宮守の神域   作:銀一色

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クッキングと言いながらあまり料理描写はないという。


第267話 高校一年編 ⑪ リベンジクッキング

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視点:神の視点

 

 

「半荘一回だけだったのに、結構時間過ぎてたね」

 

 小瀬川白望と宮永照と弘世菫が、宮永照の家へ向かって歩く最中、ふと宮永照がそんな事を呟いた。弘世菫が腕時計をチラと見ると、「確かにもう昼前だな」と応答する。それを聞いた宮永照が、小瀬川白望と弘世菫に向かって目を輝かせてこう言った。

 

「白望、菫。覚えてる?」

 

「は……?」

 

「何が……」

 

 いきなり覚えているかと宮永照に聞かれた小瀬川白望と弘世菫は、互いに目を合わせながらなんの事だと疑問を浮かべていた。そんな二人を見て、宮永照は「いや……約束したのはそれぞれ別なんだけど……」と付け加える。小瀬川白望と弘世菫はそれを聞いてようやく何のことか思い出したようで、「ああ、そういう事か」と宮永照に向かって言う。そう聞いた宮永照は拳を握ると、待っていたと言わんばかりにグッと拳に力を入れ、過去を払拭するべくこう呟く。

 

「やっとリベンジする時が来た……」

 

 宮永照が何の事を言っているか、それは宮永照の手料理の件であった。前に小瀬川白望が宮永照の家へ行った際、宮永照が手料理を小瀬川白望に振る舞う事になったのだが、物の見事に失敗。炭素の塊のような黒い物体がこれ以上にないくらい存在感を発して、皿の上に鎮座する事となってしまったのだ。そんな宮永照が、小瀬川白望に「いつか料理を教えて」と懇願したのがきっかけであった。

 一方の弘世菫はというと、此方は宮永照が突然パンケーキを作りたいと言い出したのがキッカケである。恐らく宮永照も、小瀬川白望の件があってリベンジしようと思っていたのだろうが、案の定焦げてしまうといった事をやってのけてしまい、こうしてリベンジチャンスは今日までお預けとなってしまったのである。それほどまでの料理センスの無さを良く知っている小瀬川白望と弘世菫は、咄嗟に緊急会議を開いた。

 

「ど、どうする……白望。あいつはパンケーキ一枚まともに作れないヤツだぞ……」

 

「どうするって……約束しちゃったしなあ」

 

「だが……ここでまた照が失敗してみろ、多分泣くぞ」

 

 それを聞いた小瀬川白望は、心の中で(ありえなくもないかも……)と思わず思ってしまったが、とりあえず弘世菫とどうするかを決める事にした。

 

「……何か簡単な料理とか知ってないか?因みに私が思う簡単な料理はせいぜいオムライスくらいだが……あ、チキンライスは無理だろうからそれは無しの方向でだ」

 

「オムライスかあ……流石にそれならある程度駄目でも大丈夫そうかな……」

 

 そう言って小瀬川白望と弘世菫は結託して、宮永照に「じゃあ、家に帰ったらオムライスを作ろうか」と言って宮永照の腕を引く。宮永照は「うん……作ろう」と言って闘志をむき出しにして意気込む。しかし、小瀬川白望と弘世菫の予想は甘かった。無論この後、宮永照とオムライスとの格闘劇が始まるのは言うまでもない。

 

「す、菫。この後どうするの」

 

「は、早くご飯の上に被せるんだ!卵料理は時間が命だぞ!」

 

「ちょ、ちょっと待って。どうやって乗せればいいの」

 

「照……一旦落ち着いて。取り敢えずサッとやればできるから。ほら」

 

「……サッ」

 

「声に出してもさっきから変わってないよ……」

 

 宮永照が思わぬところで躓いているのを、横にいる小瀬川白望と弘世菫が必死にサポートをしてようやくまともに料理をすることができている。それほど宮永照の料理センスは壊滅的であり、主婦にはなれないなと小瀬川白望に思われてしまうほどのものであった。一応は完成したものの、完璧には程遠く、むしろあと一歩間違えば真っ黒に焦げていたであろうレベルの完成度であった。とはいえ、完成したのも事実ではある。二人の協力があってこその事であったが、宮永照は無事にリベンジを達成したのである。

 

「はあ……」

 

「ダルい……」

 

 無論、その成功の裏には二人の大変な苦労が強いられているわけで、二人はエプロンを身に付けたまま椅子にもたれかかった。そして満足している宮永照を見て、改めてもう宮永照に料理をさせてはいけないという事を念頭に置いて、それと同時に包丁を使うような料理でなくて良かったと心から思った。

 三人はそうして出来上がったオムライスを食べる。三人の感想はそれぞれ別であり、宮永照は多分上手くできているであろうと自負し、他の二人は(照が作ったと考えれば十分及第点かな)といった感想であった。

 

「……私も本格的に料理、始めようかな」

 

 そしてふと、宮永照がそう呟くと小瀬川白望と弘世菫の身体がビクッと震えて、手伝う事の大変さよりも、宮永照が危険な目に遭わないように二人して宮永照に詰め寄ってこういった。

 

「……絶対にその時は私を呼べよ」

 

「私たちが最大限サポートするから、わかった?」

 

「え、うん……分かった」

 

 そう宮永照が言うと、二人は安堵の息をして再び椅子にもたれかかる。小瀬川白望もダルかったとは思っているが、それでも宮永照が危ない目に遭わないようにと考えればその苦労も無駄ではないであろう。そう考えるほど小瀬川白望は案外世話焼きであり、それほど宮永照が小瀬川白望をああまで言わせるほど心配させるような料理の腕前であるということは言うまでもない。




次回に続きます。
え、私の料理スキルですか?
……ご想像にお任せします。

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