宮守の神域   作:銀一色

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いよいよ大将戦です。やばいです。何がやばいかって、①←この丸数字が50までしかないんですよ。これを含めればあと11話。代わりを探さなくてはいけませんね……


第430話 二回戦B編 ㊴ 最終手段

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視点:神の視点

副将戦終了時

宮守  86600

姫松 113900

永水  95500

清澄 104000

 

 

 

 

【……悪かったな、だとよ】

 

 

 

「わっ、びっくりした……」

 

 

 

 小瀬川白望と別れた後、臼沢塞が極度の疲労と自分の失態に申し訳なく思い、皆に顔を合わせられなかったという二つの理由でゆっくりと歩いて控え室に向かっていると、急に赤木しげるが臼沢塞に声を掛けた。臼沢塞はいきなり声を掛けられたというよりも、赤木しげるがこの場にいた事に驚くが、疲れからか随分と浅いリアクションで声を上げる。

 そして何故彼がこの場にいるのかと臼沢塞が考えていると、いつのまにか自分の首には小瀬川白望の、赤木しげるの墓の欠片が入っている御守りが掛けられていた。おそらく、自分が気を失っている時に小瀬川白望が『預かって欲しい』という意味でそっと掛けたのだろう。

 

 

 

「……別に、良いんですよ。連荘になる前に、私が諦めて素直に一回、永水に和了らせてやれば少なくとも私が振って終わる。なんて結末は無かったんですから。和了らせてやれば点数はその直後は均一になったかもしれませんけど、その分体力は残せますし……南場からの連続和了の流れが来ていなくても、体力が残っていれば一位にも余裕をもって狙えました」

 

 

「……それを、頑なに全部抑えようとして、ムキになってわざわざ清澄の作戦に乗った私が悪いんです……」

 

 

 

 臼沢塞はそう自嘲するような口振りで言うと、赤木しげるは【いいや、そこじゃない……】と意を唱える。

 

 

 

【俺が……いや、アイツが謝ったのは、清澄の作戦みたいなのを使われると、真っ向からの対処がしようがないって事についてさ】

 

 

 

「どうにも……ならない、ですか?」

 

 

 

【まあな。……もともと、お前の能力ってのは体力を代償に相手の能力を封じるってものだ。封じる能力によって代償の量は変わるが、ただの運動した時の消耗とはワケが違う】

 

 

【……故に、その代償に対する慣れってモンは無い。他にあるとすれば、根本的解決として体力を多くするって事なんだが……そもそも肉体的な体力とも少し違う。とどのつまり、お前の能力は決められた分しか使えねえんだ。だから、あの作戦を真正面から、全部馬鹿真面目に打開する方法は用意できなかったってこった……お前の意志を尊重したかったが為に、言わないでおいたらしいが……裏目も裏目。最悪の結果になっちまったな】

 

 

 

 

 

 赤木しげるが臼沢塞にそう告げると、臼沢塞は「……馬鹿ね。謝る必要なんてないのに……最終的に判断したのは私なんだから……」と呟く、赤木しげるではなく、小瀬川白望に向かって言うように。

 

 

 

【まあ、どっちが悪いにせよ、そんなものは今言い合っても水掛け論……話は後にしな。まだ勝負は分からない……終わっちゃいねえからよ】

 

 

 

「そうですね……信じます。シロを」

 

 

 

 

 

 

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『ふむ……今の和了で宮守が四位か……』

 

 

 

 一方で、最下位から脱却して三位に浮上した永水の控え室では、鷲巣巌が険しい表情を浮かべながら、戻ってきた薄墨初美をチラと見ながら、そう呟く。それを隣で聞いていた石戸霞は、「あら、ご不満かしら?」と尋ねる。

 

 

 

『いや……この際点差や順位に意味は無い。あの小僧相手に一万弱も、十万も変わらん……その気なら容易に二半荘で消し飛ぶからな』

 

 

 

「うふふ。恐ろしいわね」

 

 

 

『まあ、そんな事はどうでも良い。貴様も判り切っとるじゃろ。……それよりも、最後にもう一度言ってやる……分かっとるな?貴様が儂の力を全力で揮えるのは一日につき最大四局。確かに儂はそう言った。が、もし……もしだ。それでも尚、貴様が不甲斐ない醜態を晒すようならば、……最大四局の範疇を超えて五局、六局と延長……。それも理論上できない事ではない』

 

 

 

『……ただし、あくまでも最終手段。運良くそれを使っても尚貴様の体が耐え切れたとしても、少なくとも十日から二十日程度、貴様の意識は無く、昏睡……ッ!その場合、もし勝ち上がれても結局準決勝は棄権扱い……良いな?使うとしたら、後がない決勝じゃ。勝手な真似は許さんぞ』

 

 

 

 鷲巣巌が念を押すように言うと、石戸霞は「なるほどね……今の今まで黙ってくれなくても良かったのに」と、今まで出し惜しみしていた鷲巣巌に向かって言う。すると鷲巣巌は怒った口調でこう怒鳴る。

 

 

 

『阿呆が……事前にできると言ったら貴様、試してただろう……?今言った最終手段は、体力の消耗などとでは比にならん……!貴様は今まで何度も死にかけたが、これは限りなく……ほぼ確定的に死……ッ!昏睡云々の話は本当に運が良かった時だ……!貴様に死なれて困るのは儂……!それを忘れるなと何度言ったら分かる……!?あ〜〜……!?』

 

 

 

「分かってるわよ。私が死んだら、リベンジができないからでしょう?」

 

 

 

『当然じゃ……!そもそも、儂の力、豪運を揮える事だけでも有難い……神が縋ってももできぬ事……ッ!貴様は儂の神託を受けし者……それを理解するんだ……ッ!もっと丁重に扱え……ッ!』

 

 

 

 怒気を放つ鷲巣巌にそう言われた石戸霞は、鷲巣巌を宥めるようにして「分かってるわ。……そろそろ、行きましょう。鷲巣“様“」と、この時初めて様付けで鷲巣巌の事を呼んだ。小馬鹿にしながらというわけでもなく、しっかりと鷲巣巌に対しての敬意が表されていた。久しく生きている人間から様付けで呼ばれた事に、鷲巣巌はすっかり機嫌を良くして『お、おお……!そうじゃ……そうそう。ようやく分かったか……ッ!よし……行くぞ。憎き宿敵を狩りに……化け物狩りじゃ……ッ!』と言い、対局室へ向かっていった。

 

 

 

 

「……あの二人、気が合うんだか合わないんだか、未だに分からないですねー……」

 

 

 

「あの二人なら、大丈夫でしょう……少なくとも、白望さんに一方的にやられる事は無いはず……」

 




前半の、良く言えば補足ですけど、悪く言えば後付けもとい苦しい言い訳ですね……苦しい。

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