宮守の神域   作:銀一色

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南2局と南3局です。結構ハイスピードで進みます。(今までに比べれば)


第28話 全国大会第1回戦 ⑫ 囮

 

 

 

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視点:神の視点

 

 

白水が{7}を通し、それを小瀬川が鳴いた一巡後、白水がとうとう念願の牌を掴む。

 

白水:手牌

{三四六六六七八③④赤⑤235}

ツモ{二}

 

{二}引き…!これで聴牌に至ると同時に、ツモれば安めの{1}でもツモ平和ドラ2の4飜が確定する。

聴牌に取るために、{5}を切り払おうと、{5}に触れようとしたその時、白水は小瀬川の表情の変化に気付いた。

 

(なんだ小瀬川…?何が可笑しかんだ?)

 

 

白水の方からは小瀬川は下を見ているからあまり見え辛いが、その顔は確かに笑っていた。

自分の負けを認めた諦めの笑いなどでは断じてない。言うなれば、自分の思い通りに事が進んでいる事に喜んでいるよう…そんな笑みだった。

 

(まさか…ほんなこてに混一色ば張って…?)

 

そんな考えが白水の頭を駆け巡る。もしかしたら、ブラフだと思わせておいての実は聴牌していたという、二重のブラフなのかもしれない…と。

 

ありえない話ではない。彼女ほどの腕前なら、ブラフを仕掛けることも、ブラフだと思わせるように振る舞う事も造作もないだろう。

言うまでもなく、彼女は今、嘘をついている。それは明白だ。誰がどう考えたって小瀬川が今まともに手を進めているわけがないだろう。

 

 

だが。

 

 

 

 

小瀬川:手牌

{裏裏裏裏} {横789 77横7 南横南南}

 

 

 

(……。)

 

 

それがどっちの嘘なのかが分からない…!

ただの聴牌脅しの嘘なのか、聴牌脅しと見せかけての出和了り狙いなのかが分からないのだ。

どちらの方でも、小瀬川ならやりかねないし、どちらの方が確率が高いとかいうのもない。

 

 

二分の一。完全な50%である。

俗に言うジャンケンの手の読み合いとでも言えばいいだろうか。相手がグーを狙ってきそうだからチョキを出す。それも気づかれてそうだからパーにしよう。いやそれを敢えてグーに変更してはどうだろう…など、考えてもキリがないのだ。

 

 

(くそ…だばってん、逃げるわけにもいかなか…)

 

半ば思考を放棄し、白水は思いっきり牌を振り上げ、

 

(自爆覚悟…!)

 

ダァァァン!という快音が響く。打ち出したのは{5}。和了られる可能性を孕みながらも、白水は前へと進んだ。

 

「…」

 

小瀬川からの発声はなく、小瀬川は山から牌ツモろうと山へ向かって手を伸ばそうとしていた。

つまり白水は賭けに勝ったのである。

それ即ち…

 

 

小瀬川:手牌

{九③14} {横789 77横7 南横南南}

 

 

バラバラ。ノーテン…!小瀬川の手牌はノーテン…!形を成していないオンボロの刀は、白水には通じず…!

 

 

 

「ツモ!」

 

 

白水:和了形

{二三四六六六七八③④赤⑤23}

ツモ{4}

 

「ツモ断么平和ドラ2!2000-4000!」

 

 

白水が聴牌に受けたその直後、和了牌を手繰り寄せるようにして和了。きっちり高目をツモり 、己が手を満貫にする。

 

 

この満貫ツモで、現在の点棒は

 

小瀬川 39100

小走 8400

上埜 25900

白水 26600

 

と、白水は2位に再浮上する。一位の小瀬川とは一時期30000点も離れていた点差も、12500点差にまで縮まり、次白水が跳満をツモれば文句無く順位はひっくり返ることとなる。

 

(とうとう背中が見えた…小瀬川!)

