宮守の神域   作:銀一色

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第447話 二回戦大将戦 ⑯ ある種の信頼

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視点:神の視点

東四局 親:永水 ドラ{白}

清澄  91500

宮守 100300

姫松 112300

永水  95900

 

 

 

 

 

永水:四巡目

{一一二二裏四四裏裏八八東東}

{一一二二二四四四八八八東東}

 

 

 

 

『これが世界の定め……当然……!当然張る……何故なら……残っておるから……牌が……穴に……ッ!』

 

 

 

 

 わずか四巡。常人からしてみれば信じられない、夢にも思わぬ圧倒的かつ驚異的なスピードで四暗刻を聴牌する。いや、当人の鷲巣巌からしてみれば四巡という聴牌までの空白が果たして早いと言えるのだろうかという疑問は残るが、それはともかくとして念願の四暗刻を張り果せたのだ。四巡が短い長い如何の斯うのよりも、張ったという事実。それが鷲巣巌にとって今とても大切なことであった。待ちはシャボ待ちの{一東}待ち。ツモれば文句なく役満なのだが、片方の一萬は既に二枚とも場に見えており、ツモが望めるのは東のみ。しかも、その東も既に一枚、末原恭子が抱えているため残されているのはあと一枚のみ。この一巡でその最後の東を引かれればツモ和了という可能性は完全になくなってしまうし、そもそも穴に東が残されているという保証はない。最後の東は黒牌故に、三人が既に握っているという可能性も考え得る。が、それでも鷲巣巌は焦るどころか、どこか余裕そうな振る舞いを見せた。

 

 

 

 

『カカカ……!……分かっとるわ、全て……御見通し……!動じはせん……!』

 

 

 

 

 そう、鷲巣巌は感じていたのだ。最後の東、黒牌の東は未だ卓には現れてはいない、即ち穴の中に存在しているということを。

 

 

 

 

 

 

 

『だが……この手……死に手……ッ!生のない……死……ッ!届かぬ……和了りには……ッ!』

 

 

 

 が、それと同時に、()()()()()()()()()()()()()()()という事も薄々ながら感じていた。

 しかし、それは何もツモをしくじるというようなネガティヴな発想ではない。ツモをしくじるのではなく、ツモれない状況になるだろうという読みである。つまり、この一巡の中で、小瀬川白望が最後の東をツモってくるという事だ。

 無論、確証など存在しない。当然ながら鷲巣巌としてはツモって欲しくはないし、小瀬川白望の東潰しが起こらない事が一番の理想である。だが、それでもなお鷲巣巌はそうなるだろうと予感がした。それはもはや読みや予感よりも、一種の信頼、評価とも言える。そういった意味では、ある意味確証よりも確固たるものであった。

 

 

 

 

『貴様の執念、わしに対しての執念が真であれば……貴様がアカギの境地に達しているのなら……引く………………そりゃあ、引くじゃろ……!たった一巡で一枚潰すだけの事……それができぬほど……アカギは凡夫ではない……!』

 

 

 

『逆に……貴様がここで引けぬようなら、そこまで……貴様は所詮紛い物ということ……そうならば、もう用は無い…………死ね……ッ!』

 

 

 

 

 そうしているうちに、宮永咲は既に打牌を済ませ、鷲巣巌が注目する小瀬川白望のツモ番へと回る。ここで東を引けるかどうかが、結果以上の格付けとなる事を知ってか知らでか、小瀬川白望はゆっくりと穴に手を入れる。そんな小瀬川白望見ていた鷲巣巌は、彼女の姿に奇妙な懐かしさを感じ、狂ったように笑う。小瀬川白望が手を引き抜く前に、もう鷲巣巌は彼女が何を引いていたかは既に分かっていた。

 

 

 

『クククク…………カカカカカカ………………!!』

 

 

 

『やはり……わしの見立て通り……!真に近い……!今の貴様は、あの日のアカギと……キキキキ……!これで確認ができた………………嬉しい、嬉しいぞ……!貴様が真にアカギの生き写しなら……存分に殺せる……貴様のことを…………ッ!』

 

 

 

 

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「引いた!黒牌の東だ!」

 

 

「これで役満を防いだ!」

 

 

 小瀬川白望が引いた最後の東を見て、鹿倉胡桃と臼沢塞は嬉しそうに画面の向こう側を指差す。エイスリンも姉帯豊音も、熊倉トシでさえそれを見て安堵の表情を浮かべるが、その中で唯一、赤木しげるだけが感じていた。鷲巣巌と死闘を繰り広げた、見方を変えれば鷲巣巌の唯一の理解者、そんな赤木しげるだからこそ感じていた、ある可能性に。これもまた、鷲巣巌の事を信頼、買っているからこそできる予感である。

 

 

 

【……まだ、終わっちゃいない】

 

 

 

「え……終わっちゃ、いない……ですか?」

 

 

 

「まだ、何かあるのー……?」

 

 

 

 姉帯豊音や臼沢塞が先ほどまでのムードとは一転し、重苦しい表情で赤木しげるに向かって尋ねると、赤木しげるは【確かに……今のツモで、奴の手は間違いなく死んだ。四暗刻はもう無理さ……】と前置きした上で、こう語った。

 

 

 

【だが……奴の手が死んでも……奴は死んでいない。鷲巣が生きている限り、何度でも蘇る……不死鳥の如く……即ち、残されている……まだ、和了の目……条件が揃えば、役満にも届き得る……仮に揃わなくとも、倍満は必至……そんな目が……まだ鷲巣の焔は消えていない……!】

 

 

 

 かなり抽象的な話を展開する赤木しげるであったが、そんな言葉であっても、彼の言葉には絶対的な説得力が伴っており、臼沢塞たちはその言葉に納得するしかなかった。

 

 

 

 

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(……それで、大丈夫なのかしら?もう四暗刻は無理よ)

 

 

 

 

『問題ない…………策は既にわしの頭の中にある。その策でも恐らく役満までは伸びんじゃろう…………確かに、役満を和了れない事は猛省……が、この局は確認が取れたという事実、それもわしにとっては大きい……そう、貴様はアカギと同じ……!その事に免じて、三倍満で妥協してやろうじゃないか……!喜べ…………!貴様の執念、狂気のお陰で……実ったぞ……わしの役満ツモ回避……!』

 

 

 

 

 

 


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