宮守の神域   作:銀一色

65 / 473
決勝戦……と思いきや今回はナレーターのみという事実。
明日からは麻雀やります。
すいません許して下さい!何でもしますから!


第53話 決勝戦 ① 闘いの始まり

 

 

 

-------------------------------

視点:神視点

 

 

 

第二次世界大戦後に日本国憲法が公布され、自由と平和を愛し、文化をすすめる日と言われる国民の休日の、文化の日である今日16:00。休日の夕方前ともあって、外は街中がゆったりと、そして長閑な風景を日本全体で醸し出していた。が、その中で唯一、異常なほどの闘志で溢れかえっていた地点があった。

 

 

そこは全国小学生麻雀大会の会場。その対局室であった。対局室と言っても、そこには雀卓一つと監視カメラが数台といったひどく殺風景で、無機質な部屋であった。そんな対局室にいるのは未だ中学生にも満たない少女が四人ばかり。ほぼ同時にやってきたらしく、対局室の扉が閉まる音が連鎖して聞こえる。

たった四人だけではあったが、確かにその闘志は日本のどこよりも、煮え滾るように沸々とした熱いモノだった。

 

 

これから彼女らが行うのは麻雀。文面だけ見ればそこまで大仰な事柄ではない。だが、彼女らの内に秘められている想いは、言葉では表現できそうにもないくらい大きなモノである。それもその筈。全国の小学生の中で最強を決めるという闘いだ。一人一人途轍もないものを背負って、この場に立っているのだ。それは彼女らだけの思いだけではない。彼女らが進んできた過程にある、膨大な敗者の数……その者たちの思いも提げてここにいるのである。

そんな彼女たちの闘志が、熱くないわけがなかろう。

 

 

 

 

全自動式の麻雀卓を囲むが如く、四人の少女は雀卓を前にして互いを見つめあっていた。この時、他の人がどんな事を思い、感じているかなど四人とってはどうでもよかった。最早彼女らの間に、言葉という概念は不要であった。その目に宿す闘志を確認できれば十分。それで良かったのだ。

 

 

雀卓の上にある、予め用意されていた風牌の{東南西北}が伏せられていたまま、無造作に混ぜた痕跡があり、その四牌だけ偏って置かれていた。まるで席順決めなるものを決めろと、彼女らに訴えかけるかのようだった。

その訴えに応えるわけでもなかったが、彼女らは順々に伏せられた牌を一人一牌ずつひっくり返して行った。

 

 

 

小瀬川

{東}

 

 

 

宮永

{南}

 

 

 

辻垣内

{西}

 

 

 

洋榎

{北}

 

 

 

この席決めによって、小瀬川白望が仮東、宮永照が南家、辻垣内が西家、愛宕洋榎が北家ということが確定した。

席決めが終わった彼女らは、自分が引いた牌の対応する席へと座り、背凭れに自らの背中を預ける。

 

 

仮東となった小瀬川が、全自動卓の中央に位置するサイコロを振るボタンを押す。サイコロがカラカラと音を立て勢いよく回り出す。が、軈て回転する速度は落ち、最終的にサイコロは静止する。出た目は4と3。つまり仮親は辻垣内に決定した。

 

 

仮親となった辻垣内はサイコロを振るボタンをもう一度押す。再びカラカラといった無機質な音が対局室に響き、サイコロが止まる。出た目を見ると5と6。合わせて11である。それ即ち、起家、親は小瀬川に確定した。自分が親に決まった事をサイコロを見て確認した小瀬川は、表側に東、裏側に南と刻まれた起家マークと呼ばれるものを置く。四人は席決めをするために使った山を崩し、中央にあるサイコロを振る時とはまた違ったボタンを押し、開閉板が開く。それによってできた穴へと牌を一つ残らず全て入れる。

卓上にある牌を全て穴に入れた後、小瀬川は再び先ほど押したボタンを押し、開閉板を閉じる。それと同時に、卓の中から先ほど穴に入れた牌とは別の色で塗られた牌の山が出現する。

 

小瀬川がまたサイコロを振るボタンを押す。これでサイコロがカラカラと回る音が聞こえたのは三回目である。最も、この大会が始まってからはこの音は何回も聞いているのだが。

 

そしてやはりサイコロは止まり、出た目を確認すると5と3。足して8。

それを見た洋榎が、洋榎側から見て右側から8牌目と9牌目の境目を区切り、小瀬川から順々に区切られた9牌目から四牌ずつ配牌として取っていく。それを3巡したら、今度は小瀬川が洋榎が取っていった牌のところから一列目と三列目の上の牌をそれぞれとる。俗にいう『チョンチョン』と言われるやつだ。

それに続いて照、辻垣内、洋榎が一牌ずつツモり、洋榎が最初に区切った牌から二つ前の牌をドラ表示牌として捲る。捲られたのは{⑦}。

 

 

配牌を終えた四人は、理牌を行う。牌のカチャカチャという接触音が幾度となく聞こえる。

全員が理牌し終えるのを確認した小瀬川が、河に第一打を放つ。

 

 

 

 

この瞬間、全国小学生麻雀大会の最終試合、幾千といる小学生雀士の頂点を決める半荘二回の決勝戦。その闘いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

-------------------------------

決勝戦前半戦 東一局 親:小瀬川 ドラ{⑧}

 

小瀬川 25,000

照 25,000

辻垣内 25,000

洋榎 25,000




次回から東一局です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。