 

 

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南3局 親:上埜 ドラ{4}

 

 

小瀬川 39100

小走 8400

上埜 25900

白水 26600

 

 

先ほどの南2局で大きく差を詰めた白水。この南3局も、その波に乗るかのように、配牌は絶好調。

 

ツモもよく、5巡目にして一向聴である。

 

白水:手牌

{六七七八八九②③⑨⑨479}

ツモ{九}

 

打{六}

 

 

高目が出れば純チャン平和一盃口。ツモで跳満、リーチをかければ倍満にまで到達する、小瀬川を打ち倒す手。

 

 

だが、小瀬川もそれを黙って眺めているわけでもない。

 

「リーチ」

 

小瀬川:捨て牌

{一一三六横九}

 

手牌

{裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏裏}

 

 

 

小瀬川が先制リーチをかける。しかし、白水はそれに一切の興味を示さない。

 

(しつこいぞ小瀬川…もうその脅しは通用しなか。)

そう。既に南2局で今の小瀬川の状態はたかが知れている。仮に聴牌していたとしても、白水の{5}で和了れない時点で、小瀬川に流れはない。

 

故にありえないのだ。鳴いてもない面前で白水よりも先に聴牌する事など。

 

 

 

白水:手牌

{七七八八九九②③⑨⑨479}

ツモ{8}

 

 

そして2巡後白水が嵌張の{8}を引き、聴牌に達する。

相変わらずリーチ後も小瀬川の捨て牌は不気味だが、聴牌しているわけもないので和了られる事もない。

1000点棒を取り出す。それが指し示すものは、リーチの宣言。小瀬川に追っかける形でのリーチ。

 

高目をツモり、裏ドラが1つでも乗れば倍満確定。流れの波に乗る今の白水にとって、そんな事は難しい事でもない。

 

(こいで終わりだ…小瀬川ァ!!)

 

 

そう思い、横に曲げて打ち出した{4}。

 

 

瞬間、牌が倒れる音がする。

 

 

小瀬川は何も発声はしていない。

 

 

『小瀬川は』。

 

 

 

 

小走:和了形

{二三四⑥⑦⑦⑦⑧56888}

 

「ロン…!断么ドラ1は2600。」

 

 

 

 

小走が和了する。白水はギョッとして、小走の捨て牌に目を向ける。

 

小走:捨て牌

{北南②9六3}

 

捨て牌に異常は見当たらず、典型的な断么平和型の捨て牌であり、待ちは大方直前に切った{3}の裏筋…そう。{4-7}辺りが待ちになりそうな捨て牌である。

比較的読みにくい捨て牌ではない。それにもかかわらず白水は簡単に振り込んでしまった。

 

 

じゃあ何故白水はそれに気付かなかったのか。

 

 

原因は明白。小瀬川のリーチのせいである。

 

 

(まさかあのリーチは聴牌ば宣言してウチば止めるつもりなんて最初からなく、小走さんへの目線ば誘導すっ為…?)

 

いわば囮である。小瀬川がリーチをかければ、それがブラフであると分かっていても分からなくても、とりあえず目線は小瀬川の方へ向く。

 

ただでさえ今まで暴れていた小瀬川の奇妙な打ち筋だ。仮にブラフであると確信していたとしても、小瀬川に注目しない人間などいないだろう。

 

 

それを逆手に取った囮戦術…!

 

 

 

 

何はともあれこれで点棒が動き、

 

小瀬川 38100

小走 12000

上埜 25900

白水 24000

 

白水と小瀬川の差は14100となる。

しかし次の親番は白水である。親満なら文句なく逆転勝利できるし、親っ跳だったら出和了りでも逆転が可能である。

それに親番であるから、小さな和了を積み重ねて逆転…といった事も可能である。

そういう点では、14100という差は大きくはないと言えるだろう。

 

 

 

 

 

そして局面は最終局面。オーラスへ…!

 

 

 




次回からオーラスです。
オーラスは完全にシロVS哩となりそうです。やえと久ごめんよ。

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