いやはや、すぐ投稿するなどと申しておりまして、気がつけばすでに一年が経ってしまいました……
いろいろなことが重なった結果と私自身が小説執筆より離れていたことも手伝って、ハーメルン様より遠のいていた結果こんなことになってしまいました。
本当に申し訳なく思います。
これだけ待たせてしまっては取り繕うのもみっともないので正直に申し上げますと、今後も短いスパンでの投稿は難しく、どうしても間が開いてしまうことになるでしょう。
他の作者さまたちのように定期的にというわけにはいきませんが、細々と更新していきます。どうぞご了承をお願いします。
それでは久々の投稿にしては非常に短いですが、よろしくです。
「旅行?」
「うん、キャップが商店街の福引で当てたの! 団体様だから風間ファミリーみんなで、って!」
読んでいた本から顔を上げる。教室にいたオレの元に届けられたのは、風間ファミリーにおける新たなイベントに関する報告だった。
「それでどうかな? 孫くんは来てくれるよね? あ、仲間じゃないからとかそういうのは無しよ。確かにファミリーには入ってないけど、私達が誘いたくて誘ってるんだから」
一応の念を押してくる川神さん。正式に仲間にはなっていないので少し気がかりなのだろう。断った俺の立場からすると何ともいえないが、それでも変わらずにいてくれる彼女に感謝だ。本当に気のつく優しい子である。
オレはそれに苦笑すると、机の中のメモ帳を手に取った。
「うーん、予定も特に無いし、英雄に呼ばれる予定は少し先だし……うん大丈夫だ。行くよ」
真新しいそれを開き、確認してから頷く。
こういう予定などはみんな携帯に書き込むことが多いそうなのだが、オレはあまりそういったものは得意ではないので、マイナーでも使いやすい方法を選択している。おかげで鉄心さん名義で作ってもらった携帯の操作がまだほとんどできず、いつも誰かにやってもらっているのだが。
「じゃ、その日は空けておいてね。あっと、行き先は箱根よ。けど、みんなで旅行なんて久しぶり!」
テンションが上がってきたのか、ブンブンと腕を振る川神さん。
旅行か。そういえば物心ついたころには戦いが始まってしまっていたから、そういうことをした記憶はないな。初めての旅行が異世界でなんて、少し笑ってしまうけれど。
「あ~、今から楽しみになってきたわ!」
嬉しそうに笑う彼女につられてオレも顔が綻ぶ。スケジュール欄の日にち部分を指でなぞり、該当する部分へボールペンで予定を書き込んでいく。
心なしか、いつもより字が弾んでいた。オレも年甲斐もなくワクワクしているようだ。
窓から空を見上げる。
それはまもなく4月が終わろうかという時期のことだった。
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特急踊り
川神から箱根方面へと延びる特急列車だ。箱根までの時間は約一時間半ほどで、その間をまったりと過ごすにはいい路線だ。これぞ旅の醍醐味というヤツである。
「晴れてよかったよね。せっかくこっちに乗ってるんだから、余すところなく楽しみたいし」
モロが窓の外を見上げながら言う。
今日、悟飯と風間ファミリー一同は普通の踊り漢ではなく、スーパービュー踊り漢と呼ばれる方に乗っていた。名前からも分かるとおり特急踊り漢のランクアップバージョンで、新幹線で言うところのグリーン車に当たる。
値段も当然に高めになるのだが、そこはキャップの引き当てた福引のサービス性に感謝だ。この列車の料金も内訳に入っているため、全員財布を痛めることなくこの豪華な列車に乗ることができている。
列車の内装もいいが、何よりの見所は見える景色が素晴らしさだ。時折見える海などは、本日の天候も相まって気分の高揚を後押ししてくるようである。
「本当だぜ。これも俺様の日々の行いの良さを労っているに違いないな」
「ガクトにしては気が利いた冗談だね」
「くぉらあモロ、誰が冗談だ!」
「ククク、8点」
「てめぇもしっかり点数つけてんじゃねぇ京!」
本日旅行初日。風間ファミリーのメンバーと悟飯による二泊三日の箱根への旅だ。
