宮守の神域   作:銀一色

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後半戦東場です。今回の話のスピードが今までの四倍速いです。
どういうことかは見れば分かります。(適当)


第45話 準決勝 ⑩ 絶望的点差

 

 

 

 

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前半戦終了時点

 

小瀬川 37,300

モブA 7,600

清水谷 57,000

モブB -1,900

 

 

 

 

前局のオーラスの清水谷による満貫ツモによって前半戦は幕を閉じた。点棒上では清水谷は小瀬川に19,700点差、ほぼ20,000点差をつけている状況である。

 

通常、こういう状況において清水谷は圧倒的有利に思われるが、観客含めその認識は誤りであると悟っている。

理由は言うまでもなく、小瀬川が動いてからでは20,000点ぽっちの点差など無力に等しい。跳満直撃で吹き飛ぶこの20,000点は、小瀬川相手ではあってないようなものだ。

 

 

前半戦が終了した後、控室に戻ってきた清水谷は後半戦に向けての対策を練っていた。

 

 

(最悪でも、子の満貫直撃を三回耐えられる50,000点差にはしとかんと……)

 

 

 

そう。50,000点。小瀬川との点差を50,000点にする事が清水谷の後半戦東場の目標である。

 

小瀬川が動くまで残すはあと四局。四局で30,000点以上稼ぐのは小瀬川が動いていなくとも難しい話である。

そもそも、四局の内1全部回ずつ和了ったとしても30,000点を超えるかも怪しい。簡単に30,000と言うが、そのハードルは決して低くはないのだ。

 

 

しかも、それはあくまでも最低ライン。小瀬川の猛攻を耐えられる可能性がある最低基準である。

南場に入って50,000点差をつけられなければそれは清水谷の負けであるし、仮にきっちり50,000点差つけたとしても勝てる可能性は極々僅かである。宝くじを買わないか買うかの違いに過ぎないと言えば分かりやすいであろうか。

 

 

そういう意味では、清水谷の目標は50,000点などではなく70,000……80,000……その辺りが清水谷が目指す点差と言えるであろう。

それを達成するためには、取り敢えず全局和了る事が必須であろう。親番の時も、できるだけ連荘を繰り返して点差を広げる。小瀬川は南場まで決して和了る事はないのだから、落ち着いてやれば全局和了もできない事ではない。現に前半戦の南場は南二局の四本場以外は全部清水谷が和了っていたのだ。

 

 

(……行くか。)

 

 

前半戦以上に熾烈になるであろう後半戦に、清水谷は前を向いて歩を進めた。

 

 

 

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(20,000点差か……これがどれだけ広がるかが見ものだな……)

 

 

清水谷と同じく控室に戻って後半戦が始まるまで待っていた小瀬川は、ぐったりとしながら後半戦の事について考えていた。

 

 

(70,000点差を……二局……ねえ)

 

 

そんな中ふと思い出したのが赤木の伝説の一つである、偶機の{北}待ちと河底役なしドラ4裸単騎であった。

赤木はそのたった2回の和了りによって、70,000点差という大差を逆転したという赤木という男を語る上では必ず話題となる伝説。

そう。今の小瀬川の状況と、それの状況は酷似している。小瀬川が大量リードをされ、少ない局数で逆転に向かうという状況。違う事を挙げるとするなら和了る局数が四局である事か。

 

 

(…………何万点差でも構わない。絶対に勝つ)

 

 

 

悪魔が椅子から立ち上がり、控室を後にする。

 

 

 

 

 

そして勝負は後半戦。少女たちの運命を決定づける後半戦が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……はぁ……」

 

 

ところ変わってここは会場内の廊下。宮永照は会場内を走って観客席へと移動していた。

 

だが実際、宮永照の試合は12時から始まり、現在時刻はまだ11時過ぎなのでまだ少し時間はある。だが、彼女は焦っていた。

 

 

(白望さんの試合……終わっちゃう……)

 

そう。小瀬川の試合を見るために彼女は焦っていたのである。一回戦は見ていなかったので分からなかったが、聞けばとてつもない打ち方で勝利したと言う。

 

別に小瀬川の事を研究するわけではない。では何故宮永照が走っていたかと言われると。それは宮永照本人も分からない。

 

 

(……何なんだろうこの感覚。白望さんの事考えると、モヤモヤが止まらない……)

 

 

強いて言うならば、小瀬川がちゃんと勝ち上がれたか心配していたのである。宮永照が自分の勝負事ではなく、他人の勝負事を心配したのは初めてである。

 

 

別に彼女なら勝ちあがれるであろうとは分かってはいたが、心の落ち着きが取り戻せなかったため、こうして結局観戦する事にした。

 

 

観客席につき、空いている席を探すよりもまずスクリーンの方に宮永照は目を向けた。観客席には未だ人がいたので、どうやら間に合ったらしいという安堵感を持ってスクリーンをしっかりと見ると

 

 

 

 

『ロン。満貫……8,000!』

 

 

 

そこには清水谷に満貫を振り込んだ小瀬川が映っていた。もしやという微かな悪寒が宮永照の背中を駆け巡った。不安になった宮永照が得点を見ると

 

 

 

 

小瀬川 19,700

モブA -14,000

清水谷 124,000

モブB -29,700

 

 

 

そこには10万点以上という絶望的点差があり、残り局数は南場のみの残り四局。

 

 

その現実を目の当たりにした宮永照は、他に人がいるという事も忘れ、膝から崩れ落ちた。

 




次回から南場に入ると思います。
今回色々すっ飛ばしてますが、しょうがないね。

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