宮守の神域   作:銀一色

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語彙力が死滅してますねこれは……


第421話 二回戦B編 ㉚ 嵐前

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視点:神の視点

東三局 親:永水 ドラ{四}

姫松 120600

清澄 101300

永水  68400

宮守 109700

 

 

 

 

 前局に意を決して愛宕絹恵を『塞い』でツモを封じ、逆に数巡差を追い越して直撃を討ち取った臼沢塞は今度は永水の親に備えていた。いや、厳密には親よりもその次の東四局が一番警戒しなくてはならないのだが、だからといって永水に親で連荘されてしまえば、せっかく裏鬼門を『塞い』でもあまりその恩恵は得られなくなってしまう。極論言ってしまえば誰も和了らせなければ良いのだが、格別薄墨初美は気を付けなくてはならない存在であった。

 

 

 

(まだ一回目だから、やっぱり後何回使えるかは分からないけど……そう何回も使えるもんじゃないのは確かね……しんどいのはしんどいけど)

 

 

 

 臼沢塞は自身の身体の様態に気をつけながら、残りの使用回数を体感的に勘定しようと試みる。やはり一回目では体力から判断する事は出来ないらしく、残り回数がわからない状況であった。封じる能力によっても体力の消耗量も変わってくるため、予想は困難であった。

 

 

 

 

(宮守……一体なんなんやさっきのは……)

 

 

 

 一方で、『塞がれた』側の愛宕絹恵は先ほどの感覚を思い出そうとするかのように臼沢塞の事を凝視する。あの自分の能力が全く発動しそうにもなかった不穏な感覚。一体何が行われていたのかは分からなかったが、それが末原恭子の言っていた、臼沢塞の能力であるという事は容易に推察できた。

 そしてその推察に行き着いた愛宕絹恵は、もしかしてと今度は警戒から羨望の眼差しを臼沢塞に向ける。もしかしたら、臼沢塞は自分にやったように薄墨初美の『裏鬼門』も阻止できるのではないか、と。通りで、末原恭子が『絹ちゃんは気にせず打つとええで』と楽観視していたのだと頭の中で思い返す。

 そして話は返って勿論、臼沢塞は薄墨初美の『裏鬼門』を『塞ぐ』つもりであるし、原村和はそれを前提として策を打とうとしているのだ。

 

 

 

(……どうやら、姫松の人にも使ってくれたようですね。宮守の点数が増えるのは癪ですが、まあいいでしょう。……これで無制限に使えたら、本当に無駄な作戦なんですが……)

 

 

 

 原村和もチラリと臼沢塞の方を見て、結果としては良い方向に傾きそうだと思いながら配牌を取っていく。強力な能力を振るう者は、強力故に、連発する事ができない、ある特定の状況下じゃないと使えないと制約があったり、体力を消耗したりなど、何か代償を必要とされる事もあるにはある、というのは色んな人間から聞いたことがある。彼女にとっては分かるわけのない……というより分かりたくない話ではあるが、今に至ってはそれを存分に利用する事となり、これで一層オカルトを認めてしまったと若干悔しさをにじませるが、我慢して策を講じようとする。勝負の東四局に、卓どころか会場全てを混乱に招き、騒然とさせる驚愕の策を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永水:十一巡目

{七八③④⑤⑦⑦5556西西}

ツモ{西}

 

 

 

 

(あら、こっちが重なってしまいましたかー……仕方ないですねー……)

 

 

 

 そして嵐の前の静けさと言わんばかりの東三局では、親の薄墨初美は十一巡目にてようやく聴牌に達する。暗刻になった{西}を少し嫌な物を見るような目で見つめると、{6}を切ろうとして、リーチをかけようかどうか少しほど悩む。{西}が暗刻にさえならなければ、こんな事で悩む事にならなかったのにと悔しさを滲ませていると、それならばいっそ切ってしまおうと決めたのか、ツモってきた{西}を御役御免と言わんばかりに切る。

 

 

 

「ロン、4800です」

 

 

 

 

清澄:和了形

{一一赤五五②②⑥⑥66西白白}

永水

打{西}

 

 

 

 迷った挙句、結局光明と思えた道も清澄が待ち伏せし、直撃を奪っていく。原村和からしてみれば、生牌であった{西}をツモろうと待っていたのが運良くぶつかってしまっただけであるが、永水からしてみればこれ以上ない不運な事であった。

 

 

 

 

(……いいでしょう。お望みならぶっ飛ばしてやりますよー!!)

 

 

 

 振ってしまった薄墨初美は今の事に対して劇場を燃やしながら、東四局を迎え入れる。『裏鬼門』の発動を心待ちにしている一方、臼沢塞はモノクルに注意を向けながら、(ついに来たか……永水……)と、薄墨初美の事を見据えていた。

 そして、原村和は作戦を実行すべく、配牌が作戦を実行しやすい状態である事を願いながら、臼沢塞と薄墨初美の事を見ていた。様々な思惑が交錯しながら、東四局が幕を開けることとなった。


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