絶好の旅行日和。メンバーのテンションが高いのも頷ける話だった。ガクトたちだけでなく、まゆっちも昼用にお弁当を作ってくるなど気合が入っている。
「おいしいな、このおにぎり。さすがまゆっちだ」
「い、いえいえいえいえいえ! 私なんかまだまだで……」
「そこにスペシャルスパイス」
「すかさずブロック」
もはや劇薬クラスの唐辛子パウダーをかけようとした京を大和が止めに掛かる。その判断は賢明だ。
「うー、大和がいじめるー……付き合って」
「一日は長いんだ、ここで脱落するのは困る。こんなときぐらい自重してくれ。それとお友達で」
『さりげなく応酬してるあたりさすが二人だぜ。まぁアレは調味料の領域を超えてるからなー。京の姉御は相変わらず過激だー』
「ククク、過激さこそ強さ」
「貞淑さも重要だと思うけどね」
「ZZZ…………」
「一番はしゃいでた奴は寝てるしな……キャップらしいが」
みな、各々に旅行を楽しんでいるということだろう。四人がけボックス席のにぎわいは止むことがない。周りにそれほど客がいないこともあり、風間ファミリーから発せられる音量は結構なものとなっていた。
「んで、さっきから気になってんだが……ワン子と孫のやつは目を瞑ったまま何してんだ?」
ガクトが隣のボックス席を指差しながら言った。その言葉に反応して、全員の視線が二人に向けられる。
「「…………」」
メンバー達が各々旅の醍醐味を堪能している横で、二人は一言も言葉を発さずにいた。四人がけのボックス席に向かい合うようにして座り、水を向けられても身じろぎ一つせず静かに座り続けている。
乗ってからしばらくしてこの状態になってもう三十分あまりになるので、さすがの彼らも気になっていたのだ。
「ほう。こんなところまで修行とは熱心だな。もっとも、真面目二人が合わさればこうなるだろうとは思ってたが」
「あ、モモ先輩、早かったね」
「大学生のねーちゃんたちがさっきの駅で降りてっちゃったんだよ。暇になって戻ってきた」
京が姉御の帰還にペットボトルを手渡す。百代はそれを豪快に一気飲みすると、モロ達と同じボックス席に座った。仕草からして男らしいが、そこは突っ込まない方向なのか全員苦笑にとどめるのみである。
クリスが再び悟飯たちへ目を向けながら訊ねた。
「それで、犬と孫悟飯はいったい何の修行をしているんだ?」
「これはイメージ修行だな。頭の中で架空の相手との戦いを思い描いて自分の戦術を見直したり、その力量を確認したりしているんだろう。二人でやっているから仮想空間での架空組み手といったところか。実際に戦うことも大切だが、こういう精神下での修行も案外馬鹿に出来ないぞ」
「へぇ~、そんなこともできるんだ」
「ワン子が修行をつけてもらってるってのはホントだったんだね」
「ああ。本当なら私も一緒にしたかったんだが―――」
『ならん! お前がいたらすぐにバトルになるじゃろうが! 前もそれで暴走したんじゃからな、許可が出るまで孫と戦うのは禁止じゃ! 同じ理由で修行を見るのもダメじゃぞ、可愛いワン子に悪影響が出るわい!』
「――――って、じじいとルー師範代から止められてな。ったく、自分の孫は可愛くないのか……まぁそういうわけで、今は悟飯とワン子だけで修行している。いつも一体どんな修行をしているのかだけでも知りたいが、ワン子も秘密だから見ないでねの一点張りでな……あーっ! きーにーなーるー!!」
手足をジタバタさせながら不満を露にする百代。その子供のような姿からは武神の貫禄などかけらも感じられない。呆れたような、いや諦めたような生暖かい視線が彼女に注がれる。
と、そこで今まで目を瞑っていた一子がビクッと身体を揺らした。まもなくして、その目がゆっくりと開かれる。その瞳には若干の悔しさと共にしっかりとした充実感が満ちていた。
「ふぅ…………あーあ、負けちゃった。やっぱり孫くんは強いわねぇ」
「簡単には負けてやれないかな。けど川神さんもすごいよ。もうそんなに出来るようになったんだな」
同時に抜けたトンネルの切れ目から差し込む光に目を細めつつ、一子が苦笑する。
