宮守の神域   作:銀一色

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第396話 二回戦B編 ⑤ 仏滅

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視点:神の視点

東三局 親:姫松 ドラ{②}

清澄 120900

宮守 111400

姫松  90000

永水  77700

 

 

 

上重漫:配牌

{一七九②⑥⑦⑦⑨35889東}

 

 

 

 厄介な清澄と宮守の親が流れて上重漫の親番となった東三局、上重漫の配牌は数牌が明らかに789に偏っていた。前局や前々局から偏り始めている様子は見られたが、それは愛宕洋榎ほどの実力者が注目してようやく気づく程度の偏りであった。しかし、今度はそれが顕著に現れており、既に上重漫の導火線には火がつけられているという事を呈していた。

 流石にここまで露骨に手牌が偏るとなると姫松以外の者にも勘付かれて初めてはきたが、いかんせん彼女を止める方法が少なく、強いて言うなれば和了らせない事が一番の解決策ではあるが、局が進むにつれてだんだんと勢いを増していく彼女が爆発するのはもはや時間の問題である。

 

(……早めに止めないといけないじぇ)

 

(そろそろ『仏滅』も視野に入れておいた方が良さそうだねー……)

 

 そんな上重漫の爆発が危険だということをいち早く察知した片岡優希と姉帯豊音は上重漫を止めるべく手を進める。片岡優希は持ち前のスピードをいかして、姉帯豊音は全員が有効牌を引きにくくなる『仏滅』を使用して各々で彼女を止めようと画策する。が、ここで片岡優希と姉帯豊音との間に齟齬が生じることとなってしまう。

 もちろんどちらも上重漫を止めるには十分な方法ではあるが、姉帯豊音の仏滅の効果は何も上重漫だけではない。自身や片岡優希の手も殺してしまうのだ。そうなれば片岡優希も持ち前のスピードをいかして電撃戦をしかけることは容易ではなくなり、結果として水平下での勝負をする事しかできないのである。

 

 

(宮守の黒いおねーさんが何かしてるじぇ……私が東風でこんなに遅くなるなんて……)

 

 

(……姉帯が何かやったな。一向に進まへん)

 

 

(上重さんが危なそうだしー……場は一度切らせてもらうよー?)

 

 

 が、いくら姉帯豊音によって同じ目的を持つ片岡優希の手を潰してしまうとは言っても、姉帯豊音の仏滅の効果は凄まじく、文字通り仏を滅するようにツキは回って来ず、それどころか手は全くと言って良いほど進まずに珍しい形での膠着状態に陥る。

 上重漫としてはなんとかしたいこの状況ではあるが、いくら導火線に火がついた状態と雖も姉帯豊音の支配を打ち破ることができずにそのまま無情に流局へと進んでいくだけである。

 それも当然の話で、この仏滅の支配は姉帯豊音自身も逃れることのできない強力な支配であるのだ。どんなに屈強な者でも、皆等しく無力になってしまう。それが最大のメリットでもありデメリットでもあるのだ。それこそこの支配を受けて平然としていられるのも小瀬川白望くらいであり、いや、しっかりと支配の効果は受けてはいるのだろうが、技量や相手のミステイクを駆使して強引に支配を破ってくるのだ。故に真の意味で彼女の支配を真正面から打ち消すことのできる者はいないと言っても満更嘘でもないかもしれない。

 

 

 

「ノーテン」

 

「ノーテンだじぇ」

 

「テンパイだよー」

 

「て、テンパイです」

 

 

 結局この東三局は姉帯豊音の仏滅によって流局という形で終了し、上重漫の親を蹴ることに成功する。しかも姉帯豊音は運良く最後に聴牌する事ができ、+1500点で危ない東三局を乗り切った。が、しかしこの局では一つ懸念が残ったのも事実ではある。それは永水の神代小蒔。彼女も何気なく聴牌しているが、仏滅の効果があるこの局で聴牌するのは容易ではない。それは東風だというのに聴牌すらできなかった片岡優希と、爆発寸前の上重漫が聴牌できなかったのを見れば簡単に分かる。そう考えると、やはり仏滅の効果が神代小蒔にはあまり効いていないというのが妥当な解釈だろう。

 

(神代さん……あまり仏滅が効かないのかなー?神様を降ろした時、仏滅で対応できると良いけど……)

 

 神様を従えている神代小蒔を始めとした永水のメンバーには仏滅が有効かと思っていた姉帯豊音側としては少し不安が残るものとなったが、とりあえず今は大人しい神代小蒔よりも危ない上重漫である。事実、この流局がもたらした物は大きい。今上重漫に和了られていたら、確実に爆発していたであろう。そうなればいくら姉帯豊音といっても東風の片岡優希と爆発状態の上重漫を同時に相手するのは些か厳しいものがある。よってこの流局は何気なく見えるかもしれないが、実際はかなり大きいものである事には間違いはないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

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『東三局、姫松の親番でしたが、ここは流局です』

 

 

 一方でこの二回戦Bブロック第一試合の解説と実況を務めていた佐藤裕子はそう言うと、隣にいた戒能良子に向かって『しかし今の局、前局までとは打って変わって動きが見られなかった局でしたね?』と質問する。

 

『そうですね……ムーブしなかった、というよりかはムーブしたくてもできなかったんじゃないでしょうか』

 

『……できなかったとは?』

 

『それもディフィカルトな話ですが……恐らく何らかのパワーが働いているんでしょう。それこそブッダを滅するほどのパワー……』

 

 そう常人にはとても理解し難い解説をする戒能良子ではあったが、既に戒能良子は大体の見当はついていた。戒能良子は画面に映る姉帯豊音の事を見ながら、心の中で(……六曜、でしたか。全く……白望サンのフレンドには変わり者が多いですね……)と呟いた。


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