ハリー・ポッターと欲望の錬金術師   作:ドラ夫

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第5話 最初の夜

「ザビニ・ブレーズ!」

 

「スリザリン!」

 

 最後の生徒、ザビニがスリザリンに決まるとマクゴナガルは生徒名簿と帽子を片付けた。

 マクゴナガルは全ての片付けを終え、座っている教師陣の席に加わるとダンブルドアが立ち上がった

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい。では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!

 

 ダンブルドアは満足そうに席に着いた。

 教師陣、グリフィンドール、ハッフルパフからは惜しみない拍手が送られたが、レイブンクローはまばら、スリザリンに至っては完全にシラけていた。

 バーソロミューもまた呆れている人物の一人だったが、アンとメアリーは満面の笑みで手を叩いていた

 

『あの人、幼い頃のゴドリックによく似ています』

 

クソジジイ(ニコラス)もあんな感じだった。昔の話だがな」

 

 レイブンクローは過去を、バーソロミューはニコラスに見せられた昔のニコラスを思い出した。二人は一瞬顔を引きつらせ、何も思い出さなかった事にした

 

「ご主人様、何をお取りしましょう?」

 

「何をお飲みになりますか?」

 

 見ると、先程まで何もなかった金の皿やゴドリックには料理やワインやラム酒でいっぱいになっていた。

 メアリーが料理を、アンが飲み物をバーソロミューに配膳しようとしている。

 バーソロミューは料理を忌々しそうに見ると、頭をバリバリと掻いた後、小さな声で注文した

 

「……ローストビーフとマッシュポテト。それからブランデー」

 

「「かしこまりました」」

 

 いつもより一層不機嫌そうにしながらの注文だったが、アンとメアリーは嬉しそうに料理と酒を取り分けた

 

『何故そんなに食事を嫌そうにするのです?ここの料理は美味しいですよ。ヘルガが作ったレシピを今でも使っていれば、ですが。素直じゃないサラザールでさえ、彼女の料理には舌を巻いたものです。“まるで魔法の様だ”とね』

 

 その話を聞いて、バーソロミューはより一層顔を(しか)めた

 

「だからだ。俺様は昔、自分を改造した、色々とな。その一環で五感を極限まで高めた。その時から舌と鼻が鋭敏になり過ぎてな。完璧に血抜きをしていたとしても血の味を感じてしまうし、スパイスは死ぬ程キツく感じてしまう。美味い料理ってのは、それほど手が込んでるってことだ。俺様にとって複雑に味付けされた料理は、正しく“まるで魔法の様だ”という奴だ。勿論、攻撃魔法だがな」

 

 バーソロミューがそう説明する最中、メアリーはナイフとフォークを器用に使い、ローストビーフに乗っていた塩と胡椒を綺麗に削ぎ落とした。

 マッシュポテトはソースのついた上の方をスプーンで取り除き、下の方の味付けが薄い部分のみを残した

 

「まあ毒物を感知するのには役立ってるがな」

 

 なるほど、とレイブンクローが呟くのと同時に、メアリーが一口サイズに切られたローストビーフをバーソロミューの口の中に入れた。

 バーソロミューは殆ど噛まずにそれを飲み込んだ。

 続いてメアリーがマッシュポテトを口に運ぶも、やはりほとんど飲み込む様にして食べる

 

『もっと噛まないと、消化に悪いですよ』

 

「安心しろ、胃も改造してある」

 

 バーソロミューとレイブンクローが会話する間にも、メアリーは次々と料理を口に運んで行く。

 実は、人に物を食べさせるというのは中々難しい事だ。

 介護などでそれを行うときでも、一挙動一挙動を逐一言葉に出しながら、ゆっくり行っていく。

 しかしメアリーはそんな事をせずとも、バーソロミューが口にしたい物をしたいタイミングで、食べたい量だけを完璧に口に運んだ。

 それもバーソロミューが指示を出すどころか、目も合わせない様な状況でだ。

 やがて皿に盛られた全ての料理を平らげた。

 勿論、その全てをメアリーが食べさせた

 

 食事が終われば次は飲み物だ。

 メアリーが名残惜しそうに食器を下げると、アンが嬉しそうにゴブレットを持って近づいてきた

 

