ。その夢はそなたが叶えてくだされ。わしにはできそうもない。そなたはこれから織田信長に仕え、天下人となるのじゃ。」

 

「…信長とは誰じゃ?……織田の殿さまの名は……信……な……」

手はすり抜け地に落ちる。どうやらこときれたようだ。未来の天下人豊臣秀吉は足軽のまま亡くなった。

(藤吉郎殿、そなたに救われたこの命、無駄にはしない)

そう亡骸に誓い立ち上がる。かなりの速さで近づいてくる気配がある。その後ろからさらに2つ気配が近づいてきているようだ。源之助の前にさっそうと白馬と少女が前に現れる。まず目に入るのは珍しい南蛮兜とマント、そしてその髪はまるで金糸のよう。文句のつけようのない美少女がいた。その後ろから今川の旗印を背負った兵が馬に乗り駆けてくる。

 

(なぜ、年端もいかぬおなごが戦場に?)

 

少女は今川兵に向け馬を走らせる。その勢いのまま馬から飛び去り馬上の兵を一閃し、鮮血をあげながら頭から地上に落ちる。間を開けず今川兵は馬から飛び上がり少女に切りかかる。辛くも刀で防いだが刀は半ばから折れてしまう。

 

(まずい…)

 

弦之介はとっさに少女の前に出ると少女に向け振り下ろされた刀を受け止め弾き返し今川兵の右手首の腱を切った。

「ここはどうか引いてはもらえぬか?」

 

「武士に情けをかけるか!ふざけた真似を」

今川兵は左に刀を持ちかえ弦之介に切りかかる。それは弦之介に届くことなく腕ごと切り落とされ、その者の首と胴体は二つに分かたれた。弦之介は少女に向かって振り返る。

 

「怪我はなかったでござるか?」

「…え、ええ。危ないところだったわ。助けた礼を言うわ。」

 

(今川に襲われていたということは織田側の者であろうが、このようなところにどうして。それに、目を引くこの者の南蛮風の格好は…。地位の高い武将、大名の娘といったところだろうか)

 

今川兵と思わしき気配が多く近づいてきている。いくら腕の立つ弦之介といえど多勢に無勢。瞳術を使うにしても少女に見られてしまうため憚られるが、仕方ないかと思ったが雄叫びが響き多くの織田兵が今川兵へと向かっていく

 

「「「おおおおぉぉぉぉ!!!」」」

長槍を携えた女性が兵を率い兵をうちたおしながらこちらへ来る。

 

「えぇい、あと少しで織田の大将を討ち取れたものを…」

兵力差を見て退却していく今川兵。どうにか危機は脱出したようだ。しかし、この少女が織田の総大将とは…

長槍を携えた女性は少女の前に馬を止める。

 

「ご無事ですか?」

 

「私は大丈夫。このまま一気に今川を追い払うのよ!」

 

「はっ!!」

女性は今川兵を追い、馬を走らせる。それを見送ると少女は弦之介に問う。

 

「あなた、名はなんていうの?あれほど腕の立つものなら私も名ぐらいは聞いたことがあると思うのだけれど。」

 

「拙者の名は甲賀弦之介と申す。拙者は此度の戦に巻き込まれただけで織田の兵などではないでござるよ。して、失礼ながら、名を聞いても?」

 

「えぇ、いいわよ。私は織田家当主、織田信奈よ!弦之介、私の部下になりなさい!!」

 




五右衛門のキャラソンを最近聞いてます。

かわええでござる。

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