宮守の神域   作:銀一色

80 / 473
今回は結構話がぐちゃぐちゃです。
見てて見苦しい点があるかもしれませんが、まあ『銀一色クオリティじゃあこんなものだよな』程度で流して下さい。
その代わり明日は休日だから頑張っちゃいます。(ただし内容が濃くなるとは限らない)


第68話 決勝戦 ⑯ 異常こそ正常

 

 

 

 

 

-------------------------------

 

 

宮永照

打{白}

 

 

辻垣内:和了形

{一一五五⑤⑤⑦⑦33東東白}

 

 

小瀬川:手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {西西西横西}

 

 

 

小瀬川の決死の誘導によって、ついに宮永照の親を蹴ることができたこの南二局三本場。オタ風を大明槓して混一色の可能性を示唆し、一度危険牌を切らせることで安心させて辻垣内に振り込ませるといった、小瀬川の誘導というよりは、メンタリズムのような心理操作に近い手法であった。振り込んだ宮永照はもちろん、和了った辻垣内も、親を蹴ろうと和了りに向かっていた途中の愛宕洋榎までもが、振り込む直前まで気づけていなかった。和了って初めて小瀬川のオタ風大明槓の意味、意図をようやく理解できた。

 

 

(……まさか、第三者に振り込ませるブラフをしてくるとは、な)

 

和了った……否、和了らせられた辻垣内も、思わず小瀬川の自然すぎる淀みなき誘導に感心する。通常、ブラフというのは自分と相手、二人だけの駆け引きである。プレッシャーを与えて相手を下ろしたり、わざと勝負させるように仕向けて勝ち取ったりするのが通常のブラフだ。しかし、小瀬川のブラフは違う。自分に注目を集めて、辻垣内という第三者によって宮永照を討ち取る。一回戦であった白水哩が小走やえに振り込ませたあのブラフと似たようなものであろう。

はっきり言って異常だ。ブラフにしろ普通の状況にしろ、第三者頼みという選択肢はあり得ない。どれだけ策を講じようとも、その第三者が自分の予測外の行動をとってしまえばその時点で計画は破綻する。確実にその第三者の行動を予測しなければ、不可能である。そしてたとえ完璧に予測できたとしても、それを信じて実行できるものなどまずいない。まず、自分を信じれない人が多いのだから、第三者のことを信じれる人は更にいないだろう。

だが、それを平然とやってのけるのが小瀬川白望だ。辻垣内が一直線に和了りに向かうと、決して自分のオタ風大明槓に対しても恐れず、手を緩めたりはしないと、確信していたのだ。信用、信頼、いや、それ以上のものである。そしてそれを信じようとする自分の感性、心を信じる力がずば抜けている。常人の何十倍も、遥かに上回っている。

だが、ここで疑問が生まれてくる。確かに小瀬川のやっている事は異常だ。しかし、その行動は間違ったものなのか?ということだ。

 

 

(とはいえ、結果的に小瀬川のあのブラフが功を奏した……あれがなければ今頃役満を宮永照に和了られていただろう)

 

そう。辻垣内の言う通りである。あれだけ異常だの何だの言ったものの、結果として小瀬川の判断が正しく、最善であった。それは変えることのできない事実である。そして既にお気付きかもしれないが、この決勝戦という場はもはや正常ではない。むしろ異常に包まれていると言った方が正しいのかもしれない。そんな通常じゃ有り得ない事こそ、この場ならそれが当たり前であり、それが真実なのである。異常の中では、正常こそ異常であり、異常こそ正常である。小瀬川はまさにその言葉を表していた。

 

 

 

 

-------------------------------

 

(……)

 

 

場が南三局に移り、辻垣内の一打によって始まろうとしていたまさにその時、宮永照は心の中でこう呟いた。その言葉には感情は無く、先ほどまで小瀬川に対して悔しがっていたあの宮永照とは思えないほど抑揚のない声だった。

 

 

(……役満。和了らせてもらうよ)

 

 

 

 

宮永照:配牌

{④⑤⑥⑨⑨⑨666東東東西}

 

 

 

宮永照が手牌を開くと、そこには三暗刻が確定している、つまり二飜が確定している手を聴牌していた。しかもこれが配牌で、だ。もしこれを最初のツモで和了ってしまえば、地和となり、役満となる。しかも、それだけではない。定義上役満は十三飜分として扱われる。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。

これこそが、『牌に愛された子』と呼ばれる者の力。宮永照の要望によって、牌が馳せ参じてきた。まるで、宮永照を守護する門番のように、宮永照の負けを牌が認めないように。

となれば、この次のツモは宮永照の{西}が最も簡単に予測できるであろう。他の誰でもない、牌の意思、麻雀の意思がそう告げているのだ。

そうして、ツモ番が宮永照へと回ってくる。宮永照はゆっくりと、ゆっくりと山からツモ牌を掴み、それを引き入れる。

勝負を決定づける、運命の{西}を……!!

 

 

(……)

 

宮永照はツモ牌を引き入れたが、一向に手牌を倒そうとはしなかった。いや、そのツモ牌が何かはまだ宮永照は確認していない。故にまだ和了牌かもしれない可能性はあるのだが、それでも宮永照は倒す気は毛頭無かった。何故なら、それが和了牌ではないと確信したからだ。そして牌を倒す代わりに、宮永照は小瀬川をじっと見つめた。牌の意思に逆らい、そして打ち破った者を。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……正体を現したね。白望さん)

 

 

 

 

 

宮永照

ツモ{北}

 

 

 

宮永照、役満和了ならず……!




そろそろリクエストも消化してリクエスト第二弾を募集したいですね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。