宮守の神域   作:銀一色

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荒川さん編です。
昨日は私用というか公用と言った方が正しいですかね……はは。


第310話 高校二年編 ㉖ 噂通り

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視点:神の視点

 

 

「あなたってもしかしてインターハイ個人戦二位の荒川さん?」

 

 小瀬川白望はコスプレなのかは分からないが、ナース服を着用しているのに何言わぬ顔で平然と突っ立っている荒川憩に本人確認を取ると、荒川憩は「そうですよーぅ。それで、何の御用ですかーぁ?」と小瀬川白望に聞き返す。小瀬川白望も荒川憩を見つけたから突発的に声をかけただけであり、何か用があって声をかけたというわけではなく、「いや……何かあるってわけではない……」と小瀬川白望が言うと、荒川憩は首を傾げて考え始める。

 

「うーん……うちのファン?って感じには見えないですねーぇ」

 

「まあ……そうなんだけど」

 

 荒川憩の推測に小瀬川白望は同調すると、それに加えて「智葉を押しのけて二位になった荒川さんが気になってたから……」と続ける。それを聞いら荒川憩は驚いたような表情で「あー!成る程、辻垣内さんと宮永さんが言ってた"あの"小瀬川白望さんですねーぇ?」と小瀬川白望に向かって言う。小瀬川白望は「うん……まあそうだけど、"あの"って……」と不服そうな表情で荒川憩に聞くが、荒川憩はふふふと笑って誤魔化し、小瀬川白望の事を褒める。

 

「小瀬川さん、あの化け物二人から絶賛されとりましたよーぅ?」

 

(麻雀以外にも、ですけどねーぇ?)

 

「それは……どうも」

 

 小瀬川白望はそう頷くと、荒川憩は「本当にあのお二人は化け物でしたよーぅ……二位になれたのもお零れみたいなもんでしたし」と少し声を小さくしてそう呟く。確かに小瀬川白望が個人戦決勝戦で見ていた限り、荒川憩が辻垣内智葉を押しのけて二位になったというよりかは、荒川憩の言っていることの方が正しいと言える。オーラスに辻垣内智葉が無理に勝負しに行ったものの、宮永照の手に直撃してしまい、結果的に荒川憩が二位となったといった経緯である。しかし、小瀬川白望は荒川憩のことを素直に評価し、「まあ……智葉が振ったのが原因としても、それで繰り上がるくらいの点棒は守れてたから良いと思うよ」と荒川憩に伝える。それを聞いた荒川憩はニッコリとした表情でこう言う。

 

「そう褒められると嬉しいですねーぇ」

 

「それに……荒川さん、打ってる時楽しそうだったし」

 

 そう言われた荒川憩は「色々心は折られかけたんですけど、まあ楽しかったんは事実ですよーぅ。笑顔でいれば全てオールオッケー花丸さんですからねーぇ」と笑って答える。それを聞いた小瀬川白望はふふと笑って「そっか……それならよかったね」という。

 

「ところで、小瀬川さんはこっから何か用はありますかーぁ?」

 

「いや……ないけど」

 

「立ち話もアレですし、ちょっと場所を変えましょうか?」

 

 荒川憩がそう提案すると、小瀬川白望は首を縦に振って了承する。「じゃあ小瀬川さん、うちに着いてきてくださーぃ」と言い、小瀬川白望を先導する。そうして何処かに連れてかれている途中、小瀬川白望は先を進む荒川憩の手を後ろから握り、声をかけた。いきなり後ろから手を握られた荒川憩はビクッと体を痙攣させた。

 

「荒川さん」

 

「な、何ですかーぁ?///」

 

「苗字とさん付けで呼ぶのダルいから名前の呼び捨てで呼んでいい?」

 

 突然そんなことを言い始めた小瀬川白望に対して、荒川憩は驚き、顔を赤らめながら「はい?い、いいですけどーぅ……///」と了承すると、今度は荒川憩が「う、うちは、何て呼べばええですかねーぇ?」と小瀬川白望に聞くと、「シロでも白望でも何でもいいよ。それと、別に敬語じゃなくていいから」と返すと、荒川憩は「りょ、了解やでーぇ……シロさん」と言い躊躇いながらも小瀬川白望の要望に応えた。

 

 

(本当に噂通りなんやねーぇ……こらあんなん言われてもおかしないねーぇ……///)

 

 

 

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(ふう……やっぱり東京は熱いわー。インハイ以来やからここに来ても全然はるばるやって来たって感じせえへんなーぁ。スカイツリーは何回見ても飽きんけど)

 

