ふと思ったのですが、よく毎日書けるなぁと自分でも思います。まあ、内容が進まないからプラマイゼロなんですけどね!!
(そもそもこの展開の遅さで周一とか最終回が数年後になってしまう件)
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南二局 親:宮永照 ドラ{七}
小瀬川 27,300
照 15,500
辻垣内 23,200
洋榎 34,000
前局、辻垣内が跳満をツモった事によって点数は徐々に平らに戻りつつあった。 辻垣内にとってはさっきの跳満が初の和了であり、観戦室では辻垣内の和了によって沸いていた。もともと、小瀬川以外は優勝候補とされていた者たちが卓を囲んでいたため、そこまで大きな差はつかないであろうと観客や世間は予測していた。が、小瀬川というイレギュラーや差し込みに積極的に回っていたこともあり、ここまで一度も和了れていなかったものだから、観客も不思議に思っていた。が、先ほどの和了りによって再度辻垣内への期待が高まりつつあった。漸く仕掛けてきたか……ここからが辻垣内の本領だ……そういった期待、辻垣内に対しての安堵の声が観戦室を包んでいた。
(……ふぅ)
斯く言う辻垣内本人もこの和了りによって安堵していた。もしかしたら一度も和了れずに終わってしまうんじゃ無いか、と決勝戦が始まる前まで不安だったものだから、余計に安心したのである。だが、言ってしまえばまだ一回しか和了れていない。それにまだまだトップ目はおろか未だに三位。ここから、そう。ここからが勝負所である。
しかしながら、決してさっきの和了りは小さいものではない。いや、寧ろ大きいといった所だ。あの小瀬川の親を早々に蹴る事ができたのだ。あそこで蹴れていなければ、今頃点棒は小瀬川一強となっていたかもしれないのだ。それを考慮すれば、さっきの和了りの重要さが分かるであろう。そしてそんな重要な場面できっちり和了れた辻垣内に良い流れが来ないわけがない。
辻垣内:配牌
{二三八九①①④13789東}
それを裏付けるかのように南二局の辻垣内の配牌は良い。純チャンが見える二向聴。辺張の{八九}の受けと嵌張の{13}の受けが目立つものの、配牌がこれだけの辻垣内の今の状態であれば、何の支障もなくツモれるであろう。それに、二向聴という速さはあまりにも大きい。極端に言ってしまえば、最短で二回のツモによって聴牌、そして次順でツモ和了……なんて事が可能である。流石にこの卓の面子と雖も、二向聴相手に先に聴牌するのは容易ではない。ましてや流れの良い状態の、しかも辻垣内相手だ。余程のツキが無ければ不可能であろう。辻垣内からしてみれば、次の南三局は自分の親番。この流れを保持して親番に回したいところ。故に、この局は和了っておきたいところである。
そんな辻垣内の願いを具現化するかのように、四巡目にして聴牌に至る。
四巡目
辻垣内:手牌
{二三七八八九①①13789}
ツモ{2}
流石に二巡で聴牌……とはいかなかったが、それでも四巡聴牌という圧倒的速さである。打{八}で{一四}待ち。高目{一}で平和純チャンドラ1の満貫。ツモってくれば跳満に成り得るという四巡とは思えないほどの打点の高さである。
が、ここで辻垣内は岐路に立たされることとなる。さっきも言った通り、打{八}とすれば聴牌だが、一度聴牌に取らずに更に手を高めることも可能である。{23}の両面搭子を捨て、{七、もしくは九}を引き入れての一盃口を加えれば、ダマでも高目さえでれば平和純チャン一盃口ドラドラの跳満。ツモれば倍満と、打点がワンランク上がる事になる。しかも一番低い結果になっても平和ドラドラの三飜は確保できる。{一四}の待ちで{四}が出れば平和ドラ1の二飜だと考えれば、一度聴牌に取らないという手もアリではある。……というより、今場はまだ四巡目。聴牌している人間は辻垣内以外いないであろう。一向聴の人がいるかどうかすら怪しい。ならばここは一度聴牌を取らないべきだ。今の辻垣内の流れであれば、直ぐに聴牌し直すであろう。
辻垣内
打{三}
結局辻垣内は{三}を切って聴牌には取らなかった。四巡ということも考えれば、当然とうえば当然の判断と言えるだろう。だが、それをただ見守るほどこの卓を囲む奴らは甘くはない。
宮永照
打{西}
「ポンや!」
愛宕洋榎
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {西横西西}
打{⑧}
