宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第345話 インターハイ開会編 ④ 抽選

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視点:神の視点

 

 

(な、なんだ……この子……小瀬川程ではないにしろ……凄い圧力……)

 

(み、宮永……咲……!私の……倒すべき相手……!)

 

 小瀬川白望率いる宮守女子がインターハイ団体戦の抽選会の会場に到着してから少し経った頃、抽選会に参加する部長を担っている鷺森灼を除いた阿知賀女子のメンバーは、たった今清澄高校の大将、宮永咲とすれ違っていたところであった。赤土晴絵と松実玄は宮永咲に気圧され、言葉を失っていたが、同じく大将である高鴨穏乃はこのインターハイが始まる前に練習試合を組んだ龍門渕高校の天江衣の言葉を思い出しながら、宮永咲の事を明確に敵として見据えていた。

 

(……?止まっ……!?)

 

 そういって宮永咲の後姿を見ていた高鴨穏乃であったが、宮永咲が立ち止まったと思うと、高鴨穏乃に謎の悪寒が走った。ビリビリと痺れ、失神してしまうのではと思ってしまうほどの重圧を受けた。周りを見ると、先ほど宮永咲に反応を示さなかった新子憧と松実宥も同じものを感じているようで、驚いている様子であった。

 

(……一体……何が?)

 

 高鴨穏乃からは後姿しか見えなかったが、宮永咲も明らかに動揺している素振りを見せているという事は分かった。一体何が起こったというのか。そう疑問に思って視線を宮永咲よりの先の方に向ける。すると、そこには白髪の少女が立っていた。

 

(ま、まさか……小瀬川さん!?)

 

 

 高鴨穏乃が驚いてゆっくりとやってくる小瀬川白望の事を見る。小瀬川白望からの異常なまでの殺気に驚いていたが、よくよく考えてみれば分かる話であった。初めて小瀬川白望と会い、麻雀を打った時から小瀬川白望の恐ろしさ、異才を理解していたはずだった。

 

 

『あんた達……というか大将のあんた!私に勝てないようじゃ、白望と闘ってもやるだけ無駄だからね!』

 

 

『用心に怪我なしだ……サキだけでなく、化物は全国にはいると聞く……かのプロ雀士が言っていたように、衣よりも強い(つわもの)がいるらしいからな……名は、小瀬川……と言ったか』

 

 

 そして高鴨穏乃は、かつて小走やえや天江衣が自分に言ってきた言葉を思い出す。そう、自分が思っていた以上に小瀬川白望は遠い存在であり、常人とはかけ離れた存在であった。

 

 

(……はあ。まだ眠い……)

 

 一方の小瀬川白望はというと、今ちょうどトイレから戻ってきた最中であり、先に会場の客席に向かって行った宮守のメンバーの後を追っていた最中であった。そうしてすれ違った今も阿知賀のメンバーに気付くことなく通り過ぎて行った。

 

「あ、あれ……シロさん……?」

 

「……ああ。どうやらそのようだ……あの時から更に凄味がましている……」

 

(間違いない……あの人はどんな組み合わせでも確実に勝ち上がってくる……つまり……小瀬川さんと闘う事は勝ち上がるには避けられない……!!)

 

 

(……はあ。眠いしダルいし……こっちであってるのかな……)

 

 

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「あ、きたきた。シロー。こっちだよー」

 

 

 観客席に後から遅れてやってきた小瀬川白望は、姉帯豊音に名前を呼ばれ、宮守のメンバーがいるところに向かう。姉帯豊音が小瀬川白望の名前を呼んだ瞬間一部の高校が若干ざわついていたが、小瀬川白望は自分の知り合いがいる高校だろうと予想を立てながらも、それに触れる事なく黙って皆のところへ向かった。

 

「塞、どこかな?っていうかいる?」

 

「サエ!アソコ二イル!」

 

 席について、そろそろ団体戦の抽選会が始まろうとしていた。各校の部長やキャプテンが会場に集まり始めてきており、宮守の部長である臼沢塞もその場にいた。どうやら緊張しているらしく、忙しそうに周りをキョロキョロしていた。

 

 

「そろそろ始まるね。まあ、白望にとってはどこと当たっても関係無いだろうけどね?」

 

「……別に、そういう訳じゃないですけど。私は私のやる事を全力でやるだけなので……」

 

 小瀬川白望がそう意気込みを話していると、最初の高校の抽選が始まった。最初の高校の部長がカードのような紙のようなものを引くと、各所から拍手が送られていた。

 

(……これでこのくらいなんだから、照の所とか凄い事になるんだろうなあ……)

 

 心の中で小瀬川白望がそんな事を思っていると、鹿倉胡桃がステージの方を指差して「あ!あれ!塞!」と言った。そう聞いた小瀬川白望達はカチカチに固まっている臼沢塞を見る。そうしてカードを引くと、それを頭上へとあげた。その瞬間、会場が一時どよめいた。小瀬川白望としては無名の宮守がここまでどよめきを集めるとは思っていなかったため、少しほど驚いていたが、このどよめきの理由が小瀬川白望本人である事には気がついていなかった。

 

(……一回戦は、知ってる所なさそうだなあ。他も知ってる所同士が当たるわけでもなさそうだし……ん、清澄は私達の隣か……でもあれ……皆勝ち上がってくるとすれば……二回戦……)

 

 

 

(や、やっば……引いちゃった……)

 

 

 小瀬川白望が竹井久の引いた番号とどんどんと高校の名前が足されていくトーナメントを見て、ある事に気付いた。清澄の部長である竹井久も、やってしまったと言わんばかりの表情をして自分の引いたカードを見る。

 

(Bブロック……しかも、姫松とシードの永水……そして、宮守……!)

 

 




次回に続きます。

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