宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです



第346話 インターハイ開会編 ⑤ 開会

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視点:神の視点

 

 

 

「……ミヤモリ?だったっけ。結局こっちと反対側だったね。テルー」

 

「うん……まあ、何処にいようが然程変わりはないし、いいんじゃないかな……」

 

 一般出場校の団体戦の抽選が一通り終わり、シード校の位置も確定したところで大星淡が宮永照に向かってそんな事を呟くが、宮永照は悔しそうな表情などを浮かべる事なく、いつものクールな表情のまま大星淡からの言葉に返答する。それを聞いた大星淡が「え?どこでもいいの?」と首をかしげる様にして聞くと、横にいた亦野誠子が足を組んだまま「……どこに居ても、私たちが優勝するには確実に勝たなきゃいけないところだからな」と答えた。すると大星淡は「……そんなに強いんだ?」と宮永照に向かって言うと、宮永照は首を縦に振った。

 

「もちろん……今までの淡の精神強化は宮守の大将……白望の対策なんだから」

 

「え……あれ意味あったんだ!?」

 

 大星淡が驚きながら声を上げると、渋谷尭深が若干困った様な表情を浮かべて「何だと思ってたの、淡ちゃん……」と言うと、大星淡はきっぱりと「……先輩たちの憂さ晴らしだと思ってたよ」とジトッとした目で渋谷尭深だけでなく、宮永照と亦野誠子の事も見る。

 

「……でも、今までの特訓は無駄じゃないと思うよ」

 

「まあ、あれだけの試練を乗り越えた私ならもう誰にも負けないよ!高校100年生どころか、もはや10000年生だよ!」

 

「……何年留年する気なんだ」

 

 シード校であるが故に部長でありながら抽選に参加しなかった弘世菫は先ほどまで黙って見ていたのだが、そう意気込む大星淡を見て、呆れた様な目で大星淡の事を見ながらそう呟くと、宮永照は「まあ……宮守もそうだけど。今は目の前の敵に集中する。それまでに負けたら笑い話にもならない」と言い、トーナメントが映し出されているモニターを見据える。

 

「多分新道寺が二回戦に上がってくる……あそこも強敵には変わらない。……全力で潰すよ」

 

「もちろんだ」

 

「了解です!」

 

「……分かりました」

 

「まっかせてよ!」

 

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「一回戦に宮守と当たるっちゅう最悪のパターンはならなかったけど……ばってん二回戦は白糸台。結構厳しくなっね」

 

「ですね……特に先鋒戦ば頑張らんといけんから、煌、頑張っとよ」

 

「すばらです。お任せ下さい!」

 

 江崎仁美にそう言われた花田煌は敬礼のポーズをとってそう言うと、トーナメントの反対側に位置する宮守女子高校の名前を見ながら(宮守とは決勝まで行かないと当たりませんね……すばらなのかすばらくないのかは微妙なところですけど……二回戦で清澄が当たってしまいますねー……)と同じくBブロックにいる清澄高校の名前を見ながらそう呟いた。

 

「……部長」

 

「ん、どうした姫子」

 

 花田煌がそんな事を考えていると、鶴田姫子は白水哩に向かって「いつでもアレの準備はできとるとです。部長に全てお任せします」と言うと、白水哩はフッと笑って「そうか。まあ相手が白糸台ならそう言っとられんからな」と言うと、鶴田姫子はコクリと頷いた。そしてそんな掛け合いを途中から聞いていた花田煌は微笑みながら心の中でこう呟いた。

 

(……お二人の友情、とでも言うのでしょうか……すばらです)

 

 

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「はあー……死ぬかと思った……」

 

「塞、お疲れー!」

 

 抽選会が終わり、会場から戻ってきた臼沢塞が息を深く吐きながらゆっくりと宮守のメンバーの元に歩いていると、鹿倉胡桃や姉帯豊音が疲れていた臼沢塞の周りに行く。そして臼沢塞に対して労いの言葉をかけた。

 

「お疲れ様ー」

 

「サエ、カッコヨカッタ!」

 

「そりゃあ良かった……で、シロ。どうなの、トーナメントを見て」

 

 皆とあえてようやく一息つけたのか、落ち着きを取り戻した臼沢塞が小瀬川白望に向かってそう尋ねると、小瀬川白望は首を傾げながら「一回戦は知ってる人はいなかったけど……二回戦は多分余程の事がない限りは姫松、清澄、シードの永水。この三つと当たるかもね」と答えた。

 

「成る程……分かったわ」

 

「……塞、疲れてる?」

 

 小瀬川白望が臼沢塞にそんな事を聞くと、深くため息をついて「そりゃあ……あんだけの大舞台に立たされたもの。そりゃあ疲れるわよ。清澄の部長さんだって凄く緊張してたみたいだし」と言った。

 

(ふーん……あの久でもそう言う一面あったんだ。てっきりあれは演技かと思ってたけど……どうやら本気だったんだね)

 

 小瀬川白望がそう言った事を頭の中で呟いていると、後ろからやってきた熊倉トシがパンパンと手を叩いて「ほら、直ぐ開会式も始まるんだろう?早く行っておいで」と言うと、臼沢塞は「そっか……また戻るんだ……」と呟くと、小瀬川白望が臼沢塞の手をとって「まあ……さっきみたいに緊張とかはしないだろうし、大丈夫でしょ」と言った。

 

「な、なっ……///」

 

 手を握られて赤面する臼沢塞は、思わず小瀬川白望を視線から外して(ば、バカ……こっちの方が緊張するっての……!)と心の中で小瀬川白望に向かって言うが、臼沢塞の手はしっかりと小瀬川白望の手を握っていた。

 

 

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「おー……すごい人集りだよー」

 

 そうして開会式の会場へやってきた宮守メンバーは、先にやって来て整列している他校のメンバーを見ながら、自分たちの高校の場所を探していた。

 

「どう?豊音、見える?」

 

 高いところから見下ろすようにして探していた姉帯豊音に向かって鹿倉胡桃がそう聞くと、姉帯豊音が指をさして「多分、あれかなー?」と言った。

 

「よし、じゃあそっち行こうか」

 

 姉帯豊音が指差した方向に向かって進んでいる途中、小瀬川白望は何人もの知り合いを見かけると、その都度手を振って返事をする。その最中、宮守メンバーの気分はそれによってかなり悪くなっていたのであったが、整列場所まで来ると、しっかりと心を引き締めて開会式の始まりを待った。

 

「……もう帰っていいかな」

 

「ダメに決まってるでしょ……ちょっとくらい待とうよ」

 

 待っている最中、小瀬川白望は臼沢塞に向かってそんな事を問い掛けたりなど、始まるまでいつもの調子であった小瀬川白望も、いざ開会式が始まるとなると真面目な表情で開会式が進行して行くのを眺めていた。そしてそれと同時に、とうとうインターハイが始まったのだということを悟った。

 

(始まる。私の高校生活、最初で最後の宴が……)

 

 

 

 




次回に続きます。

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