-------------------------------
視点:神の視点
「お、りゅーか。そろそろ来るで」
「……?何がや?怜」
大阪の千里山女子では、部活の休憩中に清水谷竜華の膝を枕代わりにしていた園城寺怜が清水谷竜華に何やら未来視で何か見えたのだろうか、清水谷竜華に向かってそんな事を呟いた。一体何が何だか分からない清水谷竜華が疑問そうに園城寺怜に向かって聞き返そうとすると、その瞬間に清水谷竜華と園城寺怜の携帯の着信音が鳴った。清水谷竜華は驚きつつ携帯電話を取り出すと、どうやら小瀬川白望からのメールが届いたらしい。清水谷竜華は感心しそうになりながらも「おおっ!?シロさんからや……って、また未来見たんか!怜!」と園城寺怜のことを叱ろうとすると、園城寺怜は誤魔化すようにこう弁明した。
「もうそろそろイケメンさんの方が終わると思っとたからな。さっきまでずっと見とったわけやあらへんで」
「全く……またぶっ倒れるで!」
「ぶっ倒れたらその時はその時や。むしろイケメンさんの事を思って死ねるならそれはそれで本望や」
「まーたアホなこと言って……セーラも怜になんか言ってやりい!」
「え、お、俺!?」
清水谷竜華が同じ部屋にいた江口セーラの名前を呼ぶと、江口セーラはびっくりしながらも携帯電話を握り締めていた。どうやら今の今まで小瀬川白望から来ていたメールを見ていたらしく、心ここに在らずといった感じであった。
急に清水谷竜華に呼ばれてたじろいでいる江口セーラを見て、船久保浩子は二条泉に向かって「江口先輩も園城寺先輩の言う『イケメンさん』の事が好きなんやで」とヒソヒソ話していた。それを聞いた二条泉はびっくりしたような表情で「ま、マジですかー!?……あ、あの江口先輩がですか……?」と信じられないといったように聞き返した。
「ほれ、これが例の『イケメンさん』の画像や。見るか?」
「ちょ、おま……!?」
「どんな人か、凄い気になりますわ!」
船久保浩子が自身の持っていたタブレット端末を二条泉に見せようとした瞬間、江口セーラは声を荒げて「泉ィ!許さんからな!後で覚えとけよ!」と釘をさした。
「なっ、ウチは悪くないですやん!?そもそもまだ見てないですし!」
「船Q!その画像後でウチに見せるんや!」
二条泉が江口セーラに対して潔白を証明しようと弁明をしている裏で、園城寺怜が船久保浩子に対して『イケメンさん』こと小瀬川白望の画像を見せてもらうように頼み、船久保浩子は「別にええですよ」と了承した。
「まあとにかく……折角の『ときシフト』でやってるんやから。あんま無理せんといてな」
「分かっとるわ……こんなとこで死ねるわけないやろ。『イケメンさん』に嫁に貰われる前には死ねんわ」
「シロさんに嫁に貰われる前提なんか……」
目を輝かせて願望を吐いた園城寺怜を呆れたように見て清水谷竜華は呟き、船久保浩子の後ろに隠れようとしている二条泉と、その二条泉をとっちめようとする江口セーラの事を見た。
「た、助けて下さい!船久保先輩!」
「泉ィ……お前ちょっと来いやァ!」
(顔真っ赤にしながら怒っても全然凄みが出てへんですけどね……)
「泉はまあ別にどうでもいいですけど、取り敢えず落ち着いて下さいよ。後で江口先輩にも見せますから」
「そ、そうなら……ええけど」
江口セーラが船久保浩子の条件を受け入れ、後ろにいた二条泉が江口セーラとは正反対に、顔を真っ青にして「う、ウチも助けて下さいよ!?」と叫ぶ。
「……次の半荘、覚えとけよ。泉」
「ヒイイイイ!」
結局その後、江口セーラと卓を囲む事になった二条泉は全力で一方的に嬲られ、二条泉曰く『この世の地獄』を味わうこととなった。
-------------------------------
視点:神の視点
「……合宿だね」
「……?」
そして岩手の県庁所在地、盛岡から宮守に戻って来て熊倉トシがふとそんな事を宮守メンバーの前で呟いた。小瀬川白望が首を傾げていると、姉帯豊音が「合宿!皆と合宿したいよー!」と賛同すると、エイスリン・ウィッシュアートも「ワタシモ!」とそれに同調する。
「何でまた……というかできるような場所とかあるんですか?」
「合宿であれば夜間でも心置き無くできるからね。インターハイまで残された時間を有効活用するには、合宿が一番さ。こっちには優秀なコーチが沢山いるからね。場所も直ぐに用意できるさ。私を誰だと思ってるんだい?」
「じゃあ私は豊音と訓練を優先的にする事になるね……」
「シロが珍しくやる気だ!?」
意外にもやる気に溢れていた小瀬川白望を見て鹿倉胡桃が驚いていると、小瀬川白望に指名された姉帯豊音は「あ、あまり厳しめのは勘弁だよー……?」と少し怯えながらそう言った。
「まあ……来週の土日で合宿するから。ちゃんと準備しておくんだよ?」
「だってよ……塞」
「それを言うならあんたでしょ!?」
小瀬川白望にそう言われた臼沢塞がそう反論すると、小瀬川白望は「いや……何か考えてるみたいで、話聞いてなさそうだったから」と言う。実際先ほどまでインターハイに出場する事に対して夢のように感じ、物思いにふけっていた臼沢塞は図星を突かれて「う、うるさい!」とそっぽを向いた。
(……言えるわけないよなあ。シロと一緒にインターハイに出る事を妄想してたなんて……)
(……青春だねえ)
そしてそんな臼沢塞を見ながら、熊倉トシは過去の自分と照らし合わせながらウンウンと頷いていた。
次回に続きます。