宮守の神域   作:銀一色

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リクエスト回その3です。
あと通算UA数が50,000回突破しました。有難う御座います。
これからも頑張って毎日、そして尚且つ高クオリティの作品を投稿したいと思います。


宮守の神域 リクエスト その3

 

 

 

 

 

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リクエスト:小瀬川白望in有珠山咲日和②

 

 

 

 

「……こ、これだ!」

 

部活の休憩時間中、突如獅子原爽がスマホを見て何か思いついたかのような発言をする。室内にいた桧森誓子と私は、爽の方を向く。どうせ爽のことだ。ろくでもない事だろう。

 

 

「どれだ?」

 

 

誓子が爽に尋ねる。爽は自分が見ていたスマホを誓子の方に向け、

 

 

「これだ!」

 

と、誓子に見せる。私も一応気になるので、ちらっとそのスマホの画面を見ると、

 

 

ー男として毛はえ薬ー

 

 

という、所謂育毛剤の宣伝の画像が映し出されていた。何で育毛剤なんか……という私の疑問を代弁するかのように言うように誓子が

 

 

 

「……髪の毛が不安なの?」

 

 

と問いかけた。すると爽がびっくりしたようにスマホを自分の方に向け直すと、

 

 

「遅れて表示されるタイプの宣伝め……」

 

 

と、忌々しそうにスマホを見つめ、広告を消した。ああ成る程。そういう事かと納得し、改めて爽が言う例の何かを見る。

 

 

そこにはダンス動画コンテストの応募画面が映し出されていた。

 

 

「ダンス動画コンテスト?」

 

誓子が爽に聞き返すと爽は

 

「そう!『おどろうきっず』ってあるだろ。それの企画で、ダンスを録って送って、採用されればテレビで流れるやつ!」

 

と返す。ああ、確か某テレビ局でやってる番組の企画か。あの番組今でもやっているんだ。

 

 

「へぇ」

 

誓子が関心がなさそうな声で返答する。

 

「それで……それがどうしたの?」

 

 

私が爽に尋ねる。すると爽は無邪気な顔で、

 

 

 

「踊ろう!」

 

 

 

と言った。……何を言っているんだ、と口に出しそうにしたものの、それを抑えて爽の言うことを聞く。

 

 

 

「ユキをセンターにするんだ。はやりんに匹敵するためにはこういう事からだ!」

 

 

「ユキを?」

 

 

通称真屋由暉子アイドル化計画。ユキを麻雀のおねえさん(28)のはやりんこと瑞原はやりの座を奪おうという謎計画を、ここにきてもってくるか。思わず成る程と思ってしまった。

 

 

 

「でもその番組子供向けよね」

 

だが、ここで誓子が根本的な問題を爽に指摘する。言われてみればそうだ。いい年にもなった高校生が子供向けの番組の企画に参加するなどとてもアホらしい。しかもよりにもよってダンスだ。採用された方がかえって恥ずかしい。

 

 

「私たちだって広義で子供だし。子供っぽいとこあるし……ほら」

 

それに対して爽は苦しすぎる言い訳を始める。広義に解釈できればそれでいいのか。というより自分で子供っぽいと認めていいのか獅子原爽よ。

 

 

 

「協力してくれチカ!シロ!テレビのアピールは話題作りになるんだ!」

 

 

 

 

 

 

爽が誓子と私に擦り寄るようにして懇願するが、さっき子供っぽいと言った割には動機が全く子供っぽくない、まるで汚いプロデューサーのようだ。と誓子と私は心の奥底で思った。

 

 

 

 

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結局その案は爽の独断によって強引に可決され、部室にやってきた成香と揺杏にダンス動画を録るという事を説明した。

 

 

「ダンス!いいね!やっぱり時代はダンスだよダンス!」

 

それを聞いた揺杏はやる気に満ちていた。お前は一体時代の何を知っているんだ。何を。

 

 

「でもそれちっちゃい子が躍るものなのでは」

 

 

一方成香は当然の疑問を爽に問う。まあそりゃあダンスするって言って、しかもそれが子供向けの企画であれば尚更である。

 

 

 

「応募に年齢制限はないぞ」

 

 

が、爽は屁理屈を言って押し通そうとする。確かに見たところ年齢制限は無いが、そういう理屈でいいわけがないだろう。

 

 

 

「まさか高校生だけで送ってくると思わないのでは……」

 

成香が私が思っていたことを代わりに言う。すると爽はとんでもない返答をする。

 

 

 

