宮守の神域   作:銀一色

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クリスマスアンケート企画です。
ここだけの話、私はアンケートを行う前に『面白そうだから赤木も入れてみよう。まあ、赤木はないだろうな……』などと思って赤木を候補に入れました。
そしたらどうですか、まさかの赤木が当選するじゃないですか……

予想だにしていなかったので、シロ×赤木というよりはクリスマスの日常になっている気もしますが……
まあ、仕方ないよね。赤木とシロは師弟関係だから、カップリングになるわけがないよね。

・・・まさかのまさかですよね……私的には、今回のアンケートは結構衝撃的なアンケートでした。


クリスマス企画 シロ×赤木しげる

 

 

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

「ふぁ〜あ……おはよ」

 

12月25日。寒さも厳しい冬の真っ只中ではあるが、世の中はクリスマスとやらで大いに賑わっている。しかし、日本人で賑わっているのはキリスト教を信仰していない者が大多数を占めている。無宗教国家の日本だが、そういう事には積極的に参加するあたり、日本らしいといえば日本らしいのだが。

まあ、宗教の話はどうでもいいだろう。今日という日は、彼女や彼氏がいる者とそうでない者との格差を改めて知る事となる1日となっており、1年の中でこれだけ日本という国が光と闇に分かれる日もそうそうないであろう。強いて言うならバレンタインデーやホワイトデーとかもそういう世間の光と闇を垣間見ることができるが、クリスマスの方が凄い、と私は思う。

 

そういう事で日本中がクリスマスというイベントに影響されているわけだが、私が起きたのは昼過ぎであった。もうクリスマスが半分も終わってしまっている事になる。……いや、クリスマスというのは夜が始まってからが本番と巷では言われているらしいのだが、時間という観点から見れば、半分と言っても過言ではないだろう。

折角のクリスマスなのに、という人もいるかもしれない。が、生憎私は昨日……つまりクリスマスイヴでもうクリスマス気分は十分味わってきた。それは嫌というほどに。

昨日は智葉の家……つまり東京まで行ってきて、クリスマスパーティーを行ってきたのだ。当初智葉は私だけ呼ぶ予定だったらしいのだが、うっかり私が塞や胡桃に話してしまったため、そこから情報が流通し、結局私の全国各地にいる同級生の知り合い全員が智葉の家へお呼ばれする事となった。私はそのパーティーで引っ張りだこ、皆にもみくちゃにされた。そしてその度に皆のお互いを見る目に明らかな嫉妬、羨望、優越、敵対などの色んな人間の醜い感情が含まれていた。

そして時間が経過すればするほど皆の気持ちがパーティー気分によって高揚し、収拾がつかなくなるまで大いに騒いだ。そのおかげで家に帰ってくるなりすぐさまベッドに横たわり、死んだようにそのまま寝た。

そして現在に至る。昨日あれだけ騒いだのだから、今日はもういいだろう。昨日で今年のクリスマスは堪能し尽くした。故に、今日の予定は何もいれていない。昨日パーティーに来た人の殆どに明日空いている?というようなお誘いを受けたが、私はスッパリとお断りした。断った時のあの罪悪感はとても心に来る部分があったが、昨日に引き続き今日も疲れるとなると流石に辛いところがある。 仕方ないけど断らさせてもらった。

というわけで今日は全く予定はなく、家でまったりと過ごす予定だ。流石に断ったのに家まで来る猛者はいないだろうから、静かな1日になるであろう。

そして私の親は今日も働いている。これが俗に言う社畜、というやつなのであろう。故に今家にいるのは私と赤木さんのみだ。

 

【やっと起きたか……】

 

昼になって漸く起きた私に向かって赤木さんが呆れたような声で言う。私はムッとした表情で、

 

「・・・別に休みなんだからいいでしょ……ああ、身体中がダルい……」

 

と言い、ボサボサになっている髪を整えるべく洗面所へ行く。そこで、顔を洗って抜けきっていない眠気を落とし、髪を整えると自分の部屋にある炬燵の電源を入れ、入れたばかりでまだ温まってもいない炬燵の中へ入る。そしてすぐさま炬燵の机へ倒れかかる。次第に下半身が暖かくなっていき、さっき顔を洗った際に落としてきた眠気が私の身体に再び戻ってきた。

そんなウトウトしかけていた私を眠気から解き放つかのように赤木さんが私に向かって話しかけてくる。

 

【炬燵の中で寝ると風邪をひくらしいぜ?】

 

その声にハッとした私は眠気を強引に振り払うべく、何か別の事をして眠気を誤魔化そうとする事にした。

何か別の事、と言っても私と赤木さんしかいないこの状況でする事と言ったらもう麻雀しかないだろう。

私は炬燵の温もりからスッと脱出する。迷いが生じてしまっては遅い。思い立ったが吉日とやらだ。

部屋の押し入れから麻雀セットを取り出し、赤木さんの石を反対側に置いて、二人麻雀を始める。ルールは全ての牌を使って、鳴きなしだけど、それ以外は実戦と殆ど同じ感じの簡易的麻雀だ。

