宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。
あくまで昨日間に合わなかっただけで、投稿しないとは言っていない(殴


第337話 地区大会編 ⑮ 合宿

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視点:神の視点

 

 

「合宿、超楽しみだよー!」

 

 地区大会という宮守女子にとっての初陣から一週間後、熊倉トシの半ば思いつきによって行う事が決定した合宿をいよいよするべく、熊倉トシが用意したという合宿所に向かうおうとしている最中であった。姉帯豊音は出発する前から体をウズウズさせており、よほど楽しみにしていたと分かる。無論合宿では姉帯豊音にとっては地獄に特訓となるのは本人も分かってはいるが、それ以上に『合宿』というイベントの楽しさ方が勝っているようだ。

 

「豊音、そんなに体を揺らして……それほど楽しみだったんだ?」

 

「もちろんだよー!合宿なんて夢だったよー!皆で一緒にお泊りなんて、楽しく無いわけないよー!」

 

 鹿倉胡桃が姉帯豊音に質問すると、姉帯豊音は190cm以上ある巨体を思いっきり動かして合宿を楽しみにしている事を体全体で表現する。隣で聞いていた小瀬川白望が「……前に、私の家に皆で泊まったよね?」と言うと、姉帯豊音は首を横に振って「それとこれとでは話が別だよー!」と主張した。

 

「私も合宿なんて初めてだし、豊音と同じく楽しみにしていたよ」

 

 臼沢塞が姉帯豊音に同調するようにそう言うと、小瀬川白望は「ふーん……まあ楽しみにしていたならそれでいいけど……」と呟くと、車から出て来た熊倉トシが「じゃあ、そろそろ乗りな」とメンバーに向かって言った。それを聞いた面々が次々と車内に乗ると、合宿所に向かって車を走らせた。

 

「やっぱり移動中も楽しみの1つだよねー!」

 

「オハナシ、ハナガサク!」

 

 

 そして合宿所へ向かう途中、合宿所を聞かされていない皆が気になるのはもちろんどのような会場かという事であり、宿泊施設の設備も気になるところである。熊倉トシからは「後のお楽しみだよ」と宮守女子のメンバーには伝えていたが、今からどのような場所かを議論しあっていた。

 

「どんな所なのかなー?ワクワクするよー!」

 

「熊倉先生が出し惜しみするから、もしかしたら凄いところかも?」

 

「ふふふ。どうだろうねえ?」

 

 宮守女子の色々な予想に対して、熊倉トシはうまく誤魔化し、受け流す。そうしてだんだん予想が妄想に変わりつつなろうとしたところで、車が止まった。そして熊倉トシが後部座席に座る皆に向かって「ほら。着いたよみんな」と声をかけ、エンジンを切って車から降りる。

 

「おお、これまた凄い所……」

 

「凄いよー!超立派だよー!」

 

 

 車から降りた宮守女子のメンバーは今回合宿所となる宿泊施設を目の前にして驚きと興奮の声を上げる。皆が予想していたように、そこは岩手の中でもかなり立派な宿泊施設であり、『高級』という言葉がついてもおかしくはなかった。そんな驚いているばかりの宮守女子のメンバーに向かって、熊倉トシがこんな事を言った。

 

「因みに、温泉も付いているよ」

 

「オンセン!シロ、イッショニハイロ!」

 

「エイスリンさんばっかりずるいよー!私も入るー!」

 

 姉帯豊音がそう言うと、鹿倉胡桃も「除け者にしないでね!私も一緒に入るんだから!」と言い、小瀬川白望の服を引っ張った。引っ張られた小瀬川白望はダルそうな表情をしながらも、臼沢塞が何かを言いたそうにしているのに気付くと、臼沢塞に「……塞も皆で一緒に入る?」と聞いた。

 

「えっ、え!?///」

 

「……嫌だったなら良いんだけど」

 

「い、いやいや。そんな事ないわよ……一緒に入るわよ!」

 

 

「ふふふ。夜の楽しみが1つ増えたね?」

 

 そんなやり取りをする宮守女子のメンバーを見ながら、熊倉トシは笑ってそう呟く。すると赤木しげるは【……アイツ、ああいうところは気が効くんだな。よく分かんねえやつだ……】と言うと、熊倉トシもそれに同調して「あんたで分かんなきゃ、多分誰にも分からんだろうねえ……」と言い、宿泊施設の中へと入って行った。

 

 

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視点:神の視点

 

 

「さて……まず豊音には白望とこれをやってもらうよ」

 

 宿泊施設にやって来て、宮守女子のメンバーは貸し切った部屋で合宿の練習を行おうとしていた。熊倉トシがそう言って姉帯豊音に筒子の1〜9までの数牌を二枚ずつ渡した。渡された側の姉帯豊音はキョトンとしていたが、熊倉トシは「一見単純なようで実はかなりの高度な心理戦を要求される『ナイン』さ。白望は分かるだろう?」と小瀬川白望に聞くと、小瀬川白望はゆっくりと頷いた。

 

「それじゃあ豊音に教えながらやってくれ」

 

「……分かりました」

 

「……シロー?本当にこれが精神の特訓になるのー?」

 

 小瀬川白望が説明をしようとしたところで姉帯豊音が小瀬川白望にそう尋ねると、小瀬川白望は「安心して……一見ただのお遊びみたいに見えるけど、何十何百と続ければ分かるよ。自分の心理の裏を読まれようとした時、どれだけ冷静に対応できるかが鍛えられるから……」と言った。

 

「それに、そもそも何十何百と続ける事自体根気がいるからね」

 

「……お手柔らかに頼むよー」

 

 

 

 

 

 

「さて。御三方にはまず卓についてもらおうかね」

 

 姉帯豊音と小瀬川白望の特訓が始まった一方では、熊倉トシに促されて臼沢塞、鹿倉胡桃、エイスリン・ウィッシュアートは卓についた。臼沢塞が熊倉トシに「私達は熊倉先生相手に特訓ですか?」と聞くと、熊倉トシは「それも考えていたけど……白望、借りるわよ」と言って小瀬川白望が身につけていた巾着袋……赤木しげるの墓の欠片が入った巾着袋を身に付けると、「あんた達の相手は私じゃなく、赤木しげるにやってもらうよ。もちろん、牌を動かすのは私がやるけどね」と言った。

 

「シ、シロ無しで、しょ、正気ですか!?」

 

 鹿倉胡桃が驚いて熊倉トシに向かって言う。今まで何度か赤木しげると打ったことはあるものの、それはあくまでも小瀬川白望と赤木しげるの一騎打ちに半ば数合わせとして入っていて、その流れ弾を喰らっていた程度だったのだ。そんな小瀬川白望以上の赤木しげるをまともに相手など、正気の沙汰ではない。しかし熊倉トシは「そりゃあ何度も半荘もやったら本当に牌が握れなくなっちゃうからね。一半荘だけだよ。……取り敢えずあんた達には『ボロ負け』を知ってもらうからね。指示通りに動くから、後は任せたよ」と三人と赤木しげるに向かって言うと、赤木しげるは【……いくら特訓の一環とはいえ、勝負する以上負ける気など毛頭無し。本気でいかせてもらうぜ】と言い、彼女達にとっての地獄が始まろうとしていた。

 

 

 




次回に続きます。

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