イメージ内でどんな戦いを繰り広げていたのかは他の面子には分からないが、一子が着実に力を上げているのは本当であるようだ。百代だけでなくクリス達も気になるのだろう、その内容にひそかに聞き耳を立てている。
実際のところ、悟飯と修行を始めてからの一子は今までとは明らかに違う伸びを見せていた。彼女の進むべき方向を悟飯が的確に指し示しているからである。実力者である百代や由紀江は、一子がそれなりの進歩を見せていることは感じ取っていた。
が、その変化の本当の大きさに気づいている者は悟飯以外にはいない。先の二人を含めても、だ。
その理由として一子の修行内容と彼女から出た希望、そして悟飯が彼女に課したいくつかの誓約が関係しているのだが、ここでは割愛する。閑話休題。
ともあれ、二人は修行を終えて一息をついていた。一子は握りこぶしを作りながら意気込んで見せる。
「これなら動いてない時も修行できるもの! 川神院でもやってたけど、孫くんの教えてくれたやつの方が私に合ってるみたい。授業中とかでもバッチリよ!」
「い、いや、前にも言ったけど授業中は勉強しなきゃダメだよ、川神さん……」
その顔に満面の笑みを浮かべて話す一子に悟飯は冷や汗を流す。彼女の修行好きは認めるが、それで成績が下がってしまっては元も子もないからだ。
何よりも自分を信じて任せてくれた鉄心さんに申し訳が立たなくなってしまう。亀仙流でも教えているように、可能であれば武道と学問を両立できてこそ真の武道家なのだから。
そしてその考えはここでも共通認識だったらしい。常日頃から彼女の教育係となっている大和と京がにゅっと顔を出すと、ジトッとした視線を一子に向けた。
「孫の言うとおりだぞワン子。というか、あんだけ俺が起こしてやってんのにその台詞は聞き捨てならん」
「この先成績が下がったら、その都度『指導』のレベルを上げてくから覚悟しといてね」
「うわぁぁぁん、あれ以上のお仕置きなんていやぁぁぁぁ」
一子の自信に満ちた顔が一瞬で崩落する。既に半泣きの彼女に、二人ともそこはかとない笑顔を向けているあたりが割りと本気で怖かった。
皆で会話を弾ませながら規則的に揺られること数十分。オレと風間ファミリーの面々は列車を降り、今日の目的地、箱根湯本にある旅館を目指す。
旅館は山の上にあるので、足に困らないよう駅からバスが出ていた。しかし、オレはその横を素通りする。先ほど道のりを確認したところ、そこまで複雑ではないので丁度いいと思ったのだ。
「うーん、やっぱり森が近いこともあって空気がおいしいわー!」
振り返ると、川神さんが足を曲げたり背筋を伸ばしたりして身体をほぐしているところだった。それを見て思わず笑みが零れる。別に示し合わせていたわけではないのだが、彼女ならこっちへ来るだろうと予想していたからだ。
「よいしょ、っと。アタシは孫くんと一緒に走っていくわ!」
「今日のノルマは十分にこなしただろう私達は」
ブーたれる姉貴分を尻目に、一子はぶんぶんと腕を振った。
「電車でずっと動けなかったから身体がうずうずしちゃってるの。なんだか力が有り余ってるみたいで。あ、クリも走らない?」
「山道か……いいだろう。自分もノルマはこなしたが、そこまで鍛錬に精を出すというなら付き合ってやる。どちらが旅館まで先に着けるか勝負と行こうじゃないか」
「ふふん、望むとこ……あ」
クリスの挑発に不敵な笑みを返そうとした一子の動きが止まる。何かを思い出したようなバツの悪そうな表情。当然のごとく挑発返しをしてくるだろうと構えていたクリスも、彼女のその様子に眉を寄せる。
だが、それは一瞬。僅かな逡巡も見せず、一子は申し訳なさそうに首を振った。
「あー、悪いけど……しばらくそーいうのはなしよ、クリ」
「……何?」
クリスが目を見開いた。この反応には他の面子も驚いたようで、みな成り行きを見つめている。
そんな外野を一瞥したあと、一子はクリスを正面に捉えて再度口を開いた。
「アンタと勝負はしないわ。純粋に身体を鍛えるだけ。アタシ達と同じ目的で走るだけならいいけど、勝負をしたいのならアタシ以外でお願い」
