宮守の神域   作:銀一色

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東4局を強引に終わらせて、南入します。
今回色々おかしいところとかあるかもしれませんが、脳内補完でお願いいたします。
もし、「それでもわっかんねー」という人がいたら感想欄での指摘をお願いします。
*私はメンタルクソ雑魚なのであまり辛口はお控え下さい。


第24話 全国大会第1回戦 ⑧ 南入

 

 

 

 

 

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視点:神の視点

 

 

 

 

 

もし、自分よりも遥かに強く、勝てる可能性がほぼゼロに近いほどの相手と闘ったらどうするのが一番有効なのか。

 

その者と闘わずに逃げる。勇敢に挑む。策を考える。一旦様子を見るなど、色んな案が挙げられるだろう。『その者と自分の強さの差によって変わる』と答える人も少なくは無いはずだ。又、その案に正解も無ければ不正解もない。結果が出るまで、その案が正解だったのかは分かるはずもない。

 

いや、そもそも結果の捉え方についても人それぞれだろう。生き延びはしたが相手を倒していないので失敗という人もいれば、完膚なきまでに叩きのめされたが、命があるから成功という人もいる。

 

極論、「人の価値観による」と言ってしまえばそこまでだ。それ以上どんな仮説を立てたとしても、その仮説に意味は無い。何故なら「人によって違う」のだから。

 

 

所謂これは哲学のようなものだろう。いや、強敵の対処法というもの自体が哲学的な事かと言われると違うが、答えが無いという点では哲学に似たものであろう。

まあその話は一旦置いておく事にしよう。

 

 

 

 

 

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東4局 親:白水 ドラ{1}

 

小瀬川 33300

小走 15400

上埜 30900

白水 20400

 

 

 

 

東4局。小瀬川の勢いは最高潮に達し、怒涛の和了をメディアや他の選手の目に焼き付けていった。

 

 

4巡目

 

「リーチ」

 

小瀬川:捨て牌

{5②東横四}

 

僅か4巡で小瀬川がリーチをかける。その圧倒的な速さに3人は対応できない。

差し込むどころか、鳴かせて延命する事すらできる事なくツモ番が一周してしまう。それが示す事は、即ちツモ和了るという事。

ここで和了れないなんてヘマをするような人ではない。それは卓にいる3人と特別観客席にいる塞達だけではなく、一般観客席にいる観客達もそれを悟っていた。

 

「…」

 

特別力を入れてツモるわけでもなく、そのツモに期待を込めるわけでもなく、静かに、ただ静かに山から牌をツモり、自分の元へ寄せる。その動作に淀みはなく、さも当然かのようにツモ牌を確認する前に自分の手牌の前にタンと置く。

そして宣言する。

 

「ツモ」

 

小瀬川:和了形

{一二三五五七八九西西北北北}

ツモ牌{五}

 

裏ドラ{8}

 

 

「リーヅモ一発混一色。3000-6000」

 

無駄ヅモ無しでの流れるような跳満ツモ。

リーチの宣言牌の{四}を見る限り、流れを完全に読み切っている事が伺える。でなければ一通の可能性を完全に遮断する事はできない。次のツモが{五}であると確信したからできた愚形。

 

小瀬川はまるで準備運動と言わんばかりな表情をして、サイコロを回す。

次は小瀬川の親。地獄の時間が幕を開けようとしていた。

 

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(ど、どうしよ…)

上埜久は焦っていた。一時期はトップに登りつめた上埜だったが、さっきの跳満によって差は18000点位まで開いてしまった。

次の小瀬川の親を蹴らないと、ますます勝ちから遠ざかる一方だ。それは小瀬川以外の全員が理解している。

 

 

だが、

 

 

(どう打っていけば…小瀬川さんの親を蹴れる…?)