「クヒヒヒ!ご主人様、失礼します」

 

 アンはゴブレットの中身を半分程程口に含むと、ゆっくりとバーソロミューにくちづけした

 

「んっ…ちゅく……ん゛ん゛ん!…ちゅう…んくっ、んくっ…ぷはっ!」

 

 二人の唇の結合部分からブランデーと性欲の匂いが漂って来た。

 バーソロミューはアンの口内にあったブランデーを全て飲み干すと、舌で口内にあった残りを全て舐めとった。そしてその後、アンの舌を思いっきり吸い上げて、やっと唇を離した

 

「クヒッ、クヒヒヒ!ご満足いただけましたか?ご主人様」

 

「ああ、悪くない」 

 

 二人のキスは僅か三分足らずだったが、アンの首筋には汗が煌めいていた。顔は赤く染まっており、肩で息をしている。それどころか目は焦点が定まっておらず、真っ赤な舌は仕切りに唇を舐めている

 

「アン、帰って来なさい。ご主人様の前ですよ」

 

「いや、構わん。俺様は少し用事を済ませてくる。お前たちは好きにしておけ」

 

 バーソロミューの言葉にメアリーは畏まりながら、アンは喜びながら頭を下げた。バーソロミューはそんな二人を満足気に見た後立ち上がり、何処かへ歩いて行った

 

「ご主人様はお優しい方ですね、わたくし共に自由な時間を与えてくださるなんて!しかしそんなご主人様のメイドがわたくしなどで相応しいのか……」

 

「いやいや、メアリーは自己評価が低すぎるぞ。それこそ、ご主人様はお優しい方なのたがら心配する事はない」

 

「アンは優秀だからそんな事が言えるのですよ」

 

「クヒヒヒヒヒ!だから、メアリーは自己評価が低すぎるって」

 

 会話をしながら、二人は恐ろしい程の量の料理を皿に盛っていく。

 ホグワーツの大き目の金の平皿が三つほど埋まった所で、ようやく二人は料理を盛る手を止めた。どの皿にもこんもりと、しかし美しく料理が盛られている。

 数瞬迷った後、メアリーはまずチキンステーキを食べる事にした。

 ナイフを入れると、黄金色の皮からパリパリと音がした

 

「あら、これ美味しいですね」

 

「うーん、そうか?メアリーの料理の方が美味しいって、絶対」

 

 それを見たアンもチキンステーキを食べたが、少し不満気だ。

 チキンステーキの次は山盛りのグリンピース、その次は熱々のコンソメスープ、次は厚切りのローストビーフ、次は・・・。

 口の中いっぱいに料理を詰め込んだり、みっともなくがっつく事はないが、ペースを落とす事もなく、ものの十数分で料理の山を平らげた

 

「さて、わたくしはデザートに行きますが、アンはどうします?」

 

「私はデザートより、こっちかな」

 

 アンが指したのは一際大きな金の皿、上には丸焼きにされた子豚が丸々一匹乗っていた

 

 

   ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

 バーソロミューは席を立った後、教師達が座る長テーブルへと歩いて行った。

 歓迎会が佳境に入り、一年生もホグワーツに慣れてきた頃。生徒達はご馳走でお腹を膨らませ、夢見心地だ。

 しかしそれでも、ある程度バーソロミューは注目された。

 それは彼の容姿のせいか、元々の知名度のせいか、それとも先の組み分けの儀式のせいか。兎角、バーソロミューはある程度人に見られていた。そして中には熱っぽい視線を向けるも者もいたが、バーソロミューはその全てを無視した

 

『貴方、馬鹿なのですか?あんな公衆の面前でせ、接吻をするなど!それに貴方の姓はフラメル!そしてアンさんの性もフラメル!これがどういう事か分かってるのですか!!?』

 

「分かっている」

 

 レイブンクローは人に見えない。

 故に、バーソロミューは小声で返事をした。人からの好評は無視するが、悪評を流されることは我慢ならないのが彼だ。

 “見えない何かと会話してるらしい”などという評判を流される事は本意ではない

 

あれ(アンとメアリー)は俺様のものだと教えてやっただけの事だ」

 