「な……自分との勝負ならしないだと……!? それは一体どういうことだ!」
一子の言葉に食って掛かるクリス。自分が軽く見られたと勘違いしたようだ。かなり頭にきたのだろう、その額に青筋が浮かんでいる。
それに対し、同じ調子で一子は付け加えた。
「どういうことも何も、これからしばらくのあいだ誰が相手でも勝負は控えることにしたのよ。別にアンタとの勝負だからしないわけじゃない。こっちもちゃんと理由があんの」
「理由だと……? ははぁ、わかったぞ。貴様、負けるのが怖いんだろう? 負け癖はしつこいというからな、それが今回も、しかもまた同じ相手である私に負けたとあってはなぁ……」
「ぐっ……だからアンタが相手だからとかは関係ないって言ったじゃない! とにかく、しないったらしないの!」
わかりやすいクリスの挑発に半分キレながらも拒絶の意を示す一子。彼女の性格からすれば、今の状況はとても歯痒いものであろう。何せ、一番勝負したいと思っているのは他ならぬ彼女なのだから。
似た者同士と言うことだろうか。どちらにしても、あれだけいつもぶつかっていれば本質が似ていることは確かだ。そのことに僅かに苦笑する。
オレは言い争う二人を仲裁するようにしてその間に入った。
「まぁまぁ、川神さん抑えて。フリードリヒさんもその辺にしてやってくれ。今言ったように川神さんにはちょっとした理由があるんだよ。彼女も別に君と勝負したくないわけじゃないから」
「孫悟飯? ふむ、まあいい。師匠であるお前がそう言うなら、今のが逃げ口上でないことは確かか。わかった、今回は引いておこう。それに犬がどうであろうと、自分は自分のことをこなせばいいだけだからな」
少しだけ得意げに笑うクリス。挑発ではないようだが、どうやら彼女は意識しない状態でも相手を煽ったり雰囲気を無視しても自分の意見を主張したがる性質があるようだ。父親は軍に身をおいているらしく、彼女自身も訓練などに大いに関わってきたと聞いているから、それも影響しているだろう。
「(がるるるるる……)」
クリスの余裕の笑みを見てさらにボルテージが上がったのか、一子は怒りを押し殺すように唸っている。オレは苦笑しながら彼女に耳打ちした。
「(ふぅ。気持ちは分かるけど、今はまだ堪えてくれ。そもそもこれは川神さんが希望したことじゃないか。いや、オレもできればそのつもりではあったけれど)」
「(わ、わかってるわよぉ……でもやっぱり悔しいぃぃ……えぐえぐ)」
今度は目に涙を溜めて泣き出した。感情表現が豊富なのは彼女の長所だが、こういう時にまで発揮されるのは困りものだ。もちろんこういう性格だからこそ皆に好かれるのだろうが。
会話が途切れたのを頃合としたのだろう、すかさず大和が口を挟んでくる。
「さ、徒歩組は行った行った。バスで旅館まで30分かかるんだ、徒歩じゃどうやったってその数倍、山道じゃさらにかかるぜ? 早めに出発したほうがいいと思うけどな」
「そうだな。じゃ、さっそく行こうか川神さん」
「わかったわ……と、その前に一つだけいいかしら?」
走り出そうとした背中から再び声がかかる。振り返ると、川神さんは腕を組んで考え込むようにして言った。
「最近ずっと思ってたんだけど、その川神さんっていうのちょっと他人行儀じゃない? 仮にも師弟関係なんだから、もっと気安い呼び方でいいと思うのよ。だからもし孫くんがよければだけど……これからアタシのことは名前で呼んで欲しいの。ファミリーの皆もそうしてるし」
「名前で?」
鸚鵡返しに聞くと、彼女は再び首を縦に振った。そのままじっと此方を見つめてくる。
いきなりの提案ではあるが、別段反対する理由はないし、これからのことを考えれば好都合かもしれない。
それに、あまりゆっくりはしていられない。早く先に行ったクリスを追いかけなければ、みんなをさらに待たせてしまうかもしれないからだ。
オレはすぐに頷いた。
「ふむ……うん、わかった。なら、これからはそう呼ばせてもらうよ。それとオレのことも悟飯でいいから。よろしく、一子」
「へっ!?」
