宮守の神域   作:銀一色

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第367話 二回戦A編 ⑩ 役満和了

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視点:神の視点

南四局 親:苅安賀 ドラ{3}

新道寺  108600

白糸台  157300

柏山学院  64900

苅安賀   69200

 

 

渋谷尭深:配牌

{8東東南南南西西北北中中中}

 

 

 南四局。前半戦の最終局であるこの局、渋谷尭深は収穫の時(ハーベストタイム)を発動させて配牌を字牌で埋め尽くす。その側から見れば異様でしかない配牌に会場は騒めきが聞こえるが、臨海女子、千里山女子を始めとした強豪校の面々は揃いに揃ってじっくりとモニターの方を見つめていた。まるで、さもこれが当然の事であると言わんばかりに。いくら前情報があったとしても、実際に見れば多少たりとは驚くものだ。しかし、彼女たちは黙っていた。むしろ、それを見てどこか対決を楽しみにしている者もいるようにも見える。

 

 

「……あれはかなり厄介だね。白望、具体的な対策は見つかったかい?」

 

 一方の宮守女子も同じようにしてじっくりと渋谷尭深の配牌を見つめていた。そして熊倉トシが静かにそう呟くと、小瀬川白望は少し考えたような素振りを見せてからこう言った。

 

「……局数が今のみたいに多くなったら、止めるのは至難の業。だから本気で尭深を抑えるつもりなら、まず尭深に連荘をさせないこと……」

 

「最短でオーラスに漕ぎ着ければ尭深が決定できる牌は十三牌中七牌……十分止めれる。至極当然で単純な話だけど……これ以外に止める方法はない……」

 

 小瀬川白望がそう言うと、鹿倉胡桃が「私が親の時はどうすればいい?」と疑問に思っていたことを尋ねる。すると小瀬川白望は「本当はその場面に応じて変えて欲しいけど……基本的に和了る必要はないかな。勿論だけど流局したら聴牌しててもノーテンで」と即答した。

 

 

「……まあ、中堅戦の問題はこれで一応は解決したみたいだね?」

 

「そうですね……まあ後は胡桃次第かな……」

 

「そのプレッシャーかかるような事言うのやめて……!?」

 

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「ポン」

 

渋谷尭深:二巡目

{8東東南南南北北中中中} {西西横西}

打{8}

 

 

(あー……これはやばか)

 

 二巡目から、渋谷尭深は柏山学院から{西}を鳴くと、{8}を切って聴牌とする。これで役満の複合は認められないものの、字一色小四喜の{東、北}待ちとなる。江崎仁美はこの時点でこの状況は非常にまずいと心の中で警鐘を鳴らすが、まず前提条件が圧倒的に不利であるのだ。まず、{東、西、北}。この三牌を手牌から浮いたとしても、切った瞬間渋谷尭深が鳴いて即聴牌という、字牌整理すらさせてもらえない状況下に置かれていた。無論、意を決して切ったとしても前述した通り即聴牌。後は渋谷尭深が和了牌を引き当てるだけである。

 無論、渋谷尭深を必死に追いかけて役満を阻止しようと誰しもが試みる。が、臨戦態勢に入ろうとしたところで、既に時は遅く、それと時を同じくして、大概は渋谷尭深が和了牌を引き当てるのである。当たり前のことながら、今回もそれに漏れることなく、渋谷尭深は和了牌を引いてせしめる。

 

「ツモ……8000、16000です」

 

渋谷尭深:和了形

{東東南南南北北中中中} {西西横西}

ツモ{東}

 

(……期待はしてなかったけど、こう和了られると悔しかね……)

 

 

 江崎仁美は苦渋に満ちた表情をしているのをよそに、渋谷尭深は湯呑みを持って静かに対局室を出て行った。そして渋谷尭深は後半戦が始まるまで少しばかり会場を散策しようとして、その時チラと現在の点棒状況が表示されているモニターを見つけた。

 

(……今ので、二位の新道寺と約9万点差……いくら誠子ちゃんと淡ちゃんでも、あの新道寺のコンビを相手は分が悪そう……)

 

 

新道寺  100600

白糸台  189300

柏山学院  56900

苅安賀   53200

 

 現在、点棒だけで見れば白糸台の圧勝である。が、それはあくまでも点棒だけ見たときの話であり、実際は少し事情が違う。新道寺のオーダーの真髄はむしろ副将戦から。副将戦と大将戦にかけてが新道寺の要であり、絶対的な二大エースである。それがただのエースだったら問題はなかった。しかし、そういうわけではないのだ。それこそ、下手をすれば9万点差を吹き飛ばしかねない。そう思ってしまうほどの大エースなのだ。万が一にも油断は許されない。それは亦野誠子も大星淡も承知している。が、承知していたとしても、どうなるか分からないのだ。それほど恐ろしいのだ。俗に言う、新道寺のリザベーションコンビは。

 

(……だからこそ、後半戦もしっかり役満を和了って誠子ちゃんに繋ぐ……それが私の役割……)

 

 そう心の中で念を押すように呟き、後半戦の舞台へと出陣する。勿論、素の能力でも他者を上回っていた渋谷尭深を押さえることなど江崎仁美含め、他校にできるわけがなく、後半戦の南四局、渋谷尭深は今度は大四喜をツモ和了り、新道寺との点差を十万点近く離して次鋒の亦野誠子へとバトンを繋いだ。

 

 

「……誠子ちゃん。格上相手だけど、頑張ってきてね」

 

「勿論……本命のエースが相手なんて、まさに相手にとって不足なしさ。全力で食らいついて行くよ」

 

 

 

 

 

「……すまなか。点棒は増えたばい、ばってん白糸台との点差が……」

 

「問題なか。私がなんとかしちょる」

 

 そして勝負も佳境に突入、次鋒戦へと突入する事となる。かたや二年生ながらも副将を任された亦野誠子に、かたやエースの中のエースである白水哩。この両者が激突する事となった。


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