宮守の神域   作:銀一色

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第419話 二回戦B編 ㉘ 曇り

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視点:神の視点

東二局 親:清澄 ドラ{①}

姫松 124500

清澄 101300

永水  68400

宮守 105800

 

 

 

(……にしても、やっぱり清澄も上がってきたかぁ。まあ、予想はしてたけど)

 

 

 臼沢塞は賽子を振るためにボタンに指を添えようとしている原村和の事を見つめながら、心の中でボソリと呟く。先ほどの和了で清澄は宮守との点差をわずか3200とし、清澄が後一回でも和了れば捲られる危険性が非常に高かった。まだ副将戦が始まったばかりとはいえ、そういう緊張感が臼沢塞に走り、清澄の原村和もまた独特な雰囲気を醸し出していた。

 が、あいにく彼女はこういった張り詰めた空気、異質な雰囲気を散々味わってきている。主に小瀬川白望のせいで。いや、というより、小瀬川白望の発するあの言葉で表すことのできぬ威圧感に比べればこれくらいの緊張は無に等しいものであった。感覚が麻痺するという事は勿論プラスの面とマイナスの面、それぞれ背反した面を兼ね備えているものだが、今回は大幅にプラスに働いたようだ。

 

 

 

 

「リーチや」

 

 

 

姫松:捨て牌

{西九6発⑧三}

{横五}

 

 

 そして東二局、最初に対局に変化を齎したのは愛宕絹恵であった。前局の手痛いミスを払拭するように、強気で攻めていく。彼女にとっては悔やんでも悔やみきれないあの5200の失点。だが、それを嘆くよりも先に、自分のミスは自分で償う。そういった意思を持ちながら放ったリーチだったが、ここで臼沢塞はある事に気づいた。

 

 

 

(……?っ、モノクルが……!いったい誰が……)

 

 

 

(清澄は論外、永水でも無いとすると……まさかこの子、オカルト持ち(能力者)……!?)

 

 

 

 少しばかり曇ったモノクルをずらして愛宕絹恵の事を見つめる。有り得ない。そう思いつつも考えれば考えるほど、その可能性が極めて高いという事に気付く。今は永水は南家であるから『裏鬼門』が起こるわけもなく、勿論原村和という可能性も無い。となれば、残された可能性は薄墨初美の『裏鬼門』以外の能力か、愛宕絹恵の能力のどちらかである。しかし、今の一連の流れを鑑みるに、どう考えても愛宕絹恵の能力であるだろう。だが、小瀬川白望からはそんな発言は一切聞かされていなかった為、安易に愛宕絹恵の能力だと決めつけて良いのか悩んでいた。

 実は臼沢塞の気付きは当たっており、確かに愛宕絹恵は能力者であった。{①}をサッカーボールと見立て、{①}を絡めると和了(ゴール)しやすくなるという、ゴールキーパーの彼女にとっては若干皮肉めいた能力であったのだが、小瀬川白望がその事を知らないのも当然の話であり、実は小瀬川白望は愛宕絹恵が能力によって和了っていた場面は一度も見たことがなかったのである。対局は何度かした事はあったのだが、いかんせん小瀬川白望と愛宕洋榎という化け物同士の争いの中で満足に和了れるわけもなく、結局いずれも能力を披露する事はなかったのだった。

 

 

 

(決めてみせるで、絶対に……)

 

 

 

 いつもは、ゴールを守る、阻む為に尽力していた愛宕絹恵であったが、今は違う。ゴールを決めるために、全力で闘志を燃焼させていた。

 

 

 

 

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 そして宮守女子の控え室でも、先ほどまで鹿倉胡桃の頭を撫でていて目を離していた小瀬川白望が視線を戻すと、臼沢塞のモノクルが曇った事にちょうど気付いた。

 

 

「……あ、曇ってる……」

 

 

 

「ほ、本当?もう永水のが来たの?」

 

 

 

「いや、それは無いね。『裏鬼門』があるとしたら永水が北家……つまり、塞が親番の時だからね」

 

 

 熊倉トシがそう言った後、少しの間臼沢塞のモノクルが曇った事に関して考えていると、小瀬川白望は思い出したかのように「……多分、絹恵のかな」と呟いた。

 

 

 

「絹恵って、姫松のー?」

 

 

 

「うん。前に打った時も気づかなかったし、姉の洋榎がアレ(非能力者)だったから、能力は無いと思ってたんだけど……違ったみたいだね」

 

 

 

 小瀬川白望が困ったように頭の中で愛宕絹恵の過去の牌譜を記憶から呼び起こして、調査し始める。が、その調査はものの数秒で完了する事となる。いや、というより牌譜を頭の中で思い出す必要もなかった。モニターに映った愛宕絹恵の手牌を見れば、{①}を絡めれば和了りやすくなるという能力は容易に想像できた。小瀬川白望はその結論に達すると、「どうやら、{①}がカギっぽいね……」と言う。

 

 

 

「{①}?……成る程、確かにこれは違和感があるわね……」

 

 

 

「ええ。まあ私達側から確認できるのは別に良いんですけど……問題は塞。塞からはどういった能力は分からない……故に、状況によっては回数制限のある塞の能力を使わされるかもしれない……」

 

 

 

「ええ、そ、それはダメだよー!」

 

 

 

「うん……でも、これで絹恵が和了ってくれれば良い。そうすれば塞にも絹恵の手牌が見える……塞なら、すぐに気付くはず……」

 

 

 

「逆に……この時点で塞が塞いでるとしたら結構厳しい……前半戦と後半戦の間に伝えはできるけど、消耗した体力はそう直ぐには戻らない……」

 

 

 

 

 

 

 




一応言っておくと、絹ちゃんの能力はゲームの能力を採用しました。

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