『そうだとしても、もっと良いやり方を貴方なら幾らでも思いつくでしょうに……』

 

「さあな。それに、俺様は飲み物は女の口から飲むのが常だ。それを他人に見られるからといって辞める気はない」

 

『バーソロミュー、貴方本当に良い性格してますね。碌な死に方しませんよ?』

 

「娘に逃げられた挙句、病死した貴様に言われたくない」

 

『人のデリケートな部分をズケズケと……』

 

 あまりに無遠慮なバーソロミューの物言いに、レイブンクローは逆に清々しくなった。

 そも、バーソロミューは別に悪い人間では無い。彼はただ、自分の欲望に忠実であり、人の機嫌をとる事をせず、思った事を率直に言うだけな人物だ。

 きっと少しでも愛想や人を気遣う心を学べば、誰からも愛される人物になる。

 それがレイブンクローからの評価だった

 

(しかしバーソロミューに愛想を良くしろと言っても無理な話……。どうすれば良いのでしょうか?)

 

 レイブンクローがバーソロミューを更生させる手段ついて考えていると、生徒達から悲鳴に近い声が聞こえて来た。

 どうやら、それぞれの寮のゴーストが新入生に挨拶している様だ。ほとんど首なしニック、太った修道士、血みどろ男爵、そして--灰色のレディ。

 幸いにして、レイブンクローは考える事に夢中で気が付いていない様だ

 

(さて、どうしたものか……)

 

 バーソロミューが席を立った理由はそれだけでは無いが、レイブンクローを灰色のレディ、つまりヘレナ・レイブンクローからロウェナを遠ざける意図もあった。

 ロウェナとヘレナの確執はそう浅いものではない。ロウェナの方は話を聞いてれば嫌でも分かる。ヘレナの方も死後ゴーストになるという事はそういう事。

 今二人がここで出会えば、厄介な事になるのは自明の理。

 それは避けたい。

 しかし自分がレイブンクローに入った以上、二人の遭遇は避けられない。

 ならば自分がある程度前もって二人に話し、確執を解いた後で二人を合わせる。それがバーソロミューのとりあえずの考えだった

 

(しかし今はとりあえず、目の前の“未知”だ)

 

 バーソロミューはこれから自分の見聞がさらに広がる事を考え、不機嫌そうな顔を緩めた

 

 

   ✳︎     ✳︎     ✳︎

 

 

 ダンブルドアがマクゴナガルと『変身呪文で百味ビーンズを全て鼻クソ味に出来るかどうか』について話していると、件の少年バーソロミュー・フラメルがやって来た。

 マクゴナガルはダンブルドアとの会話で緩んでいた顔を引き締めた。それが生徒の前だからか、バーソロミューを警戒しての事かは分からない。

 反対にダンブルドアはほがらかな顔を使った。

 ダンブルドアは元々、何処かのタイミングでバーソロミューと話をしようと考えていた。

 賢者の石の事もそうだが、彼がその艶やかな紫色の瞳で何を見ているのか興味があった。

 その瞳はかつての親友が世界を作り変えようとした時の、欲望に燃えていた時の瞳によく似ていたのだ

 

「何か用かね、ミスター・フラメル」

 

 十中八九、“アレ”の事ではない。流石にこんな公衆の面前でする様な話ではないからだ。

 いかに他人を気にしない彼といえど、その線引きはしている

 

「用があるのは貴様ではない」

 

「ほお、誰かね?」

 

 ダンブルドアはバーソロミューが興味を示した相手に多分な興味を示した。

 何故なら“名前を言ってはいけない例のあの人”もまた、ホグワーツの教師に多大な興味を示したからだ

 

「あそこにいる、ターバンを巻いてる教師だ」

 

 バーソロミューが指し示したのは“闇の魔術に対する防衛術”の担当教師、クィリナス・クィレルだった。

 今はちょうど、隣に座るスネイプと話をしている。

 “闇の魔術に対する防衛術”、つまり闇の魔術に関わる教師である彼に興味を持つ……。それを思ったダンブルドアのエメラルド色の瞳は一瞬輝いた。『開心術』を使ったのだ。

 しかし、『閉心術』を使った様子もないのに何故かバーソロミューの心を読む事は出来なかった。

 結局ダンブルドアは観念し、バーソロミューに情報を与えた

 

