宮守の神域   作:銀一色

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こんばんは。前回に引き続き高遠原中編です。



第276話 高校一年編 ⑳ SOA

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視点:神の視点

 

 

「ただいまです!皆さん」

 

「あ、花田先輩!のどちゃん!お帰りなさいだじぇ!」

 

 花田煌が原村和と小瀬川白望を連れて高遠原中学の麻雀部の部室に入ると、真っ先にタコスを片手に持った少女が駆け寄ってきた。するとその少女は、花田煌と原村和の後ろにいる小瀬川白望を見て、「むむむ!?お主、何者だじぇ!?」と言って指をさした。そしてその少女に向かって原村和がこういった。

 

「ちょっと、ゆーき。やめなさい……この人は……」

 

「こらこら、優希さん。この方は先ほど和さんを助けてくれた人で、大変すばらなお方なんですよ」

 

 そう花田煌が言うと、片岡優希は「そうだったのか……白髪のお姉さん、ごねんなさいだじぇ……」と言って少ししょんぼりする。小瀬川白望はそんな片岡優希を見て若干の罪悪感を感じたのか、片岡優希の頭を撫でて「何も気にしてないから大丈夫だよ……」と言う。すると片岡優希の顔がパアアッと明るくなり、右手に持っていたタコスを差し出してこう言った。

 

「ありがとうだじぇ!さっきのどちゃんを助けてくれたお礼に、このタコスをあげるじぇ!」

 

(食べかけのようにしか見えないけど……まあいいか)

 

 小瀬川白望はそう思って一瞬逡巡したが、片岡優希からタコスを受け取って一口食べる。小瀬川白望は今までタコスというのを食べたことなど無いし、食べる機会もなくタコスという存在とは遠く離れた小瀬川白望であったが、一口食べただけで美味しいというのがわかった。

 

「あ……美味しい」

 

「タコスの素晴らしさが分かるとは、流石お姉さんだじぇ!」

 

 片岡優希は誇らしげにタコスを頬張る小瀬川白望を見つめながらそう言った。隣で見ていた原村和と花田煌はそんな光景を微笑ましく眺めていた。

 

「そういえば、あなたたちって麻雀部員なんだっけ。麻雀……打てるんだ?」

 

 そう小瀬川白望が三人に向かって言うと、片岡優希は「団体戦には出られなかったけど、のどちゃんは今年のインターミドルで一年生にして大きな成績を収めたんだじぇ!」と原村和の背中を押してそう言った。

 

「そうなんだ……ふーん」

 

(そういえば今年のインターミドルは見てなかったなあ……)

 

 小瀬川白望は今年はインターミドルよりも、辻垣内智葉や宮永照の出ているインターハイの方を見ていたため、今年のインターミドルがどうなっているかなど知ってはいなかった。

 

「お姉さんは麻雀できるんだじぇ?」

 

 そうして今度は返すように片岡優希が聞いてきた。小瀬川白望は四年前のことを言ってももうそれに価値は無いであろうという事で、四年前の全国王者であるという事は言わずに「まあ……打てるよ」と返答した。

 

「……ちなみに、白望さんはオカルトとか使えたりするんでしょうか?」

 

 今度は花田煌がそう小瀬川白望に質問する。すると一瞬だけ原村和の眉がぴくっと動いたが、小瀬川白望は(無いとは言えないよなあ……照のアレだってそうだし……意味合い的には違うかもしれないけど、赤木さんも今は存在そのものがオカルトみたいな存在だし……)と考え、こう答えた。

 

「さあ……私は別に使えたりしないけど……実在はするんじゃない?」

 

「ほう……お姉さんはオカルト肯定派なんだじぇ」

 

「まあ、色々それなりのは見てきたし……例えば神様降ろしてきたりする能力とか……」

 

「そ、そんなオカルトありえません!」

 

 すると我慢しきれなくなったのか、原村和が口を挟む。小瀬川白望一瞬体がびくっとなったが、原村和は気にせず持論を展開する。

 

「そういうのはただの確率の偏りに過ぎません!何より、非科学的です!」

 

 小瀬川白望は少しほどびっくりしていたが、原村和に向かって反論する形でこう発言する。

 

「……まあ考えは人それぞれだと思うけど、それを頭越しに否定するのはどうかと思うよ」

 

「……で、ですが。そんな存在を信じる事なんてできません!」

 

 しかし退かない原村和を見て、小瀬川白望は深くため息をついた。少しほど場がピリッとしたが、小瀬川白望は淡々と原村和に自分の意見を投げつける。

 

「……その存在を認めるかどうかはあなた次第。確かに非科学的だし、普通だったらあり得ないかもね。……だけど、認める事と理解しない事というのはまた話は別……」

 

「そういうのがあると理解した上でそれでも認めないというのなら仕方ない……だけど、理解しないで認めないというのは愚か……単なる白痴でしかない。そう考えると、今のあなたはオカルトを認めたくないというわけじゃない。ただ理解する事が怖い……自分の信じていた世界が変わるのを、オカルトを恐れているだけに過ぎない……」

 

「……ッ」

 

「それに、あなたのいう科学的っていうのも昔の時代ではそれこそ魔法のような存在、あり得ないもの……日が経つごとにどんどん進化して行っている。そう考えれば、科学的という言葉は基準として何の価値もない……」

 

 そうして小瀬川白望は雀卓に座り、雀卓内から点棒を取り出したと思うと、原村和の事をその点棒で指してこう言った。

 

「だけどあなたは自分の世界がオカルトによって広がるのを恐れている……科学的という言葉にどうしても固執してしまう。じゃあどうすれば良いか……それならばそのオカルトに対する恐怖と、科学的という言葉を消し去って仕舞えばいい」

 

「そ……そんなのどうやって」

 

「簡単な話……オカルトよりも恐ろしいものを見ればいいだけ。確率だけでは計ることのできない私の麻雀で。あなたの世の中を広げてあげるよ……階段二段飛ばしくらいでね」

 

 

 




次回はさらっと麻雀回です。

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