宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きですー


第320話 高校二年編 ㊱ 暖める

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視点:神の視点

 

「「「「ご馳走さまでしたー!」」」」

 

 

「美味しかったよ、塞、豊音!」

 

「へへへ……お粗末様だよー」

 

 姉帯豊音と臼沢塞は互いに不注意によって自分の指を包丁で切りそうになるなど、危ない場面もあったが無事に調理を終え、今はその料理を皆で食べ終えたところであった。鹿倉胡桃が臼沢塞と姉帯豊音の料理の腕を賞賛すると、姉帯豊音は照れながらもそれに答えた。

 

「それにしても、豊音って料理出来たんだね」

 

「イガイ!」

 

 小瀬川白望とエイスリンが姉帯豊音に向かってそう言うと、姉帯豊音は人差し指を合わせながら「ずっとこういうの憧れてたんだー……私の料理を振る舞うの」と答えた。それを聞いた小瀬川白望は澄ました顔で「……良かったね。それが今叶って」と言った。すると姉帯豊音はニッコリと笑顔を輝かせて「……うん!ちょー嬉しいよー」と言った。

 

「まあ胡桃は出来るとして……エイスリンは料理とかできるの?」

 

 小瀬川白望がエイスリンに向かってそう聞くと、エイスリンは少しほど首を縦に振って「スコシダケド……」と答えた。それを聞いた臼沢塞は「じゃあ一応全員が料理できるのね」と言う。姉帯豊音は「皆女子力高いよー。お嫁さんに行っても困らないねー」と言うと、臼沢塞は頭の中でよからぬ事を考え始めた。

 

(シロが……女子力……お嫁さん……)

 

『おはよう、塞。朝ご飯出来てるよ』

 

『塞、お風呂にする?ご飯にする?……それとも、私?』

 

(あ、ああああああああ〜……///)

 

 

「塞、塞〜?……自分の世界に入り浸ってるみたい……」

 

 鹿倉胡桃は呆れたように妄想を続ける臼沢塞の事を見て、やれやれと手を振る。しかし臼沢塞も不意に我を取り戻したのだが、(いや、いやいやいや……ありえないでしょ……シロに限って私より早起きして朝ご飯作ったり、私が帰って来る前にお風呂沸かしたりご飯作っておくなんて……)と、少しズレた事に対してツッコミを入れた。

 

「まあ塞は置いといて……お風呂どうする?」

 

 そんな臼沢塞に対して匙を投げた小瀬川白望が何気無い感じでそう発言すると、その瞬間場の空気がピリッとする。小瀬川白望は場の異変を察知して内心驚きながらも、皆の返答を待つ。無論皆の緊張感が高まったのは『誰が小瀬川白望と一緒に風呂に入るのか』というのが原因であった。流石に辻垣内智葉の家のような何人も入れるようなスペースなどあるわけもなく、どれだけ頑張っても小瀬川白望を含めて三人が限界であった。

 

「シ、シロはどうするつもりなの?」

 

 沈黙が訪れ、各々が他者の出方を伺っていたところで遂に臼沢塞が均衡を破り、小瀬川白望に質問する。突然振られた小瀬川白望は質問の内容も相まってか、返答に困りながらも「まあ、別に私はいつ入っても良いけど……」と答える。それを聞いた臼沢塞は他の三人と目を合わせて頷きあうと、小瀬川白望から少しばかり離れ、じゃんけんを始めた。小瀬川白望は(……何やってるんだろう)と疑問に思いながらも、そのじゃんけんしている光景を眺めていた。すると決着がついたのか、エイスリンが小瀬川白望の胸元に飛び込んで「シロ、イッショニハイロウ!」と言い、小瀬川白望の背中を押した。

 

「え、うん……いいけど」

 

 

 小瀬川白望はなされるがままにエイスリンと共に浴室の方へ行くと、臼沢塞は嫉妬と憎悪に身をかられながらその二人の事を睨みつけていた。そして三人は二人の姿が見えなくなると、大きな溜息をついた。

 

「はあ……」

 

 

 

 

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「ふう……」

 

 そして一方の小瀬川白望とエイスリンは洗面所もとい脱衣所にて服を脱いでいる最中であった。小瀬川白望は何の抵抗もなく服を外していくが、一方のエイスリンはというと、自分の目の前でどんどんと服を脱ぐ小瀬川白望を呆然と見て、ただただ顔を赤くすることしかできなかった。

 

(……シロ、ナイスバディー……)

 

 そしてエイスリンは小瀬川白望の開帳される胸元を見て心の中でそう呟く。外国人でありながらもグラマラスとは言い難いエイスリンにとって、小瀬川白望のソレは一種の憧れの対象であった。すると小瀬川白望がエイスリンの視線に気づいたのかどうかは分からないが、エイスリンに「……脱がないの?」と聞く。エイスリンはそう聞かれて「エ、ア……ウン」と目線を逸らし、ようやく服を脱ぎ始めた。

 

 

「……サムイ」

 

 そうして服を脱ぎ終わったエイスリンは恥ずかしさと岩手の冬の寒さというものを直で感じたせいで身体を縮こまらせていると、小瀬川白望は(……やっぱり寒いのには慣れてないのかな)と心の中で思っていると、小瀬川白望はそっとエイスリンの身体を抱きしめた。

 

「ワ……ワッ!?シロ……!?///」

 

 エイスリンは驚いて目を見開いたが、小瀬川白望はエイスリンに向かって「いや……寒そうだったし、少しでも暖めてあげようと思って……」と言い、エイスリンの身体から離れた。

 

「ア、アリガトウ……ゴザイマス」

 

「うん……じゃあまた寒くなる前に入ろうか」

 

 小瀬川白望がそう言うと、エイスリンは首を縦に振って同意を示し、浴室の中へと入った。そうしてシャワーノズルを手に取り、お湯を出した小瀬川白望はエイスリンを風呂椅子に座るように促すと、「じゃあ私が洗ってあげる……」とエイスリンに言った。

 

(シロノ……ヤワラカカッタ……)

 

 

 しかし一方のエイスリンは先ほどの感触を未だ忘れることができず、今もなおその感触を想起させていた。小瀬川白望が「……エイスリン?」と呼ぶことで、エイスリンはようやく反応を示した。

 

 

「洗うよ?」

 

「オ……オネガイシマス……」

 

(……モウ、シロノタラシ!///)

 

 

 心の口ではそう言うエイスリンであったが、その時彼女の口元が緩んでいることは言うまでもなかった。




次回に続きます。
これは戦争不可避ですね……間違いない

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