もちろん、赤木さんはツモや打牌ができないため、私が代わりにやるしかない。打牌も赤木さんが指示した牌をわざわざ私が捨てている。赤木さんと一緒に麻雀を打ち始めた最初こそめんどくさがっていたが、やっていくうちにもう慣れてしまった。

 

そんな感じで二人麻雀を始めて数分が経ち、ふと私が思った事を赤木さんに聞く。

 

「赤木さんってさ……」

 

【どうした?】

 

「赤木さんが生きていた時ってクリスマスの時何してたの?……」

 

それを聞いた赤木さんはクククと笑い、私の質問に答える。

 

【お前……俺が恋人を連れてどこかへ出かけるような人間に見えるのか?……おっと、リーチだ。右から二番目の牌を捨ててくれ】

 

「・・・野暮な質問だったね。……よっと」

 

 

まあ聞くだけ無駄な質問だったが、赤木さんらしくて安心した。私は山から牌をツモり、打牌する。この時も赤木さんからは目の前にある手牌によって何を捨てたか見えないため、私が発声しなければならない。

だが、私が捨てようとした時、今度は赤木さんが私に質問してきた。

 

【・・・お前はまだ誰にするか決めてないのか?相手」

 

「そう簡単に決める事なんてできないよ。誰か一人を選ぶなんて……皆大切な人なんだからさ。……七萬」

 

私が質問に答えながら打牌すると、またもや赤木さんはクククと笑う。そんな笑われるような事言ったっけか。と疑問に思ったがすぐにその疑問は解消された。

 

【残念、それだ。ロン。リーチ一発一通ドラ3。……裏ドラを見てくれないか?裏が一つでも乗れば倍満だ】

 

「うぇっ……!?ダル……」

 

どうやら私が切った牌が赤木さんに当たってしまったらしい。予想だにしていなかったので、慌てて赤木さんの手牌を倒すが、見事に単騎の{七}待ち。直前に切った牌を使っていれば平和もついた理想的両面待ち。それを捨ててわざわざ私を狙いに来ていた。完全に油断していたところを狙われた。単純に悔しい。

私が裏ドラを開くと、そこには{六}があった。完璧に場を掌握されている。

私は溜息をついて、赤木さんに裏ドラが二つ乗った事を伝える。

 

「裏ドラは七萬。……はぁ、はい、16,000」

 

私が16,000点分の点棒を赤木さんの点棒入れの部分に入れる。一時の油断が原因で16,000点も失ってしまった。

 

【フフ……まだまだ甘いな】

 

赤木さんは笑いを堪えながら私に向かって言う。油断していた私が悪いのだが、無性に腹がたつ。クソッ。

そのあとも仕返しとして赤木さんから直撃を奪いに躍起になったが、そんな心構えで赤木さんから直撃を奪えるわけがなく、あっさりと返り討ちとなった。これ以上やっても赤木さんに踊らされるだけだと感じた私は切り上げようとも思ったが、赤木さんの安い挑発にまんまと乗せられた私はそのあともたっぷりと点棒を搾り取られた。

そして結局その二人麻雀は、親が帰ってくるちょっと前まで続き、それまでずっと赤木さんの和了宣言を聞き続ける羽目になった。

やっと赤木さんとの二人麻雀という名の地獄が終わり、自分のベッドに倒れて親の帰りまで寝ようかと思ったが、そこで赤木さんからの一言。

 

【・・・そういえば麻雀を打っている間、携帯電話が鳴りっぱなしだったが返信しなくていいのか?】

 

そう言われ慌てて携帯電話を取り出し、携帯電話、いわゆるガラケーを開くなり鳴る通知音。届いたメールの数を数えると、その数なんと30通。まさかこの半日だけで30通も来るとは……しかも、学校のクラスメートなどの同級生だけでなく、昨日クリスマスパーティーで断った人達からもメールが来ていた。メールの中身をみるとその内容は揃いも揃って『誰かシロを襲いに来ていないか、誰にも何もされていないか』というもの。何故私は襲われている前提なのかが分からない。そんなに私は人に恨みを持たれるような事はしていないはずなのだが……

 

結局、返信と称した安全報告を一人一人にしている内に親は帰宅し、その後すぐに夕食となったため睡眠をとる事はできなかった。

そしてそんな私に赤木さんがふと呟いた事が私の中でとても印象に残った。

 

【・・・やっぱりお前は誰も決めない方がいいのかもしれないな……】

 

 

 

今年のクリスマスはいつにも増して疲れたクリスマスだった……まあ、その分楽しかったので良かったと思う……はずだ。




次回は本編。
次のアンケートからは赤木を除外してのアンケートですね。
まあそんなアンケートするよりもはよリクエスト消化して第2回目のリクエストやれという言葉が聞こえてきそうな気が……

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