宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。
リザべ組の方言が辛すぎます……


第327話 地区大会編 ⑤ あと一週間

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視点:神の視点

 

 

 

「……どげんしたと?姫子。そろそろ決勝が始まるばい」

 

 

「部長……」

 

 同じく九州の中で最北端の福岡でも、インターハイの団体戦の代表校を決める地区大会が行われており、決勝戦もあと数分で始まろうとしていたところで、白水哩は会場の外のベンチに座っている鶴田姫子を見つけ出して声をかけるが、鶴田姫子はどこか呆然としながら空を見上げていた。

 

「……なんかあっとんない、私が聞くとね」

 

 白水哩はそう言って鶴田姫子の隣に座り、鶴田姫子にそう言うが、鶴田姫子はそれでもどこか呆然としながら天を仰ぎ、白水哩に向かってこう呟いた。

 

「……白望さんも今、私らと同じ空ば見上げとるんやろか」

 

 いきなり天を仰いでそう呟く鶴田姫子を見て、白水哩は思わず笑ってしまった。鶴田姫子はキョトンとしたような表情で白水哩の事を見ていると、白水哩はこう述べた。

 

「いや……姫子もそげんロマンチックな事ば言うなんて思っとらんからな」

 

 白水哩はてっきり鶴田姫子が深刻な悩みを抱えているものだと予測していたので、そういう鶴田姫子に対して若干安心していた。白水哩は少し考える様な素振りを見せると、「そうかもしれんもんな……ばってん、いきなりどうしてそぎゃん事ば……?」と鶴田姫子に向かって聞き返す。

 

「……私も、ようやく白望さんと同じ舞台に立てるって思ったとからです」

 

 

「部長!姫子!もうすぐで始まりますよ!」

 

 二人がそう話していると、花田煌が先ほどまで走ってきた様に肩で息をしながら二人のことを呼ぶと、白水哩は花田煌の姿を確認すると、鶴田姫子にこう言った。

 

 

「ふふ……姫子、地区大会はまだ終わっとらんよ。行くか、姫子。今日も"アレ"、決めっとよ」

 

「……了解です!ぶちょー!」

 

 白水哩は立ち上がって会場の方に向かって歩き出すと、それに続く形で鶴田姫子も会場に向かって歩き出す。そして白水哩は花田煌の肩に手を掛けると「ほら、花田も気合入れっとよ!」と言い、会場に向かって走り出した。花田煌と鶴田姫子は驚きながらも、そんな白水哩について行く様にして走った。

 

 

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「ふう、今戻ったぞ」

 

「おかえりー!サトハ!」

 

「お帰りデス、サトハ」

 

 所変わって東京では、臨海女子の辻垣内智葉が地区大会決勝戦の先鋒戦を終えて控え室に戻ってきたところであった。辻垣内智葉は先ほど外してきたサラシと髪留めを自分のバッグに入れると、どかっとソファーに腰掛ける。そしてそれを見た郝慧宇は辻垣内智葉と入れ替わる様にして立ち上がり、「じゃあ私も行ってきますね」と言い、控え室を出て行った。そんな郝慧宇を見送った辻垣内智葉が疑問に思ったのか、ネリー・ヴィルサラーゼに耳打ちしてこう聞いた。

 

「ハオのやつ、本当にシロと会ったことがないのか?」

 

「無いと思うよ。ネリーの知る限りではね」

 

「ふむ……まあいいだろう」

 

 辻垣内智葉がそう言って納得すると、メガン・ダヴァンが携帯電話で小瀬川白望からの返信のメールが来ているかどうか確認している最中の辻垣内智葉に向かってこんなことを聞いてきた。

 

「シロさんは確か大将を務めるんでショウカ?」

 

「……聞いた話によればそうらしいな」

 

「サトハはメンバー的には先鋒戦にしか出場できないデスガ……ヤッパリシロさんと打ちたかった気持ちはありますカ?」

 

「無いと言ったらそれは嘘にはなるが、まあ個人戦でも闘えるしな。むしろ、そっちの方が本命みたいなものだ。だからと言って団体戦でシロたちに勝ちを譲るわけにはいかないけどな。だからこそネリー、お前が一番重要になってくるな。どうだ?勝てそうか?」

 

 そう辻垣内智葉がネリー・ヴィルサラーゼの方を見ると、ネリー・ヴィルサラーゼは真剣な表情でこう答えた。

 

「そんなの野暮な質問だってサトハだって分かってるでしょ。ネリーだって勝てるか、そもそも勝負になるかなんて断言できない。普通に考えて白望に勝てそうな人間なんて一握りもいないよ」

 

「だけど……ネリーはお金がいる。40万ラリ、耳を揃えて白望に返すまでに、ネリーは誰にも負けられない……例え、白望が敵だとしてもね……」

 

「ふふ……その様子なら、心配は要らんようだな」

 

 

 そう言い、微笑む辻垣内智葉はイクラを食べていた雀明華に向かって「明華、ちょっといいか」と呼んだ。雀明華は何を言われるのかもう察知していたようで、箸を置いて辻垣内智葉の言うことを聞いた。

 

「……この地区大会はどうやらウチの臨海女子の地区大会十六連覇のかかった大事な試合らしい」

 

「そのようですね」

 

「十六連覇を飾るのと同時に、私たちの力を思う存分見せてこい。なんならメグに回す前に終わらせても構わん」

 

「……了解です」

 

 

 

(……この二人、完全にセリフが悪役ですヨネ……マア、一時期はどうなるかと思ってましたカラ、それに比べばいいんでしょうケド……)

 

 メガン・ダヴァンはそんな事を二人を見て心の中に思い浮かべていたが、二人に言えば自分がどういう目に遭うか分かったものでは無いので、心にとどめて置くことにした。

 

 

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「……また来た」

 

「今度は誰かなー?」

 

 それと同時刻、岩手県では小瀬川白望の携帯電話に宮守麻雀部の皆が集まり、次の報告者及びインターハイ出場を決めたのは誰なのかを全員で確認していた。小瀬川白望がメールを開いて中身を見ると、「……新道寺と臨海女子がインターハイ出場だって」と言って皆に携帯電話を見せる。

 

「やっぱり勝ち上がってくるかァ……」

 

「まあ去年も活躍してたシード校だしね。上がってこなかったら一大事だよ」

 

「シンドウジ……リンカイジョシ……ドッチモツヨイ?」

 

「そうだよーエイスリンさん、この二校、ちょー強いんだよー!新道寺は白水哩さんに鶴田姫子さん、臨海女子は辻垣内智葉さんにメガン・ダヴァンさん。皆有名人です強いんだよー!そんな人からのメールなんて、見れる機会そうそう無いよー!」

 

 姉帯豊音が若干興奮しながらエイスリン・ウィッシュアートに熱弁すると、エイスリンは「ナルホド……ワタシ、コノニコウニカチタイ!」と言い、意気込みを入れる。

 

「そうだね……少なくとも、シード校の内の一校とは確実に当たるからね……」

 

「インターハイの話もいいけど、その前に地区大会もあるから絶対に負けられないね!」

 

 鹿倉胡桃がそう言うと、全員が互いの顔を見合わせて頷き、各地の地区大会の様子が流れていたテレビの電源を消して再び練習を再開する。

 

(残ったのは爽のとこと、姫松、そして私達か……)

 

(……絶対に勝つ)

 

 小瀬川白望はまだ一週間も先の地区大会に向けて闘志を燃やし、小瀬川白望にしては珍しくやる気に満ち溢れた表情で練習に励み、地区大会を今か今かと待ち望んでいた。




次回辺りからようやく宮守の初陣となる予定です。

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