宮守の神域   作:銀一色

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リクエスト回です。
あんまり上手く纏めれなかったです……


宮守の神域 リクエスト その5-3

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視点:小瀬川白望

 

 

「これで全員揃ったか?」

 

 

 智葉が皆を統括して、東京駅から海に向かって出発する。移動する方法は車であり、智葉の家の所の超高級車が二台、近くに止まってあった。車に乗るとき、一部の人たちがどっちの車に乗るかで途轍もなく争っていたが、智葉から指示を下された黒服達によって争っていた人たちは全員仲良く後ろの車に乗せられていた。

 

「よっしゃー!行くでー!」

 

「うるっさいわホンマ……竜華も何かいってやり!」

 

「まあまあ、元気そうでええんちゃう?」

 

 

 私が乗っている車は普通の車よりも格段に広く、座席も運転席と助手席を除いても四列構成となっており、智葉曰くこれでも最大級ではないらしいから恐ろしい話だ。

 一番後ろには洋榎とセーラと竜華の、怜を除く大阪トリオが座っていた。もちろん前の時点で争っていた怜はさっきも姫子と言い争いになっており、黒服によって後ろの車に乗せられていた。

 

「争わない甲斐があった……役得。黒糖食べる?」

 

「ん、嬉しか。ありがとな」

 

「……」

 

 そして二列目には春と哩、そして寝ている小薪の九州組が座っていた。そういえば、春はよく黒糖を食べていると聞くが、果たしてそんなに美味しいものなのだろうか。気になりはするのだが、結局食べた事が無かったので、あとで分けて貰おうかな。

 小薪はやはりと言ったらアレだが、ぐっすりと寝ている。騒いでいた人は後ろの車に乗せられていたとはいえ、十分騒がしいこの車内でよく眠る事ができるものだ。流石の私であってもこの状況で寝る事は不可能であろう。寝たいというのに。

 

「あーあ、憧……大丈夫かな」

 

「憧ちゃんなら大丈夫じゃない?それにしても……神代さんと霞さん、でしたっけ……とても素晴らしいおもちでした……」

 

「うう……やっぱり海はあったかくはないよね……」

 

「私も、海より山が良かったなあー」

 

 

 そして三列目。私から見てちょうど後ろの座席に座っているのは穏乃と松実姉妹の阿知賀組。憧はどういうわけかは知らないが、後ろの車に乗せられたようだ。穏乃はああ言っているが、別にいつも山に行ってるから今日くらいいいだろうに……まあ、何方にせよ海でもはしゃぐ姿が容易に想像できるのだが。

 

 

「やっとあのうるさい人たちから解放されたわけね……」

 

「塞も十分口うるさいよ?」

 

「その言い方は酷くない!?」

 

 

 そして運転席と助手席を除いた場合最前列となる席に座っているのは私と塞と胡桃。今までで呼ばれなかった人たちは全員後ろの車に乗せられている。まあ、ぶっちゃけ隔離に近いようなものなのだが、気にしないでおこう。とにかく私は疲れすぎた。

 

「……あんまり騒ぐなよ」

 

 運転席には黒服が座っており、華麗なハンドルさばきを見せる。そして助手席に座っているのは智葉。智葉は私たちの方を見てそう言い、ため息をひとつつくと、視線を前へと戻した。

 

 

 

 

「ちょっと、シロ。今寝てどうするの」

 

「うーん……だって」

 

 そして車で移動すること十数分。私はさっき小薪によく寝れるなと言ったが、実は私も半分寝そうになっていた。私は目を擦りながらも、なんとか起きようと目をこじ開ける。多分、このまま寝たらもう起きれない予感がしたからだ。それほど私の体は疲弊していた。

 

(ね……眠い……!)