「安心しろ。私たちにはシロの師匠こと赤木さんが付いている」

 

いくらなんでもそれはダメだろう。ツッコミどころが多すぎる。まず容姿は欠片だし……

 

 

 

「流石に厳しい。爽、別の案を考えよう」

 

 

とにかく爽の暴走を止めるために、ストップをかける。爽は不服そうだったが、すぐに代案を考える。

 

 

「じゃあ幼児役を作ろう」

 

 

幼児役。となるとその役は身長が160以上ある私と誓子と揺杏は除外されるだろう。ユキはセンターになるだろうし、となると……

 

 

「幼児役は、背丈が低い私と……」

 

 

チラリと爽が成香の方を見る。まあ、そうなるであろう。

 

 

 

「背丈で考えないでほしいです……」

 

 

まあそうなるであろう。ご愁傷様である。

だが、その言葉を数秒後の私に言う事になるとはこの時思ってもみなかった。

 

 

「いや、シロ!お前もやれ!」

 

 

 

「うえ……!?」

 

 

 

ああ。何故こうなった。

 

 

 

 

(ダル……ダルい)

 

 

 

 

 

 

 

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主役のユキが部室に入ってきたところで、ユキも交えてダンスの配役を爽に発表してもらう事となった。

 

 

 

 

「私とシロと成香が幼児役!チカと揺杏とバックダンサー!赤木師匠は監督!」

 

 

 

「そして……センターで踊るのが、ユキ、お前だーーー!!」

 

 

パチパチパチ。と私たちがユキに向けてささやかな拍手を送る。当の本人は、呆然と爽を見つめる。

 

 

 

「私がいない間に話を進めましたか……」

 

 

 

まあ自分の知らないところでダンスを踊ることになり、しかも自分がセンターに決められてしまえば当然の反応ではある。

 

 

 

「いいでしょう。やりましょう。お気持ちはありがたいですし楽しそうです」

 

 

何はともあれ、これでユキからの了承を得て、一気に皆はダンスの準備ムードになり始める。

 

 

衣装も爽が本気だという事を伝えるためと言って作ることになり、いつもユキの衣装を作っている揺杏が衣装作りの担当となった。幼児役の衣装は園児服、バックダンサーは着ぐるみ、ユキは特別衣装を着ることに決まった。成香が園児服を着るということを聞いて驚愕していた。もちろん私も唖然としたが、もうどうにでもなれと現実逃避するしかなかった。

 

 

録画は爽が編集は小賢しいという理由で一発撮りということに決定した。どう考えても編集が面倒という理由であろう。小賢しい。

 

 

 

準備や計画はだいたい決まり、後は揺杏が衣装を作り終わるのを待つのみとなった。とはいえ、二週間程度かかるという事らしいので、ためしに踊ってみる事にした。現場監督の赤木さんの目の前で踊り、赤木さんに評価をしてもらうという算段だ。……失礼だが赤木さんにダンスという概念があるのだろうか。と不安になるが、いざという時は誰かが見ればいいだけだ。

 

 

 

 

 

〜〜

 

という事で踊ってみた。踊り自体は楽(カットした部分はあるけど)だが、体を殆ど動かさない私にとってダンスというものはあまりにも辛い事であった。

一回やっただけでとてつもない疲労感に襲われたが、とりあえず赤木さんの感想を聞く事にした。

 

 

「師匠。どうだった?」

 

 

【……ちょっと獅子原。こっち来てカメラ見てみろ】

 

 

赤木さんが爽を呼び出し、カメラで撮った動画を見に行く。私たちも爽について行き、カメラを一緒に見た。

 

 

(((……ユキがかなり下手だ)))

 

 

ユキが思った以上に下手だったのだ。どういう風に下手かというと、タイミングが明らかにずれている。それも、結構なずれである。流石にこれを誤魔化すのは無理があるレベルだ。

 

 

「成香。子供はおねえさんより上手く踊っちゃダメだ!」

 

 

「ええ!?」

 

 

……フォローになってないぞ爽。

 

 

 

 

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再度見た結果、他にも色々な課題点が見つかった。成香がところどころミスってたり、私の表情が苦しかったりなど、ユキほどでもないが、結構重大な課題点が挙げられた。

 

 

ユキと成香は要練習としか言えないが、問題は私の表情だ。ただでさえ表情を出さない私が、ダンスという重労働によって顔が苦痛に歪んでしまって、自分で見てて見苦しかった。

 

「笑顔だよ笑顔。私も後ろで笑顔アピールすっからさ」

 