 

 

どうすればいいのかがわからない。守りに専念しても小瀬川にトップで逃げられる。逆に攻めにいけば、そこを小瀬川に狙われる…

 

つまりどう動こうと、結局小瀬川にしてやられるという軽い錯覚状態に陥っている。

 

考えれば考えるほど勝てるイメージが薄まっていく状態は、勝負という物事に於いて、一番なってはいけない状態だ。いや、勝負だけではない。テストの時やゲームをしている時など、勝負事に限らず負のイメージを高める事は全てに於いていけない事なのだ。

 

 

無論、彼女達はそれを知っている。知っている上でも、勝てるイメージが全く湧かない。勝てる気がしないのだ。

 

 

当然と言えば当然なのかもしれない。実際、小瀬川を完膚なきまでに打ち崩せと言われて、そう実行できる人間など、まずいない。

それこそ彼女の師匠である赤木や、かつて赤木を追い詰めた鷲巣巌、赤木がイカサマをしなければまともに直撃が取れなかった市川のような化物にしか不可能であろう。

 

 

が、その絶望的な現実にも屈せずに、勝とうという明白な意思を持つものがいた。

 

 

(次が勝負どころばい…)

 

 

そう、白水哩だ。

 

彼女はこの南入まで、まともに和了っていない。和了ったと言っても差し込み要因としての役目でしかない。

だが、彼女は待った。機を。チャンスを。そしてこの南1局こそが、その機の予兆。前座である。

 

 

南1局をどうにか凌ぐことで、白水哩にも僅かにチャンスが生まれるかもしれない。

 

が、実際は厳しい道のりだ。第一、南1局を凌いだところで彼女に勝てるという保証にはならない。第二に、彼女と白水には大きな差がある。その力量差で、この点差を縮めることは容易ではない。

 

 

 

が、それでも尚まだ分からない。まだ分からないのだ。

 

 

麻雀は運要素がとても高いジャンルで、「麻雀は運九割」と豪語する人もいる。即ち、相手がどれだけ強かろうと勝てないという事は無いのだ。

 

 

 

無論、小瀬川ほどのレベルになると、相手の運が良くても技量でどうにかしてくる場合もある。東3局1本場のような鳴きのブラフも、その技量の1つだ。

 

しかし、それでもゼロではない。絶対的では無いのだ。その事実は曲げる事はできない。小瀬川白望といえども…

 

 

その僅かな可能性を信じて、白水は突っ走る。小瀬川という大きな壁に。神域という壁に。

 

 

 

 

(ん…)

そんな意気込みをする白水を見て、小瀬川が違和感を感じる。

東4局までは完全にものにしていた流れに、どこか淀みが見られる。

(間違いない。この南1局、取り扱いに気を付けないと…やられる。)

そう。流れは傾きつつあったのだ。

白水は南1局をどうにかする事が必須と考えていたが、実は既に傾き始めていたのだ。

まるで、壁に挑む白水を後押しするかのように。

即ちこの南場、劣勢を強いられる可能性が高い。

 

 

(…ダルくはない。いいよ、白水さん。来なよ。)

 

 

 

 

 

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南1局 親:小瀬川 ドラ{南}

 

小瀬川 45300

小走 12400

上埜 27900

白水 14400

 

 

小瀬川から順々に山から配牌を取り出す。この南1局、小瀬川が追う者で、他3人は追われる者と一般観客の人には思われているが、実際はそうではない。

小瀬川が追われる者であり、他3人が追う者であるという事にまだ小瀬川しか気付いていない。

 

逆に言うと、他3人は気付いていないという事だ。上埜と小走はまだ自分が狩られる側だと誤認している。白水にはその誤認はないが、小瀬川の親をさっさと蹴りたい一心で一杯だ。

できれば小瀬川としては3人が気付く内に局を消化したい。

 

 

小瀬川:配牌

{七八①④1223455889}

 

小瀬川の配牌は索子が固まっており、混一色が狙える手だ。

しかし、小瀬川にとって今重要なのは局を消化する事。即ち、流局若しくは差し込みがベストである。

当然、配牌の良さなど今はどうでも良い…どうでも良いはずだが、

 

(…ふふふ)

 

 

小瀬川は笑う。この若き神域は、この配牌から常人とはかけ離れたストーリーを構成する。

 

 




次回から南1局です。
やっと折り返し地点に立ちました。
小学生全国大会編はまだ4分の1にも到達してませんけどね。

よくよく考えてみたら南入までに7話使っているので、一半荘が14話と仮定すると
1回戦…14話(残り7話)
準決勝…28話
決勝…28話

合計70話…70話!?

…まあ、頑張ります。いつまで毎日投稿が続くのかは分かりませんが。

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