宮守の神域   作:銀一色

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南三局からオーラスの配牌までです。
とうとう決勝戦の半分が終わる……!


第69話 決勝戦 ⑰ 集いし七つの星

 

 

 

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南三局 親:辻垣内 ドラ{四}

 

小瀬川 25,900

照 23,200

辻垣内 21,800

洋榎 29,100

 

 

宮永照:手牌

{④⑤⑥⑨⑨⑨666東東東西}

 

 

ツモ{北}

 

 

 

ならず。地和、ならず……!本来なら、地和をツモれなかったとしても何らおかしいことではない。だが、今の状況は違う。宮永照は牌の意思があった。自分の勝つという信念に応える、麻雀を司る牌の意思があったにも関わらずツモ牌の{西}を掴めなかった。即ち、牌の意思を上回るほどの何かによって阻害されたということだ。そしてその何かは他の誰でもない、小瀬川白望。照魔鏡曰く本質が真っ黒な闇の小瀬川白望が、牌の意思に抗い、打ち破ったのである。

 

(これがあの真っ黒なアレ……いや、まだこれだけじゃない)

 

小瀬川の本質を直接見ることができた宮永照本人だからこそ、これが小瀬川白望のあの闇だと感じた。だが、宮永照が言う通りそれはまだ全容ではない。あくまでも片鱗。突然に現れた牌の意思に反するために片鱗が微かに見えた。所謂緊急出撃というやつだ。だからこそ、配牌聴牌までに留まった。もし今あの闇が全力を出していれば、宮永照は牌の意思の恩恵を全く受け取れていなかったであろう。だが、まだ片鱗だけのおかげで配牌聴牌までは維持できた。確かに二連続役満は夢となり消えたが、この手は三暗刻が既についている。つまり、この手さえ和了ってしまえば次局『加算麻雀』によって役満を聴牌できる。確かにこの『加算麻雀』でさえも小瀬川の闇によって潰されてしまう可能性も否めないが、小瀬川の闇には一つ欠点がある。それも、致命的な。それは、()()()()()()()()()()使()()()()ということだ。もし本人の意思で使えるとしたら、今で全力を出していたはずだ。それにもかかわらず、片鱗しか見えなかったということは、自分で操れることができない証明となる。これは宮永照の予想にしか過ぎないものだったが、確かに的を得ていていた。

宮永照はツモってきた牌、{北}をそのままツモ切りする。この時宮永照はリーチはかけなかった。リーチをかけずとも目的の二飜に達しているのが大きな理由であったが、ダマに徹することで警戒されないようにするためという事も理由も一つである。ただでさえ前局、親を流されているので警戒が解けかけていたのに、その宮永照がダブリーとなればまた警戒されてしまう。そうなれば、自分のツモ番を意図的に飛ばされたりされる可能性もある。故にリーチはかけなかった。妥当な判断である。

 

そしてその直後の三巡目、宮永照は今度こそ運命を決定づける決定的な牌を引いてくる。

 

 

「ツモ」

 

 

宮永照:和了形

{④⑤⑥⑨⑨⑨666東東東西}

ツモ{西}

 

 

「自摸三暗刻。1,600-3,200」

 

 

これでこの半荘で和了った飜数は十四飜。つまり、十三飜を達成してしまったのだ。それが指し示すのは、次局、役満を聴牌するということ。

 

 

 

(……なっ、何だと!?)

辻垣内は宮永照のあまりの速さに衝撃を受ける。親を自分で振り込んでしまって流れが悪いはずの宮永照がこんなにも速く和了れるなど予想だにしていなかった。もちろん愛宕洋榎もその速さに驚いていたが、それと同時に喜びを感じていた。

 

(ウチにそれ(加算麻雀)が止められるか……

試そうやないか!!)

