宮守の神域   作:銀一色

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東四局一本場です。
やっと休日……



第80話 決勝戦 ㉘ 肥大化

 

 

 

 

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東四局一本場 親:小瀬川白望 ドラ{北}

 

小瀬川 24,000

照 36,100

辻垣内 25,500

洋榎 14,400

 

 

 

小瀬川:手牌

{②4赤56789} {南横南南南} {横213}

 

 

宮永照

打{②}

 

 

 

 

東四局、小瀬川が親であるこの局、索子と{南}の二回の鳴きによって、当初小瀬川の手は混一色だと思われたが、実は小瀬川の手はその裏をかいて鳴き一通の{②}雀頭待ち。辻垣内はそれにいち早く気付いて回避することができたが、宮永照と愛宕洋榎はそれに気付くことはできずに、果てには宮永照が{②}を吐き出して小瀬川の和了。一通ドラドラの7,700を宮永照が振り込んだ結果となった。

 

(何……?)

 

振りこんだ宮永照自身も全くわからなかった。何故{②}が当たってしまうのか。何故混一色に向かわなかったのか。完全に虚をつかれたようで、未だ宮永照は唖然としている。無論、愛宕洋榎も。まさか宮永照が切った{②}が当たるなど思いにもよらなかったのである。しかも、小瀬川の恐ろしいところは偶然ではないという事だ。それは捨て牌がその証明となっている。

 

小瀬川:捨て牌

{西⑤二一9白}

 

 

小瀬川の捨て牌にはツモ切った{9}がある。小瀬川が聴牌していたのは少なくとも辻垣内が{②}を止めた四巡目までであり、{9}をツモ切ったのは五巡目、つまり小瀬川はわざと{②}単騎にしたのである。{9}を残していればは{369}待ちで、親満が確定していたはずだ。なのにもかかわらず{②}単騎を決行したという事は、自分達を狙っていたということであり、偶然などでは決して無いという事だ。辻垣内は早々に気づき、回避できたものの、宮永照と愛宕洋榎は振り込んだ今、ようやく気づいたのだった。

 

 

そして場は一本場へと移り、またもや小瀬川を起点として配牌を取っていく。全員が自らの配牌を取り終えると、小瀬川の第一打によって東四局一本場が始まる。全員の配牌を見比べると、やはり振り込んだ宮永照の配牌は悪く、愛宕洋榎も宮永照ほどでは無いにしろ良いとは言い難い。辻垣内の配牌はまあまあと言った感じで、和了った小瀬川が順当に一番配牌が良い。だが、小瀬川はこの配牌に少し眉を顰めた。

 

(・・・やっぱり、流れは良くは無いなぁ……)

 

そう。配牌が良いといったものの、それはスピードだけの話である。即ち、打点が伸びにくい配牌なのだ。親番なのだから連荘するために打点よりもスピードが重視されるのが普通だが、本来小瀬川が二回連続で和了ったのだから、流れは小瀬川に引き寄せられるはずだ。となればこの局での配牌はスピードも速く、打点も高い配牌であるべきだ。しかし、実際はスピードだけの配牌。前局はドラがあったから何とか7,700まで持っていけたが、本来あれは一気通貫のみの手。この局だけの話ではなく、既に影響は出ていたのだ。

赤木が予見していた事と全く同じ状況。小瀬川の流れはゆっくりではあるが下り坂となっていた。だが、未だそれを知るのは小瀬川のみ。当然だが他の三人はそれに気づくわけも無い。それが小瀬川にとって唯一の救いであった。そして救いであり、また小瀬川にとってこれは利用できるものであった。

何を利用するのかといえば、それは他の誰でもない自分。調子が良いと思われている肥大化した自分を利用するのだ。

 

 

そして東四局一本場が始まってから五巡目、その肥大化した自分を使う時……!

 

 

「リーチ」

 

 

 

小瀬川:捨て牌

{南一⑧白横4}

 

 

 

小瀬川:手牌

{四四四⑤⑥⑥⑦⑦⑧7999}

 

 

手だけ見ると小瀬川の手はノミ手。だが、手牌が見れない他三人からしてみれば小瀬川のリーチはただただ不気味。リーチ宣言牌の{4}の裏筋、567の三色か……それとも対子系か……もっと飛躍して清一色か……など、考えれば考えるほど小瀬川の手はどんどん肥大化していく。ノミ手のリーチだけの手だとは知らずに。

 

しかも、まだまだ他の三人は五巡目でありながら聴牌どころか一向聴すらなっていない。聴牌には程遠く、しかも親リーが入ってきた。捨て牌を見る限り高そうな気配も拭えないので、オリへと回る。回ってしまう。

そして三人全員がオリへと回れば、必然的に和了るのは小瀬川だけとなり、あとはゆっくり和了牌を待つのみだ。

 

そしてその牌はリーチを打ってから三巡後、八巡目に小瀬川が山から掴んでくる。

 

 

 

「ツモ」

 

 

小瀬川:和了形

{四四四⑤⑥⑥⑦⑦⑧7999}

 

ツモ{8}

 

 

 

裏ドラ{8}

 

 

 

「リーヅモ裏1……2,100オール」

 

 

 

裏ドラが一つ乗って2,000オールに一本場を加えて2,100オールとなる。辻垣内はそれを見て歯軋りする。さっきのさっきまで高打点と思わされていたのに、いざ和了られてたらそれはまさかのノミ手。こんなことならリーチをされてもオリなければ良かったという後悔と、またもや小瀬川に踊らされたという憤りが辻垣内の脳内を駆け巡る。しかし、この辻垣内の思考さえも小瀬川の算段の内である事を辻垣内は知る由もない。

まず第一条件として、小瀬川の流れは下り坂だ。それを考えれば今のノミ手をツモ和了ってしまっては、自分が今不調であることを教えているようなものだが、ここで第二条件が深く関わってくる。その第二条件とは、他の三人は小瀬川は好調だと誤解しているということだ。だから小瀬川のリーチに対して全員が同時にオリに回ったのだ。となれば、小瀬川が今ここでノミ手を和了っても小瀬川が不調だ、というよりも、小瀬川にしてやられたという感情が優先されるのは当然。小瀬川はそれを分かっていたからこそ、ノミ手でも和了りにいったのだ。

 

 

(・・・今ので分かった)

 

だが、小瀬川にとって想定外のことが起きる。それは、宮永照が気付いてしまった事。

あろうことか、宮永照は小瀬川の不調に気付き、この場で一番核心に迫っているといえる。だが逆に、愛宕洋榎と辻垣内智葉は未だ小瀬川の策略に囚われていえるかもしれないが、この策略は誰か一人でも気付いてしまえば意味を成さない。故に、小瀬川の策略は失敗してしまったと言っても過言ではないのだ。

 

 

 

核心に迫る宮永照と、それを何とか防ごうとする小瀬川白望。後半戦の東場最終局東四局である小瀬川白望の親場は三局目、二本場に突入する。

 

 

 




今回字数少なスギィ!
・・・次回は頑張ります。(多分)

通算UA数が80,000を超えましたね。作者冥利につきます。

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