宮守の神域   作:銀一色

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前回に引き続きです。


第297話 高校二年編 ⑬ 罰ゲーム

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視点:神の視点

 

 

「ほれ恭子!心を決めるんや!」

 

「ちょ……ふざ……」

 

「……はい、恭子」

 

 愛宕洋榎にヤジられたじろぐ末原恭子に対し、何故か意外に乗り気な小瀬川白望が末原恭子の事を呼んでポッキーを咥える。それに対し愛宕絹恵と上重漫は悲鳴のような声をあげる。末原恭子はそんな悲鳴を発する二人からも明確な殺意が発せられているのを背中で感じ、色んな意味で冷や汗をかきながら末原恭子は心の中で(……なんでこうなったんや……)と後悔しながら呟いた。

 

 

 

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「……罰ゲーム付きの遊びがしたくなってきたわ!」

 

 事の発端は朝食を食べ終えた後、当然愛宕洋榎が皆に向かってそう言った。いきなり何を言うんだと末原恭子が「……何言ってんのや」と冷たい言葉で言うが、ここで意外にも小瀬川白望が「いいかもね……」と同調する。

 

「ま、マジでか白望!?」

 

「まあ……そういうのもいいんじゃない?腕とか賭けるわけじゃないんだし……」

 

「それは極論やけど……ま、ええわ……」

 

 そうして末原恭子が同意したところで愛宕洋榎はどこからかティッシュの空箱を持ってくると、「そう言うと思って既に罰ゲーム内容は作っとるで、安心せえ」と言って中に何枚もの折られた紙が入っているのを皆に見せる。

 

「い、いつから用意してたんや……」

 

「んー?いつからやろなー?」

 

(罰ゲーム用のこの箱は前から用意してたんやけどな……前からこういうのしたい思っとったし。まあ()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 そう言って愛宕洋榎は北叟笑むと、特に末原恭子と愛宕絹恵と上重漫にバレないようにその笑顔を堪える。そして愛宕絹恵が「お姉ちゃん、ゲームっていっても何するんや?麻雀とかか?」と言うと、愛宕洋榎はこう返した。

 

「それだと四人でしかできないしなー……それに麻雀だったらシロちゃんが勝つに決まっとるし……適当に七並べとかでええんちゃう?」

 

「なんでよりにもよって七並べなんですか先輩……」

 

 上重漫が愛宕洋榎にそう言うが、愛宕洋榎はそれをいなすように「別になんだってええやろ。ウチの本命はこっち(罰ゲーム)なんやし」と言う。

 そうして始まった罰ゲームを賭けての七並べが始まったのだが、結果は分かるように末原恭子がビリで負けとなる。問題が起こったのはその罰ゲーム内容なのであった。負けた末原恭子が渋々罰ゲームが書かれた紙を引き、それを開いた瞬間青ざめる。どうしたものかと愛宕絹恵と上重漫が末原恭子が持っていた紙を見ると、ボンッと爆発したかのように顔を赤くした。

 

(引っかかったな……恭子!罰ゲーム内容は全部シロちゃん関連や!)

 

 カタカタしている末原恭子を見て愛宕洋榎は笑いを必死に抑える。愛宕洋榎が言うようにティッシュの箱の中には全部小瀬川白望が関連しているものであり、末原恭子はどれを引こうとも小瀬川白望と何かをしなければならないのであった。しかし全てをそういった罰ゲームにしてるといっても、愛宕洋榎や真瀬由子、本人の小瀬川白望が引く場合を全く考慮していないわけではない。用意した罰ゲームは仮に愛宕洋榎と真瀬由子が引いたとしてもギリギリ大丈夫なお題しか用意しておらず、小瀬川白望はまずどんなゲームであれど勝負事という時点で負けないだろうという一種の信頼を置いていた。しかしそんな心配事も杞憂に終わったようで、案の定末原恭子が負けたのだが。

 

「恭子、何引いたん?」

 

「洋榎……お前……」

 

 そう言って末原恭子は愛宕洋榎に『シロちゃんとポッキーゲーム』と書かれた紙を見せると、愛宕洋榎は嬉しそうに「ポッキーゲームかあ!中々の引いたな恭子!」と言うと、予め用意してあったポッキーを取り出す。そうして愛宕洋榎は小瀬川白望に「シロちゃん、ちょっとポッキー咥えてくれへん?」と要望する。

 

「え、私……?」

 

「まあ罰ゲームやからなあ……本来は恭子の罰ゲームなんやけど、頼まれてくれ!」

 

(……洋榎って結構ゲスなのよー)

 

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「くっ……ホンマにやるんか洋榎、由子!?」

 

「罰ゲームは絶対なのよー」

 

「当然やな」

 

 そして現在に至る。小瀬川白望は既にポッキーを咥えて準備済みであり、あとは末原恭子の決意次第であった。後ろにいる愛宕絹恵と上重漫は同時に(そんな事やら負けた方が良かったわ……)と後悔していた。

 

「っ……ハア。仕方ない、白望!行くで……!」

 

 かなり悩んでいた末原恭子も、ついに意を決したのか小瀬川白望の事を呼ぶ。咥えているため喋れない小瀬川白望はゆっくり首を縦に振ると、小瀬川白望は自分の顔を末原恭子に寄せ、末原恭子がポッキーを咥えれるように近づく。

 

(……落ち着け、落ち着くんや末原恭子。こんなん途中で失敗すればそれで終わりや……)

 

(ええい、ままよっ!)

 

 そう心に唱える末原恭子だが、いざ咥えてみると小瀬川白望の顔が眼前にあり、しかも逃げようにも逃げられないので顔を逸らすこともできず、ただ頭を真っ白にしていた。

 

「準備ええな、二人とも。よーい、スタートや!」

 

(えっ、ちょ……!?)

 

 頭が真っ白になってしまったため先ほどの決意などどこかへ飛んでしまった末原恭子の事など御構い無しといった感じです愛宕洋榎が開始を宣言する。末原恭子が驚き戸惑う間にも、小瀬川白望はポッキーを食べ進めていた。

 

(なっ、早……)

 

 末原恭子も取り敢えず途中で折れることを祈って食べ始めるが、時間が経つごとに小瀬川白望との距離が縮まるだけで、折れる気配は一向にしなかった。

 

(は、早く折れへんと……このままじゃ……)

 

(キ……ス……!?)

 

 しかし末原恭子の祈りも通じず、結局最後まで折れることなく二人の唇が触れ合うこととなった。一瞬だけではあったが、末原恭子は唇が触れた瞬間脳が沸騰しそうな感覚を覚えた。

 

「あ……」

 

 結果的にキスとなってしまったのに気付いた小瀬川白望はそう言って唇を離す。愛宕絹恵と上重漫は手で顔を隠すようにしていたが、それでも指と指の隙間からしっかりとその瞬間をみていた。そして愛宕洋榎はそんな末原恭子の事を見て、こんな事を思っていた。

 

(……良かったな、恭子)

 




次回に続きます。
ちょうど末原さんが誕生日なので……

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