「あの人はクィレル先生じゃ。しかし何故あの人に興味を持ったのじゃ?それを教えてくれるなら、クィレル先生を紹介しよう」

 

 恐らく、バーソロミューがその気になれば簡単に教師に取り入ることが出来るだろう。それ(彼の魅力)を止める事は不可能、なればせめて自分の前で

 

「杖屋でポッターと会ったのだがな、奴は二つの魂を持っていた。クィレル教授も同じく、体に本来の自分とは違う魂を宿してる。それも、ポッターが宿してるものと全く同じ魂だ。どうやったのか聞こうと思ってな」

 

 それを聞いたダンブルドアの脳内に、様々な考えが浮かんだ。

 クィリナスが去年赴いたアルバニアの森はトムが最後に向かったとされる地。元々の思い上がりな性格に闇の魔術への造詣、トムを支配しようとしても不思議ではない。しかし逆に取り込まれた……。

 それを裏付ける様な帰ってきてからのクィリナスの不自然な態度。

 弱っているトムと賢者の石を狙う誰かの存在。

 トムの不死と分霊箱。二つの魂、長年謎だったハリーの額の傷……

 

「……お主は何故それが分かったのじゃ?」

 

「俺様の目はそれ(魂を見る事)が出来るんだよ。いい加減、もう良いか?」

 

「おお、そうじゃったな。ただワシも同席しても良いかの?その代わりとは言ってはなんじゃが、個室を用意させ、思う存分話をさせよう」

 

「構わん」

 

 その言葉に、ダンブルドアはニコリと笑った

 

「マクゴナガル先生、今宵の宴を任せても良いかの?ワシは少しの間、この素晴らしい少年と共に、素晴らしい春の宵を楽しもうと思うのじゃが」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 ダンブルドアはマクゴナガルの返答を得ると、バーソロミューを連れて席を立った。

 その後クィリナスを賢者の石の話をチラつかせながら、校長室へと呼んだ。同時に隣に座るスネイプに、『目くらまし呪文』を付けてこっそりと後をついてくる様指示した。

 クィリナスは拍子抜けするほどあっさりと校長室へと着いてきた。

 やはり、彼は自身の能力を過信する帰来がある様だ

 

「こ、こここ校長、お呼びで?」

 

「いや、呼んだのは俺様だ。クィリナス教授、まずはそのターバンを取っていただけるかな?」

 

 その言葉に、クィリナスはギクリとした。

 ターバンを外してしまえば、そこにはもう一つの()があるからだ

 

「な、な、ななな何故かな?」

 

「臭うんだよ、色々とな。俺様の嗅覚は特別でな。鼻がひん曲がりそうになる」

 

 まさか本当に臭いの事を言ってるのではあるまい。となると──バレている。そうクィリナスは確信した

 

「な、なにをい、いい、い、言ってるかーー『インペリオ 服従せよ』!」

 

 クィリナスが普段のオドオドした態度からは想像もつかない様な速度で杖を抜き、これまた巨大な閃光を放った。

 しかし、ダンブルドアがそれ以上に早く杖を抜き、より強力な閃光を放った。

 ダンブルドアの閃光はクィリナスの閃光を容易く退け、クィリナスを吹き飛ばした。しかし、クィリナスは平然と立ち上がった。

 いや、体はクィリナスだがクィリナスの精神はダンブルドアの閃光により、確かに気絶していた。

 立ち上がったのは、クィリナスの後頭部にあるもう一人の()だった

 

『こうして久方ぶりに直に話す相手が貴様だとはな……ダンブルドア。貴様は俺様を笑うか?ただの影と霞にすぎない今の俺様を……誰かの体を借りなければ、こうして形を保つことすら出来ない哀れな存在となり果てた俺様を、笑うか?』

 

 その声は悲壮感と己への嘲笑に満ちていた。

 誰もが同情し、手を差し伸べたくなった。事実、クィリナスはこれ(・・)によってその身を差し出したのだ。

 しかし、今ここにそんな同情を向ける様な人間はいない。

 ダンブルドアは“無言呪文”で『捕縛呪文』を放った。クィリナスの体はロープでキツく縛られた。

 しかしクィリナスの中のもう一人の()は違った!

