宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。
今日は帰ってきてすぐ書いたのですが、いかんせんなんとも言えない感じです……


第315話 高校二年編 ㉛ 六曜

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視点:神の視点

 

 

「さあさあ、久しぶりに会えて嬉しいのは分かるけど、とりあえず打ってみなさいな」

 

 小瀬川白望と姉帯豊音が思い出話に花を咲かせる前に熊倉トシがそう言うと、姉帯豊音はハッとして今の今まで抱きついていた小瀬川白望から離れる。そしてすぐに卓につくが、その時の姉帯豊音の頬が薄く赤くなっていることに小瀬川白望は気付くわけがなかった。

 

「そういえば今更だけど……豊音って麻雀やってたんだね」

 

 姉帯豊音に続くようにして小瀬川白望が卓につき、姉帯豊音に向かってそう言うと、横から熊倉トシが「知り合いのアンタが知らないのも無理はないよ。なんたってこの子の村には若い子が少なかったからねえ。ネト麻もできないから、一人で牌を並べたり、テレビで対局を見ることしかできなかったんだよ」と答える。鹿倉胡桃ははそれを聞いて「じゃああまり人と打ったことはない?」と言うと、熊倉トシは「それでも、私のお墨付きだよ。まあ白望には遠く及ばないと思うけどね」と返す。鹿倉胡桃は「ふうん……」と呟き、静かに卓についた。そしてそれと同時に、心の中で姉帯豊音に向かって(シロの知り合いだかなんだか分からないけど……良い気にはさせないよ……!)と意気込む。臼沢塞をそんな鹿倉胡桃の心情を読み取ってか、愛想笑いをしながら卓についた。

 

「そして白望の後ろの子は誰だい?」

 

 四人が卓につき、対局が始まろうとしていたところで熊倉トシが先ほどから気になっていた事を小瀬川白望たちに向かって質問する。熊倉トシの視線の方向は当然エイスリンである。すると小瀬川白望が「留学生の、エイスリンさん」と答える。熊倉トシは「ふむ……あなた、麻雀は?」とエイスリンに向かって聞くと、エイスリンは首を振って「ウウン……」とノーを示した。

 

「そうかい……それは残念だね」

 

 熊倉トシが残念そうに言うと、卓につく四人に向かって「じゃあ、そろそろ始めましょうか」と言い、姉帯豊音の耳元でこう囁いた。もちろん姉帯豊音はそれを了承し、彼女の能力である六曜を発動させる。

 

「……豊音。まずは赤口(しゃっこう)で……」

 

「了解だよー」

 

 

 

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「ツモ!2000オールっ!」

 

 初っ端、親の姉帯豊音はまず挨拶代わりのツモ和了を見せる。配牌や序盤のツモはあまりピリッとしないものであったが、中盤に引きが良くなる赤口によって中盤に一気に聴牌まで漕ぎ着け、そのままの勢いでツモ和了った。小瀬川白望は自分のぐちゃぐちゃな手牌を伏せながら、(……ふーん)と姉帯豊音から何かを感じたような表情で心の中で呟いた。姉帯豊音は積み棒を卓へ置くと、「まだまだいくよー」と言い、一本場に移る。それと同時にまたもや熊倉トシは姉帯豊音の耳元で「じゃあ次は先負でいいかい?」と囁いた。

 

(さあ、背向の豊音……果たして白望を射抜くことができるかね……)

 

 熊倉トシは興味深そうに雀卓の周りを歩きながら、特に小瀬川白望と姉帯豊音の手牌に注目して見ていた。姉帯豊音の能力、六曜の一つである先負。発動している時の局に姉帯豊音以外の誰かが先行リーチをし、姉帯豊音が俗に言う『追っかけリーチ』をすることが発動条件であり、先負の『先んずれば則ち負け』という意味に準じて先にリーチをかけた者が一発で姉帯豊音の和了牌を掴むという回避不可能な強烈な能力。そんな姉帯豊音の先負を小瀬川白望はどう対応するのか、そこが熊倉トシの気になるところであった。

 

「リーチ」

 

 最初に動いたのは小瀬川白望。小瀬川白望は牌を切ってリー棒を投げる。が、しかし。その瞬間、姉帯豊音の口角がつり上がった。小瀬川白望の次のツモ番の臼沢塞はそんな姉帯豊音に対して不気味さを感じながらも、ツモってきた{東}をそのまま河へ置く。そして問題の姉帯豊音のツモ番。姉帯豊音はツモ牌を盲牌すると、手牌から取り替えるようにツモ牌を手牌へ取り込み、端の牌を掴む。

 

「追っかけるけどー」

 

「……」

 

 

「通らばー、リーチッ!」

 

 姉帯豊音はそう言い、牌を河へ叩きつけてリー棒を置く。この瞬間、姉帯豊音の先負の発動条件が揃い、小瀬川白望はこの次のツモで姉帯豊音のツモ牌を掴むことが確定した。無論、小瀬川白望にこれを回避する術は無い。が、そんな状況下におかれても小瀬川白望は至って冷静な表情であった。

 

(……追いつかない!)

 

 鹿倉胡桃も何かが起こるという事を察知したのだろうが、まだ手牌は二向聴であり、追いつくことはできなかった。鹿倉胡桃は悔しそうな表情を浮かべながらも、手牌から一枚牌を切る。

 

(……)

 

 そして小瀬川白望のリーチから一巡が経過し、リーチ後初のツモ番となった小瀬川白望はツモ牌を掴むべくゆっくりと山へ手を伸ばし、盲牌もせずにそのまま卓に置いた。姉帯豊音はわざわざ見る必要も無いと言わんばかりに「ロン!」と発声すべく口を開こうとするが、それよりも先に小瀬川白望は手牌を倒した。

 

「え、え……?」

 

 姉帯豊音は突然の事に呆気にとられていたが、小瀬川白望は気にせず「……ツモ、リーチ一発」と宣言した。そして流れ作業のように裏ドラを確認すると、「裏ドラ……2。満貫」と淡々と言い進める。

 

(ど、どうして……?まさか先負が発動してな……!?)

 

 姉帯豊音は未だ困惑しながら小瀬川白望のツモ牌を見るが、確かにその牌は姉帯豊音の和了牌。確かに小瀬川白望は掴まされたのだ。ただ、その牌が小瀬川白望の和了牌であっただけの話である。

 

(驚いたね……豊音の待ちを予測してリーチをかけたとでも言うのかい?)

 

 

(多分シロは私の六曜は分かってはないと思うけど……場の流れを感じて『シロが私の和了牌を掴む』ってのを予測したのかなー……?)

 

(……やっぱりシロ、ちょーすごいよー)

 

 




次回に続きます。

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