宮永照が打牌し、辻垣内のツモ番となったと思ったまさにその時横槍が入る。愛宕洋榎が宮永照の切った牌の{西}を鳴く。愛宕洋榎からしてみれば、役牌を鳴いて和了りへと目指すというごく当たり前の行動であったが、辻垣内にとっては迷惑なことこの上ない。聴牌し直すチャンスもお預けにされた挙句、聴牌に近づかれるという二重の嫌がらせだ。が、それを口にしたところで何かが変わるわけもない。当然ながら愛宕洋榎の鳴きを無効化したり、次のツモ番が自分に回るといった馬鹿げた事が起こるはずもない。仕方なくまた一巡するのを待つしかないであろう。だが、そう思った数秒後、
宮永照
打{⑥}
「……ポン」
小瀬川:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏} {⑥⑥横⑥}
打{東}
またもや宮永照が切った牌を鳴かれ、自分のツモ番はお預けにされてしまう。多分、辻垣内にツモ番を極力回さないようにやっているのだが、それを理解しても尚辻垣内は不満の顔を隠すことはしなかった。露骨に嫌がっているのが観客達にも確認できた。
が、その嫌な表情を悪い方向へと加速させるような出来事が再び起きることとなる。それは小瀬川が鳴いた後のツモ番である宮永照がツモってきた牌を手中に収め、手牌から{⑨}を切った直後にそれは起こった。
「ポン」
小瀬川:手牌
{裏裏裏裏裏裏裏裏} {⑨⑨横⑨} {⑥⑥横⑥}
打{①}
二度あることは三度ある。そんなことわざをまさに体現した瞬間であった。これで三回目。三巡連続で辻垣内のツモ番を飛ばされてしまう。嫌がるとかそういうのを通り越して、辻垣内は悲しんでいた。……まるで何かの因縁をつけられたかのようだ。私が何をしたというのだ。そんな事を心の中で呟いているかの表情を辻垣内はしていた。
流石に連続して四度目は無かったようで、宮永照の捨てた牌の{三}に誰も反応することはなかった。それを確認した辻垣内は心の中でスイッチを変え、聴牌を崩した時のような張り詰めた表情へと戻る。そして改めてツモ。
辻垣内:手牌
{二七八八九①①123789}
ツモ{七}
ツモってきた牌は{七}。途中で妨害は
だが、小瀬川の捨て牌には{二}があり、愛宕洋榎の捨て牌は早々に{二}はないものの、その周辺の牌が切られている事から、十中八九{二}が待ちではないであろう。
辻垣内
打{二}
だが、この時辻垣内は大変な事を見逃していた。辻垣内が危険視していた、愛宕洋榎と小瀬川。確かにこの二人は鳴いた事により手は進んでいたであろう。だが、宮永照はこの二人よりも多く手が進むチャンスがあったのだ。
「ロン」
(……な、なに?)
一瞬、辻垣内の体が跳ねる。愛宕洋榎でも、小瀬川でもない。全くノーマークだった宮永照という思わぬ伏兵に辻垣内は驚きの顔を隠せない。
宮永照:和了形
{二二赤五六七②②③③④④11}
「一盃口ドラドラ。7,700」
よくよく考えてみると、愛宕洋榎が鳴いたのは宮永照が切った牌。そして、小瀬川が鳴いた二回の内どちらもが宮永照による打牌によるものだった。即ち、四回。辻垣内にツモ番が回るまでの間で、四回もツモ番が回ってきたのだ。鳴きというモーションによって隠れがちではあるが、あの短時間で四回もツモをしたということは結構脅威である。
多分このように宮永照が隠れたのは全くの偶然であろう。小瀬川も愛宕洋榎も、自分の聴牌と辻垣内のツモ番を飛ばすという事を目的に鳴いていたので、宮永照が隠れたというのは偶然の賜物である。
(警戒を怠ったか……)
辻垣内は冷静に今起こった状況を飲み込もうとするが、直ぐにその冷静は消え去ってしまう。そう、宮永照が和了ったということは、『加算麻雀』がその分進んだという事。今の和了りは三飜の和了り。ここまで合計四飜和了っているという事は、今ので合計が七飜となり、役満まで残り六飜。つまり半分を切ったという事になる。
(しかも宮永照の連荘で親は続く……親の役満なんて死んでもごめんだぞ……!)
ここにきて、宮永照の『加算麻雀』が辻垣内を追い詰める。ただでさえ今の状況でも辛いというのに、そこにもう少しで役満なんていう要素を足せばキャパオーバーしてしまいかねない。打点は二の次、宮永照の親を流して前半戦をささっと終わらせて『加算麻雀』の飜数をリセットするしかない。
(残り六飜……!意地でも止めなければな)
やはり一筋縄ではいかないな。と辻垣内は他の三人を見て少し笑った。本来絶望的状況なはずなのにもかかわらず、辻垣内はこの状況を心から楽しもうとしていた。
そして直ぐに表情を変え、今度は真剣な表情で三人を睨みつける。
役満まで、残り六飜。
次回は一本場です。
さあ『加算麻雀』の役満発動まで残り六飜……
あと三局(連荘を考慮しないで)で六飜って微妙ですよね。跳満で一発でクリアできると見るか、六飜もあると見るか……