 ロープがクィリナスに巻かれた瞬間、()は剥がれ落ち、ゴーストの様な巨大な()の形をした靄になりバーソロミューへと向かって行った!

 

「いかん!」

 

『もう遅い!』

 

 そのままバーソロミューの体内に入ろうとし──横から何かに阻まれた。()は心底驚き、自分の置かれてる状況も忘れて叫んだ

 

『何故だ!?』

 

 焦って背後を見てみるも、しかし、そこにはやはり何も無い。だがまるでそこに誰かがいて、本当に自分を掴んでいるかの様な感触を受けている。

 先程の焦った様子からこれ(・・)をこなしているのはダンブルドアでは無い。そして、この部屋には自分とダンブルドア以外の人物は一人しかいない

 

『バーソロミュー・フラメル、貴様か!』

 

「お主、如何にして……」

 

 バーソロミューがどの様な手段を用い()を止めているのか、ダンブルドアでさえ皆目検討がつかなかった。

 また『魂の秘術』や『闇の魔術』に最も詳しい()もそれは同様の様だった

 

(ワシやトムにさえ分からぬ呪文を、この歳で……)

 

にわかには信じ難いが、それ以外考えられぬのもまた事実

 

「さて、どうするんだコレ?」

 

 バーソロミューはあっけらかんと言った。

 その様子は平常そのものであり、魔力の乱れも無い。とても闇の帝王の魂の進行を止める程の呪文を唱えている最中には見えない。

 その事にダンブルドアはより一層畏怖しながらも、勤めて平静を装った

 

「こっちへ運んで来てくれるかの?今はそやつを完全に滅する手段は持たなんだ。ここに暫くの間、保管しておこうと思う」

 

「なら代わりに、賢者の石を貰おうか?」

 

 バーソロミューのその言葉に、今度こそダンブルドアは動揺を表に出した。

 確かに、ダンブルドアが賢者の石を預かったのはヴォルデモートから隠す為であり、それが成された以上、フラメルの孫であるバーソロミューに賢者の石を渡すのは何の問題もない。

 しかし、バーソロミューはそれを知らないはずだ。と言うより、ヴォルデモートが生き残っていた事自体知らないはずなのだ。

 はずなのだが──

 

(まさか、まさか最初から仕組まれておったのか?)

 

 トムがクィリナスに憑依している事をダンブルドアに告げ、ダンブルドアがクィリナスを倒し、後の処理は全てダンブルドアがする。

 バーソロミューがした事といえば、魂だけの存在になったヴォルデモートを捕らえたことだけ。

 そしてバーソロミューは賢者の石を手に入れる。

 あまりに、あまりにバーソロミューにとって都合が良かった

 

「すまぬが、賢者の石はもう中々取り出せぬ場所に置いてしもうたのじゃ。取り出し次第渡す故、もう少しだけ待ってくれるかの?」

 

 これは本当の事だ。

 賢者の石は今現在『みぞの鏡』の中に入っている。後はもう、教師陣が作り上げた厳重な警備が成された部屋の最深部に置くだけ、という所まできていた。

 尤も、ダンブルドアはここ最近『みぞの鏡(アリアナ)』の虜になり、中々動かそうとはしなかったが

 

「分かった」

 

 そんな事を知ってかしらずか、バーソロミューはあっさりと了承した。

 その妙にあっさりとし過ぎている反応に、全てがバーソロミューの手のひらの上の様な気がして、ダンブルドアは背筋に薄ら寒いものを感じた。

 ダンブルドアがバーソロミューを見ると、やはり彼の瞳は欲望に燃えていた




クィリナス・クィレル最速退場。
多分これが一番早いと思います






【知らない人の為に一応解説】

・クィリナス・クィレル──元いじめられっ子。見返す為に闇の魔術を学んだ、ある意味スネイプと似た境遇の人間。
性格は以外と自信家で、弱ったヴォルデモートを発見し、我がものとするなりなんなりして、マーリン勲章とかダンブルドアを見返そうとか思ってた



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