といったところで前回に引き続き姫松高校編です。
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視点:神の視点
「ここやでシロちゃん、ここがウチらの姫松高校やで!」
「ふーん……綺麗な校舎だね」
小瀬川白望が呑気そうにそう呟くと、愛宕洋榎は肩透かしを食らったかのようにズッコケて、小瀬川白望に向かって「いや、ちゃうねん……そういう事やないねん、シロちゃん。もっと……何て言うんやろ。凄い!かっこええ!風格ある!みたいなのが欲しかってん……」と言うが、隣にいた愛宕絹恵が「何を言うとんの……恥ずかしいからやめてや、お姉ちゃん」と先ほど意識を取り戻した愛宕絹恵が、依然顔を赤くして嗜めるように言う。
「……まあ綺麗な方が凄いかどうかはともかく、風格は出てると思うけど」
すると小瀬川白望が冷静に愛宕洋榎の要望に応えると、愛宕洋榎は「せやろー?風格出てるやろー?」と言って笑顔を浮かべてそう言った。そんなハイテンションな姉とその姉を乗せる小瀬川白望の事を見て、妹の愛宕絹恵は「もうやめてや二人とも……校門の前で……」と言って呆れ半分恥ずかしさ半分の二つの感情を露わにした。
「……何やら校門付近が騒がしい思て来たけど、やっぱりあんたらか……」
「端から見れば変人よー」
そんなやり取りを愛宕姉妹と小瀬川白望がしていると、校舎から二つの声が飛んできた。三人は校舎からやってくる者を見ると、そこには末原恭子と真瀬由子がいた。その二人を見てまず最初に言葉を発したのは小瀬川白望であった。小瀬川白望は末原恭子の事を指差してこう問いた。
「え……末原、さん?」
(……ッ。やっぱりバレとるわ……っていうかバレへん方がおかしいか……)
思わず末原恭子は顔を逸らす。隣にいる真瀬由子は顔を逸らす末原恭子と、小瀬川白望の隣で顔を赤くする愛宕絹恵を見て(この人が例の……見る限り天然さんなのよー)とすぐに察知した。
最初は顔を逸らして目線を合わせないようにしていた末原恭子であったが、このまま無視し続けるのも如何なものかと罪悪感が働いたのか、深く息を吐いて精神統一すると、小瀬川白望に向かってぎこちなく手を振ってこう言った。
「正解やで。奇遇な事に……ウチもそこの愛宕姉妹と同じ姫松高校の麻雀部員なんや」
「えっ、恭子。シロちゃんを知っとったんか!?」
それを聞いた愛宕洋榎は驚いて小瀬川白望と末原恭子に向かってそう聞く。そう聞かれた小瀬川白望と末原恭子は首を縦に振ると、愛宕洋榎がどこか感心したような表情で「世間てやっぱ狭いもんやなあて」と言ってウンウンと頷いていた。
(え……末原先輩、シロさんの事を知っとるんか?っというか、末原先輩……まさかウチと同じ……)
そして隣にいる愛宕絹恵は驚いた表情で末原恭子の事を見る。驚きながらも愛宕絹恵は、末原恭子が自分と同じ境遇であるということを理解した。小瀬川白望に対して、密かに想いを抱いているという境遇。自分がまさにその状態であったため、すぐに末原恭子が小瀬川白望の事が好きであるということが分かった。
(というか……端から見ればバレバレやな。ウチも末原先輩みたいにあんな感じなんやろか……恥ずかしいわ……)
「まあ奇遇なこともあるもんやな……」
「私としてみれば末原さんが麻雀やってる事自体初めて知ったけど……」
小瀬川白望がそう言って末原恭子の事を見ると、末原恭子は少し照れたような顔をして「う、ウチかて小瀬川さんが麻雀やっとるなんて知らんかったよ……」と返した。
「うーん……」
「……どうしたの洋榎」
そんな小瀬川白望と末原恭子の会話を聞いてどこか不満そうに愛宕洋榎が声をあげる。小瀬川白望がどうしたのかと聞くと、愛宕洋榎は「よし!」と言って手を叩き、二人に向かってこう言った。
「シロちゃん、恭子。あんたら名前で呼びや。違和感しか感じないわ」
「えっ……」
末原恭子は思わず声を上げてしまうが、小瀬川白望は「まあ確かに……知らない仲でもないしね」と言って末原恭子の方を見ると、末原恭子は「え、あ……え……?」と動揺していたが、小瀬川白望が「これからも宜しく恭子」というと、末原恭子は顔を真っ赤にして「よ、宜しく……白望」と言うとこれまた先ほどの愛宕絹恵のように倒れてしまった。それを小瀬川白望が優しく抱えると、末原恭子は更に顔を赤くして口をパクパクさせていた。
(イケメンさんなのよー……)
真瀬由子はそんな小瀬川白望を見てそう言ったが、果たしてその言葉の裏に真瀬由子の想いがあったかどうかは真瀬由子にしか分からなかった。
そうして五人は校舎内に入り、麻雀部に向かったのだが、その道中で会った上重漫に「ちょ、先輩!?ナンパでもされたんですか!?」と何故か小瀬川白望がナンパに勘違いされたが、末原恭子に「客になんて事言うんや……?」と言ってペンを取り出してみせると、すぐにその誤解は解かれ、というか強制的に解かされた上重漫は「すみません!」と言って小瀬川白望に向かって謝罪をすると、小瀬川白望は「気にしてないし……全然いいよ。えーっと……」と上重漫に向かって言うと、
「上重漫です。宜しくお願いします」
「私は小瀬川白望……宜しくね、漫」
そうしていい雰囲気になっているのが気に食わなかったのか、愛宕絹恵と末原恭子は上重漫に詰め寄ると、「す、すみません〜!」と言ってダッシュで逃げてしまった。
「なんや……あいつ」
(なんだと思ってるのは多分あっちの方だと思うのよー)
次回に続きます。