なんだか妙な声が聞こえた気がする。オレは山道の方へ向けようとしていた視線を再び戻した。
「ど、どうした? やっぱり何かまずかったか?」
問い返す声に彼女は答えない。視線はオレから外すようにしているが、チラチラとこちらを窺っていた。目が合うと慌てて顔を逸らしてしまう理由はわからないが、少なくとも怒っていたり悲しんでいるわけではないようだ。
そうこうしているうちに川神さん――、一子もすぐに元の調子に戻っていた。
「う、ううん、何でも!? ちょっと驚いただけだから……じゃあ改めてよろしくね孫く……じゃなかった。ご、悟飯くん!」
「ああ、こちらこそ」
オレの答えに一子は少し慌てたように後ろを向いた。理由が分からず首を傾げるが、なんでもないというからにはたいした理由ではないのだろう。
そう考えて、オレは再び山へと視線を向けた。もうクリスが出発してから数分は経つ。思った以上に時間を食ってしまった手前、少し急がなくては。
「じゃ、行くぞ」
「ええ。今日こそちゃんと最後までついて行くわよ」
言葉と同時に二人は地を蹴る。空気が揺れる音を聞きながら、二人は同じ方向へと飛び出した。
一瞬後の駐車場。二人の姿は影も形もなくなっていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「(び、びっくりしたぁ。いきなり呼び捨てにするんだもん)」
足場が悪く獣道が続く山道。以前の私ならば走るだけで一苦労だった道のり。木漏れ日が差し込むその中を
胸に軽く手を当てる。心音が早い。走っているから動悸は早くなるのは当然だが、先ほど感じたのはどこかそれとは違うものだった。
修行中の苦しさなどからくるものではないと思う。もっとこう、ほんわかするというか、それでいて梅先生に指された時みたいにビクッとするような、でも嫌じゃない感じ。
(……そういえばファミリー以外の男の人に呼び捨てで、しかもちゃんとした名前を呼ばれたことあんまりなかったからかも)
思えば自分を呼び捨てにする男性といえばルー師範代やじーちゃん、釈迦堂師範代あたりしかいない。修行僧のみんなはさんづけだし、川神学院のみんなは幼馴染のかっちゃん、源忠勝を除けば彼らと同じか苗字や愛称ばかり。九鬼くんとかは……あんまり考えないようにしよ。なんか、思い出すだけで苦笑いしちゃうし。
ともあれ、仲の良い男友達も意外と少ないからびっくりした。かっちゃんは物心ついた頃には既にそうだったから全然気にしていなかったが、今のようにいきなり変わると意外とビックリするものだ。
修行漬けの日々だったことも手伝ってしまっているのかもしれない。我ながら色気が無い青春だ。
呼ばれたとき動揺したのもそのためだろう。自分でいっておいて今更だが、この提案は私にとって願っても無いことだ。師弟関係ならば絆が強くなるのは当然だし、目指す人に対してずっとよそよそしかったら逆に失礼だ。
(何より、悟飯くんは武術の師匠で大切な友達だもん。いきなりだったから驚いたけど、そう呼ばれるのは悪くないわね。うーん、疑問も解消して気分いい! もちょっとペースを速めよっと!)
すっきりした気持ちが後押しして、軽くなった身体で山を駆ける。
かなり前を行く悟飯くんの背中を見つめながら、私もいつか彼の元まで追いつきたいと思うのだった。
第七話でした。
どうでしたでしょうか。久々の更新というかハーメルンを覗いてみて、戦闘シーンの練習のためにはじめた真剣Zの反響が思いのほか大きかったことに驚きました。
ドラゴンボールとマジ恋のファンの方が非常に多いことの表れですが、そんな作品の二次創作を欠かせていただくことを光栄に思います。
相変わらず今後も更新は安定しないと思いますが、それでもよろしい方、どうぞよろしくです。
並びに毎回の誤字、脱字等ありましたら報告よろしくです。
私がいなかった間、感想を書き続けてくれた皆様、いろいろなコメントを書き込んでくれた方、本当にありがとうございました。
この場をお借りいたしまして感謝と謝罪をいたします。
それでは、また次回にて。
…………次はもう少し早くお会いできることを。