宮守の神域   作:銀一色

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第424話 二回戦B編 ㉝ 流局

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視点:神の視点

東四局 親:宮守 ドラ{中②七}

姫松 120600

清澄 106100

永水  63600

宮守 109700

 

 

 

 

永水:十五巡目

{裏裏裏裏裏裏裏} {横北北北北} {東横東東東}

 

 

 

 

(むー……和了れるどころか、{南}と{西}が一枚も来る気配が無いですよー……)

 

 

 

 終盤になっても全く揺らぐ事のない、臼沢塞の能力による『裏鬼門』の完璧とも言える封殺に嫌気がさしていた薄墨初美は、どうにかしてこの支配から抜けられないかと思案するが、もう場も十五巡。今更『裏鬼門』を諦めて混一色に行こうにも行くことができず、かといってこのままただ流局、或いは誰かが和了るまで待つのも、本来なら、32000点を一気に稼いで持ち点を10万を伺うところまで持っていけるはずだったのだ、それをゼロ点で終わらせるのは、些か厳しいものがあるし、薄墨初美のプライドというものにも関わってくる。

 

 

 

(親が宮守なのが却って連荘の希望を潰してますねー……)

 

 

 

 この状況下で薄墨初美が縋るものといえば連荘による北家続行が一番ありがたいものなのだが、生憎親番は臼沢塞。よほどのことが無い限り、それこそ役満レベルでない限りは和了るわけもなく、また、流局になったとしてもノーテンと言い張って親を流すであろう。宮守が親であれば親被りとして多くの点数を叩き込めるが、それが却って薄墨初美の希望を摘み取ってしまっていた。

 

 

 

(……ダメだ。清澄は和了る気が無いのか分かんないけど、何やってんのか意味分かんないし、姫松も和了れそうな気配無し……結局、流局まで『塞ぐ』しかないか)

 

 

 

 一方で臼沢塞もまた、現状をあまり良い状態だとは思ってはいなかった。臼沢塞としては、自分が薄墨初美を抑えている間に、清澄と姫松が和了ってくれれば良かったのだが、原村和はハナからそうするつもりはなく、むしろそれを妨害する側であり、愛宕絹恵もまた、その妨害の影響を受けた事によってなかなか手が進まず、結局河に置かれた捨て牌が三列目に差し掛かる直前で諦めてしまい、オリてしまった。それにより、原村和の思惑通りの展開となってしまう。臼沢塞は徐々に身体を蝕んでいく重さ、苦しさに耐えながらも、ここは譲れんとして薄墨初美から照準を外すようなことはなかった。

 結局、その後も進展はなく、臼沢塞としては今後が厳しくなる結果だが、原村和からしてみれば後に繋がる重要な一局となった。もちろん、全員ノーテンで場は南入する。臼沢塞は身体のしんどさから溜息を吐くと、ようやく四分の一が終わったのかと若干気が遠のくが、ここで折れては意味がない。やるしかないという義務感で自分の背中を押し。

 

 

 

(……思ったよりしんどいわね、まあ局の最初から流局まで『塞げ』ばそれもそうか……)

 

 

 

(まァ……あと三回、全部『塞ぐ』わよ……)

 

 

 

 

 

 

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「あら……はっちゃん、和了れなかったわね」

 

 

 

「いくら宮守の副将がいたとしても……これは厳しいですね……」

 

 

 石戸霞と狩宿巴は悔しそうに項垂(うなだ)れている薄墨初美の事を見ながら、そういった事を口にする。見かけ上は動じてないようにも見える会話であったが、焦りを覚えているのは事実だ。

 鷲巣巌という例外を除けばチームの稼ぎ頭は主に神代小蒔と薄墨初美。この二人のうち一人でも崩れると厳しいのが正直なところ。神代小蒔に関してはいつ起こるのかも、どれくらい持続するかも不明なため、せいぜい一回発動してくれれば良い程度ではあるが、薄墨初美が一回でも和了を逃すとなると結構厳しいものになってくる。ただでさえ、今永水は一校だけ沈んでいる状況なのだ。一点でも欲しいこの状況で、『裏鬼門』を封殺されるのはかなり困る。

 が、そんな窮地に立たされているという事を感じさせないような口振りで、鷲巣巌は『ま……「裏鬼門」とか言ったか。全く……いいように利用されているな』と呟く。

 

 

 

「利用ですって?誰がかしら?」

 

 

 

『恐らくあの清澄……ただの間抜けではない。いや、それどころか……策士、虎視眈々とした策士……!この局の初手を見た時は正気かと儂も思っとったが……あのガキ、「裏鬼門」を利用して宮守を潰す気だ……』

 

 

 

「……流局まで粘ったのも、それが理由?」

 

 

 隣で聞いていた滝見春も、三人の会話に割って入るようにして鷲巣巌に尋ねると、鷲巣巌は『ああ。そうすれば、あの団子の娘により長く能力を使わせる事ができるからな』と答える。

 

 

 

「でも、それって間に合うのかしら?要は臼沢さんの体力をゼロにするって事でしょう?」

 

 

 

『儂の見立てじゃあ……恐らくもって二回。そこが限界じゃろう……いくらあの団子娘とて、所詮は人間……その枠組みを超えん……神の力である「裏鬼門」を封じるのは相当の代償が必要になってくるもの……あやつ次第ではあるが、終局までは恐らく保たん……』

 

 

 

『姑息ではあるが、今の宮守を止めるには一番の良手である事は間違いはない……団子娘の能力は厄介だ……特に、貴様らのような異能力集団にとっては天敵と言っても差し支えない……!』

 

 

 

 鷲巣巌が永水のメンバーに向かってそう言い放つと、石戸霞は「まあそれは認めるけど……あなたは大丈夫なの?」と、鷲巣巌に向かって再度尋ねる。それを聞いた鷲巣巌はカカカ……!と笑い声をあげ、こう返答した。

 

 

 

『何度言ったら分かる……!儂の力は神をも手駒にする驚異的豪運……!何人たりとて儂に干渉はできん……王は、神だろうとそれを封殺する事の出来るものだろうと、誰からも縛られぬから王なのだ……!その気になれば、あんなもの……無力化など容易い……!』

 

 

 

「……それなら、頼もしいわね」


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