 

 皆が海を心待ちにしている中、私は睡魔と闘いながら海へと向かうこととなった。そして睡魔と格闘すること更に十数分。とうとう海へと到着した。海へと辿り着いた私は、眼前に広がる海を見ていると不思議と眠気が薄れてきた。私は海を見ながら思いを馳せていると、後からついてきたもう一台の車が到着した。私はいつになくリフレッシュした表情で二台目の車から降りてくる人たちを見たが、降りてくる皆はいずれも表情が死んでいた。挙句、私を見つけるやいなや直様私に飛びついてきた。

 

「分かったから……取り敢えず水着に着替えさせて」

 

 私は皆にそう言って更衣室へと向かおうとしたが、その一言が余計に皆のスイッチを押してしまったのか、皆はぞろぞろと私の後をついてきていた。私はため息をつきながら、「……一人で着替えれる」と言って断った。

 

 

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視点:小瀬川白望

 

 

「シロさんー!行きますよー」

 

 水着姿となった私がまず最初にやったことはビーチバレーであった。ビーチバレーをしているのは私と絹恵と霞と竜華と玄と爽の六人で、他の皆は海で泳いだり、ビーチバレーをする私たちの事を見ていたりなど、各々の楽しみ方で楽しんでいた。

 

「……よっと」

 

 私は絹恵からのスパイクを跳ね返し、上へと打ち上げる。バドミントンの才能があった私は、ビーチバレーもなかなかできるようだ。とはいっても、そんな本気でやってるわけではないため、白熱しているわけではないが。まあ、これもこれで楽しいものだ。

 

「白望さん?」

 

「シロちゃん!」

 

 

「ん……?」

 

 そして、私がビーチバレーで遊んでいると、久と洋榎とから声をかけられた。

 

「どうしたの……」

 

「いやあ、せっかく海に来たんやから、泳がなあかんやろ?」

 

 そう言って洋榎は海の方を指差す。既に海では遠くの方でセーラと初美、そして意外にも憧が猛烈な速度で泳いでおり、少し浅瀬のところでは胡桃や塞、小薪、小薪を見守る春と巴が海で遊んでいた。

 

「確かにそうだけど……洋榎はビーチバレー、やんないの?」

 

「いや……ウチ、っちゅうかウチらは参加する資格はあらへん……」

 

「?」

 

 私が疑問に思っていると、久が少し肩を震わせながら「色々とサイズが……ねえ」と言って目線を逸らしていた。それに続くようにして「獅子原……だったっけ。アイツ、相当なツワモノやで……」と洋榎は言う。が、そう言われても未だに分からないのだが、まあ触れないでおこう。

 

「ちょいまち、お姉ちゃん。今シロさんはビーチバレーやってるんやけど」

 

「そうよ。途中で無理やり引き抜くのは褒められたことじゃないわね……」

 

 すると私たちの会話を聞きつけてきたのか、ボールを持った絹恵と、霞がやってきた。まあ、実際私がやっていたのはビーチバレーのため、理に適っているのは絹恵側なのだが。

 

「!」

 

 そんなことを考えていると、私と絹恵の間を割るようにして木刀が振り下ろされる。私たちは木刀を振り落とした張本人を見ると、そこには木刀を持って尚且つスイカを片手で持っていた智葉が立っていた。智葉の後ろには、スイカを見てはしゃいでいる穏乃とやえ、哩と姫子がいた。そして目を凝らして少し遠くのところを見ると、テントの中には怜と照、海だというのに相変わらず厚着の宥がおり、三人はそこで寛ぎながらも私に向かって視線を送っていた。

 

「ええい、貴様ら。スイカ無しにするぞ」

 

 最初に口火を切ったのは智葉。脅しなのかなんなのかもはや分からない言葉を放つと、それを皮切りに口論が始まり、私は文字通り皆に引っ張られながら口論のど真ん中で皆の意見を聞かされていた。あーでもない、こーでもない。そんな無意味に思えてくる口論は次第に大きくなり、遠くにいた人たちも来てしまい、これはそろそろマズイぞ、と思った私は皆の一瞬の隙をついて集団の中から抜け出した。

 

 

「あっ!シロ!」

 

 もはや誰が言ったのかすらわからないが、名前を呼ばれた私は全速力で皆から逃げ出した。そして後ろを振り返ると私を追ってくる皆。不毛な鬼ごっこが始まってしまったが、捕まるよりかは百倍マシ。あんな口論聞かされてもみくちゃにされるなど、考えただけでダルい。ダルすぎる。

 

(……もっとこういうのってロマンチックな展開じゃないのかなあ。普通……)

 

 別にロマンチストでも、そういう願望があるわけでもないが、こんな状況で砂浜を走るのは、もういいかなあと思いながらも、全力で逃げる私であった。

 ……無論、数分と経たぬ内に皆に捕まってしまったのだが。そして帰ってくる頃の私は、それは死んだ魚のような目をしていたという。




次回は本編です。

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