そんな私を、満面の笑みで励ます揺杏。流石揺杏だ。持つべきは揺杏のような優しい人間だ。

 

 

「私たち着ぐるみで顔隠れない?」

 

誓子が揺杏に対してツッコミを入れる。そういえば着ぐるみ着るとか言ってたな。

 

……気持ちだけ貰っておく事にした。

 

 

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あれから二週間が経ち、遂に揺杏が衣装を作ってきた。

 

私と爽と成香の衣装はやはり思った通りの園児服で、御丁寧にサイズまでしっかり合っている。これで160cm以上の幼稚園児が誕生してしまった。そして以上なほど爽が様になっているのは何故であろうか。

 

一方誓子と揺杏の衣装は番組のマスコットキャラクターの着ぐるみであった。だが、同じマスコットが二体いるという不気味な光景になったので、成香のハーパンを揺杏が剥ぎ取って頭に被せるという大胆な解決策で乗り切った。……端から見ればただの変態野郎だが、気にしないでおこう。

 

 

そして肝心のユキの衣装だが、とても良く仕上がっている。周りが着ぐるみと園児服な事もあってか、凄く可愛く見える。

 

 

「仕上げにこの髪飾りを」

 

『ゆあん』と胴体に書かれた着ぐるみ一号が、ユキに髪飾りを渡そうとする。

 

 

「あっ」

 

が、誤ってその髪飾りを『ゆあん』が落としてしまう。すかさず『ゆあん』が拾おうとしたが、着ぐるみの所為で上手く拾う事ができない。

 

 

「拾えねー!」

 

 

ハーパンを被った着ぐるみが美少女の目の前で髪飾りを一生懸命拾おうとする光景はまさに滑稽であった。

 

 

 

 

「あとトイレ行きたい!」

 

 

もうトイレネタではつっこまないぞ。揺杏。

 

 

 

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髪飾りも装着し、あとは踊るだけだ。表情の問題もなんとかできるようになったし、ユキと成香の問題も解決できた。

 

 

万全の状態で撮影に挑んだ。

 

 

 

 

 

「……これは良い出来だ!」

 

「感動しました」

 

 

一発勝負であったが、会心の出来であった。私の表情も、ユキと成香もきっちりしていて、完璧と称するに相応しいほどの完成度であった。

 

 

「一緒にダンスするの楽しかったです……!」

 

ダンスの主役のユキが踊った感想を述べる。皆それにしみじみしていたが、約2名それどころではない者がいた。

 

 

「はぁ……はあ……!」

 

 

着ぐるみ要因であった誓子と揺杏であった。いくら涼しい北海道とはいえ、着ぐるみを着てダンスをすれば熱気に包まれる。着ぐるみを脱ぐと、そこには真っ赤になった誓子と揺杏。

 

 

「水いるか?」

 

 

 

まあ、頑張ってくれた誓子と揺杏にも賞賛の拍手を送るとしよう。

 

 

 

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後日、例の『おどろうきっず』の放映日に、私と爽と揺杏で集まって見ることにした。

 

番組内で、ダンスコンテスト企画の時間になると、今までダラダラ過ごしていた私達は、待ってましたと言わんばかりにテレビの前に移動する。

 

そして、なんと私たち『ユキちゃんファンクラブ」が入選され、放送されてしまったのだ。

 

 

「うれしい……うれしい……!」

 

 

あまりの嬉しさに、爽はベッドに寝転がり、足を天井に向けて上げながら喜びを露わにしていた。

 

 

((あっちの踊りもすげー……))

 

 

そんな事を思いながらテレビを見ていると、爽の携帯が着信音を発した。するとその直後、私の携帯も鳴った。爽は成香で、私は智葉からであった。とりあえず私と爽が電話に出て、聞いてみると

 

 

 

『シロ!……幼稚園児のシロもなかなかありじゃないか!!』

 

 

 

『服装についてお母さんに質問されているんです……』

 

 

 

 

「なんで見ているんだよ……」

 

 

 

「私の名前出して説明していいぞ!」

 

 

 

 

 

 

……これは私と成香の黒歴史として忘れられることはないであろう。

 

 

 




リクエストは現在も受け付けてます。優先度は既にきている方が高くなってしまいますが……
あとこれ、4600文字もあるんですよね……
本編よりも多いとは……

次回のリクエストは、高校生編の日常を書きたいと思います。次のリクエスト回がいつになるのかは分かりませんが……
まあ、早めに書き上げたいと思います。

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