 

あれほど危険視していて、それとともに一種の憧れを抱いていた宮永照の『加算麻雀』。それがやっと自分の眼の前で展開される。その喜び、ワクワクは、驚愕や恐怖よりも強かった。

 

 

 

(……役満、か)

 

小瀬川はふぅと息を吐いて、椅子に背中を預ける。次局、とうとうアレが来るのか、と半分役満に対しての期待と、半分役満による点差の危惧によって満たされていた。

 

次局の前半戦オーラス、宮永照の『加算麻雀』の役満が遂に発動することとなる

 

 

 

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南四局 親:愛宕洋榎 ドラ{5}

 

小瀬川 24,300

照 29,600

辻垣内 18,600

洋榎 27,500

 

 

とうとう、宮永照の和了った総飜数が十三を超え、役満を聴牌することが確定付けられているこの前半戦オーラス。この局で宮永照が役満を聴牌するということは卓に座っている小瀬川や辻垣内、愛宕洋榎は勿論、観客や実況解説、果ては現地にいないテレビやパソコンなどで生で見ている人たち全員が理解していた。それほど宮永照の『加算麻雀』は皆に熟知されるほど恐ろしく、彼女を象徴する能力であるのだ。そしてそれを熟知されていても、未だ象徴、『加算麻雀』を破るものは現れていない。どういうことかと言うと、半荘で十三飜分和了らせないことで未然に回避することはできる。それは誰にでもできる対策の一つだ。だがしかし、十三飜分和了らせた次の局。即ち役満を聴牌する局で、宮永照が役満を和了れなかったことは一回もないのだ。本人は『聴牌できるだけで必ず和了れるというわけではない』とは言っているが、結局彼女の役満を止めた者は依然存在しない。それほどまでに強大であり、絶対的な存在なのだ。彼女の『加算麻雀』は。

 

 

 

ギギ、ギギギギギ……!

 

 

宮永照の方向から、何かが軋むような音が聞こえた。そう、これこそが『加算麻雀』での役満の解禁の合図。十三飜分を鍵として、役満が眠る金庫を開けようとする。そしてその金庫の扉が今、開かれようとしていた。

 

 

ギギギ!!ギギギギギギ!!!!

 

 

その音がどんどん大きくなっていく。まるで、巨大な魔物が解き放たれるかのような大きな音だ。その音を聞くと思わず身構えてしまいそうな、不穏な音。その音は十数秒間続いたが、親の愛宕洋榎が配牌を取り始めようとするとパッと消えてしまった。確かにあの音は不穏であったが、それが急に消えるのもまた不穏。嵐の前の静けさとはまさにこのことか。

 

 

 

 

宮永照:配牌途中

{中白北西}

 

そしてこの南四局の先陣を切る配牌の内の四牌が宮永照の元へと渡る。彼女の四牌は全て字牌。観戦室では、今回彼女がどんな役満を聴牌するのかといった予想がされている。この時点で、大方の予想は国士無双であろうと思われた。この時点で字一色と大三元はないからである。何故なら、宮永照の『加算麻雀』の役満聴牌は、決して役満よりにはならない聴牌をする。即ち、ダブル役満やトリプル役満になる可能性のある手は聴牌しないのだ。故に、この状態で配牌聴牌するとなると、大三元の場合は{白発中と北西の何方か}が暗刻ないしは何方も対子にならないと聴牌できないため、ツモ和了ってしまえば四暗刻がついてしまう。そして字一色も順子が存在しないため四暗刻がついてしまうのが決まっていて、最初から候補としてはなかった。

そんな予想がされている宮永照の配牌も次の四牌が追加されることとなる。

宮永照が配牌の四牌を山からとってくると、それを二つに分けて、二牌ずつ自分の手に引き入れ、開いていった。

 

宮永照:配牌途中

{中白北西北白}

 

 

しかし、その二牌は観戦室の大半の予想を裏切る二牌であった。{北と白}。これで国士無双の可能性が消えてしまった。となれば、四暗刻か?と観戦室は思ったが、残りの二牌もまた、その予想をことごとく裏切る二牌になる。

 

宮永照:配牌途中

{中白北西北白東東}

 

{東}対子。そしてこの瞬間、宮永照が聴牌する役満の予想が完全についた。

字一色である。しかし、それは四暗刻がついてしまうため、最初からあり得ないと思われた役満だ。だが、字一色にも例外がある。

大七星。字牌の対子のみで構成されているローカル役満の一つ。この大会のルールに、ローカル役満は認められていないので、仮に大七星を聴牌してもダブルにはならない。宮永照はこれを聴牌しようとしていたのだ。

 

そして残りの配牌も取っていき、集結する……!集結せしめる……!大七星……!!

 

宮永照:配牌

{東東南西西北北白白発発中中}

 

 

この七つの対子はまさに熱……!溶けてしまいそうな恒星そのもの、それが七つ……!圧倒的熱量を持った七つの星が漸く……漸く宮永照の手中へと集った……!

 




次回は南四局……
さあシロたちは役満を防げるのでしょうか?

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