 時は遡り、一、二週間前に大阪から東京へ麻雀の取材にやって来ていた荒川憩はそんなことを心の中で呟いていた。取材が終わって帰るまでに東京の街を散策していた荒川憩は別に景観に対してこだわりなど持っていないため、あまり東京の街は荒川憩を楽しませるものはそれこそスカイツリー以外は無かったのであった。

 

「よう、荒川憩」

 

「ひゃ、ひゃあ!?」

 

 そんな東京に対して若干飽きてきていた荒川憩は突然後ろから肩をガッと掴まれて自分の名前が呼ばれる。荒川憩は驚いて後ろを振り向くと、そこには奇遇なことにインターハイの個人戦で闘った辻垣内智葉と宮永照が立っていた。荒川憩は個人戦でこの二人が荒川憩から見ても異次元な一騎討ちを繰り広げていたことを思い出し、荒川憩は若干心の傷がその二人を見ることで抉られていた。

 

「まあまず個人戦二位、おめでとうな。一年坊主ながらも良くやったじゃないか」

 

「は、はは……ありがとうございますーぅ……」

 

(ウチが勝ち取ったわけやないんやけどねーぇ……怖いわこの人ら)

 

「取材でこっちに来てたんだろ?私たちも今終わったとこだからちょっと私と宮永の話に付き合ってくれ」

 

「そういうことだから、ちょっとこっちに来ようか」

 

 辻垣内智葉と宮永照に両腕を掴まれた荒川憩は目を見開いて「え、えー?ホンマですかーぁ!?」と叫ぶが、辻垣内智葉は「まあ大人しくしていたら無事に解放してやるよ。だから騒ぐんじゃない」と脅しをかけ、喫茶店へと荒川憩を連れ込んだ。

 

 

 

 

「はあ……なんですか話って」

 

 連れ込まれて話し相手となった荒川憩は呆れたような目で辻垣内智葉と宮永照に向かって言うと、辻垣内智葉と宮永照は目を見合わせてどちらが先に切り出すかの駆け引きをアイコンタクトでしていた。結局どっちも譲ることなくじゃんけんで決めることとなり、辻垣内智葉が話を切り出すことになり、辻垣内智葉は荒川憩にこう質問した。

 

「あー……単刀直入に聞くが、お前、小瀬川白望と会ったことがあるか?」

 

「小瀬川、白望……ですかーぁ?聞いたことないですね。どうしてですかーぁ?」

 

「ただ単に、あなたが知ってそうな感じがしたから……」

 

 宮永照がそう言うと、荒川憩は心の中で(麻雀バケモノのこの2人のことやから、知る人ぞ知る、隠れた名雀士の方ですかねーぇ?)と考えていると、宮永照はこう続けた。

 

「まあ、知らないのなら別にいいけど……相談相手にもなるし」

 

「その人がどうしたんですかーぁ?」

 

「いや……何ていうか、な……」

 

 荒川憩が二人に問いかけると、辻垣内智葉と宮永照は再び目を合わせる。今度は顔を赤くし、二人とも何かを恥じらうような乙女の表情をしていた。荒川憩はそんな二人を見て(一体なんなんやろこの人ら……)と呟くと、意を決したのか辻垣内智葉は話を続ける。

 

「……シロが誑しなんだよ」

 

「……はあ?その人が?」

 

「うん……本人はその気が無いんだろうけど、あちこちに飛び回ってはまた新たに私たちのライバルを作ってくる……私たちが単純なのも含めても、あれは異常……」

 

「……それが私の元にも来ているかも、そういうことだったんですか?てっきりあなた達の事だから麻雀関連の人かと思ってたんやけど、まさかの恋愛相談ってことですかーぁ?」

 

 そう荒川憩が二人に質問すると、辻垣内智葉は「いや、そういうわけでもないんだ」と答える。

 

「その方も雀士なんか……強いんですか?その人」

 

「ああ……多分ここにいる私たち三人でかかっても、勝てはしないだろうな」

 

「……まじですかーぁ?」

 

「うん……まあ荒川さんの元にもやって来るかもしれないけど、気を付けてね」

 

(まあ、主にオトされた後の洗礼の事に、だがな……)

 

 そう辻垣内智葉が心の中でそう呟いていると、荒川憩は「わ、分かりましたよーぅ」と言うと、そのあとは延々と小瀬川白望についての話と、どちらが小瀬川白望に相応しいかを二人から聞かされた。

 

 

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(危ないわ……マジでオトしにかかってきたわーぁ……)

 

「憩、どうかした?」

 

「け、憩……///」

 

「ん?」

 

「いや、なんでもあらへんよーぅ……///」




次回に続きます。

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